我が子からある日突然「死にたい」と言われたら——親として、これほど胸が張り裂けそうになる瞬間はありません。頭が真っ白になり、どう返せばいいのか分からなくなる、その心境は十分に理解できます。
私は児童思春期精神科の病棟で約8年間、希死念慮を訴えて入院・通院に至った多くの子どもたちとその家族に関わってきました。本記事では、現場で見てきた知見をもとに、子どもの「死にたい」への向き合い方、絶対にやってはいけない反応、親が最初にすべきこと、専門機関への繋ぎ方、そして親自身のケアまで、現場視点で詳しく解説します。
- 緊急時の相談先(最優先)
- 「死にたい」の本当の意味を知る
- 思春期に「死にたい」と言う子の心の中
- 絶対にやってはいけない6つの反応
- 親が最初にすべき5つのこと
- 子どもの状態をどう評価するか——緊急度の判断
- 受診の判断と医療機関の選び方
- 病棟で見てきた合成ケース
- 家庭の安全環境を整える
- 学校との連携
- 親自身のケアも忘れずに
- 親の自助グループ・ピアサポート
- 「生きていてくれてありがとう」を伝える
- 再発を防ぐための日常の工夫
- 家族みんなで乗り越える姿勢
- 長期的な視点で考える
- 自傷行為と希死念慮の関係
- 年代別の対応——小学生から高校生まで
- 「死にたい」が薄れていく回復のステップ
- 日本の若者の自殺の現状——知っておきたい統計
- LGBTQ・性的マイノリティの子どもへの配慮
- 希死念慮を理解するための本・リソース
- 親自身のためのメンタルケア
- 「今日も生きていてくれた」を喜ぶ姿勢
- よくある質問(FAQ)
- 看護師視点でのまとめ
- 緊急時の相談先(再掲)
- 関連記事
- 看護師として伝えたい「死にたい」という言葉の受け止め方
- 「聴く」ことが、お子さまを支える
- 一人で抱え込まず、専門機関に繋ぐ
- 「死にたい」の背景にあるものを理解する
- 保護者の方ご自身のケアも忘れずに
- 看護師として、ご家族へお伝えしたいこと
- 日常の中で「見守り続ける」ということ
緊急時の相談先(最優先)
もし今、お子さんの状況が緊急性が高いと感じる場合は、まず以下の窓口に連絡してください。
- いのちの電話:0570-783-556(10時〜22時)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- チャイルドライン:0120-99-7777(16時〜21時・18歳まで)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
- 救急要請(緊急時):119
- 救急医療相談(夜間):#7119(または地域の精神科救急情報センター)
「もう自分一人では無理」と感じたら、迷わず救急要請を。「大げさかな」と思っても、子どもの命を守るためには行動が優先です。
「死にたい」の本当の意味を知る
子どもが発する「死にたい」は、必ずしも具体的な自殺願望を意味しているとは限りません。多くの場合、この言葉の裏にあるのは「もう限界」「助けて」「この苦しさをわかってほしい」というSOSです。
「死にたい」に込められた多様な意味
病棟で多くの子どもたちと話してきた経験から、「死にたい」という言葉には次のような意味が含まれていることが多いと感じます。
- 「今がしんどすぎる、終わりにしたい」
- 「誰も自分の苦しみを分かってくれない」
- 「ここから消えてしまいたい」
- 「眠ったまま起きなくていい」
- 「もう何もしたくない、何もできない」
- 「親や周りを困らせて気付いてほしい」
- 「本当に死ぬほどつらい」
これらが「死にたい」という一語に集約されているのです。
軽視は絶対にしてはいけない
ただし、「本気じゃないだろう」と軽視するのは絶対に避けてください。子どもが「死にたい」と口にした以上、その言葉は重く受け止めなければなりません。
たとえ最初は「言葉だけ」だったとしても、それを軽視されることで「誰にも分かってもらえない」と感じ、本当に行動に移してしまうケースもあります。子どもが発する「死にたい」は、すべてのケースで真剣に受け止める姿勢が必要です。
言葉の重みを認める
「死にたい」と言葉にするまでには、子ども自身が長い時間、その重さと闘ってきています。それを口に出すまでに、どれほど苦しんできたか——その時間そのものを認めることが、対応の出発点です。
思春期に「死にたい」と言う子の心の中
思春期の子どもが「死にたい」と思う背景には、大人の想像を超える複雑な要因が絡んでいます。
思春期の脳と心の特性
思春期の脳は、感情を司る大脳辺縁系が活発な一方、衝動を制御する前頭前野はまだ発達途上です。そのため、強い感情に流されやすく、「死にたい」という極端な思考にも至りやすい時期です。
同時に、自我の確立期でもあり、「自分とは何か」「なぜ生きているのか」といった根源的な問いを持ちやすくなります。これは病的ではなく発達段階の特徴ですが、大きなストレスが重なると一気に「死にたい」に向かうことも。
思春期に多い背景要因
- 学業・進路のプレッシャー:受験、成績、将来への不安
- 友人関係の悩み:いじめ、仲間外れ、グループ問題
- 恋愛関係:失恋、片思いの苦しみ
- 家庭環境:親の不和、虐待、ネグレクト、過剰な期待
- 容姿・体型へのコンプレックス
- 性自認・性的指向の悩み
- 身体疾患・慢性疾患
- 過去のトラウマ体験
背景にある精神疾患の可能性
「死にたい」が継続的に出る場合、以下のような精神疾患が背景にあることがあります。
- うつ病・うつ状態:意欲低下、不眠、食欲不振、希死念慮
- 適応障害:環境変化への対応困難
- 不安症:強い不安・パニック
- 発達障害二次障害:二次的なうつや不安
- パーソナリティ形成上の困難
- 統合失調症(思春期発症もある)
- 摂食障害
これらは医療的な治療が必要なので、児童精神科の受診が重要です。
SNS時代の特有の要因
近年は、SNSが希死念慮を助長する要因にもなっています。
- SNSでの誹謗中傷
