父親が初めて面談に来た日|家族が変わる瞬間を、児童精神科の病棟で見てきた話【体験談】

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「お父さんはお仕事で……」——家族面談の前に、何度も聞いてきた言葉です。お母さまが少しうつむきながら理由を添えてくださる。そのたびに「そうですよね、お忙しいですもんね」と返してきました。心のどこかで「来てほしいな」と思っていたのも、正直な気持ちです。

この記事は、ある一人のお父さんが、初めて面談室に現れた日のお話です。個人が特定されないよう、複数のご家族で経験した出来事を重ねて抽象化してあります。

※本記事は父親を批判する意図はまったくありません。ひとり親家庭・同性カップル家庭・祖父母が養育者の家庭など、家族の形は多様です。「父親」「母親」という表現は便宜上のもので、ご自身のご家族の状況に読み替えていただけたら幸いです。


  1. この記事を書いている私について
  2. 「お父さんはお仕事で……」が続いていた、ある家族
  3. 病棟で見てきた「来ない父親」3つのパターン
  4. あるお父さんが、初めて面談室に現れた日
  5. その日、変わったもの
  6. 父親が関わり始めた家族の、その後
  7. 「来てもらう」ために、母親ができる5つの工夫
  8. 父親自身が感じていた、本当の不安
  9. 一緒に取り組める、小さな一歩の例
  10. 全ての家族に、当てはまるわけではない
  11. まとめ|「一人で頑張らなくていい」というメッセージ
  12. 「母親が全部抱える家庭」で起きていること
  13. 病棟で見てきた「父親が変わったきっかけ」3パターン
  14. 父親に「医療職と話す構え」を伝える
  15. 父親に「学校と話す構え」を伝える
  16. 思春期の子どもに父親ができる関わり
  17. 父親自身のメンタルケア
  18. 夫婦のコミュニケーションを取り戻す
  19. いろいろな家族の形のなかで
  20. 父親と子どもの「関係修復」のステップ
  21. 退院後・在宅療養での父親の役割
  22. 「父親であること」を考えなおす
  23. 読者のあなたへ、それぞれのメッセージ
  24. 家族の物語は、書き換えられる
  25. 病棟看護師が、父親に「これだけは」と願うこと
  26. 疾患・状況別・父親に期待される具体的な関わり
  27. 思春期男子・女子と父親の距離
  28. 父親が読むとよい資料・参考
  29. 父親が「相談できる場所」を知っておく
  30. 長期的な家族の歩みを見据えて
  31. 最後に、一つだけ
  32. 「ありがとう」が、家族を動かす
  33. 父親は「ヒーロー」になる必要はない
  34. 子どもが大人になったとき、覚えているもの
  35. 病棟を後にした、ある日のスタッフルーム
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  37. 著者プロフィール
  38. 免責事項

この記事を書いている私について

はじめまして、星野レンと申します。看護師歴8年、うち児童思春期精神科の病棟で5年勤務。不登校・発達障害・思春期のメンタル不調を抱えたお子さまとご家族のケアに従事してきました。病棟で家族面談に立ち会う中で、私は何度も「家族が動き出す瞬間」を見てきました。派手ではなく、むしろ見逃してしまうほど静かな瞬間です。今日はその一つを、お伝えできたらと思います。


「お父さんはお仕事で……」が続いていた、ある家族

中学生のお子さまが、学校に行けなくなり、食事もあまり摂れなくなって入院されたケースを思い浮かべてみてください。

入院当初から、面談に来るのはいつもお母さまお一人でした。お父さまは大きな会社で管理職をされており、本当にお忙しい。お母さまは「主人は仕事があって……」「主人は子どもの話になると黙ってしまって……」と、いつも一人で家族のことを説明してくださいました。

お母さまは気丈でした。涙を見せたのは、入院から3週間を過ぎたある日のこと。「私が何とかしなきゃと思ってきたんですけど、もう、何が正解か分からなくて……」と、ぽつりとこぼされたのを、今でもよく覚えています。

お子さまは、お母さまの前では明るく振る舞い、面会後に部屋でこっそり涙を流していました。「お母さんに心配かけたくないから」と。私たちナースはその様子を見ながら、「この家族は、お父さんの存在がもう一つ必要だ」と、ずっと感じていました。


病棟で見てきた「来ない父親」3つのパターン

誤解のないようにお伝えしたいのは、「来ない父親」は決して無関心ではないということです。病棟で多くのお父さまと話してみて分かってきたのは、来られない理由は一つではなく、いくつかのパターンに分かれるということでした。

1. 「仕事を休めない」パターン

最も多いのがこれです。責任あるポジションで、自分が抜けたら現場が回らない。家族のために働いているのだから、仕事を休むことが家族を守ることだ——そう信じて、一生懸命働いているお父さまです。

このパターンのお父さまは、「行きたくない」のではなく「行けない」と感じています。家族からのSOSは届いているのに、物理的に体が動かせない。そのジレンマの中で疲弊していることも少なくありません。

2. 「どう関わればいいか分からない」パターン

これも多いです。思春期のお子さまとの距離感がつかめず、話しかけると鬱陶しがられる。妻はどんどん詳しくなっていくけれど、自分は蚊帳の外。面談に行っても何を言えばいいのか分からない——そんな不安を抱えているパターンです。

