LD(学習障害)の子の学習サポート|読み書き・計算が困難な子を家庭で支える具体策【児童精神科看護師が解説】

pic404 発達障害・特性理解

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「どんなに練習しても、教科書の音読でつまずく」
「ノートの文字がマス目からはみ出てしまう」
「九九がどうしても覚えられない」
――お子さまの学習の様子を見ながら、「うちの子は頑張っているのに、どうして結果に結びつかないんだろう」と胸が苦しくなる瞬間はありませんか。

児童思春期精神科の病棟で5年間、発達特性のあるお子さまに寄り添ってきて感じたのは、LDは“努力不足”と誤解されやすく、子ども自身が一番傷ついているということ。読み書き・計算の困難は、怠けや知能の問題ではなく、脳の情報処理の偏りによるものです。

この記事では、LDをディスレクシア(読字)・ディスグラフィア(書字)・ディスカリキュリア(計算)の3タイプに分け、家庭での具体策・学校連携・医療相談のタイミングまでを、看護師視点でまとめました。

この記事を読むと、次のことが分かります。

  • LD(学習障害)とは何か、3つのタイプの違い
  • 家庭で気づけるサインと、学年ごとの典型的な困りごと
  • タイプ別の具体的な家庭サポート(読字・書字・計算)
  • 宿題との向き合い方と、学校に合理的配慮を相談するときのポイント
  • 医療機関・教育相談に繋ぐタイミングの目安

この記事を書いている私について

はじめまして、星野レンです。看護師歴8年、うち5年間は児童思春期精神科の病棟で、不登校・発達特性・二次障害を抱えるお子さまとご家族のケアに携わってきました。診断・治療は医師・心理士の領域ですが、「医療にかかる手前で家庭でできる寄り添い方」を偏りなくお伝えすることを大切にしています。


LD(学習障害)とは|知的発達に遅れはないが特定領域だけ困難

LD(Learning Disabilities/限局性学習症)は、全般的な知的発達に遅れはないのに、「読む・書く・計算する・推論する」など特定領域だけが著しく困難な状態を指します。医学的にはDSM-5で「限局性学習症」と呼ばれます。

  • 知的能力は平均かそれ以上で、会話や理解力は年齢相応
  • 困難は脳の情報処理の得意・不得意の偏りから生じ、努力不足ではない
  • ADHD・ASDと併存することが多い

病棟では「授業は理解しているのに文章問題が読めない」「図形は得意なのに文字を書くのが極端に遅い」というケースが多くありました。理解力とアウトプットの力にギャップがあるのがLDの特徴です。

LDの有病率は、文部科学省の調査では公立小中学校の通常学級に在籍するお子さまの約4.5%に学習面の著しい困難が見られると報告されています。30人クラスなら1〜2人はいる計算で、決して珍しいものではありません。それでも気づかれにくいのは、「努力不足」「集中力がない」「やる気がない」と誤解されやすいから。家族が早めに「もしかして」と気づくことが、お子さまの自尊心を守る大きな一歩になります。

LDが他の発達特性と異なる点として、知能検査では大きな偏りが出にくく、本人の困難が「見えにくい」ことが挙げられます。会話は普通にできて、年齢相応の理解力を持っているお子さまが「読めない・書けない・計算できない」と訴えると、周囲は「ふざけている」「サボっている」と受け取りがち。これがLDのお子さまにとっての最大の苦しみです。


3つのタイプ(ディスレクシア・ディスグラフィア・ディスカリキュリア)

LDは困難が現れる領域で3タイプに分かれます。1人に複数タイプが重なることもあります。

タイプ主な困難家庭サポートの方向性
ディスレクシア(読字障害)文字が歪んで見える/読み飛ばす/音読が極端に遅い/字と音が結びつきにくい音声読み上げ・文字サイズ調整・フォント工夫
ディスグラフィア(書字障害)マス目からはみ出る/鏡文字/書き順が定着しない/書くと極端に疲れるタブレット入力・PC学習・書字量の調整
ディスカリキュリア(算数障害)数の概念が掴みにくい/九九が覚えられない/繰り上がりでつまずく/文章題が解けない具体物・図解・無学年式教材で戻って学び直し

どのタイプも、「できないから練習量を増やす」対応はかえって自己肯定感を下げます。タイプに合った代替手段(音声・タブレット・図解)を用意することが、家庭サポートの出発点です。

3つのタイプは独立した特性ではなく、それぞれが重なることがよくあります。例えば、ディスレクシアのお子さまは、文字が読めない結果として「文章題が解けない」という形でディスカリキュリアの症状を見せることもあります。また、ディスグラフィアのお子さまは「書くこと自体が疲れる」ため、計算問題で間違いを多発することもあります。家族としては、タイプを厳密に区別するより、本人の困りごとを丁寧に観察することが大事です。


LDの子のサインを見逃さない(小1〜中学生までの典型的困りごと)

LDは本格的な学習が始まる小1〜2年で気づかれることが多い特性です。学年別に典型的なサインを整理します。

小学校低学年(1〜2年生)

  • ひらがなを何度書いても覚えられない/鏡文字が続く
  • 音読で同じ行を2回読む、行を飛ばす
  • マス目からはみ出す/マス目に入らない
  • 数の大小や「いくつ」の概念が掴みにくい
  • 九九の暗唱ができない、数字を見ても量としてイメージできない

小学校中学年(3〜4年生)

  • 漢字がどうしても定着しない/テストで漢字だけ白紙
  • 繰り上がり・繰り下がりで混乱する
  • 筆算の桁ずれが多い
  • 本人の話す内容は豊かなのに、書くと極端に短くなる

小学校高学年〜中学生

  • 教科書の文章題が「読めない」ため解けない
  • ノートを取るのが追いつかない
  • 「勉強嫌い」が強くなり、登校しぶりや頭痛・腹痛の訴え
  • 自信をなくし、「どうせ自分はバカだから」と口にする

病棟では、LDに気づかれないまま高学年で不登校・抑うつを発症し、そこで特性が判明するケースもありました。「怠けている」と叱られ続けた経験が、二次障害の引き金になることを覚えておいてください。