- 「キラキラした他人」との比較
- 承認欲求の不充足
- 自傷行為を肯定するコミュニティへの参加
- 希死念慮を共有する場の存在
これらが背景にある場合、SNSの使い方の見直しも対応の一部になります。
絶対にやってはいけない6つの反応
子どもが「死にたい」と言った時の親の反応で、状況を悪化させるパターンを整理します。
1. 否定する「そんなこと言わないで」「縁起でもない」
親としては辛すぎて否定したくなりますが、子どもは「この気持ちを言ってはいけないんだ」と口を閉ざしてしまいます。次は誰にも相談できず、より深い孤独に陥ります。
「そんなこと言わないで」という言葉は、本人にとって「あなたの気持ちは間違っている」と聞こえます。事実、本人にとってその気持ちは本物なのです。
2. 理由を問い詰める「なんで?何があったの?」
本人も理由がわからないことが多く、詰問調は追い詰めてしまいます。「なんで?」と聞かれて答えに困った子は「分からない」と言わざるを得ず、その後「ちゃんとした理由もないのに言ってしまった」と自責の念を強めます。
まずは言葉そのものを受け止めて、理由は後から少しずつで大丈夫です。
3. 励ます「頑張れば大丈夫」「強くなって」
「これ以上頑張れない」と思っている子に、さらに頑張らせる言葉は逆効果です。励ましは「今のあなたではダメ」というメッセージにも聞こえます。
本人はすでに限界まで頑張ってきた結果、「死にたい」に至っているのです。「頑張れ」は最も避けたい言葉の一つです。
4. 笑い飛ばす・軽く扱う「大げさだよ」「思春期だね」
「大げさだよ」と言われた瞬間、子どもは二度とその話をしなくなります。次は親にも相談できずに抱え込んでしまいます。
思春期だから当たり前——そう片付けると、本当に深刻な状態を見逃すことになります。
5. 比較する「もっと辛い人もいる」「○○ちゃんは頑張ってる」
「他にもっと辛い人がいる」という相対化は、本人の感情を否定することになります。本人にとっては「自分の辛さ」が世界の中心であり、それは事実です。
他人と比較すると、本人は「自分の苦しみは正当化されない」と感じ、相談する気持ちを失います。
6. 罪悪感を載せる「家族はどうなる」「私を悲しませないで」
「家族のことを考えて」「私が悲しむ」という言葉は、本人にさらなる罪悪感を背負わせます。「家族のために生きなきゃ」というプレッシャーが、本人をさらに追い詰めることも。
その場を離れる、無視する、聞こえなかったふりをする——これらも絶対に避けてください。
親が最初にすべき5つのこと
「死にたい」と言われた時、親が取るべき行動を順番に整理します。
1. 深呼吸して落ち着く——親の動揺は子どもに伝わる
親が動揺すると、子どもは「やっぱり言うべきじゃなかった」と後悔します。まず3回深呼吸して、自分を落ち着けてください。完璧に冷静になる必要はありません。「冷静に聞こう」という意識を持つだけで十分です。
2. 「話してくれてありがとう」と伝える
言葉にしてくれたこと自体が、勇気ある行動です。「ありがとう」は、子どもの「言ってよかった」という感覚を作ります。これが信頼関係の基盤になります。
他の表現例:
- 「教えてくれてありがとう」
- 「話してくれて、嬉しい」
- 「打ち明けてくれてありがとう」
3. ただ聴く——解決しようとせず、気持ちに寄り添う
親としては「何とかしたい」と思いますが、まずは聴くことに徹してください。解決策を提示するのは後回しでいいです。
聴く時のポイント:
- 遮らない
- 「うん」「そうなんだね」と相槌を打つ
- 沈黙があっても急かさない
- 本人のペースに合わせる
- 視線を合わせる(ただし凝視はしない)
- 身体の向きを本人に向ける
4. 一人にしない——特に当日は目の届く範囲で
「死にたい」と言った直後は、特に注意が必要です。物理的に一人にしないこと。一緒に過ごす、隣の部屋にいる、何か理由を作って近くにいる——形は問いません。
「監視されている」と感じさせないよう、自然な形で。例えば、「今日は一緒にご飯食べようか」「テレビ一緒に見ない?」など、何気ない誘いで。
5. 専門機関に繋ぐ——親だけで抱え込まない
親だけで対応するのは限界があります。必ず専門機関に繋いでください。
- 当日〜翌日:いのちの電話、よりそいホットラインで親も相談
- 数日以内:児童精神科の受診予約(緊急枠を依頼)
- 並行:スクールカウンセラー、自治体相談窓口
「精神科」という言葉に抵抗があるかもしれませんが、子どもの命を守るためには専門家の力が必要です。
子どもの状態をどう評価するか——緊急度の判断
「死にたい」と言われた時、緊急度を判断する材料があります。以下のサインがいくつあるかチェックしてください。
緊急度・高(即対応が必要)
- 具体的な自殺の方法を口にしている
- 遺書らしきものを書いている
- 大切な物を人に譲ろうとしている
- 自傷行為が始まっている、エスカレートしている
- 「楽になりたい」「もう何もしたくない」を頻繁に口にする
- 睡眠・食事ができない
- 独り言が増える
- 急に明るくなる・落ち着いて見える(決意のサインかもしれない)
- SNSで死を匂わせる投稿をしている
該当する場合:すぐに救急要請、または最寄りの精神科救急へ。夜間・休日も対応してくれます。
緊急度・中(数日以内に対応)
- 「死にたい」が頻繁になっている
- 不眠・食欲不振が1週間以上続く
- 不登校・引きこもりが続く
- 表情が無くなる、無気力
- 言葉数が極端に減る
- 泣くことが増える
該当する場合:数日以内に児童精神科を受診。予約が取れない場合は、まず電話で「緊急性が高い」と伝えて相談を。
緊急度・低(経過観察+早めの相談)
- 「死にたい」と一度だけ言った
- その後は普通に過ごしている
- 食事・睡眠は取れている
- 学校にも行けている
該当する場合:すぐに専門医療機関にかからなくても良いが、スクールカウンセラーや自治体相談窓口での相談を早めに。家庭でも引き続き観察を。
受診の判断と医療機関の選び方
第一選択:児童精神科