あるお父さまは、後日こんなふうに話してくださいました。「面談って、きちんとした父親として発言しなきゃいけない場所だと思っていたんです。何を言えばいいのか分からなくて、行くのが怖かった」。この言葉が、私の中ではとても印象に残っています。

3. 「どうせ自分が行っても」と諦めているパターン

一番静かなパターンです。過去に子育てで何かしようとしたとき、うまくいかなかった経験がある。妻の方がよく分かっているから、自分が出ていっても邪魔になるだけ。そんな諦めを、少しずつ積み重ねてしまっているお父さまたちです。

外から見ると「無関心」に見えるかもしれません。でも、話してみるとそうではない。心の奥では、お子さまのことを気にかけていて、けれどその気持ちを出す場所を見つけられていないだけだったりします。


あるお父さんが、初めて面談室に現れた日

話を戻します。入院から1ヶ月ほど経った、雨の午後のことでした。いつもの面談日、お母さまが先に到着され、少し落ち着かない様子で待合にいらっしゃいました。

「今日、主人も来ます」

小さな声で、でもはっきりと、お母さまがそう言われました。私はとても驚きながら、「そうですか、お待ちしております」とお伝えしたのを覚えています。

約束の時間から15分ほど遅れて、スーツ姿のお父さまが、少し息を切らしながら面談室に入ってこられました。「すみません、遅くなりまして……」と、深く頭を下げて。

お父さまの言葉は、最初はとても少なかったです。質問されても「はい」「そうですね」と短く返されるだけ。ときどき長く沈黙が流れて、主治医と私も、どこから話を解きほぐせばいいか、少し迷っていました。

けれど面談の終盤、主治医がこんな質問をしたのです。「お父さまから見て、最近のお子さまはどんな様子でしたか?」と。

お父さまは少し間を置いてから、絞り出すように言われました。「最近、目を合わせなくなって……。前は、朝『行ってくるよ』って言うと『いってらっしゃい』って返してくれたのが、最近は、返事がなくて……」。そこでお父さまの言葉が、詰まりました。

隣にいらしたお母さまが、静かに涙を流されていました。「主人、そんなふうに見てたんだ……」と、小さく呟かれたのを、私ははっきり覚えています。


その日、変わったもの

面談室を出るとき、主治医がお父さまにこう伝えました。「お父さまが今日ここに来てくださったことは、きっとお子さまに伝わります。言葉にしなくて大丈夫です。いらっしゃったという事実だけで、今は十分です」。

その夜、お父さまは病室に立ち寄られ、お子さまと短く言葉を交わされました。翌朝、お子さまの担当ナースが私のところへ来て、少し興奮した声で教えてくれました。

「昨日の夜、あの子、ちょっと笑ったんですよ。お父さんが帰り際に『また来るわ』って言ったとき、『うん』って、ちゃんと返事してました」。

その日、変わったものは三つあったと、私は今でも思っています。

  • お子さまの表情:父親が「見ていてくれる」と分かった安心感
  • お母さまの涙:一人で抱えていた重さを、初めて横に置けた瞬間
  • お父さまの自覚:自分にも、できる関わりがあるのだと気づいた日

「これで全部解決しました」なんて、もちろん言えません。でもこの日から、家族が一緒に同じ方向を向いて歩き始めたことは、確かでした。


父親が関わり始めた家族の、その後

その後のご家族を、少しだけお伝えします。退院後、お父さまは月1回の外来通院に必ず同席されるようになりました。仕事の調整は簡単ではなかったと思います。でもそれを、「家族の大事な予定」としてカレンダーに入れてくださったのです。

お母さまは、以前より肩の力が抜けたような表情を見せてくださるようになりました。「主人に全部分かってもらえなくても、一緒に悩んでくれる人がいるというだけで、全然違います」と。

お子さまも、ゆっくりと、でも確実に回復されていきました。すぐに学校に戻れたわけではありません。でも、ご自身のペースで小さな外出を重ね、通信制という選択肢にたどり着かれ、今は自分の歩幅で歩いていらっしゃると聞きました。


「来てもらう」ために、母親ができる5つの工夫

ここからは少し実用的な話です。病棟で、お父さまに「来てもらえた」ご家族に共通する、お母さま側の工夫をまとめてみます。決して「妻の努力不足」という話ではありません。「もう少し伝え方を変えれば届くかも」という、ヒント集として読んでいただけたらうれしいです。

1. 「来てほしい」とはっきり言葉にする

意外と、これが言えていないご家庭が多いのです。「忙しいだろうから」「どうせ来ないだろうから」と先回りして諦めてしまう。でもお父さま側は「来なくていいと思われている」と感じていることがあります。「あなたに来てほしい」という言葉が、意外に強く響きます。

2. 面談の目的を「短く」伝える

「家族でこれからどう関わっていくかを、主治医と一緒に考える時間」——これくらいシンプルな言葉で大丈夫です。「責められる場所ではない」と事前に伝わっていると、参加のハードルがぐっと下がります。

