子どもの吃音(きつおん・どもり)|気づいたときの家庭の関わり方と、してはいけない対応【児童精神科看護師が解説】

ソファで身ぶりを交えて一生懸命に話す男の子と、急かさずじっと耳を傾ける母親。吃音のある子の話を待って聞く場面のイメージ 発達障害・特性理解

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「こ、こ、こんにちは」と最初の音をくり返す。「…っ……行きたい」と、言葉の出だしで詰まってしまう。我が子のことばが、なめらかに出てこない。そんな様子に気づいたとき、多くの親御さんは「これは吃音(きつおん)なのだろうか」「自分の育て方が悪かったのか」「このまま治らなかったらどうしよう」と、不安でいっぱいになります。児童思春期精神科の看護師として親御さんのお話を聞いていると、吃音をめぐる戸惑いや自責の念に、たびたび出会います。

まず、いちばん大切なことを最初にお伝えします。吃音は、親の育て方のせいで起きるものではありません。これは、長く誤解されてきた点ですが、現在では、育児やしつけ、愛情不足が吃音の原因ではないことが分かっています。どうか、自分を責めないでください。そのうえで、家庭での関わり方によって、子どもが吃音とうまく付き合い、自分らしく過ごせるよう支えることは、十分にできます。

この記事では、児童思春期精神科で子どもたちのこころに向き合ってきた看護師の視点から、吃音とは何か、どう経過するのか、家庭で何をすればよいか、そして何をしてはいけないかを、できるだけ平易にお伝えします。とくに、吃音そのものよりも、吃音をきっかけに生まれる「心の傷つき」をどう防ぐかに重点を置きます。父親として、そして看護師として、両方の立場から書きます。なお、吃音の専門的な評価や訓練は言語聴覚士などの専門家の領域です。本記事は、家庭での関わりと心のケアの観点からの情報提供であることを、はじめにお断りしておきます。

もし今、お子さんの吃音に気づいたばかりで、強い不安の中にいらっしゃるなら、まず深呼吸をして、この記事をゆっくり読み進めてみてください。吃音は、正しく理解し、適切に関わることで、子どもが自分らしく過ごせるよう支えていける状態です。慌てて何かを「直そう」とする必要はありません。一人で抱え込まず、知識を得て、必要なときには専門家を頼る。その準備を、これから一緒に整えていきましょう。あなたは、決して一人ではありません。

吃音とは何か|3つのあらわれ方

吃音とは、ことばがなめらかに出てこない、話し方の流暢さに関する状態です。一般に「どもり」とも呼ばれてきました。知的な遅れや、ことばを理解する力の問題とは異なり、「言いたいことははっきりしているのに、それをスムーズに発音できない」状態を指します。吃音のある子の頭の中には、ちゃんと言いたい言葉があるのです。

吃音のあらわれ方は、大きく三つに分けられます。一つめは「連発(れんぱつ)」で、「こ・こ・こんにちは」のように、最初の音をくり返すタイプです。二つめは「伸発(しんぱつ)」で、「こーーんにちは」のように、音を引き伸ばすタイプ。三つめは「難発(なんぱつ)」で、「…っ……こんにちは」のように、最初の音がなかなか出てこず、詰まってしまうタイプです。多くの子は連発から始まり、進むにつれて難発が増えていく傾向があります。

これらは、本人の努力不足でも、緊張しているからでもありません。話そうとする意志とは別のところで、ことばが出にくくなる。それが吃音です。だからこそ、「落ち着いて」「ゆっくり言いなさい」という声かけは、たいてい効果がなく、かえって本人を追い詰めます。まずは、吃音がどういう状態なのかを正しく知ること。それが、適切な関わりの出発点になります。

もう一つ知っておきたいのは、吃音は日や状況によって、出方が変わるということです。リラックスしているときは少なく、緊張したときや急かされたとき、大勢の前で話すときに強まりやすい。歌を歌うときや、みんなで声をそろえて言うときには、つかえないことも多いものです。この「波がある」という性質を知っておくと、「今日は調子が悪いな」というときも、一喜一憂せずに見守れます。出方が変わるのは、本人の頑張り次第ではなく、吃音という状態そのものの特徴なのです。

吃音は、親の育て方のせいではない

この章は、何よりも強くお伝えしたい内容です。かつては、「親が厳しすぎるから」「愛情が足りないから」「左利きを無理に直したから」といった俗説が信じられていました。けれど、これらはすべて、科学的な根拠のない誤解です。現在では、吃音の発症には、体質的・神経学的な要因が大きく関わっていると考えられています。生まれ持った話しことばの仕組みの個性が、背景にあるのです。

吃音は、決して珍しいものではありません。幼児期に吃音が現れる子は、およそ20人に1人程度といわれ、けっして特別なことではないのです。多くは2歳から5歳ごろ、ことばが急速に発達する時期に始まります。この時期、子どもの「話したい」気持ちに、発話の機能が追いつかず、流暢さが乱れることがある。それ自体は、発達の過程でよく見られることなのです。

ですから、もしあなたが「自分のしつけが悪かったのか」「あのとき叱りすぎたからか」と自分を責めているなら、どうかその荷を下ろしてください。あなたのせいではありません。原因探しに心を費やすより、これからどう関わるかに目を向けるほうが、ずっと子どものためになります。親の罪悪感は、知らず知らずのうちに子どもにも伝わります。まず親が「自分のせいではない」と知ることが、家庭を穏やかにする第一歩です。

ただ、誤解しないでいただきたいのは、「原因ではない」ことと「環境が関係ない」ことは別だ、という点です。育て方が吃音を生むわけではありませんが、急かされたり、からかわれたり、プレッシャーの強い環境では、吃音が出やすくなったり、本人がつらくなったりすることはあります。つまり、環境は「原因」ではないけれど、「子どもが楽に話せるかどうか」には関わってきます。だからこそ、自分を責めることには意味がなくても、これからの環境を整えることには、大きな意味があるのです。