就学前にも、実は予兆があることがあります。文字に興味を示さない、お絵描きで線が不安定、形の認識が苦手、しりとりが続かない(音の操作が苦手)など。「学習が始まってから」では気づきが遅れることがあるため、就学前から本人の様子を見ておくと、小学校入学後の対応がスムーズになります。


ディスレクシア(読字)の家庭サポート

読字困難は「文字と音の結びつき」「視覚的な情報処理」が脳内で連動しにくいことで起こります。「耳から入る情報」に切り替えるのが最大のコツです。

① 音声読み上げを日常に取り入れる

教科書や本を「読む」のではなく「聴く」に切り替えます。iPhone・iPadの「読み上げコンテンツ」機能で自動読み上げができます。デイジー教科書は文字と音声を同時提示でき、申請すれば無料で利用可能です。

② 文字の見やすさを整える

  • 文字サイズを大きく(16〜18ポイント以上)
  • 行間を広めに
  • UDフォント・ディスレクシア向けフォントを試す
  • 紙の色を少しクリーム色にする(白は眩しく感じる子も)

③ 音読練習は「量より質」に

「10回読みなさい」は逆効果。短い文章を指でなぞりながら、親子で交互に読む方法で成功体験を積み重ね、読めた箇所には「読めたね」と具体的に声をかけます。

④ 「文字が見える世界」を理解する

ディスレクシアのお子さまには、「文字が動いて見える」「ぼやけて見える」「他の行と混ざる」と訴える方もいます。本人にとっての見え方を聞いてみると、対応のヒントが見えてきます。「線で区切ったほうが読みやすい?」「指でなぞるとどう?」と一緒に試行錯誤するプロセスが大事。

⑤ オーディオブックの活用

Audible、audiobook.jp など、本を聴くサービスを取り入れる。読書感想文の課題本も、音声で聴いてから感想を書く形にすると、本人の表現力が解放されます。「読む」ことに苦労する分、「聴く」ことで本の世界を楽しめるようにする工夫を。

⑥ 漢字学習の工夫

漢字は「形」と「音」と「意味」を結びつける作業。ディスレクシアのお子さまには、ストーリーで漢字を覚える方法(「○○漢字スキル」など)が向きます。「木が3つ集まると森」「人が止まって休む」など、絵やストーリーで結びつけると定着しやすくなります。


ディスグラフィア(書字)の家庭サポート

書字困難は「手先の微調整」「文字の形の記憶」「書き順の手順化」など複数要素が絡みます。「書く」以外のアウトプット手段を確保すると、学習の中身に集中できます。

① タブレット・PC入力を早めに導入する

「手書きにこだわらなくても学習は成立する」という発想の転換が大切です。iPadのキーボード入力・フリック入力・音声入力を試すと、書くことに疲れて内容が頭に入らなかったお子さまが、驚くほどスムーズに考えを整理できることがあります。

② 書く量そのものを減らす

  • 漢字の書き取りは「1字5回」など量を減らして回数より定着重視
  • ノートはプリントを貼る、写真を撮る方式でもOK
  • 黒板のノート写しは、写真撮影の許可を学校に相談

③ 手先の疲れやすさに配慮する

鉛筆を強く握りすぎる・筆圧が安定しないお子さまには、太めの鉛筆・三角形の鉛筆・グリップ補助具を試してみてください。書くこと自体がしんどいと、勉強全体が嫌いになってしまいます。

④ 音声入力で「書く」を「話す」に

iPad、スマートフォン、Google ドキュメントなどには高精度の音声入力機能があります。話した内容が文字になることで、「書きたくても書けない」状態から解放されるお子さまも。作文や日記、レポートに活用できます。

⑤ マス目・罫線の工夫

マス目が大きいノート、線が薄いノート、罫線の色を変えたノートなど、本人が書きやすいものを試す。市販のノートが合わなければ、自作で線を引いた紙を使うのも手。「書く」環境を整えるだけで、お子さまの負担が大きく減ります。

⑥ ノート提出の代替手段

学校のノート提出にこだわる必要はありません。プリント学習、タブレット学習、音声録音など、本人が「学んだ証拠」を残せる方法を学校と相談を。先生によっては「ノートを書かなくてもOK」と認めてくれることも増えています。


ディスカリキュリア(計算)の家庭サポート

計算困難は、数が「量」としてイメージできないことに根っこがあることが多いタイプです。暗記ではなく、具体物や図を使って「数の感覚」を育て直す必要があります。

① 具体物と図解で「量」を実感する

ブロック・おはじき・お金のおもちゃなど、手で触って数えられる教材を使います。「3+4=7」を数字だけで理解しようとせず、ブロック3個と4個を合わせて数える体験を重ねると、少しずつ数の感覚が育ちます。

② 無学年式のタブレット教材で戻って学び直す

小4でつまずいていても、根っこは小2の繰り上がりにあることがあります。学年にしばられず、本人のつまずきポイントまで戻れる無学年式教材(RISU算数、すららなど)は、ディスカリキュリアのお子さまと相性が良いと感じます。戻って学び直すことに、親も子も罪悪感を持たないでください。

③ 九九や暗記は「使いながら覚える」

九九の暗唱が苦手なお子さまには、九九の一覧表を机に貼り、見ながら計算してOKというルールにしてみてください。「使っているうちに自然に覚える」経験ができると、計算への苦手意識が和らぎます。

④ お買い物で数の感覚を育てる

スーパーでのお買い物は、最高の算数教材。「100円のおやつ3つでいくら?」「1000円札で買ったらおつりは?」と、生活の中で数を扱う機会を増やす。お小遣いを実際の硬貨で渡し、自分で使う体験を通じて、お金と数の関係を理解していく。

⑤ 文章題は絵で表す

文章題が苦手なお子さまには、問題文を読みながら絵を描く方法が有効。「リンゴが5個ありました」と読んだら、リンゴを5個描く。「3個食べました」と読んだら、3個に×印を入れる——絵で考えると、数の関係が見えやすくなります。