3. 仕事の調整がしやすい日を、一緒に探す

「いつでも合わせて」より、「この日とこの日、どっちが行けそう?」の方が、答えやすいものです。選択肢を出してあげるだけで、ぐっと動きやすくなります。

4. 「分からないままで行っていい」と伝える

先述の通り、面談に対して「ちゃんと答えなきゃ」というプレッシャーを感じているお父さまは少なくありません。「分からないまま座っていてくれるだけでいい」「一緒に話を聞いてほしいだけ」と、期待値を下げて伝えてあげてください。

5. 来てくれたあと、責めずに感謝を伝える

これが一番大事かもしれません。来てくれたあとに「もっと早く来てほしかった」と言ってしまうと、次が遠のきます。まずは「来てくれてありがとう」だけを伝える。次につながる種まきになります。


父親自身が感じていた、本当の不安

病棟でお父さまたちとお話してきて、私が何度も聞いたことのある本音を、少しだけ紹介させてください。これらは、「関わらない」と見える背景にある、言語化されにくい不安です。

  • 「自分が何か言うと、妻にダメ出しされそうで怖い」
  • 「子どもの状態を細かく知らないから、浅いことしか言えない」
  • 「『父親らしいこと』って何なのか、実は分かっていない」
  • 「自分の親が関わってこなかったから、関わり方のモデルがない」
  • 「仕事で評価される軸では測れない世界で、どう振る舞えばいいか分からない」

これらを聞くたびに、私は「この人たちも、不器用ながら家族のことを考えているんだな」と、胸が少し熱くなります。「関わらない」のではなく「関わり方が分からない」——そこに、意外と深い溝があるのです。


一緒に取り組める、小さな一歩の例

では、具体的にどんな一歩が「関わり」になるのか。病棟で家族と話し合って決めてきた、ごく小さな取り組みの例を挙げます。大きなことでなくていいのです。

病院への同行

月1回の通院の、運転だけでも。診察室に入らなくても、待合室で一緒に待っているだけでお子さまには伝わります。帰りの車の中での、何気ない会話も大切な時間になります。

家事の分担を一つだけ増やす

お母さまの「見えない負担」は、想像以上に大きいものです。ゴミ出し、週末の夕食作り、洗濯物をたたむ——一つだけでいいので継続できるものを決めるだけで、家の空気が少し軽くなります。

子どもとの「小さな会話」を一つ持つ

深い話をしようとしなくて大丈夫です。「今日ご飯何食べた?」「この前のあのドラマ、面白かったな」——そんな軽い話で十分。会話の回数が、関係の温度を決めます。

夫婦で子どもの話をする時間を作る

子どもが寝たあとの15分でいいので、「今日の子どもの様子」を共有する。解決策を出す時間ではなく、情報を共有するだけの時間です。これだけで、お父さまが「置いていかれ感」を感じずに済みます。


全ての家族に、当てはまるわけではない

ここまで書いてきて、最後にどうしてもお伝えしたいことがあります。

この記事でお話ししてきたのは、「父親と母親が揃っているご家庭」の一つのケースにすぎません。世の中には、ひとり親のご家庭、同性のパートナーで子育てをしているご家庭、祖父母が養育者のご家庭、ステップファミリー、里親のご家庭——さまざまな形があります。

「父親が関われば家族が変わる」という話は、「父親がいない家族は変われない」ということでは全くありません。大切なのは父親という属性ではなく、「お子さまを一緒に見てくれる大人が複数いる状態」を、どう作っていくかだと、私は考えています。

ひとり親のお母さま・お父さまが、病棟で見せてくださる粘り強さと深い愛情には、私は何度も頭が下がりました。一人でも、十分にお子さまを支えていらっしゃるご家庭をたくさん見てきました。相談先・信頼できる支援者・学校の先生・親族——「もう一人の大人」は、必ずしも同居の家族でなくてもいいのです。


まとめ|「一人で頑張らなくていい」というメッセージ

冒頭のご家族の話に戻ります。お父さまが初めて面談に来られたあの雨の午後、面談室で起きたのは、派手な出来事ではありませんでした。ただ、お父さまが「朝の挨拶が返ってこなくなった」と気づいていた——その一言が、お母さまの孤独をほぐし、お子さまの安心を引き出し、家族の歯車を少しだけ動かしたのです。

  • 「来ない父親」は無関心ではなく、関わり方が分からないことが多い
  • 「来てほしい」とはっきり言葉にし、期待値を下げて伝えると届きやすい
  • 関わりは「完璧な発言」ではなく、「見ていること」「いること」で十分
  • 家族の変化は、小さな一言・小さな同席から始まる
  • 家族の形は多様。父親がいない家庭も、信頼できる「もう一人の大人」を育てていける

この記事を読んでくださっているあなたが、もしお母さまなら——一人で抱えてきたものを、少しだけ横に置いてみる夜があってもいいと思います。パートナーに伝えるのは明日でも、来週でも、来月でも大丈夫です。

もしお父さまがこの記事を読んでくださっているなら——「分からないまま、座っているだけでいい」ということを、どうか覚えておいてください。完璧な言葉はいりません。いてくださるだけで、お子さまには、必ず伝わります。