看護師として見てきた、吃音と心の関係

児童思春期精神科の現場に、吃音そのものを主訴に来る子は、それほど多くありません。けれど、吃音をきっかけに生まれた「心の問題」を抱えて訪れる子には、しばしば出会います。からかわれた経験から人前で話すのが怖くなった子、「どうせうまく話せない」と自信を失った子、話すこと自体を避けるようになり、場面緘黙のような状態になった子。吃音は、心の健康と深く結びついています。

大切なのは、吃音そのものよりも、それに対する周囲の反応や、本人の受け止め方が、子どもの心を左右するということです。同じように吃音があっても、温かく受け止められて育った子は、吃音と折り合いをつけて、のびのびと過ごせます。一方、からかわれたり、話し方を厳しく直されたりした子は、深い傷つきを抱え、二次的な心の問題へと進んでしまうことがあります。

だからこそ、家庭や周囲の関わりが決定的に重要になります。吃音を「直すべき欠点」として扱うのか、それとも「その子の話し方の個性」として受け止めるのか。その姿勢の違いが、子どものその後を大きく変えます。看護師として強くお伝えしたいのは、吃音のある子に必要なのは、流暢に話せるようにすることより前に、「どんな話し方でも、あなたの話を聞きたい」という安心だということです。二次障害を防ぐ視点は「発達障害の二次障害を防ぐ」もあわせてご覧ください。

現場で出会った子の中には、吃音そのものはそれほど目立たないのに、「また笑われるかもしれない」という恐れから、すっかり自信をなくしてしまった子がいました。逆に、はっきりとした吃音があっても、家庭で温かく受け止められ、堂々と自分の意見を語る子もいました。この違いを生むのは、吃音の程度ではなく、周囲の関わりです。子どもの心を守れるかどうかは、私たち大人の側にかかっている。そう実感させられます。

発達性吃音の経過|多くは自然に和らぐ

幼児期に始まる吃音は「発達性吃音」と呼ばれます。ここで知っておいていただきたいのは、発達性吃音の多くは、時間とともに自然に和らいでいく、ということです。幼児期に吃音が現れた子のうち、かなりの割合が、特別な訓練をしなくても、数か月から数年のうちに目立たなくなっていきます。ですから、現れたからといって、過度に絶望する必要はありません。

一方で、一部の子は吃音が続いていきます。自然に和らぐか、続いていくかを、初期の段階で完全に予測することは難しいのが現状です。ただ、一般的に、男の子のほうが続きやすい、家族に吃音のある人がいると続きやすい、現れてから時間が経っているほど続きやすい、といった傾向は知られています。こうした要因がある場合は、早めに専門家に相談しておくと安心です。

大切なのは、「自然に和らぐことも多い」という事実に安心しつつ、「続く可能性もある」ことも知っておき、必要なら早めに支援につながる、というバランスです。「様子を見ましょう」と言われて放っておくのでもなく、過剰に心配して焦るのでもなく。子どもの様子を温かく見守りながら、気になることがあれば専門家に相談できる準備をしておく。その姿勢が、親子双方を楽にします。

「自然に和らぐことが多い」と聞くと、「では何もしなくていい」と思われるかもしれませんが、そうではありません。和らぐまでの期間も、子どもは毎日、人と関わり、話しています。その間に、からかわれたり、失敗体験を重ねたりすれば、たとえ吃音自体は和らいでも、心の傷は残ってしまいます。だからこそ、和らぐかどうかにかかわらず、「今、安心して話せる環境」を整えることが大切なのです。経過を待つことと、心を守ることは、別のことだとお考えください。

吃音の進展|放置されると起きること

吃音は、適切な理解や支えがないまま進むと、段階的に変化していくことがあります。この「進展」を知っておくと、早めに手を打つことの大切さが分かります。初期の吃音は、本人にあまり自覚がなく、連発(音のくり返し)が中心で、話すこと自体は苦にしていないことが多いものです。この段階では、子どもは屈託なく話しています。

ところが、まわりから笑われたり、指摘されたり、「もう一回言って」と言い直しを求められたりする経験が重なると、子どもは「自分の話し方は変なのだ」と気づき始めます。すると、吃音を意識するようになり、話すときに力が入って、難発(詰まり)が増えていきます。さらに進むと、ことばを出そうとして顔をしかめたり、体を動かしたりする「随伴症状」が現れたり、話すこと自体を避けるようになったりします。

つまり、吃音そのものより、それに対する否定的な反応の積み重ねが、状態を複雑にし、心の傷を深めていくのです。逆に言えば、初期の段階で、からかわれず、責められず、安心して話せる環境があれば、進展を防ぎ、子どもが吃音とうまく付き合っていける可能性が高まります。家庭が、まずその安心できる場所であることが、何よりの予防になります。

進展のスピードや程度には、大きな個人差があります。ほとんど進展せずに自然に和らぐ子もいれば、早くから難発や回避が現れる子もいます。大切なのは、わが子が今どの段階にいるかを、責めるためではなく、関わり方を考えるために、そっと見ておくことです。連発が中心で本人も気にしていないなら、おおらかに見守る。本人が気にし始めたり、回避が見られたりするなら、より丁寧な関わりや専門家への相談を考える。段階に応じて、関わりを調整していきましょう。

随伴症状と回避|話すことが怖くなる

吃音が進むと現れる「随伴症状」と「回避」について、もう少し詳しく見ておきます。随伴症状とは、ことばを出そうとするときに、無意識に伴ってしまう動きのことです。目をぎゅっとつぶる、顔をゆがめる、手や足を動かす、息を強く吐く。これらは、詰まったことばを何とか出そうとする、本人なりの苦肉の策です。本人も、そうしたくてしているわけではありません。