子どもの希死念慮には、児童精神科の受診が最も適しています。診察、評価、必要に応じて薬物療法、心理療法を組み合わせた包括的なケアを受けられます。
予約が取りにくい場合
児童精神科は予約が取りにくいことが多いです。緊急性が高い場合は:
- 「希死念慮があり緊急性が高い」と電話で伝える
- 緊急枠を依頼する
- 近隣の複数の医療機関に問い合わせる
- かかりつけ小児科からの紹介状を依頼する
夜間・休日の対応
緊急時は以下を活用:
- 精神科救急情報センター(各都道府県)
- 救急要請(119)
- かかりつけ医がある場合は、緊急時の連絡先を事前に確認
受診時に伝えるべきこと
- いつから「死にたい」と言うようになったか
- 具体的な発言内容
- 自傷行為の有無
- 睡眠・食事の状況
- 家族関係・学校生活
- これまでの様子の変化
- 家族の対応の現状
本人を連れて行く時の声かけ
「精神科に行こう」とストレートに言うと拒絶されることがあります。柔らかい入口を:
- 「最近しんどそうだから、専門の人に話してみない?」
- 「気持ちを楽にしてくれる人がいるから、一度会ってみない?」
- 「お母さんも一緒に行くから、相談に行ってみよう」
- 「眠れない・食べられないのは心配だから、お医者さんに相談しよう」
病棟で見てきた合成ケース
※ 守秘義務のため、複数のケースを組み合わせた合成事例です。
ケース1:中3女子・受験前の希死念慮
志望校への受験プレッシャーから、突然「死にたい」と母親に告白。母親はパニックになりかけたが、「話してくれてありがとう」と受け止め、その日のうちに児童精神科に連絡。緊急枠で受診し、適応障害と診断。
カウンセリングと薬物療法を3ヶ月続け、進路についても柔軟に考え直した結果、症状は改善。志望校は変えたが、結果的に本人にとって良い学校に進学。今は元気に高校生活を送っている。
ケース2:中1男子・いじめからの希死念慮
SNSでの陰口を契機に、ある日「死にたい、消えたい」と父親に。父親が冷静に話を聞いた後、すぐに母親と共有し、翌日学校とスクールカウンセラーに連絡。同時に児童精神科の予約も取った。
学校側の迅速な対応でいじめは収まり、医療機関でのカウンセリングを並行。半年後には完全に立ち直り、別の中学校に転校して新しい環境で再スタート。
ケース3:小6女子・繰り返し「死にたい」と言う子
小学校高学年から「死にたい」が口癖のようになっていた女子。両親は最初「またか」と思っていたが、ある日明らかに様子が違うと感じ、児童精神科を受診。うつ病と発達特性が判明。
長期にわたる治療と環境調整を経て、現在は通信制中学に通いながら回復中。「あの時受診して本当に良かった」と両親が涙されている。
家庭の安全環境を整える
「死にたい」発言があった子の家庭では、物理的な安全環境の整備が重要です。
危険物の管理
- 刃物類は鍵のかかる場所へ
- 薬剤(市販薬・処方薬すべて)を一括管理
- ロープ・紐類も視界から外す
- マンション高層階の場合は窓の管理(補助錠など)
本人への伝え方
「信用していないわけではないけど、念のため」と本人に伝えて、一緒にやるのが理想。「あなたを心配しているからこそ」というメッセージで。
SNS・スマホの取り扱い
SNSでの誹謗中傷、希死念慮を煽る投稿、自傷を肯定するコミュニティなどに本人が触れていないかを確認。完全な禁止は反発を招くので、本人と話し合いながら距離を取る方向で。
家族の見守り体制
- 誰がいつ本人の様子を見るか役割分担
- 夜間の声かけ(無理に話しかけず、存在を伝える程度)
- 「監視」ではなく「見守り」の姿勢
- 家族間で情報を共有
学校との連携
「死にたい」と言葉にする状態は、学校生活にも影響していることが多いです。学校との連携が、子どもの回復を支えます。
誰に伝えるか
- 担任:日常的な見守りの中心
- 養護教諭:体調不良時の対応、保健室の活用
- スクールカウンセラー:本人のカウンセリング
- 管理職(校長・教頭):必要に応じて
伝え方の例
「家庭で『死にたい』という発言があり、医療機関で治療を始めています。学校でも様子を見守っていただけると助かります。何か気になる様子があれば、すぐに連絡していただけますか?」
本人の同意
原則として、本人の同意を得てから学校に伝えることが望ましいです。「お母さんが先生に話していい?」と確認しましょう。同意を得られない場合でも、命の危険があると判断される時は、親の判断で伝える必要があります。
学校からの情報も大切に
学校での子どもの様子は、家庭で見えない部分があります。授業中の様子、休み時間、友人関係——担任からの情報も大切な手がかりです。
親自身のケアも忘れずに
子どもからこんな言葉を聞いた後、親もまた深く傷ついています。親自身のケアも絶対に必要です。
親の心境
「死にたい」と聞いた親の心は:
- 強い衝撃とショック
- 「自分の育て方が悪かったのか」という自責
- 「いつもの様子と違う」気付かなかった後悔
- 「これからどうすればいい」という不安
- 「他の家族にも知らせるべきか」という迷い
- 「仕事をどうするか」現実的な問題
これらすべてを同時に抱えるのは、想像を絶する重さです。
親が倒れたら元も子もない
子どもを支えるためには、親自身が立っていなければなりません。「子どものために」と頑張りすぎて親が倒れたら、家族全体が機能しなくなります。
親のセルフケア・具体的な方法
1. 誰かに話す
- 配偶者、信頼できる家族・友人
- 医療機関のカウンセラー
- オンラインカウンセリング(cotreeなど)
- 同じ経験のある家族会
2. 専門家に頼る
「親も心療内科」を躊躇しないでください。子どもの治療と並行して、親自身もケアを受けることが、長期的には子どもにとっても良い結果になります。
3. 自分のための時間を作る
週に1回でも、自分のための時間を確保してください。お風呂にゆっくり浸かる、好きな本を読む、散歩する——何でもいいです。
4. 感情を整理するツール