家族が変わる瞬間は、ドラマのような場面ではなく、雨の午後の静かな面談室にあったりします。あなたのご家庭にも、きっと、その瞬間が訪れますように。



「母親が全部抱える家庭」で起きていること

お父さまが面談に来られない家庭の多くで、お母さまは「自分が何とかしなければ」という強い責任感を抱えています。子どもの不調・学校との連絡・通院の手配・服薬管理・きょうだいの世話・自分の仕事——その全部を、お母さま一人が回している家庭は、決して珍しくありません。

外から見ると「しっかりしたお母さん」に見えるのですが、面談室で2人になると、表情が崩れて涙される瞬間があります。「もう、何が正解か分からなくて」「主人に話しても、結局私の話を聞き流されるだけで」「自分だけが頑張っているような気がして」——本音を口にされたとき、お母さまがどれだけ長い時間ひとりで戦ってきたかが伝わってきます。

過剰な責任感がもたらす副作用

「全部自分で抱える」状態が長く続くと、母親自身に静かな副作用が出てきます。

  • 慢性的な疲労と睡眠の質の低下
  • 子どもの小さな変化に敏感になりすぎる過剰警戒
  • 「自分が悪い」「育て方が間違っていた」という自責の繰り返し
  • パートナーへの不信感の蓄積
  • 子どもへの「期待・指示」が増え、距離が縮みすぎる
  • 仕事や家事の質の低下
  • 気分の落ち込み・不安症状の出現

病棟では、母親自身がメンタルクリニックに通い始めるケースも少なくありません。「子どものために倒れるわけにはいかない」と頑張り続けていた方が、ある日ぱたっと動けなくなる。そのときの本人の罪悪感はとても深く、回復に時間がかかります。

子どもへの影響

母親が一人で抱える状態は、子どもにも影響します。「お母さんを困らせたくない」「自分のせいでお母さんが疲れている」——そんな思いを抱えて、お子さま自身が本音を言えなくなることがあります。父親が一緒に関わってくれる状態は、母親への負担軽減という意味だけでなく、「子どもが本音を吐ける相手の選択肢」を増やすという意味でも、大きな意味を持ちます。


病棟で見てきた「父親が変わったきっかけ」3パターン

多くのお父さまが、最初は「来てくれない」立場でした。それが何かのきっかけで、面談や病室訪問に来てくださるようになる。そのきっかけにも、いくつかパターンがあります。

きっかけ1:医師から直接電話を受けたとき

「妻からの伝言」ではなく「医師から直接の連絡」になると、急に動いてくださるお父さまが多いです。主治医から「お父さまにも一度、直接お話しできればと思っています」と電話があると、仕事のスケジュールを調整して来てくださる。「妻の話だと半分くらいしか聞いていなかった」と、後で正直に語ってくださる方もいました。

これは「父親が妻を軽視している」のではなく、家庭の話を仕事モードで処理しきれないお父さまの特性に近いと感じます。職場で「上司や取引先から直接連絡が入る」と動くのと同じ反射が、家庭にも応用されているわけです。

きっかけ2:子どもの体調が急変したとき

急な入院・自傷・希死念慮の表出など、子どもの状態が大きく揺れたとき、お父さまが一気に動いてくださるケースも多いです。「これはまずい」と腹落ちした瞬間に、優先順位がパチンと切り替わる。仕事の調整、医師との面談、家族の話し合い——一気に主体的になられる方も少なくありません。

ただ、こうした「危機ベースの参加」は持続しにくいという面もあります。子どもが落ち着いてくると、また仕事中心の生活に戻ってしまうことも多い。「急性期だけ来る」のではなく、「ふだんから関わる」リズムを作ることが、回復の継続には重要です。

きっかけ3:母親が「もう無理」を伝えたとき

お母さまが、本気で「これ以上は一人では支えきれない」と伝えたとき、お父さまが動いてくださることもあります。それまで「妻が何とかしてくれる」と無自覚に依存していたお父さまが、初めて「自分も動かなければ」と気づく瞬間です。

このとき大切なのは、お母さまが「責める」のではなく「事実として伝える」こと。「あなたがやってくれないから」より、「私はもうここまで来ている。一緒に動いてほしい」と伝える形のほうが、相手の防衛反応を起こさずに済みます。


父親に「医療職と話す構え」を伝える

初めて医療職と話すお父さまの多くが、「医者は専門的だから、自分が下手なことを言ってはいけない」と緊張されています。仕事の取引先と話す感覚で、医療職にも構えてしまうのです。

家庭内で、面談に行く前に次のような共有をしておくと、お父さまの緊張がほぐれます。

  • 面談は「専門用語を使わなくていい」場であること
  • 分からないことは「分かりません」と言ってもらって構わないこと
  • 子どものことを「思い出せる範囲」で話してもらえばいいこと
  • 主治医や看護師は「父親の本音」を引き出したいと思っていること
  • 失敗してきた話・うまくいかなかった話を「責められる場ではない」こと

面談の冒頭で主治医が「お父さま、今日はお時間を作ってくださりありがとうございます。今日は何かを決める場ではなく、お父さまから見たお子さまの様子を一緒に共有させてください」と伝えてくださる時間があると、その後のお父さまの口数が大きく変わります。