「回避」は、もっと心の深いところに関わる問題です。吃音のある子は、つかえやすい言葉や場面を、無意識に避けるようになることがあります。言いにくい単語を別の言葉に言い換える、自分から発言しない、音読を嫌がる、電話に出たがらない。一見すると「引っ込み思案」「やる気がない」ように見える行動の裏に、吃音への恐れが隠れていることがあるのです。

回避が深刻になると、子どもの世界はどんどん狭まっていきます。話さなければ、つかえることもありません。けれど、それは同時に、自分を表現する機会、人とつながる機会を手放していくことでもあります。回避は、傷つかないための防衛であると同時に、孤立への入り口にもなりうる。だからこそ、回避が強まる前に、安心して話せる環境を整えてあげることが大切なのです。

回避のサインは、見落とされやすいものです。「うちの子は無口だから」「恥ずかしがり屋だから」と思っていたら、実は吃音を隠すために話さなくなっていた、ということもあります。発言が減った、音読を嫌がる、特定の言葉を避ける、電話に出たがらない。こうした様子に気づいたら、「話したくない」のではなく「話せなくて困っている」のかもしれない、と一度考えてみてください。回避の背景にある本当の気持ちに気づくことが、適切な支えの第一歩になります。

やってはいけない対応|よかれと思っての逆効果

吃音のある子への対応で、親がよかれと思ってやってしまいがちな、けれど逆効果になることがあります。まず、「ゆっくり話して」「落ち着いて」「深呼吸して」といった、話し方への直接的なアドバイスです。これらは、本人に「自分の話し方はダメなのだ」と意識させ、かえって緊張を高め、吃音を強めてしまうことがあります。

次に、「もう一回言ってごらん」と言い直しをさせること、子どもが詰まっているときに先回りして言葉を言ってしまうこと、話の途中で「それはね」と話し方を訂正すること。これらも避けたい対応です。言い直しは失敗体験を重ねさせ、先回りは「自分は最後まで話させてもらえない」という無力感を与え、訂正は話の内容より話し方が大事だというメッセージになってしまいます。

そして、最もしてはいけないのが、笑ったり、からかったり、真似をしたりすることです。たとえ悪気のない冗談でも、吃音をからかわれた経験は、子どもの心に深い傷を残します。きょうだいや周囲の子がからかうのを、放置することも同じです。家庭の中では、吃音が決してからかいの対象にならない。その安全が守られていることが、子どもの心を守ります。これらのNG対応を知っておくことが、子どもを傷つけずにすむ備えになります。

もし、これまで良かれと思って「ゆっくり言って」と声をかけてきたとしても、自分を責めないでください。多くの親が同じことをしますし、それは愛情ゆえの行動です。大切なのは、気づいたところから変えていくこと。今日から、話し方への注文を一つ減らし、その分、話の中身に耳を傾けてみる。それだけで、子どもの感じる空気は変わります。完璧を目指さず、できることから少しずつで十分です。

家庭でできる関わり|「話し方」より「聞き方」を変える

では、家庭で何をすればよいのでしょうか。基本的な考え方は、「子どもの話し方を変えようとする」のではなく、「親の聞き方・関わり方を変える」ことです。吃音そのものを家庭で直そうとするのではなく、子どもが安心して話せる環境を整える。それが、家庭にできる最も大切な役割です。

具体的には、子どもが話しているとき、話し方ではなく、話の内容に耳を傾けること。つかえても、急かさず、最後まで待つこと。話し終えたら、「そうなんだ」「面白いね」と、内容に反応してあげること。子どもが「ちゃんと聞いてもらえた」「話せてよかった」と感じられる体験を、日々積み重ねていくのです。流暢さではなく、伝わった喜びを大切にする関わりが、子どもの「話したい」気持ちを守ります。

次の章から、この「聞き方・関わり方」の具体的なポイントを、いくつかに分けてお伝えします。どれも、特別な技術ではなく、日常の中で意識すればできることばかりです。完璧にやろうと気負う必要はありません。「話し方を直すのではなく、安心して話せる場をつくる」。この一点を心に置いて、できることから始めてみてください。

この発想の転換は、親の心も楽にしてくれます。「子どもの吃音を治さなければ」と気負うと、うまくいかないたびに親も子も苦しくなります。けれど、「安心して話せる場をつくる」ことなら、結果に振り回されず、今日から取り組めます。治すことを目標にすると、流暢に話せた日は良い日、つかえた日は悪い日、と一喜一憂してしまいます。安心の場をつくることを目標にすれば、どんな日も、その子を受け止める良い一日になります。

ゆっくり、ゆったりとした会話環境をつくる

家庭でできる工夫の一つが、家庭全体の会話のペースを、少しゆっくり、ゆったりにすることです。子どもに「ゆっくり話しなさい」と求めるのではなく、親自身がゆっくり話す。早口で急かすような会話より、間をたっぷりとった、のんびりした会話のほうが、吃音のある子は話しやすくなります。親の話し方が、自然なお手本になるのです。

また、子どもが話し終えてから、すぐに返事をせず、一呼吸おいて答えるようにすると、会話全体のテンポがゆるやかになります。「早く答えなきゃ」というプレッシャーが減り、子どもは落ち着いて話せます。質問を次々と浴びせるのも避けたいところです。矢継ぎ早の質問は、子どもを焦らせます。一つ聞いたら、ゆっくり待つ。そんな間のある会話を心がけましょう。

忙しい日常の中で、いつもゆったり話すのは難しいかもしれません。ですから、せめて一日のうち、子どもとゆっくり向き合える時間を、少しでも確保してみてください。食事のとき、お風呂のとき、寝る前のひととき。短くても、急かされずに話せる安心の時間が、子どもにとって大きな支えになります。会話の質は、量より、その安心感で決まります。