メンタルケアアプリ「Awarefy」のようなAI対話型ツールは、誰にも話せない感情を整理するのに役立ちます。深夜に一人で抱えそうな時、書き出すだけでも気持ちが軽くなります。
5. 休息
「眠れない」「食べられない」状態が続く時は、親自身が医療機関へ。「子どものことで」と相談して大丈夫です。
夫婦間の協力
一人の親に負担が集中しないように、夫婦間で役割分担と情報共有を。週1回でいいので、夫婦で話す時間を持ちましょう。
「完璧な親」を目指さない
「もっとこうしてあげれば」と自分を責めすぎないでください。あなたは最善を尽くしています。それで十分です。
親の自助グループ・ピアサポート
同じ経験を持つ親同士で支え合うことは、大きな力になります。一人で抱え込む孤独感が薄れ、「自分だけじゃない」と感じられる場が、長期戦を乗り切る力になります。
主な自助グループ
- KHJ全国ひきこもり家族会連合会:ひきこもり・希死念慮を含む幅広い悩み
- あしなが育英会の遺児支援:自死遺族のケア
- 各自治体の家族会:地域ごとに様々な会がある
- オンラインの親同士のコミュニティ:SNS、Facebookグループなど
参加する時の心構え
初めて参加する時は緊張するものですが、「話したくないなら話さなくていい」ルールがある会が多いです。まずは聞くだけでも、得るものは大きいです。
合わなければ別の場所を
カウンセラー選びと同じで、自助グループも相性があります。「合わない」と感じたら、別の会を試してみてください。
「生きていてくれてありがとう」を伝える
子どもが少し落ち着いてきた時、ぜひ伝えてほしい言葉があります。「生きていてくれてありがとう」「あなたがいてくれて、お父さん・お母さんは幸せ」——この言葉は、本人の存在価値を肯定する強いメッセージになります。
伝え方のポイント
- 過剰な演出はせず、自然な場面で
- 「いつもありがとう」程度の軽さでもOK
- 恥ずかしければメモや手紙でもいい
- 「ありがとう」の理由を具体的に
言葉が出てこなくても
言葉にするのが苦手な親御さんもいるでしょう。その場合は、行動で示すことも大切です。一緒に食事を作る、好きなものを買ってくる、何気ない会話を増やす——「あなたを大切に思っている」が伝わる行動を。
再発を防ぐための日常の工夫
一度落ち着いた後も、再発の可能性はあります。日常の中で意識したい工夫を整理します。
定期的な「声かけ」と「観察」
- 毎日の「おはよう」「おやすみ」を大切に
- 食事の様子、睡眠、表情を意識的に観察
- 「最近どう?」と気軽に聞ける関係
- 変化に気付いたら早めに相談
生活リズムの維持
- 規則正しい睡眠時間
- 朝の光を浴びる
- 適度な運動
- 栄養バランスの良い食事
- SNS・スマホ時間の管理
ストレス源の早期発見
本人を取り巻く環境の変化に注意。新学期、進学、友人関係の変化、家族のイベントなど、ストレスがかかりやすいタイミングを意識的にケア。
定期的な医療機関の受診
症状が落ち着いても、医師の指示通りに通院を続けることが大切。「もう治った」と勝手に判断して通院を止めるのは、再発の最大のリスクです。
「気を緩めすぎない」「気を張りすぎない」
過剰な警戒は本人を息苦しくします。かといって油断もできません。「いつもの生活の中で、さりげなく気にかける」バランスが理想です。
家族みんなで乗り越える姿勢
「死にたい」と言う子の問題は、家族全体の課題です。一人の親、本人だけの問題と切り離さず、家族みんなで取り組む姿勢が大切です。
夫婦間の連携
- 情報共有を密に
- 方針の一致
- お互いをねぎらう
- 役割分担と感謝
- 夫婦だけの時間も大切に
きょうだいへの説明
きょうだいにも、年齢に応じた説明を。「○○は今しんどい時期だから、家族みんなで支えよう」と簡潔に。「お兄ちゃん・お姉ちゃんに気を遣わなくていい」とも伝えます。
祖父母との関係
祖父母には、必要に応じて状況を共有。理解してくれる祖父母は大きな支えになります。理解されない場合は、無理に詳しく伝えず、距離を取ることも選択肢。
「家族の風景」を作り続ける
食事を一緒に取る、休日にどこかへ行く、何気ない会話を交わす——「いつも通りの家族の時間」が、本人にとって最大の安心になります。問題に振り回されすぎず、「家族らしい時間」を維持することも大切な治療です。
長期的な視点で考える
子どもの希死念慮への対応は、短期間で終わるものではありません。長期戦の覚悟を持ちましょう。
回復には時間がかかる
状態にもよりますが、安定するまでに数ヶ月〜数年かかることが普通です。「焦らない」「比較しない」「小さな変化を喜ぶ」スタンスが大切。
再発もある
一度落ち着いた後も、再発することがあります。「治った」と思って気を緩めず、定期的な医療機関の受診を継続してください。
本人の人生を尊重する
「学校に戻る」「進学する」「就職する」——既存のレールに乗せることが正解ではありません。本人にとって生きやすい道を、一緒に探していく姿勢が大切です。
自傷行為と希死念慮の関係
希死念慮を持つ子どもの中には、自傷行為を伴うケースが少なくありません。自傷行為と希死念慮は重なる部分もあれば、別物として理解すべき部分もあります。
自傷行為とは
自傷行為は、自分の身体を傷つける行為全般を指します。代表的なもの:
- リストカット(手首を切る)
- アームカット(腕を切る)
- 過剰服薬(オーバードーズ)
- 身体を叩く・引っ掻く
- 髪を抜く(抜毛症)
- 食事の極端な制限
- 身体を壁にぶつける
自傷の目的・心理
自傷行為の多くは「死ぬためではなく、生きるため」に行われます。
- 圧倒的な感情のコントロール
- 解離(現実感が薄れている)からの脱出
- 「生きている」感覚の確認
- 感情の表現手段(言葉にできない苦しみ)
- 自分への罰
- 達成感・コントロール感
つまり、自傷は「死にたい」というよりも「このしんどさをどうにかしたい」というSOSであることが多いのです。
自傷を見つけた時の対応
- パニックにならず、静かに受け止める
- 「なんで?」と問い詰めない
- 「やめなさい」と強制しない