父親に「学校と話す構え」を伝える

学校との連絡も、母親が一手に引き受けていることが多い場面です。学校での三者面談や、特別支援の話し合いに、父親が一度同席するだけで、学校側の対応が変わることもあります。

  • 担任との三者面談に1回でも出席する
  • 不登校支援担当の先生に父親としても挨拶する
  • スクールカウンセラーとの面談に同席する
  • 運動会・文化祭などの行事に1日だけでも参加する
  • 進路相談に父親も同席する

「学校に行く」というだけで、お父さまにとっては高いハードルです。「自分は無関心な父親と思われているかも」「先生に何を言われるか分からない」——そんな不安を抱えています。だからこそ、初めての参加では「何かを言いに行く」のではなく「ただ会いに行く」くらいの位置づけにしておくと、参加のハードルが下がります。


思春期の子どもに父親ができる関わり

思春期の子どもとの関わり方が分からない、というお父さまの声をたくさん聞いてきました。子どもが小学生のころは何とか関われていたのに、中学生になった途端、何を話していいか分からなくなった、と。

「正論」ではなく「相づち」

思春期の子どもは、正論を言われるのを最も嫌います。「お前はもっとこうした方がいい」「親としては」という言葉が出た時点で、心のシャッターが下りる。お父さまが「正しい大人」として振る舞おうとすると、関係はかえって遠くなります。

意外と効くのは、「へえ」「そうなんだ」「そういう考え方もあるか」という、ただの相づちです。お父さまの中には「相づちだけでいいのか、何かアドバイスしないと」と感じる方もいますが、思春期の子どもに必要なのは、答えではなく「聞いてくれる相手」なのです。

「共通の体験」を一つ持つ

会話のきっかけを増やすには、共通の体験を一つ持っておくのが効きます。野球・将棋・釣り・サッカー観戦・映画・ゲーム——何でもよいので、子どもと一緒に楽しめる時間を月1回くらい作る。「次の試合のチケット取ったよ」「来週の試合、見る?」と言える話題が一つあるだけで、関係の温度がぐっと変わります。

「ふだんの暮らし」を一緒にする

特別なイベントだけでなく、ふだんの暮らしを一緒にすることも大切です。一緒に夕食を食べる、一緒にコンビニに行く、一緒に犬の散歩に行く——そんな何でもない時間に、子どもがふっと本音を出すことがあります。「お父さんが家にいる時間が長い」というだけで、子どもの安心感は変わります。

「困ったときに頼っていい人」になる

思春期の子どもが本当に困ったとき、誰に相談するかは、それまでの関わりの蓄積で決まります。「お母さんには言いにくいけど、お父さんには言える」関係を作っておくと、子どもの選択肢が広がります。そのためには、ふだんから「お父さんに話しても安全」という体験を、小さく積んでおくことが必要です。


父親自身のメンタルケア

子どもの不調を支えるお父さま自身も、強いストレスにさらされています。「父親なのだから動じてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」と、自分の感情を押し殺している方も多いです。けれどそれが続くと、お父さま自身も静かに疲弊していきます。

父親のストレスサイン

  • 睡眠の質の低下(途中覚醒・早朝覚醒)
  • 飲酒量の増加
  • 仕事への集中力低下
  • イライラが家族や部下に向く
  • 体調不良(頭痛・胃痛・血圧の変化)
  • 「自分はダメな父親だ」という自責の声
  • 家にいる時間が苦痛になる

父親が自分を守るために

  • 信頼できる友人や同僚に、家族の状況を話す機会を持つ
  • 必要ならメンタルクリニックを受診する
  • 仕事と家庭の境界線を引き、休む時間を確保する
  • 趣味や運動で自分の時間を守る
  • 同じ立場の父親のコミュニティ(NPO・親の会)につながる
  • 主治医に父親としての悩みを相談してもよい

「父親が休む」ことは、家族全体を守ることにつながります。倒れる前に休む。これは仕事と全く同じです。


夫婦のコミュニケーションを取り戻す

子どもの不調が長く続くと、夫婦のコミュニケーションそのものが「子どもの話」一色になりがちです。「今日は学校どうだった」「主治医から何と言われた」「次の面談はいつ」——日常会話が報告と確認だけで終わってしまう。

そんなときに意識して取り戻したいのは、子どもの話とは別の、夫婦としての時間です。

  • 子どもが寝た後の30分、子どもの話以外で話す時間を持つ
  • 月1回でも2人だけの食事に出かける
  • お互いの仕事の話を聞く時間を意識して持つ
  • 感謝の言葉を口に出す習慣を作る
  • 愚痴をこぼされたら解決策ではなくまず聞く

夫婦のコミュニケーションが整っていると、子どもにも安心感が伝わります。「うちのお父さんとお母さんは、子どもの心配だけで動いているわけじゃない、ちゃんと二人で歩いている」と感じられること。これが思春期の子どもの安心の土台にもなります。