テレビやスマホをつけたまま、ながらで聞くのも、できれば避けたいところです。子どもが話しているとき、手を止めて、目を見て、体を向ける。「あなたの話を、ちゃんと聞いているよ」という姿勢が伝わると、子どもは安心して話せます。忙しくてどうしても手が離せないときは、「あと少し待ってね、ちゃんと聞きたいから」と正直に伝え、落ち着いてから向き合う。その誠実さも、子どもにはちゃんと伝わります。

内容を聞く、最後まで待つ

吃音のある子と接するうえで、最も大切な態度が、「話し方ではなく、話の中身を聞く」ことです。子どもがつかえながら話しているとき、親はつい話し方に注目してしまい、内容が頭に入ってこないことがあります。けれど、子どもが伝えたいのは、ことばの出し方ではなく、その中身です。何を伝えようとしているのか、そこに心を向けてください。

そして、子どもが詰まっても、最後まで待つこと。これは、簡単なようでいて、とても忍耐のいることです。子どもが言葉に詰まっていると、親は助けたくなって、つい先回りして言ってしまいます。けれど、その「待てない」関わりが、子どもから「自分の力で話しきる」体験を奪ってしまいます。沈黙が続いても、焦らず、せかさず、温かいまなざしで待つ。子どもが自分の力で話し終えたとき、その達成感が自信になります。

待つときのコツは、親がリラックスしていることです。親が心配そうな顔で身を乗り出すと、子どもはプレッシャーを感じます。「ゆっくりでいいよ」という気持ちを、言葉ではなく、穏やかな表情と落ち着いた態度で伝える。子どもが話しているあいだ、あなたは安心の港でいてください。「この人はちゃんと待ってくれる」という信頼が、子どもの話す勇気を育てます。

もし、つい先回りして言ってしまったり、急かしてしまったりしても、落ち込まないでください。親も人間ですから、いつも完璧には待てません。大切なのは、たまの失敗ではなく、日々の積み重ねの方向性です。「待とう」と意識しているだけで、関わりは少しずつ変わっていきます。そして、待てた日には、自分自身を「よく待てたね」とねぎらってあげてください。親が自分に優しくできると、子どもにも自然と優しくなれます。

吃音を隠さない・タブーにしない

吃音への向き合い方で、意外と大切なのが、「吃音を家庭の中でタブーにしない」ことです。親が吃音に触れるのを過度に避け、腫れ物にさわるように扱うと、子どもは「これは触れてはいけない、恥ずかしいことなんだ」と感じ取ってしまいます。沈黙が、かえって吃音をネガティブなものにしてしまうのです。

もちろん、しつこく話題にしたり、深刻に問い詰めたりする必要はありません。けれど、子ども自身が吃音について話したそうにしているときや、つらそうにしているときには、自然に「ことばが出にくいときがあるよね」「つかえても大丈夫だよ」と、さらりと受け止めてあげる。吃音を、隠すべき秘密ではなく、オープンに話せる普通のこととして扱う。その姿勢が、子どもの心を軽くします。

年齢や本人の様子に合わせて、「ことばがつっかえることは、誰にでも個性があるのと同じで、あなたの一部なんだよ」「つかえても、あなたの話は面白いし、大切だよ」と伝えてあげられると理想的です。吃音を否定も特別視もせず、ありのままに受け止める。その家庭の空気が、子どもが吃音を抱えながらも、自分を肯定して生きていく土台になります。

もし、ご家族の中に吃音のある方がいらっしゃるなら、その経験を子どもに話してあげるのも、一つの方法です。「お父さんも子どもの頃、ことばがつっかえることがあってね」と語れる存在がいると、子どもは「自分だけじゃない」と大きな安心を得られます。身近なロールモデルの存在は、何よりの支えになります。そうした方がいない場合でも、吃音とともに活躍している人がいることを伝えるなど、「吃音があっても大丈夫」と思える材料を、さりげなく届けてあげてください。

からかい・いじめへの対応

吃音のある子にとって、もっともつらい経験の一つが、話し方をからかわれることです。「なんで変な話し方なの」「もう一回言ってみてよ」と笑われる。真似をされる。こうした経験は、子どもの心に深い傷を残し、話すこと自体への恐怖や、強い自己否定につながります。からかいやいじめへの対応は、吃音のある子を守るうえで、避けて通れないテーマです。

まず家庭でできるのは、子どもが学校や園でからかわれていないか、さりげなく気にかけることです。「最近、お話しするの嫌だなって思うことある?」と、話し方ではなく気持ちを尋ねてみる。もしからかわれていることが分かったら、「よく話してくれたね」とまず受け止め、決して「気にしすぎ」と軽く扱わないこと。そのうえで、本人だけで抱えさせず、学校と連携して対応します。

学校には、クラス全体に吃音への理解を促してもらうことも依頼できます。低学年であれば、先生から「ことばがつっかえるのは、その子の特徴で、からかってはいけない」と伝えてもらうだけで、状況が大きく改善することがあります。からかいは「子ども同士のこと」と放置せず、大人がきちんと介入すべき問題です。深刻ないじめが疑われる場合の対応は「友達ができない・友達とうまくいかない我が子へ」のいじめの項も参考になります。

そして、からかわれた経験を打ち明けてくれた子には、「あなたは何も悪くない」とはっきり伝えてください。からかう側が間違っているのであって、吃音のある本人に非はありません。この一点を、子どもの心にしっかり刻んであげることが大切です。からかいによって「自分の話し方が悪いんだ」と思い込んでしまうと、自己否定が深まります。「悪いのは、からかう人のほう。あなたの話し方は、あなたの一部で、恥じることなんて何もない」。その言葉が、子どもの心の盾になります。