⑥ 時計・カレンダーの工夫

ディスカリキュリアのお子さまは、時計やカレンダーの読み取りも苦手なことが。デジタル時計の併用、24時間カレンダーの活用、「あと何分」を視覚化するタイマーアプリなど、日常生活でのサポートも工夫できます。


宿題との向き合い方(減免・代替手段の相談)

LDのお子さまにとって、一律の宿題は罰ゲームのように重荷になることがあります。毎晩の宿題バトルでご家庭の雰囲気が悪くなるなら、宿題の「量」や「やり方」を学校に相談してみてください。

  • 漢字ドリルの量を半分にしてもらう
  • 音読カードを「聴き読み」に置き換えてもらう
  • 計算ドリルをタブレット教材の記録で代替してもらう
  • 宿題に使う時間の上限(例:1日30分まで)を家庭で決める

「宿題ができない=怠けている」ではなく、「このやり方では本人の力を発揮できない」という視点で相談すると、先生にも伝わりやすくなります。

宿題バトルは、家族関係を壊す危険なゾーンです。「やらせなきゃ」と親が必死になるほど、本人は萎縮し、家庭が安らげる場所でなくなっていきます。「宿題は本人の課題」と一線を引き、できない時は学校と相談する——家族が燃え尽きないための線引きも、長期戦には欠かせません。


学校との連携(合理的配慮・iPad・音声読み上げ)

2024年4月から、公立・私立問わず学校にも「合理的配慮」の提供が法的に義務化されました。診断書がなくても、本人や保護者からの申し出があれば、学校は可能な範囲で配慮を検討する必要があります。

相談できる配慮の例

  • テストの時間延長(1.3倍程度)
  • テスト問題の読み上げ・ルビ振り
  • 解答方法の変更(手書き→PCやタブレット入力)
  • 板書を写真で撮る許可
  • iPadなどICT機器の持ち込み許可
  • 別室受験・個別支援

相談の進め方

まずは担任の先生に「家庭で困っていること」を具体的に伝え、特別支援教育コーディネーター・スクールカウンセラー・校長先生へと話を広げていきます。一度で完璧な配慮を求めようとせず、お子さまの様子を見ながら少しずつ調整する姿勢が大切です。

サポートブックの作成

本人の特性、効果のあった配慮、避けてほしい関わりをまとめた「サポートブック」を作成し、進級・進学のタイミングで新担任に渡す。口頭での説明より、文書で残す方が確実に情報が引き継がれます。

定期的な面談を設ける

担任との面談を、学期に1回程度設けるのが理想。本人の様子、効果のある配慮、変えたい配慮——定期的にすり合わせることで、本人の成長に合わせた支援ができます。

学校に「困った」を共有する

「家でこんなことに困っている」「本人がこう言っている」——家での様子を、学校に積極的に共有する。学校では見せない一面を伝えることで、先生の本人理解が深まります。


医療・教育機関に繋ぐタイミング

「うちの子はLDかもしれない」と感じたとき、どこに相談すればよいか迷われる方が多いです。次のような目安でご検討ください。

  • 学校のスクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター:まず最初の相談窓口。費用もかからず気軽に
  • 自治体の教育相談センター・発達支援センター:学習面の詳しい検査(WISC等)も受けられる
  • 小児神経科・児童精神科・発達外来:診断や診断書の発行、併存するADHD・ASDの評価
  • 民間の発達支援・放課後等デイサービス:タイプに応じた療育的サポート

次のようなサインがあるときは、早めに専門機関へ相談することをおすすめします。

  • 学校に行きしぶる/腹痛・頭痛を頻繁に訴える
  • 「死にたい」「消えたい」といった発言がある
  • 自分を傷つける行動(髪を抜く、爪を噛むなど)が続く
  • 笑顔が減り、好きだった遊びにも興味を示さなくなった

学習困難の背景に二次的な抑うつや不安が重なっているときは、LDの対応だけでなく、こころのケアも並行して必要です。医療機関にかかることは、決して「大げさ」ではありません。


病棟で見てきたLDの3ケース

守秘義務に配慮し一般化したケースとして、3つのパターンを紹介します。LDのお子さまが、どのように追い詰められ、どのように回復していくか——病棟での体験から、家族として大事にしたい姿勢を学べます。

ケース1:高学年で抑うつを発症した小6男子

小学校低学年から「ノートが取れない」「字が下手」と言われ続けていたお子さま。家でも「もっと頑張れ」「練習しなさい」と促され、自宅でも泣きながら宿題をしていました。小6になり、「死にたい」と発言したことで入院。検査でディスグラフィアと判明し、それまでの困難が「努力不足」ではなかったことが分かりました。

入院中、本人にiPadを使ってもらったところ、「こんなに自分の頭の中を整理できるなんて」と泣きながら話してくれたのが印象的でした。退院後は、学校と連携してiPad持ち込みを認めてもらい、書くストレスから解放されて学習意欲も戻ってきました。

ケース2:ディスレクシアと診断された中2女子

「教科書が読めないんです」と訴えた中2のお子さま。会話の力は年齢相応で、本人の感受性も豊か。でも、テスト問題が読めずに点数が取れず、自尊心が崩れていました。デイジー教科書、オーディオブックを活用し、テストでは読み上げの配慮を受けるようになって、徐々に「自分にもできる」を取り戻していきました。

退院後は通信制高校に進学し、文字を音声で聴く形で学習を続けています。「読めなくても学べる」という体験が、本人の人生を変えました。

ケース3:ディスカリキュリア+ADHDの小4男子

計算が極端に苦手で、九九が全く覚えられないお子さま。ADHDも併存しており、注意力の問題で計算ミスも多発。学校では「ふざけている」「サボっている」と叱られ続け、登校しぶりが始まっていました。

入院後、ADHDの治療と並行して、無学年式の算数教材で小1まで戻って学び直しを開始。具体物を使った学習で、少しずつ「数の感覚」が育っていきました。退院時には、本人が「算数も意外と楽しいかも」と言えるまで回復。