いろいろな家族の形のなかで

単身赴任中の父親

単身赴任で物理的に離れて暮らしているお父さまの場合、「来てもらう」までの距離がそもそも長くなります。それでも、月1回の電話・ビデオ通話、長期休みに合わせた帰省、節目のタイミングでの面談参加など、関わる接点を意識して作ることはできます。「物理的に離れている」ことが、「気持ちが離れている」ことにならないよう、家族で工夫したい場面です。

ステップファミリーの父親

再婚で新しく父親になった方は、「血のつながりがない」「踏み込んでいいか分からない」「妻と子の関係を壊したくない」という不安を抱えていることが多いです。けれど、子どもの不調を支える場面では、新しい父親であっても「安心できる大人がもう一人いる」という事実が、子どもにとって大きな意味を持ちます。最初から「父親らしさ」を急ぐ必要はありません。一緒に過ごす時間を少しずつ積み重ねていくことから、関係は育っていきます。

離別後の父親

離婚後、子どもと別れて暮らしているお父さまにも、できる関わりはあります。定期的な連絡、養育費の継続、子どもからのSOSへの応答、節目の場面での同席——別居していても「いざというとき頼れる父親」であることは可能です。離婚は夫婦の問題であって、親子の関係を必ずしも切り離すわけではない、と私は現場で何度も感じてきました。

ひとり親家庭の場合

父親または母親、どちらか一人で子どもを育てているご家庭は、もう一人の大人をどう確保するかが大切なテーマになります。同居していない祖父母、信頼できる親族、長く関わってきた支援者、スクールカウンセラー、児童相談所の担当者——「もう一人の大人」は、必ずしも血縁である必要はありません。複数の大人が緩やかにつながる「支援のチーム」を作っていくことが、ひとり親家庭でも子どもの回復を支える土台になります。


父親と子どもの「関係修復」のステップ

長く距離が空いてしまったお父さまと子どもの関係は、すぐには戻りません。「来てくれた」だけでは、子どもはまだ警戒している段階のこともあります。関係を取り戻すには、いくつかのステップを踏む必要があります。

ステップ1:存在を伝える

まずは「お父さんはここにいるよ」を伝えるだけで十分です。具体的には、毎日朝に「おはよう」と声をかける、夜に「おやすみ」と声をかける、面会日に必ず顔を出す——そんな小さな積み重ねです。会話の量より「いる」事実が大切です。

ステップ2:謝罪と承認

過去に厳しすぎる対応や、関わらなかった時間があったお父さまは、子どもへの謝罪と承認を伝えることが必要になります。「これまで仕事ばかりで、お前と過ごす時間が少なかった。ごめん」「お前が頑張ってきたこと、ちゃんと見ていなかったのを反省している」——こうした言葉は、子どもにとっては衝撃です。父親が「自分の非」を認めることで、子どもが「お父さんも変わろうとしている」と感じられるようになります。

ステップ3:共同作業

関係が動き始めたら、一緒に何かをする時間を作ります。料理・買い物・運動・修理・ドライブ——「何かを一緒に作る/動かす」体験は、対面で話すよりも自然に距離を縮めます。手を動かしている時間に、子どもがふっと本音を出すことがあります。

ステップ4:本人の自立を見守る

関係が安定してきたら、今度は「見守る」フェーズに入ります。子どもが新しい挑戦をしようとしたとき、口出ししすぎずに見守る。子どもが失敗したときも、すぐに正解を出さない。「自分で立てる父親」を育てるのは、子どもが安心して挑戦できる土台を作ることでもあります。


退院後・在宅療養での父親の役割

入院や急性期のケアが終わって、家庭に戻ってからが、本当の長い時間が始まります。退院後、お父さまに担っていただくとよい役割を、いくつか挙げます。

  • 通院の送迎と外来同席
  • 服薬の確認と副作用観察
  • 子どもの外出の付き添い
  • 母親が休めるよう家事の分担
  • 子どもの「家での居場所」を守る雰囲気作り
  • 悪化のサインに気づく観察役
  • 主治医・学校との連絡窓口を母親と分担

「分担」は、対等である必要はありません。お父さまの仕事の状況に合わせて、できる範囲で構いません。重要なのは「自分も関わっている」という意識をお父さま自身が持ち続けることです。


「父親であること」を考えなおす

子どもの不調をきっかけに、お父さま自身が「自分にとって父親であるとはどういうことか」を考えなおす機会を持つことがあります。仕事の成功・家族への経済的貢献・家庭での役割——どこに重心を置くか、改めて棚卸しする時間です。

あるお父さまは、子どもの入院を機に部署異動を申請されました。残業の少ない部署に移り、給料は少し下がったけれど、子どもと過ごす時間を確保された。「給料は下がったけど、家族との時間は増えた。今は満足している」と、後日語ってくださいました。

別のお父さまは、転職を選ばれました。長く勤めた会社を辞め、在宅勤務中心の業界に移った。生活水準は下がったけれど、家族の状態は安定した、とおっしゃっていました。

すべてのお父さまが、こんな大きな決断をする必要はありません。けれど「父親であることの優先順位」を、人生のどこかで一度棚卸ししてみる時間は、誰にでも意味があると、私は思っています。


読者のあなたへ、それぞれのメッセージ

お母さまへ

ここまでひとりで頑張ってこられたこと、本当にお疲れさまでした。「主人が動いてくれない」という言葉の裏には、たくさんの夜の孤独と、夜中に検索しては不安になった時間があったと思います。