学校・園との連携

吃音のある子が安心して過ごすには、学校や園との連携が欠かせません。先生が吃音を正しく理解しているかどうかで、子どもの学校生活は大きく変わります。まず、担任の先生に、子どもに吃音があること、そして家庭で心がけている関わり方(急かさない、最後まで待つ、話し方を指摘しない)を共有しておくとよいでしょう。

とくにお願いしておきたいのが、音読や発表の場面での配慮です。順番に音読させる、人前で発表させる、号令をかけさせるといった場面は、吃音のある子にとって大きなプレッシャーになります。無理にやらせるのではなく、本人と相談しながら、一緒に読む、座って発表する、別の役割にするなど、柔軟な対応をお願いできると安心です。ただし「やらせない」ことが目的ではなく、本人が挑戦したい気持ちも尊重する、その兼ね合いを先生と話し合えると理想的です。

連携のコツは、「特別扱いを求める」のではなく、「この子が安心して力を発揮できる方法を一緒に考えたい」という協力的な姿勢で伝えることです。先生も、具体的にどうすればよいか分かれば、動きやすくなります。担任に相談しにくいときは、スクールカウンセラーや養護教諭を通すという方法もあります。「スクールカウンセラーの活用法」も参考にしてください。

連携にあたっては、家庭と学校で対応がちぐはぐにならないよう、足並みをそろえることも大切です。家庭では急かさず待っているのに、学校では音読を無理強いされている、ということがあると、子どもは混乱します。家庭で心がけていることを具体的に伝え、学校でも同じ方針で関わってもらえるようお願いする。子どもを真ん中に置いて、家庭と学校が同じ方向を向く。その連携が、子どもの安心を一貫して支えます。

ことばの教室・言語聴覚士という専門支援

吃音には、専門的な支援の場もあります。代表的なのが、小学校などに設置されている「ことばの教室」(通級指導教室)です。ここでは、ことばの専門の先生が、一人ひとりに合わせて、楽しく話す経験を積んだり、吃音との付き合い方を学んだりする支援を行っています。通っている学校になくても、近隣の学校のことばの教室に通級できる場合があります。

また、医療機関やリハビリテーション施設には、言語聴覚士(ST)という、ことばの専門家がいます。言語聴覚士は、吃音の評価を行い、年齢や状態に応じた支援や、環境調整の助言をしてくれます。「専門家に診てもらう」というと身構えるかもしれませんが、吃音について正しい知識を持つ専門家とつながっておくことは、親にとっても大きな安心になります。早めに相談しても、早すぎるということはありません。

専門支援を受けるかどうか、迷う方も多いでしょう。一つの目安として、吃音が一年以上続いている、本人が話すことを苦にし始めている、からかいなどで傷ついている、家族に吃音のある人がいる、といった場合は、一度専門家に相談することをおすすめします。相談した結果「様子を見て大丈夫」となることもありますし、それはそれで安心材料になります。迷ったら、相談してよいのです。

専門支援につながることには、もう一つの大きな意味があります。それは、子ども自身が「自分のことを分かってくれる味方がいる」と感じられることです。ことばの教室で、同じように吃音のある仲間に出会えることもあります。「困っているのは自分だけじゃない」と知ることは、子どもにとって大きな救いになります。専門支援は、技術を学ぶ場であると同時に、安心と仲間を得られる場でもあるのです。

二次的な心の問題を防ぐ

この記事でくり返しお伝えしてきたように、吃音で本当に気をつけたいのは、吃音そのものよりも、それに伴って生まれる「二次的な心の問題」です。からかいや失敗体験、自己否定の積み重ねは、不安症、抑うつ、対人恐怖、そして場面緘黙や不登校といった状態へと、つながっていくことがあります。これらを防ぐことが、家庭の関わりの最大の目的といっても過言ではありません。

とくに、吃音と場面緘黙(特定の場面で話せなくなる状態)は、重なって現れることがあります。吃音を恐れるあまり、人前ではいっさい話さなくなる、という形です。話さなければつかえない、という回避が極端になった状態とも言えます。場面緘黙については「場面緘黙症の子への家庭での関わり方」に詳しくまとめていますので、思い当たる方はご覧ください。

二次的な問題を防ぐ鍵は、これまで述べてきたことの積み重ねです。家庭が安心して話せる場であること、からかいから守られること、話し方ではなく内容を聞いてもらえること、そして「吃音があっても自分は大丈夫」という感覚を育てること。吃音は完全になくならなくても、心が傷つかずに育てば、子どもは吃音と折り合いをつけ、自分らしく生きていけます。守るべきは、流暢さより、その子の心です。

二次的な問題のサインに、早めに気づくことも大切です。以前より口数が減った、学校に行きたがらなくなった、表情が暗い、眠れていない、お腹が痛いと訴えることが増えた。こうした変化は、吃音をめぐる心の負担が限界に近づいているサインかもしれません。「吃音のことだから」と切り離さず、子どもの心全体の状態として捉えてください。気になる変化が続くときは、ためらわず専門家に相談しましょう。

自己肯定感を守る関わり

吃音のある子の子育てで、何よりも大切にしたいのが、自己肯定感を守ることです。吃音があると、子どもはどうしても「自分はうまく話せないダメな子」という思いを抱きやすくなります。この否定的な自己イメージを、いかに防ぎ、和らげるか。それが、その子の将来の生きやすさを大きく左右します。

自己肯定感は、一度に大きく育つものではなく、日々の小さな肯定の積み重ねで育ちます。今日かけた一言が、すぐ目に見える変化を生まなくても、確実に子どもの心に積もっていきます。焦らず、毎日少しずつ、その子の良いところを言葉にしていく。その地道な関わりこそが、やがて、何があっても折れない子どもの心の土台をつくっていくのです。

自己肯定感を守るために、まず、吃音以外の、その子の良いところにたくさん目を向けてください。優しさ、面白い発想、得意なこと、頑張っている姿。話し方とは関係のないところで、その子の価値を認める言葉を、たくさんかけてあげる。「話すのが苦手でも、あなたには素敵なところがいっぱいある」というメッセージが、吃音に偏りがちな自己評価のバランスを取り戻します。