LDと他の発達特性との併存

LDは単独で起きることもありますが、ADHD、ASD、不安症、抑うつなどと併存することが多くあります。重複している場合は、それぞれにアプローチする必要があります。

LD+ADHD

LDのお子さまの約30〜50%にADHDが併存するとされます。「読み書きが苦手」+「集中できない」が重なると、学習面の困難が二倍になります。それぞれの特性に対応した支援が必要で、薬物療法(ADHDの治療薬)が学習面の改善にもつながることがあります。

LD+ASD

ASD(自閉スペクトラム症)と併存する場合、「読み書きの困難」+「対人コミュニケーションの困難」が重なります。文章題で、文字も読みにくく、文脈も理解しにくい状態になることがあります。視覚支援(絵、図、表)を活用しながら、両方の特性に対応していく必要があります。

LD+不安症

LDの困難が長期化すると、「また失敗するのでは」「みんなにバカにされるのでは」という不安症が併発することがあります。学習面の支援だけでなく、心理療法・薬物療法での不安への対応も並行して必要に。

LD+抑うつ

「自分はバカだ」「どうせ何をやってもダメだ」という自己否定感が深まると、抑うつ状態に陥ることがあります。これは二次障害として、LDの長期化によって生じることが多いパターン。早めに心理的なケアを始めることが、抑うつの予防になります。

LDと睡眠の問題

LDのお子さまは、学習のストレスから睡眠の問題を抱えることもあります。寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝起きられない——睡眠衛生を整えることが、学習面の改善にもつながります。


LDのお子さまへの声かけ集

家庭での何気ない声かけが、LDのお子さまの自己肯定感に大きな影響を与えます。NGとOKの両方を整理しました。

NGな声かけ

  • 「もっと頑張れば読めるよ」
  • 「みんなはできるのに、なんでできないの?」
  • 「練習が足りないんじゃない?」
  • 「集中してれば、ミスしないでしょ」
  • 「これくらい簡単じゃない?」
  • 「○年生なんだから、これくらいできて当然」

OKな声かけ

  • 「ここまで頑張ったね、本当にすごいよ」
  • 「あなたのやり方で、一緒に考えていこう」
  • 「この方法はどう?他にいい方法あるかな?」
  • 「疲れたら休もうね、無理しないで」
  • 「あなたは、これがすごく得意だよね」
  • 「分からなくても、聞いてくれて嬉しいよ」

「努力」を認める言葉

「結果」より「プロセス」を認める言葉がけが大事。「テストの点数」ではなく、「テスト勉強を頑張った姿勢」を認める。「正解できた」より、「考えようとした努力」を評価する。これだけで、本人の自己肯定感が育ちます。

「比較」しない言葉

「お兄ちゃんは」「友達は」「学年の平均は」——比較はLDのお子さまを追い詰めるだけ。本人の今日と昨日を比較する形で、「昨日より、ここが進んだね」と本人だけの成長を見つめる。


LDの子の自己肯定感を育てる

LDのお子さまは、学校での失敗体験を繰り返しやすく、自己肯定感が下がりがち。家庭での関わりで、自己肯定感を支えていくことが、回復の基盤になります。

得意分野を伸ばす

LDのお子さまは、特定領域は苦手でも、それ以外の分野では平均以上の力を発揮することが多い。絵、音楽、運動、工作、料理、プログラミング、ゲーム——本人の得意分野を見つけて伸ばす。「これが自分の強み」と感じられる経験が、苦手を補う力になります。

「あなたは大丈夫」を伝える

「あなたはあなたで大丈夫」「読み書きが苦手でも、あなたの価値は変わらない」——存在そのものを認めるメッセージを、繰り返し伝える。条件付きの愛ではなく、無条件の受容が大事。

成功体験を積み上げる

本人にとって「できた!」と感じられる場面を、意識的に作る。難易度を下げた課題、本人の興味分野、家のお手伝い——小さな成功体験を積み上げることで、「自分にもできる」が育ちます。

「失敗してもいい」を伝える

失敗を恐れる気持ちが強いお子さま。「失敗してもいいよ」「やってみることが大事」と、失敗への寛容な姿勢を家族が見せる。親自身が「失敗しても気にしない」姿を見せると、本人もリラックスできます。

LDを「個性」として伝える

本人が小学校高学年以上になったら、LDのことを「個性の一つ」として説明していく。「あなたには、こういう特徴があるんだよ」「だから、こういう工夫が必要なんだ」と理解できると、本人の中で「自分はバカ」ではなく「自分には特性がある」と認識が変わります。

同じ特性を持つ著名人を紹介

ディスレクシアの著名人として、トム・クルーズ、スティーブン・スピルバーグ、トーマス・エジソンなどが挙げられます。同じ特性を持って活躍している人がいると知ることで、本人の希望につながります。


父親の関わり方

LDの子の学習支援は、母親が中心になりがちですが、父親の関わりも非常に重要です。父親ならではの視点や役割を活かしていきましょう。

父親の趣味と学習を結びつける

釣り、DIY、料理、車——父親の趣味の中に、学習要素を取り入れる。釣りなら魚の種類を絵で覚える、DIYなら長さの計算、料理なら分量の計算など。「楽しい体験」の中で学べると、本人の苦手意識が和らぎます。

「結果」より「楽しさ」を重視

父親が「結果」を求めすぎないこと。「テストの点数」より「一緒に勉強した時間が楽しかった」を大切にする。父親が穏やかな関わりを見せると、本人もリラックスできます。

母親の負担を分担

毎日の宿題サポート、学校への連絡、通院の付き添い——母親に集中しがちな役割を、父親も分担する。「お父さんとの宿題タイム」を作るのも有効。

父親もLDを学ぶ

父親自身が、LDに関する本を読んだり、講演に参加したり、医療者の面談に出たりする。「お父さんもちゃんと知ろうとしてくれている」という事実が、本人と母親の安心感につながります。


兄弟姉妹への配慮

LDの子に兄弟姉妹がいる場合、その子たちへの配慮も必要。「特別扱い」と感じたり、「自分も支えなきゃ」と過剰な責任感を抱くことがあります。

年齢に応じた説明

「お兄ちゃん(お姉ちゃん)は、字を読むのが苦手なの」「これは脳の特徴で、本人が悪いわけじゃないんだよ」と、年齢に応じてシンプルに説明。「病気」ではなく「特性」として伝える。