パートナーに「来てほしい」と伝えるのは、勇気のいることです。何度も期待を裏切られてきた相手に、もう一度期待することは、想像以上に怖い。それでも、お子さまのためにと思って、もう一度声をかけてみる価値はあると、私は思います。届かないこともあるかもしれません。でも、伝えたという事実は、後から効いてくることがあります。

そして、もしパートナーに伝えるのが難しい状況なら、別の「もう一人の大人」を探してみてください。信頼できる親族、長年お世話になっている先生、地域の支援者、スクールカウンセラー——一人でなくていいのです。あなたを支える人を、複数持っていてください。

お父さまへ

ここまで読んでくださったお父さま、ありがとうございます。記事の内容に「自分のことを言われているようで耳が痛い」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。けれど、読んでくださっている時点で、もうすでに動き始めていらっしゃると、私は思います。

父親であることは、上手・下手を競う場ではありません。完璧な父親はどこにもいません。私が病棟で見てきたお父さまたちも、最初は皆「分からない・できない」と言っていらっしゃいました。それでも、ひとつだけ、できることがあります。それは「いてくれる」こと。物理的に隣にいて、子どもを見てくれること。それだけで、十分すぎるほどの意味があります。

あなたのお子さまは、お父さまに完璧な発言を求めていません。話を聞いてほしいだけ、見ていてほしいだけ、いてくれるだけでいい。そう思っているはずです。

お子さま本人へ

もし、この記事を当事者であるお子さま自身が読んでくださっているなら、伝えたいことがあります。

お父さまが面談に来ない・関わってくれないことが、ずっと寂しかったかもしれません。お父さまの背中ばかり見て、声をかけてもらえる日を待っていたかもしれません。そう思っていたことは、何も間違っていません。お子さまの感じてきた孤独は、本物です。

そして、お父さまがすぐに変わってくれるとは限りません。変わってくれたとしても、時間はかかります。だから、お父さまに依存しなくていい場所を、いくつも持っていてほしい。信頼できる先生、友達、医療職、習い事の先生、推し、ペット——あなたを支えてくれる相手は、家族の中だけにいるわけではありません。

そして、いつか、お父さまが少し変わる日が来たら。それを「遅すぎた」と切り捨てないでいてくれると、嬉しいです。父親も、不器用なまま、あなたを大切に思っています。


家族の物語は、書き換えられる

子どもの不調をきっかけに、家族が変わるご家庭をたくさん見てきました。それまで長年続いてきた家族の役割分担・関わり方が、ぱっと書き換えられる瞬間があります。

その瞬間は、派手ではありません。雨の午後の面談室、夜の病室、退院後の朝食の食卓——そんな日常の場所で、こっそり起きます。お父さまが「今日のお弁当、何にする?」と聞いた朝、子どもが「お父さんも一緒に来てくれる?」と頼んだ日、お母さまが「今日は私が早く帰る」と言えた夜。

家族の物語は、絶対ではありません。「うちはこういう家族」と思い込んでいたものが、ちょっとした言葉や行動で、別の物語に書き換わることがあります。今までの家族の歴史を否定しなくていい。これからの章を、別のページから始めればいい。そう信じています。

あなたのご家族にも、いつか、その瞬間が訪れますように。来てくれた人を責めず、来てくれない人を諦めず、それでも今日できることをひとつだけ続けていく——その先に、家族の新しい章が、必ず開いていきます。


病棟看護師が、父親に「これだけは」と願うこと

長く家族と関わる現場にいるなかで、お父さまに「これだけはぜひ知っておいてほしい」と思うことが、いくつかあります。専門用語を使わず、できるだけシンプルに書いておきます。

①「父親一人で答えを出さない」と決めておく

子どもの不調は、原因も解決策も、本来「一人の専門家でも一発で出せない」レベルの複雑さがあります。仕事で培ってきた「短時間で結論を出す力」をそのまま家庭に持ち込むと、家族の歩幅と合わなくなることがあります。「自分一人で結論を出さない」「夫婦で時間をかけて話し合う」「専門家の意見も聞きながら一緒に考える」——この姿勢が、家庭ではとても大切です。

②「妻の代理ではなく、もう一人の親」として振る舞う

面談に来てくださっても、「妻から聞いた話の繰り返し」になってしまうお父さまがいらっしゃいます。けれど、お父さまの視点・お父さまの経験・お父さまの感じ方は、母親とは違うはずです。「自分から見た子ども」を、自分の言葉で語る——それが「もう一人の親」としての貢献になります。

③「結果を急がない」ことに耐える

仕事では「成果」「進捗」「数字」が評価される世界ですが、子どもの回復は数字で測れないものです。「先週より良くなったか」「次の月にはどうなるか」——そういう問いを止めることが、家庭での父親の貢献です。「焦らないでいいよ」「ゆっくりでいいよ」と言える父親は、家族全体の落ち着きを支えます。