そして、話せたこと、伝わったことを、一緒に喜ぶこと。つかえながらでも最後まで話せたとき、勇気を出して発言できたとき、その挑戦を認めてあげる。「上手に話せたね」と流暢さを褒めるのではなく、「伝えてくれてありがとう」「話してくれて嬉しい」と、伝わったこと自体を喜ぶ。その積み重ねが、「話すのは怖くない、話すのは楽しい」という感覚を育てます。自己肯定感を育てる関わりは「子どもの自己肯定感を育てる7つの具体的な声かけ」も参考になります。

もう一つ大切なのが、子どもが「話せた」という成功体験を、日常の中で重ねられるようにすることです。家庭という安全な場で、たくさん話し、たくさん聞いてもらう。その積み重ねが、「自分は話していいんだ」という感覚を育てます。逆に、家でも緊張して話せないと、その子の世界はどんどん狭まります。家庭が、何より気楽に話せる場所であること。それが、子どもの話す意欲と自己肯定感を、根っこから支えます。

思春期の吃音|本人の悩みが深まる時期

吃音が思春期まで続く場合、この時期特有の難しさが出てきます。思春期は、人からどう見られるかに非常に敏感になる時期です。吃音を強く恥ずかしく感じ、人前で話すことを避けたり、自分を否定的に捉えたりすることが、深まりやすくなります。幼い頃は気にしていなかった子が、思春期になって急に悩み始める、ということもあります。

この時期の関わりは、幼児期とは変える必要があります。あれこれ口を出すより、本人の気持ちを尊重し、悩みを聞ける関係を保つことが大切です。「話し方のことで悩んでいない?」と踏み込みすぎず、本人が話したいときに話せる雰囲気を保つ。そして、本人が専門的な支援を望むなら、その意思を尊重してつなぐ。思春期は、本人が自分の吃音とどう付き合っていくかを、主体的に考え始める時期でもあります。

思春期の吃音のある子の中には、進路や将来を、吃音を理由に狭めてしまう子もいます。「人と話す仕事は無理だ」と、早々に諦めてしまう。けれど、吃音があっても、さまざまな分野で活躍している人は大勢います。親としては、可能性を狭めず、「やりたいことに挑戦していい」と背中を押してあげたいものです。本人の悩みに寄り添いながら、その子の未来を信じる。それが、思春期の親にできる支えです。思春期全般の関わりは「思春期メンタル 完全ガイド」もご覧ください。

思春期になると、本人が自分から専門的な支援を求めることもあります。その意思は、ぜひ尊重してあげてください。一方で、本人が「そっとしておいてほしい」と望むこともあります。親としては何かしてあげたくなりますが、過度に踏み込まず、「いつでも力になるよ」という姿勢を保って見守ることも、立派な支援です。本人の主体性を尊重しながら、必要なときにはそばにいる。その距離感が、思春期には大切になります。

受診・専門相談を考える目安

吃音について、いつ専門家に相談すればよいか、目安をお伝えします。あくまで目安であり、迷ったら早めに相談してよいのですが、次のような場合は、相談を検討するとよいでしょう。吃音が一年以上続いている、本人が話すことを嫌がったり避けたりするようになった、からかいなどで傷ついている様子がある、随伴症状(顔をしかめるなど)が出ている、家族に吃音のある人がいる、といった場合です。

相談先としては、吃音そのものについては、言語聴覚士のいる医療機関やリハビリ施設、学校のことばの教室が中心になります。一方、吃音に伴う不安や抑うつ、場面緘黙、不登校といった心の問題が出ているときは、児童精神科や児童思春期外来が相談先になります。どちらに相談すべきか迷うときは、まずかかりつけの小児科や、学校に相談すると、適切な窓口を案内してもらえます。

受診や相談をしたからといって、必ず何かをさせられるわけではありません。多くの場合、まずは子どもと家族の状況をていねいに聞き取り、今の関わりで良い点を確認し、必要に応じて助言をもらう、という流れになります。「相談したら大げさにされるのでは」という心配は、たいてい杞憂に終わります。むしろ、正しい知識を得て、「このまま見守って大丈夫」と専門家に言ってもらえることが、何よりの安心につながることも多いのです。

受診をためらう気持ちは、よく分かります。「大げさかもしれない」「様子を見ればそのうち治るかも」と思うこともあるでしょう。けれど、早めに専門家とつながっておくことは、決して大げさなことではありません。正しい知識を得て、適切な関わりを知ることで、親の不安も大きく軽くなります。「児童精神科と小児科のどちらに行けばいいか」と迷う方は「児童精神科と小児科、どちらに行けばいい?」も参考にしてください。

緊急性が高いサインと、すぐ頼れる相談窓口

吃音そのものが緊急を要することは多くありませんが、吃音をきっかけとした深い傷つきや、からかい・いじめが、子どもを追い詰めてしまうことがあります。次のようなサインが見られたときは、緊急性が高いと考え、ためらわずに相談機関を頼ってください。「死にたい」「消えたい」と口にする、自分を傷つけている形跡がある、表情から生気が消えている、食事や睡眠がまったくとれない。これらは見逃してはならないSOSです。

このようなとき、親はまず落ち着いて、子どもを責めず、否定せず、そばにいてあげてください。そして、家庭だけで抱え込まず、専門機関へつなぐことが大切です。緊急時の対応は「子どもが「死にたい」と言ったときの親の対応」に詳しくまとめています。すぐに頼れる主な相談窓口を挙げておきます。いずれも無料で、子ども本人も保護者も利用できます。番号は変更される場合がありますので、利用時は各窓口の公式情報もご確認ください。