兄弟一人ひとりの時間を確保

LDの子に時間がかかる分、他の兄弟との「二人だけの時間」を意識的に作る。一緒に買い物に行く、料理をする、散歩する——兄弟が「自分も大切にされている」と感じる時間が必要。

「比較」しないルール

「○○ちゃんはできるのに」と兄弟を比較しないこと。LDの子も、できる兄弟も、それぞれの個性を持った大切な存在として尊重する。比較は本人だけでなく、家族全員を疲弊させます。

兄弟が困った時の相談先

兄弟が「自分も誰かに聞いてもらいたい」と感じる時のために、相談先(スクールカウンセラー、医療機関のソーシャルワーカーなど)を用意しておく。兄弟もまた、家族の中で支えられる存在です。


受験・進路選択でのLD

LDのお子さまの受験・進路選択は、本人の特性に合った環境を選ぶことが何より大事です。

中学受験の検討

LDの程度によっては、公立中学では受けられない配慮を私立中学で受けられる場合もあります。一方、受験勉強の負担が大きすぎる場合もあるため、本人の状態を見ながら判断を。

高校選び

全日制高校だけでなく、通信制高校、サポート校、定時制高校など、選択肢は広がっています。「全日制が当たり前」と思い込まず、本人に合った環境を選ぶ。

受験での合理的配慮

大学入学共通テストでも、LDのお子さま向けの合理的配慮(時間延長、問題の拡大、別室受験など)を申請できます。希望する大学にも、合理的配慮の問い合わせを。

大学・専門学校の選択

大学・専門学校の中には、LDのお子さま向けの支援室を設置しているところもあります。入学前に、支援体制を確認することが重要。

「進学=唯一の道」ではない

本人の希望次第ですが、進学だけが選択肢ではありません。職業訓練校、技能取得、本人の興味分野での就業など、本人の強みを活かせる道を、家族で一緒に考えていく。


大人になったLD当事者の声

LDを経験して大人になった方々の体験談から、家族として大事にしたい姿勢を学べます。

「親が信じてくれたから」

「親が『あなたなら大丈夫』と信じ続けてくれたから、自分を諦めずに済んだ」という声は多い。親の信念は、本人の核になります。

「ICT機器が救いだった」

「iPadに出会って、人生が変わった」「音声入力で、自分の考えを表現できるようになった」——ICT機器による代替手段が、LDの当事者の人生を大きく変えています。

「得意分野で活躍できている」

絵、デザイン、音楽、料理、プログラミング、起業——LDのお子さまの中には、得意分野で大きく活躍されている方も多くいます。「読み書きが苦手=人生詰む」は誤解で、自分の強みを活かせる場所を見つけることが大事。

「同じ特性の仲間に出会えた」

大人のLD当事者のコミュニティに参加して、「自分だけじゃない」と知れたことが大きな転機になった、という声も。SNSや当事者団体を通じて、仲間とつながる機会が増えています。


LDの支援を受けるための制度

LDのお子さまが利用できる、公的な支援制度を知っておきましょう。

特別支援教育・通級指導教室

通常学級在籍のまま、週1〜数回、個別指導を受けられる「通級指導教室」。LDのお子さまの学習支援に適しています。学校・教育委員会に相談を。

放課後等デイサービス

発達障害の診断があれば、放課後等デイサービスの利用が可能。LDのお子さま向けの学習支援プログラムを提供する事業所もあります。

自立支援医療

児童精神科の通院費を軽減する制度。所得に応じて、医療費が1割負担になります。市区町村の福祉窓口で申請。

就学相談

小学校入学前、または進学前に、本人の特性に合った学習環境を相談できる「就学相談」。市区町村の教育委員会で実施。

デイジー教科書

視覚障害、ディスレクシア、ADHDなどのお子さま向けに、文字と音声を同時提示する教科書。申請すれば無料で利用可能。

障害児福祉手当

重度の場合に該当する可能性があります。詳しくは市区町村の窓口で相談を。


親自身のセルフケア

LDの子の親は、独特のしんどさを抱えています。「いつまで宿題バトルを続けるの」「私の育て方が悪かったのかも」——出口の見えない学習面の悩みに、親自身が疲弊することがあります。

親自身のセルフケアを忘れずに。配偶者、信頼できる家族・友人、専門家——誰かに気持ちを話す機会を持ちましょう。「同じ悩みを共有できる人がいない」という時には、自宅から利用できるオンラインカウンセリング「cotree(コトリー)」のようなサービスを活用するのも有効です。

そして、親自身を責めすぎないこと。LDは育て方の問題ではなく、本人の脳の特性です。あなたの育て方が悪いから読めないわけではありません。今、本人を支え続けているあなたの存在こそが、本人にとって最大の宝です。

「100点満点を目指さない」

LDのお子さまの支援に、100点満点はありません。「今日は宿題ができなかった」と感じる日もあって当然。「今日はここまで頑張った、OK」と、自分を許してあげましょう。

同じ立場の親と繋がる

LDの当事者団体、家族会、SNSのコミュニティなど、同じ立場の親と話せる場を活用。「自分だけじゃない」と知れるだけで、しんどさが半分になります。

夫婦で話し合う時間

夫婦で本人のことを話し合う時間を持つ。一方が抱え込まず、夫婦で支え合う体制を作る。

「自分時間」の確保

子どもの世話に追われていると、自分の時間がなくなりがち。週に1回でも、自分のための時間を確保しましょう。読書、お茶、散歩、趣味——なんでもいい。「自分のため」の時間が、心の余裕を生みます。