④「弱音を吐ける」自分をつくる

お父さまが「強くいる」ことを家族のために頑張っていらっしゃるのはよく分かります。けれど、お父さま自身が弱音を吐ける場所を、家庭の外に持っておいてほしいのです。同僚・友人・主治医・カウンセラー、信頼できる相手に「大変なんだよ」と言える場所を確保しておく。それが、家庭内での「強い父親」を続けるための土台になります。

⑤「自分の親」との関係を見直す

意外と多いのが、お父さま自身が「自分の父親との関係を整理できていない」ケースです。「自分の父親はあまり関わってくれなかった」「父親というのは家族に厳しいものだ」——そんな刷り込みが、無意識に自分の父親像にも反映されています。一度、自分の親世代の「父親像」を棚卸しして、「自分はどんな父親でありたいか」を再考してみる時間は、とても意味があります。


疾患・状況別・父親に期待される具体的な関わり

不登校のお子さまへ

不登校のお子さまに対して、お父さまが「学校に行かせよう」と圧力をかけてしまうのが、最もよくある失敗パターンです。「父親としては学校に行かせるのが責任」「将来を考えると放っておけない」という気持ちは分かりますが、不登校の子どもにとっての父親の役割は、まず「家を安心できる場所にする」ことです。

  • 朝、無理に起こさない
  • 「学校に行ったか」を毎日確認しない
  • ゲーム・スマホへの没頭を頭ごなしに否定しない
  • 子どもが起きてくる時間に合わせて、一緒に食事をする
  • 休日に「外に出よう」と無理に誘わない
  • 子どもの興味のあるものに関心を示す

発達障害のお子さまへ

発達障害のお子さまの場合、お父さまが「特性の理解」をどこまでアップデートできるかが、家族の安定を大きく左右します。妻に「お父さんも一緒に勉強してくれる」と感じてもらえることが、お母さまの孤独感を癒します。

  • 子どもの診断名・特性を、自分の言葉で説明できるようになる
  • 子どもの苦手な場面を理解し、無理させない
  • 子どもの得意な領域を一緒に伸ばす
  • 「自分の若い頃は」という比較をしない
  • 「努力すれば何でもできる」という根性論を持ち込まない
  • 発達障害関連の書籍・講演会に父親も参加する

自傷行為のあるお子さまへ

自傷行為が発覚したときの父親の反応は、子どもの今後を大きく左右します。動揺してしまうのは当然ですが、その動揺を子どもにぶつけないことが、最初の関門です。

  • 怒鳴らない、責めない、傷を強い言葉で表現しない
  • 「なぜそんなことを」という原因追求をすぐに始めない
  • 「もう二度としないって約束して」を強要しない
  • 主治医や看護師に父親としても相談する
  • 傷の手当てを、静かに一緒にする
  • 子どもが落ち着いた後に、「いつでも話を聞くよ」と伝える

摂食障害のお子さまへ

摂食障害は、特に食事の場面で家族の関わりが密になります。お父さまが「食べなさい」と強要すると、症状を悪化させます。食べることを「楽しみ」「日常」に戻していくサポートが、お父さまの役目になります。

  • 食事の量や体重に言及しない
  • 「これだけは食べて」と強要しない
  • 家族の食卓を楽しい雰囲気にする
  • 外見についてコメントしない
  • 子どもの食事ペースを尊重する
  • 食事以外の趣味の話題を増やす

思春期男子・女子と父親の距離

思春期男子と父親

思春期の男子は、父親との関係で「ライバル」と「モデル」の2つの面を同時に持ち始めます。お父さまが社会で頑張る姿を見て憧れる一方で、家庭での力関係に反発したり、父親の言うことを素直に聞けなくなったりします。

このとき、お父さまが「上から物を言う」立場を取り続けると、関係が硬直します。一歩引いて「対等な男同士」として接する姿勢に少しずつシフトしていくと、思春期男子は安心して父親と話せるようになります。スポーツ・ゲーム・社会的な話題——「子どもの興味のフィールドに父親が乗っていく」のがコツです。

思春期女子と父親

思春期女子と父親の関係は、本人の意識のなかで「距離が遠くなる」時期があります。身体的な変化や、母親との関係の濃密化で、父親が「自分のテリトリーの外」になる感覚を持つことが多いです。

このとき、お父さまが過度に踏み込もうとすると、本人の反発を強めます。一方で「もう関わらない」と諦めると、本人は「お父さんに見限られた」と感じてしまう。距離は適度に保ちつつ、「いつでも頼っていい人」として存在を保つのが大切です。

  • 身体や恋愛の話題に無理に踏み込まない
  • 「お父さんに話したくない」と言われたら引く
  • 趣味・進路など中立的な話題から関わる
  • 母親を介した間接的な関わりも大切にする
  • 本人が困ったときに無条件で味方になる姿勢を見せる

父親が読むとよい資料・参考

「子どものことを勉強したい」と思っても、何から手をつければよいか分からない、というお父さまは多いです。最初の入り口になりそうなテーマを紹介します。

  • 思春期心理学の入門書(一般向け)
  • 発達障害の理解(特に該当する場合)
  • 家族療法の基本概念
  • 愛着理論の基本
  • 子どもの権利に関する基本概念
  • 不登校・引きこもり支援の最新情報
  • 精神疾患の家族を対象とした書籍
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