本記事にはプロモーションが含まれています。
この記事の要点
- 聞かれることは10項目ほど。A4用紙1枚のメモがあれば足りる
- 自傷や希死念慮は正直に伝える。優先枠に回ることはあっても不利にはならない
- 電話で全部説明しなくてよい。詳しい背景は診察で話す
- 紹介状がなくても受診できる病院は多い
- 数か月待ちと言われても、キャンセル待ちと他の窓口の併用で動ける
今まさに自傷が止まらない、「死にたい」と口にしている、出血が続いているという状況なら、予約の電話を待たずに救急へ連絡してください。119番、よりそいホットライン0120-279-338(24時間・無料)、24時間子供SOSダイヤル0120-0-78310が使えます。
受話器を持ったまま、何をどう言えばいいのか分からなくなる。児童精神科の予約電話は、多くの保護者にとってかなり緊張する一本です。
私は2018年4月から看護師として勤務し(2か月のブランクあり)、2021年4月から児童思春期精神科病棟で働いています。この記事では、電話で聞かれること、手元に置いておくメモ、そのまま使える台本、そして予約が取れなかったときの選択肢を整理します。
なぜ児童精神科の電話は聞くことが多いのか
普通の小児科なら、名前と症状を伝えれば予約が取れます。児童精神科でそれ以上のことを聞かれるのには理由があります。
ひとつは、緊急度の判断です。自傷や希死念慮がある場合、通常の待機列とは別に対応する必要があります。もうひとつは、担当医の割り振りです。発達の評価が中心なのか、気分の不調なのかで、適した医師や必要な検査枠が変わります。そして初診に長い時間を取るため、事前にある程度の情報が要ります。
つまり、質問が多いのは審査ではなく、適切な枠に入れるための確認です。答えにくいことを聞かれても、身構えなくて大丈夫です。
電話で聞かれる10項目
- 子どもの基本情報——氏名(フリガナ)、生年月日、性別、学年
- いま困っていること——「学校に行けなくなって2か月」など、ひと言で
- いつからか——きっかけになった出来事があれば一緒に
- 受診歴と服薬——過去にかかった医療機関、飲んでいる薬。お薬手帳を手元に
- 紹介状の有無——なくても受診できる病院は多いので、ここで諦めないでください
- 学校の状況——完全に行けていない、遅刻早退、保健室登校など、そのまま伝えて構いません
- 家族構成——同居している家族、きょうだいの年齢。子どもの環境を知るための質問です
- 緊急性のサイン——自傷の有無、「死にたい」という発言の有無
- 受診できる曜日・時間——平日昼間しか枠がない病院が多いです。第2希望まで用意を
- 保険証や受給者証——健康保険証、子ども医療費の受給者証など
8番目については、正直に答えてください。「ある」と伝えることで優先枠に入ることはあっても、断られる材料にはなりません。ここを隠すと、必要な速度で診てもらえなくなります。
手元に置くメモ|A4用紙1枚で足りる
電話をかける前に、次の項目を書き出しておくと落ち着いて話せます。スマホのメモでも構いません。
- 氏名(フリガナ)・生年月日・学年
- いちばん伝えたいことを1行で
- いつから/きっかけ/頻度
- 過去の受診先・現在の処方
- 紹介状の有無
- 登校の状況(期間も)
- 同居家族の構成
- 自傷・希死念慮・不眠・食事量の変化
- 受診できる曜日と時間(第2希望まで)
- 保険証・受給者証の種類
全部埋める必要はありません。空欄があっても、電話口で「分かりません」と答えて構いません。ほとんどの病院が「分かる範囲で」と前置きしてくれます。
電話の台本|3つのパターン
A. 不登校で受診したい
「中学2年の子どものことで、初診の予約をお願いしたくてお電話しました。2か月ほど学校に行けておらず、家でも口数が少なくなっています。朝起きられず、頭痛や腹痛を訴えることが増えました。精神科にかかったことはなく、紹介状もありません。担任とスクールカウンセラーには相談していて、医療につないだほうがいいと言われています」
ここまで伝われば、あとは病院側が必要なことを聞いてくれます。自傷や希死念慮を確認されたら、「先週『消えてしまいたい』と言いました」のように、事実だけ短く答えてください。
B. 自傷を見つけて急いでいる
「中学3年の子どものことで急ぎ相談したくてお電話しました。昨夜、腕の傷を見つけまして、本人に聞くとここ数週間続いていたようです。すぐに受診できる枠はありますか」
傷の状態を聞かれるので、「浅い傷が複数、出血は止まっています」のように答えます。緊急度が高ければ、初診待ちの列を飛ばして優先枠に入れてもらえることがあります。傷が深い、出血が止まらない、希死念慮が強いという場合は、予約を待たずに救急に相談してください(自傷への対応)。
C. 発達面の評価を希望する
「小学3年の子どものことで、発達面の評価をお願いしたくご相談です。落ち着きのなさと、集団での指示の入りにくさが気になっていて、担任からも一度専門の先生に、と言われました。療育や検査の経験はありません。学校から書面はもらえそうです」
この場合、初診の後に心理検査が別日で組まれるのが一般的です。「学校に出す書類がほしい」といった目的があれば、最初の電話で伝えておくと振り分けがスムーズになります(WISCの記事)。
言いすぎないコツ
全部を伝えようとすると、かえって要点がぼやけます。電話は予約を取るための情報共有と割り切ってください。家庭の細かい経緯や夫婦間の悩みは、外来で医師に直接話すほうが正確に伝わります。