必要なら親自身もカウンセリングを

親自身が抑うつ・不安を抱えてしまった時は、ためらわずに専門家へ。親自身が元気でいることが、本人への最大のサポートです。


ICT機器の活用——LDの子の学びを変える

ICT機器(情報通信技術機器)の活用は、LDのお子さまの学びを根本から変える可能性を秘めています。「書くから話す」「読むから聴く」「計算するから入力する」——代替手段を活用することで、本人の学びが解放されます。

iPadの活用ポイント

iPadは、LDのお子さまにとって最も万能なICT機器の一つ。読み上げ機能、音声入力、手書きアプリ、ノート整理アプリなど、本人に合った使い方を見つけられます。学習だけでなく、日常生活にも活用できる広がりがあります。

音声入力アプリ

Google ドキュメント、メモ、Speechnotes など、無料の音声入力ツールが多数あります。話した内容が文字になることで、「書きたいけど書けない」状態から解放されます。作文、日記、レポートに活用を。

読み上げアプリ

iPhone・iPadの「読み上げコンテンツ」機能、デイジー教科書、Audible、audiobook.jp など。教科書、本、Webサイト——様々な文字情報を音声で受け取れる環境を整えましょう。

計算機・計算アプリ

ディスカリキュリアのお子さまには、計算機・計算アプリの活用も。「使っていいの?」と罪悪感を持つ必要はなく、社会人になっても計算機を使うのが普通の時代です。

ノートアプリ

Notability、GoodNotes、OneNote など、デジタルノートアプリ。書く・録音する・写真を貼るなどを一つのノートに統合できる便利さがあります。

学校でのICT機器の活用

GIGAスクール構想によって、全国の小中学校で一人一台のタブレット・PCが配布されています。授業中のICT機器活用の幅が広がっており、LDのお子さまにとって追い風となる環境変化。学校で何ができるか、担任に相談を。


家庭学習の工夫

LDのお子さまの家庭学習は、「量より質」「特性に合った方法」「本人のペース」が鍵になります。具体的な工夫を共有します。

「15分集中×短時間」が基本

LDのお子さまは、学習による疲労が大きいため、長時間の連続学習は禁物。「15分やったら5分休む」「20分やったら10分休む」など、短時間集中型のペース配分が効果的。

学習環境を整える

静かな部屋、明るすぎない照明、刺激の少ない机周り——LDのお子さまにとって、環境刺激は学習効率に大きく影響します。本人が落ち着ける環境を作る。

「できた」を可視化する

本人の頑張りを「できたシール」「グラフ」「カレンダー」などで可視化。日々の小さな積み重ねが目に見えると、本人のモチベーションが続きます。

「やった分だけ」を評価

計画通りに終わらなくても、「ここまでやれた」を認める。「予定の半分だけど、ここまでよく頑張ったね」と、本人の努力を肯定する。

「親が答えを教える」もOK

分からない問題で本人が苦しんでいる時、親が答えを教えるのもOK。「自分で考えなさい」と突き放すより、「一緒に考えよう」「ここはこうだよ」と教えてあげる姿勢が、本人の安心感につながります。

休日の過ごし方

休日は、学習から離れて本人の好きなことに集中する時間を。「休む」ことも学びの一部。本人の心と体の回復を優先することで、平日の学習に向かう力が育ちます。


LDの長期予後を信じる

LDは生涯にわたる特性ですが、適切な支援を受ければ、社会生活上の困難は大きく軽減できます。長期予後についての知識を持っておくと、家族の不安が和らぎます。

大人になっても続くが、付き合い方を学べる

LDの特性自体は大人になっても続きます。ただし、ICT機器の活用、自分に合った仕事の選択、周囲への配慮の依頼など、特性との付き合い方を身につけることで、社会生活上の困難は大きく減ります。

得意分野を活かせる仕事は多い

LDのお子さまの中には、特定領域以外で大きく活躍されている方が多くいます。デザイナー、起業家、料理人、職人、芸術家、プログラマー、ITエンジニア——本人の強みを活かせる仕事は、想像以上に多様。

結婚・パートナーシップ

LDの経験を持つ人でも、信頼できるパートナーと出会い、家庭を築いている人は多くいます。本人の人生は、特性に縛られるものではありません。

子育てへの影響

本人がLDだからといって、子育てができないわけではありません。LDの当事者だからこそ、自分の子どもに寄り添える共感的な親になっている方も多くいます。

本人の幸せを信じる

「読み書きが苦手だから、幸せになれない」は誤解です。本人なりの幸せを見つけ、自分らしく生きていく未来を、家族が信じ続けることが、本人の力になります。


家庭以外の支援資源

LDのお子さまを支えるのは、家族だけではありません。様々な支援資源を活用していきましょう。

NPO法人 EDGE

ディスレクシアの当事者・家族をサポートする団体。情報提供、家族交流会、講演会などを開催。

日本LD学会

LDに関する研究・支援の中心となる学会。専門家による研修、書籍、情報提供などを行っています。

児童精神科クリニック

近隣の児童精神科クリニックを早めに探しておく。初診まで数か月待ちのところも多いので、必要になる前から予約を取っておくのも一案。

大学病院の発達外来

難治例、複雑な症例の場合、大学病院の発達外来が頼りになります。最新の治療・検査を受けられる可能性も。

ピアサポートグループ

LDの当事者・経験者・家族で構成されるピアサポートグループ。同じ経験を持つ人だからこそ分かる視点が得られます。

オンラインフリースクール

学校が難しい時の選択肢として、オンラインフリースクールの活用も。「クラスジャパン小中学園」のように、画面越しで参加できる環境は、LDのお子さまにも合いやすいことも。


LDの子の食事・睡眠・運動からのアプローチ

LDの子の不安や学習面の困難を和らげるには、心理的なアプローチだけでなく、生活習慣を整えることも有効。体の状態が安定すると、学習面の効率も上がります。

規則正しい睡眠

睡眠不足は集中力・記憶力の低下を招き、LDの困難を増幅させます。子どもの推奨睡眠時間(小学生9〜11時間、中学生8〜10時間)を確保。寝る前のスマホ・ゲーム制限も大事。

朝食をしっかり摂る

朝食を抜くと、午前中の血糖値が安定せず、集中力の低下、イライラが出やすくなります。少量でも、毎朝何か食べる習慣を。

運動の機会

運動は脳の活性化、ストレス解消、睡眠の質向上に効果的。本人が好きな運動(散歩、サイクリング、水泳、ダンスなど)を家庭で取り入れる。週に2〜3回、30分程度を目安に。