  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):0120-0-78310 ── いじめや学校生活の悩みを24時間相談できます
  • チャイルドライン:0120-99-7777 ── 18歳までの子どものための電話・チャット相談
  • よりそいホットライン:0120-279-338 ── 24時間、どんな悩みでも受け止めてくれる相談窓口
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556 ── お住まいの公的な相談窓口につながります

「これくらいで相談していいのかな」とためらう必要はありません。迷ったら、相談してかまわないのです。専門家に話すことで、親自身の不安もやわらぎます。一人で抱え込まないことが、子どもを守る第一歩です。

きょうだい・家族の理解

吃音のある子を支えるには、家族みんなの理解が大切です。とくにきょうだいには、年齢に応じて、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)は、ことばがつっかえることがあるけれど、それは個性の一つで、からかったり真似したりしてはいけないんだよ」と、きちんと伝えておきましょう。きょうだいが理解者になってくれれば、家庭はより安心できる場所になります。

一方で、吃音のある子にばかり気を遣うあまり、きょうだいが我慢を強いられたり、寂しさを感じたりしないよう、配慮も必要です。きょうだいにも、それぞれの気持ちや悩みがあります。一人ひとりと向き合う時間を持ち、どの子も大切にされていると感じられる家庭であること。それが、結果として家族全体の安定につながります。きょうだいへの配慮は「きょうだい児のケア」も参考になります。

祖父母など、周囲の親族の理解も大切です。「男の子なんだから、はきはき話しなさい」「気合いが足りない」といった、悪気のない一言が、子どもを傷つけることがあります。吃音は気合いや性格の問題ではないこと、温かく見守ってほしいことを、家族みんなで共有しておけると理想的です。子どもを取り巻く大人みんなが同じ理解を持つこと。それが、子どもにとって何より安心できる環境になります。

家族で吃音について話すとき、深刻になりすぎないことも大切です。腫れ物にさわるように扱うと、かえって「これは大変なことなんだ」と子どもに伝わってしまいます。「ことばがつっかえることもあるよね、それも個性だよね」と、明るく、自然に。家族みんなが吃音をおおらかに受け止めている空気こそが、子どもにとって最も居心地のよい環境です。理解とは、特別扱いすることではなく、ありのままを当たり前として受け入れることなのです。

親自身の不安との向き合い方

わが子の吃音に向き合う日々は、親にとっても不安の連続です。「この先どうなるのだろう」「うまく関われているだろうか」「私のせいではないと言われても、やっぱり気になってしまう」。そんな思いを抱えるのは、自然なことです。まず、その不安を抱えているあなた自身を、どうかいたわってあげてください。

親が不安そうにしていると、その空気は子どもに伝わります。逆に、親がどっしりと構えて、「つかえても大丈夫」という安心感を漂わせていると、子どもも落ち着いて話せます。とはいえ、「不安に思うな」というのは無理な注文です。だからこそ、親自身が不安を吐き出せる場を持つことが大切です。配偶者、信頼できる友人、同じ悩みを持つ親、専門家。一人で抱え込まないでください。

そして、吃音のことばかりに気を取られて、その子の愛らしさや、成長の喜びを見失わないでください。吃音は、その子の一部にすぎません。つかえながらも一生懸命に話す姿、伝えたい思いがあふれる表情。そこには、かけがえのないその子らしさがあります。不安に飲み込まれそうなときは、少し肩の力を抜いて、その子そのものを、まるごと愛おしんでください。親のケアについては「親のメンタルヘルス 完全ガイド」もご用意しています。

そして、長い目で見てほしいのです。今は、つかえることが気になって仕方がないかもしれません。けれど、子どもは日々成長していきます。吃音が和らぐ子もいれば、吃音とうまく付き合えるようになる子もいます。大切なのは、目の前のつまずきに一喜一憂しすぎず、その子の成長全体を、ゆったりと信じて見守ること。あなたが穏やかに構えていることが、子どもにとって、何よりの安心の土台になります。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 「ゆっくり話して」と言うのは、本当にダメですか?
善意からの言葉ですが、おすすめできません。本人に「自分の話し方はダメなのだ」と意識させ、かえって緊張を高めてしまうことがあります。子どもの話し方を変えようとするより、親自身がゆっくり話し、ゆったりした会話の雰囲気をつくるほうが、ずっと効果的です。

Q. 吃音は遺伝しますか?
体質的な要因が関わっており、家族に吃音のある人がいると、現れやすい傾向はあります。ただし、遺伝がすべてを決めるわけではなく、環境や経過によって変わります。「遺伝だから仕方ない」とあきらめる必要も、「遺伝させてしまった」と自分を責める必要もありません。

Q. 様子を見ているだけでいいのか、不安です。
幼児期の吃音は自然に和らぐことも多いのですが、「ただ放っておく」のと「温かく見守りながら、必要なら相談する準備をしておく」のは違います。一年以上続く、本人が気にしている、からかわれているといった場合は、様子見にとどめず、専門家に相談してみてください。

Q. 本人が「自分の話し方は変だ」と気にし始めました。
本人が吃音を意識し始めたサインです。否定も特別視もせず、「ことばがつっかえることは、あなたの個性の一つで、悪いことじゃないんだよ」と、さらりと受け止めてあげてください。そして、本人が悩んでいるなら、ことばの教室や専門家への相談を検討する時期かもしれません。

Q. からかわれて、学校に行きたくないと言い出しました。
まず「つらかったね、よく話してくれたね」と気持ちを受け止め、無理に登校させようとしないでください。そのうえで、からかいの問題として学校に相談し、組織的に対応してもらいましょう。本人には「悪いのはからかう人で、あなたは何も悪くない」と伝えること。心の傷が深いときは、児童精神科などの専門家にも相談してください。