- 「辛かったね」と気持ちを認める
- 傷の処置を一緒にする(病院も検討)
- 必ず専門機関に繋ぐ
「自傷=死にたい」ではないが軽視は禁物
自傷は死を目的としていないことが多いですが、エスカレートして致命的な事態になることもあります。「死ぬためじゃないから大丈夫」と軽視するのは絶対に避けてください。
年代別の対応——小学生から高校生まで
子どもの「死にたい」への対応は、年代によって特徴的な点があります。
小学生(特に低学年)
小学校低学年の「死にたい」は、大人の想像とは異なる意味を持つことが多いです。
- 言葉のリアルさが薄い(「死ぬ」の重みを十分理解していないこともある)
- 強い感情の極端な表現として使われる
- ゲームや漫画の影響で「死」を口にすることも
- 家族の関心を引きたいサイン
ただし、軽視は禁物。子どもが何を伝えたいのかを丁寧に聞くことが大切。「死にたいくらいしんどい」気持ちは本物です。
小学校高学年
友人関係の複雑化、性の意識の芽生え、自我の発達——様々な変化が重なる時期。
- いじめが背景にあることが多い
- 友人関係のグループ問題
- 「自分は普通と違う」という孤立感
- 性別違和の兆し
この年代では、本人が「家族には言いたくない」と感じることも増えます。親以外の信頼できる大人(スクールカウンセラーなど)に話せる場を作りましょう。
中学生
希死念慮のリスクが急上昇する時期です。日本の自殺者の年代別では、中学生〜高校生で増加し始めます。
- 学業のプレッシャー
- 進路への不安
- SNS・ネットでの誹謗中傷
- 友人関係の深刻なトラブル
- 恋愛問題
- 身体の変化への不適応
- 家庭環境の問題
この年代は本人が大人に相談しにくくなる時期。家庭での「いつでも話せる」雰囲気作りが重要です。
高校生〜大学生
自殺率がさらに上昇する年代。大人と同じレベルの対応が必要です。
- 進路・受験ストレス
- 就職活動
- 恋愛・性に関する悩み
- 家庭からの自立への不安
- 経済的な不安
- うつ病の発症リスクが高い
この年代では、家庭ベースだけでなく、大学のカウンセリング室、社会人ホットラインなど、より幅広いリソースを活用できます。
「死にたい」が薄れていく回復のステップ
希死念慮からの回復には、典型的な段階があります。「いつ良くなるんだろう」と不安な親御さんに、回復の道のりをイメージしてもらえる情報を提供します。
第1段階:危機介入期(最初の1〜2週間)
- 「死にたい」を初めて口にした直後
- 家族・医療機関が緊急対応
- 本人と家族のショック
- 受診・初期の治療開始
- 家庭内の安全環境整備
この時期は混乱期で、家族も本人も先が見えません。焦らず、目の前のことに集中することが大切。
第2段階:安定化期(2週間〜2ヶ月)
- 治療の本格化(薬物療法・カウンセリング)
- 少しずつ食事・睡眠が取れるように
- 「死にたい」の頻度が減ってくる
- 家族が対応に慣れてくる
- 学校との連携の体制
第3段階:再構築期(2〜6ヶ月)
- 本人の心の中で、生きる意味を再構築
- 新しい興味や活動が芽生える
- カウンセリングで自分を深く理解する
- 家族関係の再構築
- 少しずつ学校・社会との接点を増やす
第4段階:定着期(6ヶ月〜1年)
- 「死にたい」がほとんど出なくなる
- 生活リズムが整う
- 新しい人間関係や活動が定着
- 治療の頻度が減ってくる
- 本人が自分の状態を客観的に語れるように
第5段階:自立期(1年以降)
- 本人の自己管理能力が育つ
- 再発の兆候を本人が気付ける
- 家族のサポートが少なくても回る
- 新しい目標・進路への取り組み
注意:直線的には進まない
上記はあくまで「典型例」です。実際には:
- 段階を行ったり来たりする
- 一時的に悪化することがある
- 進学・転校・季節の変化で揺れる
- 恋愛・友人関係のトラブルで再燃
「一進一退」が普通だと心得て、長い目で見守ることが大切です。
日本の若者の自殺の現状——知っておきたい統計
「うちの子だけ」と思いがちですが、実は子どもの希死念慮や自殺は深刻な社会問題です。データを知ることで、より客観的に状況を理解できます。
厚生労働省・警察庁の統計から
近年の傾向:
- 小中高生の自殺者数は増加傾向(特にコロナ禍以降)
- 女子高生の自殺率上昇が顕著
- 原因は「学校問題」「家庭問題」「健康問題」が上位
- SNSが背景にあるケースも増加
子どもの「死にたい」は珍しくない
調査によれば、思春期の子どもの相当数が「死にたい」と考えたことがあると報告されています。それだけ、希死念慮は決して特殊な現象ではなく、家庭で出会う可能性のある問題です。
「うちの子に限って」「私の家庭は関係ない」と思わないこと。誰の家庭でも起こりうることだと知っておくことが、適切な対応の第一歩です。
社会全体の取り組み
近年、文部科学省、厚生労働省、自治体、民間団体が連携して「自殺予防」「いのちの教育」に取り組んでいます。学校でも自殺予防教育が行われるようになりました。社会全体で支える方向に向かっていることを、希望として持っておきましょう。
LGBTQ・性的マイノリティの子どもへの配慮
LGBTQの子どもは、自殺リスクが一般より高いことが研究で示されています。性自認・性的指向に関する悩みが、希死念慮の背景にあることも少なくありません。
サインに気付く
- 身体や性別への違和感を訴える
- 異性愛が前提の話題を避ける
- 同性の友人への強い感情
- 更衣・入浴を極端に嫌がる
- 性別表現に強いこだわり
親としての姿勢
本人が「カミングアウト」しなくても、親が「どんなあなたでも受け入れる」姿勢を示すことが、本人の安心につながります。
避けたい言葉:
- 「男らしくしなさい」「女らしくしなさい」
- 「いつか結婚するでしょう」(異性愛前提)
- 「孫の顔が見たい」
- 「気のせいだ」「思春期だから」
大切な姿勢:
- 本人の言葉をそのまま受け止める
- 「あなたのままで大丈夫」と伝える
- 多様な性のあり方を学ぶ姿勢
- 専門の相談窓口を一緒に探す
専門の相談窓口