水分補給と栄養

脱水や栄養不足は、脳のパフォーマンスを下げます。こまめな水分補給、バランスの取れた食事を心がける。特に魚・野菜・果物・全粒穀物などを多く取り入れる。

太陽の光を浴びる

朝の太陽光は、セロトニンの分泌を促し、心の安定と集中力の維持に役立ちます。朝起きたらカーテンを開ける、朝の散歩を習慣にするなど、自然な形で。

寝る前のルーティン

寝る前の30分は、リラックスタイムに。読書(音声でもOK)、入浴、ストレッチなど、本人が落ち着ける活動を。ブルーライトは避ける。


家族で支えるLDの子の毎日

LDのお子さまとの暮らしは、長い道のりです。毎日の積み重ねの中で、家族みんなが疲れすぎないよう、暮らしを整えていく工夫を共有します。

朝の時間に余裕を持つ

朝の時間に余裕がないと、本人の心が乱れたまま学校に行くことに。10〜15分早めに起きて、ゆったり朝食を取る。「行ってらっしゃい」を温かく伝えられる時間を確保する。

帰宅後の「ただいま」を温かく

学校から帰ってきた本人を、温かく迎える。「おかえり」「今日もよく頑張ったね」——一日の頑張りをねぎらう瞬間が、本人の心の充電になります。学校でうまくいかなかった日も、それを責めずに「お疲れさま」だけ伝える。

夕食の時間を楽しく

夕食は、家族の楽しい会話が流れる時間に。学校の話題、本人の好きな話題、家族の出来事——明るい話題で、本人が「家族でよかった」と感じられる時間を作る。学校のことばかり聞かないのもポイント。

寝る前のひとときを大切に

寝る前は、本人の一日を一緒に振り返る時間に。本でも、絵でも、文字でも、本人が選んだ表現で、一日を締めくくる。「今日もありがとう」「明日もまた一緒にいようね」と伝えてから、おやすみなさい。

週末の過ごし方を本人の好みで

週末は、本人が「行きたい」「やりたい」と意思表示できる活動を中心に。本人の興味分野(鉄道、動物、ゲーム、絵など)を家族で楽しめると、本人の自己肯定感が育ちます。

季節のイベントへの配慮

誕生日、クリスマス、お正月など、人が集まるイベントは、本人にとって緊張する場面の場合も。本人のペースで参加できる工夫を、家族で考えていきましょう。

休暇・旅行の工夫

長期休暇や旅行は、本人の好きな場所、ペースに合わせた予定で。詰め込みすぎず、本人の体力と興味に合わせた行程が、家族の良い思い出を作ります。


よくある質問(FAQ)

Q1. LDは大人になっても続くの?

A. LDの特性は、生涯にわたって続きます。ただし、適切な支援とICT機器の活用で、社会生活上の困難は大きく軽減できます。「治る」ものではなく、「うまく付き合っていく」ものです。

Q2. LDの診断は何歳から?

A. 通常、小学校に入学して本格的な学習が始まってから診断されます。小2〜3年生ごろが一般的な診断時期。

Q3. 診断書がないと支援を受けられない?

A. 2024年4月以降、合理的配慮は診断書がなくても申し出があれば学校で検討されます。ただし、医療機関での評価があると、支援内容が具体的に決まりやすくなります。

Q4. 兄弟もLDになる可能性は?

A. LDには遺伝的な要素もあり、兄弟・親族にLDの方がいる場合、お子さまもLDの可能性が高まります。兄弟の様子も気をつけて見ておきましょう。

Q5. 塾や家庭教師を頼むのは有効?

A. LDのお子さまには、集団指導の塾より、個別指導・家庭教師の方が向いていることが多いです。LDに理解のある先生を選ぶことが大事。

Q6. 中学受験を考えていますが、無理させていい?

A. 本人の希望と状態次第です。受験勉強の負担が大きすぎる場合は、無理させない選択も。「中学受験が唯一の道」ではないことを、家族で確認を。

Q7. 進学先はどう選べばいい?

A. 通信制高校、サポート校、定時制高校、私立の通学校など、選択肢は広がっています。本人に合った環境を、家族で一緒に考えていきましょう。

Q8. ICT機器の持ち込みを学校が認めてくれない

A. 2024年4月から合理的配慮の提供が法的義務化されています。担任→特別支援教育コーディネーター→校長→教育委員会と、段階的に相談を進めましょう。診断書があると話が進みやすくなります。

Q9. 塾の先生がLDを理解してくれない

A. LDに理解のある塾・家庭教師を選び直すことも検討。発達特性に詳しい個別指導塾、オンライン家庭教師など、選択肢は増えています。

Q10. 兄弟に「特別扱いだ」と言われた

A. 兄弟への説明と、兄弟だけの時間の確保が必要。「特別扱い」ではなく「必要な配慮」だと、年齢に応じて伝えていきましょう。


LDの子に「ありがとう」を伝える

LDのお子さまに対して、家族が「ありがとう」を伝える機会を意識的に作っていきましょう。本人は「自分は家族の足を引っ張っている」と感じやすいので、感謝の言葉が大きな救いになります。

具体的な「ありがとう」

「お皿を運んでくれてありがとう」「ペットの水を変えてくれてありがとう」「学校に行ってくれてありがとう」——具体的な行動に対する感謝を、毎日のように伝える。「いてくれるだけでありがとう」も大事な言葉。

「あなたのおかげ」を言葉に

「あなたが家にいてくれるから、家族みんなが安心できるよ」「あなたが家族の一員でいてくれて、本当にうれしいよ」——本人の存在そのものへの感謝を、繰り返し伝える。

本人の頑張りを言葉にする

「今日も学校に行けてすごいね」「漢字練習を最後まで頑張ったね」——本人にとっては大変な日々の積み重ねを、家族が言葉にしてあげる。「当たり前」と思わずに、認めてあげる姿勢が、本人の自己肯定感を育てます。