- いちばん困っていることは1〜2文で
- 期間は「いつから」を一言で
- 緊急性のサインは事実だけ短く
この3つを押さえれば、あとは聞かれたことに「はい」「いいえ」「分かりません」で答えれば足ります。うまく話せなかったと落ち込む必要はありません。電話口のスタッフは、断片から必要な情報を拾うことに慣れています。
「数か月待ち」と言われたとき
初診までの待ち期間は、地域・医療機関・時期によって大きく異なります。ここで止まってしまう家庭が多いのですが、打つ手はあります。
- キャンセル待ちを申し込む——空きが出たときに連絡をもらえるか確認します
- 複数の病院に同時に電話する——1か所の返事を待つ必要はありません
- 紹介状を用意する——かかりつけの小児科から紹介してもらうと、受け入れが早まることがあります
- 小児科・心療内科も検討する——身体症状が中心なら、まず小児科で診てもらう道もあります(小児科か児童精神科か)
- 公的な相談窓口を並行して使う——スクールカウンセラー、自治体の教育相談、精神保健福祉センター。待っている間の相談先になります(活用のしかた)
そして、待っている間に状態が急変したら、遠慮なく病院に再度連絡してください。「予約時より悪化しています」と伝えることで、枠が前倒しになる場合があります。
電話が苦手な人へ
電話そのものが強い負担になる方もいます。その場合、次の方法があります。
- web予約や問い合わせフォームがある病院を選ぶ
- メモを見ながら話す(読み上げても問題ありません)
- もう一人そばにいてもらう
- スクールカウンセラーや相談員に、間に入ってもらう
言葉が出にくい場面での工夫としては、筆談という方法もあります。誰が電話するかも自由です。父親でも、祖父母でも構いません。高校生以上なら本人がかけるケースもあります。実際に受診する保護者が誰かは、電話の段階で伝えておくとスムーズです。
電話から受診当日までにやること
予約が取れたら、当日までにいくつか準備しておくと、初診の時間を有効に使えます。
- 困っていることを時系列で書き出す(1枚で十分です)
- 睡眠・食事・登校の記録を数日分つける
- 学校からもらえる書面があれば用意する
- 本人にどう説明するかを決める
- 母子健康手帳(乳幼児期の発達を聞かれることがあります)
本人への伝え方は迷うところです。「病気だから」ではなく、「最近しんどそうだから、力になってくれる人に会いに行く」といった説明のほうが、受け入れられやすい傾向があります。初診で何を聞かれるかは初診チェックリストに、受診全体の流れは児童精神科のかかり方にまとめています。
電話で泣いてしまった保護者の話
※以下のエピソードは、個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化しています。
予約の電話で、症状を説明している途中に泣き出してしまった保護者がいました。ご本人は後で「情けなかった」と話していましたが、電話を受けた側の受け止め方は違います。ここまで抱えてきた期間の長さが伝わるからです。
この電話は、子どものことを話しているようで、実は保護者にとって「もう自分たちだけでは無理だ」と認める場面でもあります。そこにたどり着くまでに、たいてい何か月も悩んでいます。うまく話せなくて当然です。
電話をかけたこと自体が、支援につながる一歩です。整理して話せたかどうかは、本題ではありません。
よくある質問
Q1. 本人に内緒で電話してもいいですか
予約の段階では問題ありません。ただし受診の前には必ず伝えてください。当日いきなり連れて行くと、その後の治療への抵抗が強くなります。
Q2. 紹介状がないと診てもらえませんか
紹介状なしで受診できる病院は多くあります。ただし大きな病院では、紹介状がある方が優先されたり、別途費用がかかったりします。電話で確認してください。
Q3. 保護者だけで先に相談できますか
できる病院もあります。本人が受診を拒んでいる場合、この形から始めるのが現実的です。電話の時点で「まず親だけで相談したい」と伝えてみてください。
Q4. 費用はどのくらいかかりますか
健康保険が使え、多くの自治体では子ども医療費の助成があります。通院が続く場合は自立支援医療という制度で負担を軽くできることがあるので、主治医に相談してください。
Q5. どの病院を選べばいいか分かりません
通いやすさを優先してください。治療は1回では終わりません。遠方の評判のよい病院より、続けて通える距離の病院のほうが、結果的に支えになります。
今夜これだけ
紙を1枚出して、「いちばん困っていること」を1行だけ書いてください。電話はそこから始められます。
看護師視点でのまとめ
予約の電話で完璧に説明する必要はありません。聞かれることは決まっていますし、答えられない項目があっても構いません。伝えるべきことは、いちばん困っていること、いつからか、そして緊急のサインがあるかどうか。この3つだけです。
そして、待たされたとしても、そこで止まらないでください。キャンセル待ち、複数の病院、公的な相談窓口。使える手は複数あります。電話をかけた時点で、もう半分は進んでいます。
参考にした公的情報・一次情報
記事内の制度・相談先・健康情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。


コメント