- よりそいホットラインのセクシュアルマイノリティ専門ライン
- 各地のLGBTQ支援団体
- 性別違和専門外来(一部の医療機関)
希死念慮を理解するための本・リソース
本を読むことで、状況を客観的に理解する助けになります。親御さんが読んで参考になる書籍やリソースを紹介します。
親向けの基礎理解
- 『子どもの自殺予防』に関する一般向け書籍
- 『思春期のうつ病』の解説書
- 『発達障害の二次障害』に関する本
- 『家族で読むメンタルヘルス』入門書
大型書店の「精神医学・育児」コーナーや、図書館の「家族・子育て」棚で探してみてください。
本人向けの本
本人が「読みたい」と思った時のために:
- 同世代の闘病記・体験談
- 「死にたい」気持ちと向き合うエッセイ
- 気持ちを整理するワークブック
無理に読ませようとせず、「もし興味があれば」程度で。
動画・ドキュメンタリー
NHKや民放のドキュメンタリーでも、子どもの自殺・希死念慮について扱った番組があります。家族で見ることで、共通理解が深まることも。
専門家のオンライン情報
厚生労働省、各都道府県の精神保健福祉センター、子ども家庭支援センターなど、公的機関のウェブサイトには信頼できる情報が掲載されています。
親自身のためのメンタルケア
「死にたい」と言われた親御さんは、本当に消耗します。長期戦を乗り切るための親のセルフケアツールを紹介します。
オンラインカウンセリングの活用
子どものことで頭がいっぱいで自分のメンタルが追いつかない時、自宅から利用できるオンラインカウンセリング「cotree(コトリー)」のようなサービスは大きな支えになります。「子どもを支える親」を支えてくれる場所です。
メンタルケアアプリ
誰にも話せない夜中の不安を、AI対話型メンタルケアアプリ「Awarefy」のようなツールで言語化することで、感情の整理ができます。「書き出す」だけでも気持ちが軽くなることがあります。
休息の確保
「自分だけの時間」を意識的に確保。週に1回でも、自分の好きなことに没頭する時間があるだけで、メンタルの回復が違います。
身体のケアも忘れずに
心配・ストレスは身体にも影響します。睡眠、食事、運動——自分の身体をいたわることも、子どもを支えるための基盤です。
「今日も生きていてくれた」を喜ぶ姿勢
希死念慮を抱える子の親御さんの中には、「毎朝、子どもが生きていることを確認するのが日課」という方もいます。それほどの不安と緊張の中で生きているのです。
「特別なことが起きなくても、今日も家族で過ごせた」——その当たり前を、心の中で喜ぶ姿勢を持ってください。それが、長期戦を乗り切る心の支えになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. すぐ受診すべき?
A. 「行動に移しそう」「自傷行為が始まっている」「眠れない・食べられない状態」のどれかがあるなら、できるだけ早く(その日中〜数日以内)に受診してください。緊急性が高い場合は救急要請(119番)も選択肢です。
Q2. 言葉を引き出すには?
A. 質問を畳みかけず、「そう思うようになったきっかけ、もしよかったら教えてくれる?」と一度だけ聞く。答えなくても無理に引き出さない。「いつでも話せるよ」と一回伝えて、待つ姿勢が大事です。
Q3. 学校には伝えるべき?
A. 「死にたい」と言葉にする状態は、学校生活にも影響していることが多いです。担任、養護教諭、スクールカウンセラーに「家庭で気になる発言があった」と伝えると、学校での見守りが手厚くなります。本人の同意を取った上で伝えるのが理想ですが、緊急性が高い時は親の判断で伝えてOKです。
Q4. 親も限界の時は?
A. 「子どもの命を支える」のは、一人では無理なことです。配偶者、祖父母、医療機関、相談窓口、すべて使ってください。親御さん自身が心療内科でケアを受けることも、子どもを長期的に支えるために必要な投資です。
Q5. 何度も繰り返される
A. 「死にたい」が日常的な口癖になっている子もいます。「またか」と思わず、その都度受け止める姿勢を続けてください。並行して、医療機関での継続的なケアを進めましょう。慢性的な希死念慮には、長期的な治療が必要です。
Q6. 兄弟への影響が心配です
A. 兄弟も無意識のうちにストレスを感じている可能性があります。「○○は今しんどい時期だから、家族で支えてあげよう」と簡潔に伝え、兄弟だけの時間も意識的に作ってあげてください。兄弟自身も「自分を見て」のサインを出していないか確認を。
Q7. 「死にたい」と言ったあと普通に過ごしている
A. 一見落ち着いて見えても、心の中ではまだ揺れていることがあります。表面的な様子だけで判断せず、専門家に相談するのが安全です。「言ったけど元気そう」と油断しないでください。
Q8. SNSで死を匂わせる投稿を見つけた
A. 緊急性が高いサインです。本人に直接「投稿を見たよ、心配している」と伝え、すぐに専門機関に繋いでください。SNSの利用についても、本人と話し合いを。
Q9. 入院は必要ですか?
A. 「自分や他人を傷つけるリスクが高い」「家庭環境が回復を妨げている」「外来治療では不十分」と医師が判断した場合、入院治療が検討されます。入院は治療の選択肢の一つで、回復への大切なステップになることもあります。
Q10. 薬を使うことに抵抗があります
A. 抵抗を感じるのは自然なことですが、医師が必要と判断する薬は、症状を和らげ回復を助けます。「最小限・最短期間」が原則です。心理療法と並行して使うことで、効果が出やすくなります。
Q11. 「気持ちわかるよ」と言ってもいい?
A. 完全には分からないので、「気持ちわかる」は危険な言葉。「分かろうとしているよ」「あなたの気持ちを知りたい」と伝える方が誠実です。
Q12. カウンセリングだけで効きますか?
A. 症状の程度によります。軽症ならカウンセリングだけで改善することもありますが、中等症〜重症では薬物療法との併用が一般的です。医師の判断に従いましょう。
Q13. 親戚には伝えるべき?