Q. 大人になっても吃音は治らないのでしょうか?
吃音が大人まで続く方もいますが、それは「治らない=不幸」を意味しません。吃音と上手に付き合いながら、さまざまな分野で活躍している人は大勢います。大切なのは、流暢に話せることより、吃音があっても自分を肯定し、やりたいことに挑戦できる心を育てること。子ども時代に心が傷つかずに育つことが、その土台になります。

Q. 下の子が、上の子の吃音をからかいます。どうすれば?
きょうだいには、年齢に応じて「ことばがつっかえるのは、その子の個性で、からかってはいけない」とはっきり伝えてください。同時に、なぜからかうのかにも目を向けます。上の子に注目が集まる寂しさの裏返しのこともあります。下の子の気持ちにも配慮しつつ、家庭の中では誰の特性もからかわない、というルールを、家族全員で共有しましょう。

Q. 入園や引っ越しのあと、急に吃音が出てきました。
環境の変化(入園、引っ越し、きょうだいの誕生など)をきっかけに、一時的に吃音が現れたり強まったりすることがあります。多くは、環境に慣れ、心が落ち着くとともに和らいでいきます。慌てず、いつも以上にゆったりと関わり、安心できる時間を増やしてあげてください。変化が長く続く場合は、専門家に相談しましょう。

Q. 吃音と発達障害は関係がありますか?
吃音は、それ単独で現れることもあれば、ADHDやASDなどの発達特性と併せて現れることもあります。発達特性がある場合、コミュニケーション面の困りごとが重なることもあるため、気になるときは専門家に相談すると、全体像を整理しやすくなります。ただし、吃音があるからといって、必ず発達障害があるわけではありません。

困ったときの相談先

吃音のことで頼れる先を整理しておきます。吃音そのものについては、言語聴覚士のいる医療機関・リハビリ施設、学校の「ことばの教室」(通級指導教室)。心の問題が伴うときは、児童精神科・児童思春期外来。学校関係では、担任、養護教諭、スクールカウンセラー。公的機関では、各自治体の発達相談・教育相談の窓口。そして、吃音のある人や家族の自助グループ・親の会も、心強い支えになります。

どこに相談すればよいか迷ったときは、まずかかりつけの小児科か、学校に相談してみてください。そこから、必要な窓口へとつないでもらえます。吃音は、決して珍しいものではなく、支援の方法も知られています。一人で抱え込まず、頼れる先を少しずつ増やしていきましょう。相談することは、子どもを守るための、前向きな一歩です。

近年は、吃音に関する正しい情報や、当事者・家族のためのコミュニティも、少しずつ広がってきました。吃音のある人たちの自助グループや、保護者の交流の場では、同じ経験をした人ならではの知恵や、心の支えを得られます。専門機関だけでなく、そうした横のつながりも、大きな力になります。「うちだけではない」と思えること、先を歩む人の姿を知ることが、不安な親の心を、そっと照らしてくれます。

まとめ|流暢さより、その子の心を守る

子どもの吃音に気づいたとき、親は「早く治してあげたい」と願います。けれど、この記事を通してお伝えしてきたのは、いちばん大切なのは「流暢に話せるようにすること」ではなく、「その子の心を守ること」だということです。吃音は、多くが自然に和らぎますし、続いたとしても、心が傷つかずに育てば、子どもは吃音と折り合いをつけて、自分らしく生きていけます。

そのために家庭でできることは、話し方を直そうとすることではなく、安心して話せる環境を整えることです。急かさず、最後まで待ち、話し方ではなく内容を聞く。からかいから守り、自己肯定感を育て、吃音をタブーにしない。そして何より、親が「自分のせいではない」と知り、どっしりと構えて、その子をまるごと受け止める。一つひとつは小さなことですが、その積み重ねが、子どもの心を守ります。

これらの関わりは、特別な専門知識がなくてもできることばかりです。むしろ、毎日子どものそばにいる家族だからこそできる、何よりの支援です。専門家による訓練も大切ですが、子どもが一日のうち最も長く過ごすのは家庭です。その家庭が、安心して話せる温かい場所であること。それに勝る支援はありません。あなたにできることは、思っているよりずっと、たくさんあるのです。

最後に、もう一度お伝えします。吃音は、親の育て方のせいではありません。そして、あなたが今、こうして子どものために情報を集め、関わり方を学ぼうとしていること、それ自体が、何よりの愛情です。つかえながらも一生懸命に話すその子は、あなたという安心できる聞き手がいるからこそ、話そうとしています。焦らず、責めず、その子のペースを信じて。この記事が、その小さな支えになれば幸いです。

子どもの吃音に向き合う日々は、ときに長く、出口が見えないように感じられるかもしれません。けれど、あなたが今、この記事を読み、子どものために学ぼうとしていること、そのこと自体が、すでに大きな支えになっています。完璧な親である必要はありません。ときには急かしてしまう日も、不安に飲み込まれる日もあるでしょう。それでいいのです。大切なのは、その子を思う気持ちと、安心できる家庭を保とうとする姿勢が、続いていくこと。その温かさは、必ず子どもに届いています。どうか、お子さんと、そしてあなた自身を、信じてあげてください。

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免責事項

本記事は、児童思春期精神科での看護経験をもとにした一般的な情報提供を目的としており、特定の子どもへの医学的な診断・治療を行うものではありません。吃音の専門的な評価・訓練は言語聴覚士等の専門家の領域です。お子さんの状態には個人差があり、記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。気になる症状や強い不安がある場合は、自己判断で抱え込まず、かかりつけ医・言語聴覚士・児童精神科・ことばの教室・スクールカウンセラー等の専門家にご相談ください。緊急性が高いと感じられる場合は、本文中に記載した相談窓口や、お住まいの地域の医療・相談機関を速やかにご利用ください。掲載した相談窓口の情報は変更される場合がありますので、ご利用の際は各機関の公式情報をご確認ください。

【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
発達障害・特性理解
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