「あなたがいてくれてよかった」

誕生日、進級、大切な日には、「あなたが生まれてきてくれてよかった」「あなたが家族でよかった」と、改めて伝える。本人の存在を全肯定するメッセージは、長く本人の心に残ります。


LDの子の「未来」を信じる

家族として大事なのは、「本人の未来を信じる」こと。今は学習面の困難があっても、本人の人生はこれから先も長く続いていきます。

「いつかきっと」を信じる

「いつかきっと、自分らしい場所が見つかる」「いつかきっと、自分の強みを活かせる仕事ができる」——根拠のない希望でも、家族が信じ続けることが、本人の支えになります。

本人の可能性を狭めない

「LDだから、これはできない」と決めつけない。本人がやってみたいことには、家族がチャレンジを応援する姿勢で。

多様な生き方を見せる

LDの特性を持って、それでも自分らしく生きている大人の話、本、ドキュメンタリー——多様な生き方を本人に見せる。「自分にもこういう未来がある」と思える材料を提供する。

本人の「やりたい」を尊重する

「これがやりたい」と本人が示してくれたら、家族はそれを最大限尊重する。本人の主体性こそが、回復と成長の原動力。

「今」を大切に

未来を信じることも大事ですが、「今、目の前の本人」を大切にすることが何より大事。今日の小さな笑顔、今日の小さな成長——「今、ここ」の積み重ねが、未来を作っていきます。


まとめ|「努力不足」ではなく「脳の特性」

LD(学習障害)のあるお子さまが抱える困難は、本人が怠けているからでも、ご家庭のしつけのせいでもありません。脳の情報処理の得意・不得意の偏りによって生じる、れっきとした特性です。

大切なのは、次の3つだと感じています。

  • タイプに合った代替手段を用意する(音声・タブレット・図解)
  • 「できない」ことより、「できる方法」を一緒に探す
  • 学校・医療・教育相談と連携し、ご家庭だけで抱え込まない

病棟で出会ったお子さまたちは、タイプに合ったサポートと、「あなたの頑張りは見えているよ」という大人の眼差しに触れたとき、少しずつ自信を取り戻していきました。学習の困難そのものは簡単にはなくなりませんが、「自分には自分のやり方がある」と思える経験が、その後の人生を大きく支えます。

今日のどこか一つからでも、できることから始めてみてください。お子さまの笑顔が少しでも増えますように。


LDの子の支援に向き合う家族へのメッセージ

LDのお子さまを支えるご家族のみなさまへ、最後に伝えたいことがあります。

毎日、宿題、テスト、学校との連絡、本人の心のケア——たくさんのことを抱えながら、頑張っておられることと思います。「もっとうまくサポートできないか」「自分の関わり方は正しいのか」と、不安になる日もあるでしょう。

でも、ご家族のみなさまが本人を支え続けている、その存在こそが、本人にとって最大の宝です。本人にとって、家庭が「安心して帰れる場所」であり続けるなら、それで十分。学習面の困難は、ICT機器や代替手段、専門家のサポートで補えますが、「家族の温かい眼差し」だけは、家族にしかできないことです。

本人は、家族の愛をしっかり感じています。声に出して言わなくても、文字で表現しなくても、家族の存在が本人の核を支えていること——それを忘れずに、明日もまた、一日を一緒に歩んでいきましょう。

そして、ご家族自身も、どうか自分をいたわってあげてください。完璧な親でなくていい、完璧な家族でなくていい。「今日もここまでやれた、お疲れさま」と、自分にもねぎらいの言葉をかけてあげる時間が必要です。

あなたの育て方が悪いから、LDになったわけではありません。LDは脳の特性で、誰にでも起こり得るものです。本人を責めず、自分を責めず、一日一日を丁寧に積み重ねていく姿勢が、長期戦を乗り切る力になります。

応援しています。本人と、ご家族の毎日が、少しずつ穏やかなものになっていきますように。

そして、LDの特性を持つお子さまが、いつか自分の人生を「私の人生でよかった」と言える日が来ること——その日まで、家族として一緒に歩んでいきましょう。本人の小さな笑顔、小さな成長、小さな喜びを大切に積み重ねながら、ゆっくりと、確かな歩みで前に進んでいきましょう。

家庭で、学校で、医療機関で、地域で——本人を支える輪を広げながら、家族だけで抱え込まずに、必要な時には助けを求めていく姿勢が、長期戦を乗り切る秘訣です。一人で頑張りすぎない、無理しない、それでも諦めない——その姿勢が、本人にとっての最高の見本にもなります。


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著者プロフィール

星野レン(ほしの れん)
看護師歴8年。大学病院勤務を経て、児童思春期精神科の病棟に5年間在籍。不登校、発達特性、二次障害としての抑うつ・不安などを抱える子どもたちと、そのご家族のメンタルサポートに携わってきた。現在は「親子のこころの処方箋(kokoro-navi.net)」で、医療現場の経験をもとに、保護者向けにやさしく実践的な情報を発信。診断・治療はできない立場だからこそ、「医療に行く手前」で手に取れる選択肢を偏りなく届けることを大切にしている。


免責事項

  • 本記事は2026年4月時点で公開されている情報をもとに作成しています。制度・支援内容は自治体や学校により異なり、予告なく変更される場合があるため、最新情報は公式窓口でご確認ください。
  • 合理的配慮や支援制度の運用は、学校・自治体ごとに判断基準が異なります。実際の活用をご検討の際は、在籍校の担任・特別支援教育コーディネーター・スクールカウンセラー、地域の教育委員会等にご相談ください。
  • 本記事は、LD(学習障害)の診断・治療・予防を目的としたものではありません。個別の学習困難や発達特性に関するご相談は、医療機関・教育相談窓口・発達支援センター等の専門機関にご相談ください。
  • お子さまの特性・年齢・ご家庭の状況により、合う・合わないは必ずあります。紹介した方法はあくまで一般的な選択肢として参考にしていただき、最終判断はご家庭と専門家の連携のうえでご検討ください。
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本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
発達障害・特性理解
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