A. 全ての親戚に伝える必要はありません。理解してくれる、サポートしてくれる人を選んで伝えるのが現実的。理解されない人に伝えると、二次的な傷を負うこともあります。
Q14. 本人が「親には話したくない」と言ったら
A. それは健全な反応でもあります。親以外の信頼できる大人(スクールカウンセラー、医師、養護教諭、信頼できる親戚など)に話せる相手がいれば、それは大きな救いになります。親に話さなくても専門家に話せる環境を整えましょう。
看護師視点でのまとめ
子どもの「死にたい」は、「今のしんどさを、誰かに分かってほしい」という渾身のサインです。否定せず、受け止め、専門家につなぎ、安全環境を整える。この4つを家庭で意識するだけで、子どもの「もう一人じゃない」感覚が育ち始めます。
大事なポイントを整理すると:
- 「死にたい」は軽視も否定もしない
- まず「話してくれてありがとう」と受け止める
- 励まし・説教・比較は逆効果
- 緊急度を判断して適切な対応を
- 必ず専門機関に繋ぐ
- 家庭の安全環境を整える
- 学校とも連携する
- 親自身のケアも絶対に必要
- 長期戦の覚悟を持つ
- 本人の人生を尊重する
そして親御さん自身も、絶対に一人で抱え込まないでください。「いのちの電話」「よりそいホットライン(0120-279-338)」「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」などの公的窓口は、今すぐ使える選択肢として記憶しておいてください。
子どもの命を守るために動き出すあなたの行動は、必ず子どもに届きます。一人で抱え込まず、すべての資源を使いながら、共に進んでいきましょう。応援しています。
緊急時の相談先(再掲)
- いのちの電話:0570-783-556(10時〜22時)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- チャイルドライン:0120-99-7777(16時〜21時・18歳まで)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
- 救急要請(緊急時):119
- 救急医療相談(夜間):#7119
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看護師として伝えたい「死にたい」という言葉の受け止め方
児童思春期精神科の現場で、「死にたい」という言葉を口にするお子さまと、数多く向き合ってきました。看護師として強くお伝えしたいのは、「お子さまが『死にたい』と言葉にした時、それは保護者の方を信頼している証でもある」ということです。本当に誰にも言えない時、人は言葉にすることすらできません。「死にたい」と打ち明けてくれたということは、お子さまが、保護者の方に助けを求めているサインなのです。
この言葉を聞いた時、保護者の方は強い動揺と恐怖を感じられると思います。「どうしよう」「何かの間違いでは」「自分の育て方が悪かったのか」――頭が真っ白になるのは当然です。けれど、看護師として現場でお伝えしているのは、「まず、お子さまの言葉を否定せずに受け止める」ことが、何よりも大切だということです。
「死にたい」と言われた時、つい「そんなこと言わないで」「死ぬなんて言うものじゃない」「あなたには家族がいるでしょう」と返してしまいたくなります。これは、お子さまを守りたいという愛情から出る言葉です。けれど、お子さまにとっては、「自分の気持ちを否定された」「分かってもらえなかった」という体験になり、心の扉を閉ざしてしまうことがあります。せっかく打ち明けてくれた言葉を、否定で返さない姿勢が大切です。
大切なのは、まず「そう感じるほど、辛いんだね」と、お子さまの苦しみそのものを受け止めることです。「死にたい」の奥にあるのは、多くの場合、「今の辛さから解放されたい」「この苦しみを分かってほしい」という気持ちです。その苦しみに寄り添い、「あなたの辛さを、私は受け止めたい」というメッセージを伝えることが、お子さまの心の支えになります。
「聴く」ことが、お子さまを支える
「死にたい」と打ち明けてくれたお子さまに対して、看護師として最も大切にしてほしいのは、「聴く」ことです。アドバイスをすることでも、励ますことでもなく、ただお子さまの気持ちを、丁寧に聴くこと。それが、お子さまの心を支える、何よりの関わりになります。
聴く時に大切なのは、お子さまのペースを尊重することです。「何があったの」「どうして」と問い詰めるのではなく、お子さまが話したいことを、話せるペースで話せるよう、静かに耳を傾けます。沈黙があっても、急かさず、待つ。お子さまが言葉にできない時は、無理に言葉を引き出そうとせず、「話したくなったら、いつでも聴くよ」と、扉を開けておく姿勢が大切です。
そして、お子さまが話してくれた内容を、評価せずに受け止めます。「そんなことで」「考えすぎだよ」と、お子さまの感じ方を軽く扱わないこと。お子さまにとっては、それが本当に耐えがたい苦しみなのです。「あなたにとって、それは本当に辛いことなんだね」と、お子さまの感じ方をそのまま受け止める姿勢が、お子さまの安心感を支えます。
看護師として現場で実感してきたのは、「死にたいほど辛い気持ちを、誰かに受け止めてもらえた」という体験そのものが、お子さまを少しずつ支えていく、ということです。問題が解決しなくても、苦しみが分かってもらえたという感覚が、お子さまが踏みとどまる力になります。聴くことには、それほど大きな力があります。
一人で抱え込まず、専門機関に繋ぐ
お子さまの「死にたい」という言葉を受け止めることは大切ですが、看護師として強くお伝えしたいのは、「保護者の方だけで抱え込まず、必ず専門機関に繋ぐ」ということです。希死念慮(死にたいという気持ち)は、専門的な支援が必要なサインです。家庭での受け止めと並行して、専門機関のサポートを受けることが、お子さまの安全を守ります。
相談先として、まず児童精神科や思春期外来があります。お子さまの心の状態を専門的に評価し、必要な治療やサポートを受けることができます。また、すでにかかりつけの医療機関がある場合は、まずそこに相談するのもよいでしょう。学校に通っているお子さまの場合は、スクールカウンセラーや養護教諭も相談先になります。
そして、緊急性が高いと感じた時――今まさに、お子さまの安全が脅かされていると感じた時――は、迷わず救急(119)や、地域の精神科救急情報センター、いのちの電話などの緊急窓口に連絡してください。「大げさかもしれない」と迷う気持ちがあっても、お子さまの命に関わる場面では、迷わず助けを求めることが何よりも大切です。本記事内に記載した緊急連絡先も、ぜひ控えておいていただきたいと思います。
専門機関に繋ぐことは、保護者の方の力不足ではありません。むしろ、お子さまを守るための、最も適切で勇気ある選択です。希死念慮への対応は、専門的な知識と経験を要するものであり、家庭だけで抱えるには重すぎる課題です。専門家と一緒に、チームでお子さまを支えていく姿勢が、お子さまの安全と回復を支えます。
「死にたい」の背景にあるものを理解する
お子さまが「死にたい」と感じる背景には、必ず理由があります。看護師として現場でお伝えしているのは、「『死にたい』は、本当に死を望んでいるというより、『今の耐えがたい状況から逃れたい』という叫びであることが多い」ということです。その背景を理解することが、お子さまを支える手がかりになります。
背景には、学校での人間関係の悩み、いじめ、勉強でのつまずき、自己肯定感の低さ、家庭の状況、抑うつなどの心の不調など、様々な要因が複雑に絡んでいることがあります。一つの原因ではなく、複数の苦しみが積み重なって、「もう耐えられない」という限界に達していることが多いのです。これらは、お子さま自身も言葉にできず、整理できていないことがほとんどです。
背景を理解することは大切ですが、保護者の方が一人ですべての原因を突き止めようとする必要はありません。むしろ、原因を問い詰めることが、お子さまの負担になることもあります。背景の理解は、専門家と一緒に、時間をかけて少しずつ進めていくものです。保護者の方の役割は、原因を解明することよりも、お子さまの「今の苦しみ」を受け止め、安全を守り、専門機関に繋ぐことです。
そして、お子さまの「死にたい」という気持ちは、適切な支援によって、少しずつ和らいでいくものです。今は出口が見えない真っ暗な状態に感じられても、専門的な支援と、周囲の温かい関わりの中で、お子さまは必ず少しずつ回復していきます。看護師として、現場で多くのお子さまが、深い苦しみから少しずつ立ち直っていく姿を見届けてきました。希望を持ち続けることが、お子さまを支える力になります。
保護者の方ご自身のケアも忘れずに
お子さまの「死にたい」という言葉に向き合う日々は、保護者の方にとって、計り知れないほどの精神的な負担です。看護師として現場でお伝えしているのは、「保護者の方ご自身のケアも、お子さまを支えるために欠かせない」ということです。
お子さまの安全を気にかけ続ける緊張、いつまた同じ言葉を聞くかという不安、自分を責める気持ち――こうした感情を抱えながら、保護者の方は日々を過ごしておられます。この負担を、保護者の方一人で抱え込むのは、あまりにも重すぎます。配偶者やパートナー、信頼できる人と気持ちを分かち合い、専門家のサポートを受けることが、保護者の方ご自身を支えます。
そして、お子さまを支える専門機関は、保護者の方の相談にも乗ってくれます。「どう関わればいいか」「自分の対応は正しいのか」という不安を、専門家と共有することで、保護者の方の心の負担が和らぎます。保護者の方ご自身も、必要に応じてカウンセリングや、保護者向けの相談窓口を活用していただきたいと思います。
保護者の方が心身ともに消耗してしまうと、お子さまを支える力も弱まってしまいます。「自分のケアをすること」は、お子さまを長く支え続けるために必要なことです。罪悪感を持たず、ご自身を労る時間を、意識的に確保していただきたいと思います。
看護師として、ご家族へお伝えしたいこと
本記事を最後までお読みくださって、ありがとうございました。お子さまの「死にたい」という言葉に向き合い、本記事に辿り着かれた保護者の方の、お子さまへの深い愛情と、その大きな不安を感じています。
「死にたい」という言葉は、保護者の方にとって、最も聞きたくない、最も恐ろしい言葉だと思います。けれど、その言葉を打ち明けてくれたお子さまは、まだ「助けてほしい」という気持ちを持っています。その気持ちを受け止め、専門機関と一緒に支えていくことで、お子さまは少しずつ、生きる力を取り戻していきます。
一人で抱え込まないでください。お子さまの命を、保護者の方一人で背負う必要はありません。児童精神科、スクールカウンセラー、いのちの電話、よりそいホットライン、地域の相談窓口――お子さまとご家族を支える場所は、必ずあります。迷った時は、迷ったその時点で、助けを求めてください。それが、お子さまを守る一番の方法です。
看護師として、現場から、ご家族の毎日を心から応援しています。今がどんなに辛く、暗い時期でも、お子さまの命には、必ず希望があります。専門家と、ご家族と、みんなでお子さまを支えていきましょう。あなたは一人ではありません。
日常の中で「見守り続ける」ということ
「死にたい」という言葉を一度受け止めた後も、お子さまへの見守りは続いていきます。看護師として現場でお伝えしているのは、「一度落ち着いたように見えても、見守りを緩めない」ことの大切さです。希死念慮は、波があります。落ち着いている時期もあれば、再び強くなる時期もあります。長い目で、お子さまの状態を見守り続ける姿勢が大切です。
日常の見守りで大切なのは、お子さまの小さな変化に気づくことです。表情、食欲、睡眠、言葉数、好きなことへの関心――こうした日常の様子に、心の状態が表れます。「いつもと違う」と感じたら、さりげなく声をかけ、お子さまの気持ちに寄り添う。こうした日々の積み重ねが、お子さまの安全を支えます。
そして、見守りは「監視」とは違います。お子さまを四六時中見張るのではなく、お子さまが「見守られている」「気にかけてもらえている」と感じられる、温かい関わりを続けることです。過度に干渉すると、お子さまは息苦しさを感じてしまいます。適度な距離を保ちながら、お子さまが助けを求めた時にはいつでも応じられる――そんな見守りの姿勢が、お子さまの安心感を支えます。
看護師として、現場で多くのお子さまとご家族を見てきて、長い時間をかけて、お子さまが少しずつ回復し、「あの時は本当に辛かった」と振り返れるようになる姿を、何度も見届けてきました。今は出口の見えない時期でも、見守り続け、支え続けることで、お子さまは必ず前に進んでいきます。焦らず、専門機関と一緒に、お子さまを支えていきましょう。
そして、お子さまが少しでも前向きな表情を見せた時、好きなことに関心を示した時、何気ない会話ができた時――そうした小さな瞬間を、どうか大切にしてください。それは、お子さまの中に、生きる力が確かに残っている証です。その小さな光を、保護者の方が見つけ、温かく見守っていくことが、お子さまの回復を支えます。
看護師として、現場から、ご家族の毎日を心から応援しています。今、想像を絶する不安の中にいらっしゃる保護者の方へ。あなたは、よく頑張っています。一人で抱え込まず、専門家とご家族と、みんなでお子さまを支えていきましょう。お子さまの命にも、あなたの心にも、必ず希望があります。本日も、本当にお疲れさまでした。
もう一度お伝えします。お子さまの安全が今まさに脅かされていると感じた時は、ためらわず救急(119)や、いのちの電話、よりそいホットライン、地域の精神科救急情報センターに連絡してください。迷う気持ちがあっても、命に関わる場面では、迷わず助けを求めることが、何よりも大切です。あなたとお子さまを支える窓口は、24時間、必ず開いています。
あなたがこの記事を読んでくださったこと、お子さまのために学ぼうとしてくださっていること――それ自体が、お子さまへの深い愛情の証です。その愛情は、必ずお子さまに届いています。どうか、ご自身を責めず、一歩ずつ進んでいってください。
あなたとお子さまが、また穏やかに笑い合える日が訪れることを、看護師として、現場から心から願っています。
あなたは、一人ではありません。
どうか、ご自身も大切になさってくださいね。


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