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「うちの子、人混みですぐ疲れてしまう」
「ちょっとしたことで涙が出てしまう」
「環境の変化にすごく敏感で、新学期が憂うつ」
こうしたお子さんの様子に、心配や戸惑いを感じている親御さんは少なくありません。近年、こうした特徴を持つ子を「HSC(ひといちばい敏感な子)」と呼ぶ考え方が広まっています。
私は児童思春期精神科の病棟で5年間、多くの子どもたちと関わってきました。その中には、周りの音や人の感情に強く影響を受けて、疲れてしまう子もたくさんいました。今日は、HSCという考え方と、看護師として現場で大切にしてきた関わり方をお伝えします。
HSCとは|病気ではなく「気質」のひとつ
HSC(Highly Sensitive Child)は、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した概念で、「生まれつき感受性が強く、刺激に対して敏感に反応する気質を持つ子ども」を指します。
重要なのは、HSCは病気でも発達障害でもなく、その子の個性のひとつだということです。およそ5人に1人の子どもがこの気質を持つと言われており、決して珍しいことではありません。
医学的な診断名ではないので、病院で「HSCです」と診断されることはありません。けれど、この考え方を知っておくことで、「うちの子は気にしすぎ」と責めるのではなく、個性として受け入れる視点を得ることができます。
HSCの4つの特徴「DOES」
アーロン博士は、HSCの特徴を4つの頭文字「DOES」でまとめています。
- D(Depth)深く考える:物事を深く考え、年齢より大人びた発言をすることがある
- O(Overstimulation)刺激を受けやすい:人混み、大きな音、新しい環境にすぐ疲れる
- E(Emotional response)感情反応が強い、共感力が高い:他人の気持ちを自分のことのように感じる
- S(Sensitivity to subtleties)小さな変化に気づく:家族の表情の変化、服のタグの違和感などに敏感
この4つ全てに当てはまる子もいれば、一部だけ強く出る子もいます。大切なのは「当てはまるかどうか」よりも、その子の「感じやすさ」を理解してあげることです。
病棟で見てきたHSCの子の姿
病棟では、環境の変化に強く反応して体調を崩す子、ほかの子の泣き声で自分まで落ち着かなくなってしまう子をよく見てきました。
でも同時に、そうした子どもたちは驚くほど優しく、細やかで、周りをよく見ていることにも気づきました。新しく入院してきた子に一番に声をかけるのも、スタッフの体調の変化にいち早く気づくのも、こうした敏感さを持つ子たちが多かったのです。
以前、感覚過敏のために人の多い場所ではイヤーマフを使って耳を守っている子と関わったことがあります。刺激を避けるため、病棟では少し離れた場所で静かに過ごしていることが多い子でした。けれど、その子は私たち看護師一人ひとりの話し方や関わり方から、「この看護師さんは優しいけど少し急いでいる」「今日はいつもと声の感じが違うね」と、それぞれの性格や体調まで驚くほど的確に見抜いていたのです。本人は言葉を多く発するタイプではなかったからこそ、その観察眼の深さにハッとさせられることが何度もありました。
また、スタッフが勤務時間を過ぎても仕事を続けていると、ナースステーションの窓にそっと張り付いて「残業だめ!」と心配そうに声をかけてくれる子どもたちもいました。折り紙で小さなプレゼントを作ってくれたり、絵を描いて「これあげる」と差し出してくれたり。自分自身の不調と向き合うだけで精一杯のはずなのに、周りの大人のことまで気にかけてくれる。そうした姿に、胸が温かくなる場面が何度もありました。
敏感さは「困った性質」ではなく、その子の大切な才能でもあります。
HSCの子への関わり方|大切にしたい3つのこと
① 刺激の量を調整する
HSCの子は、人より多くの情報を受け取るため、同じ時間を過ごしても疲労度が大きいことがあります。
- お出かけの予定を詰め込まない
- 人混みのあとは、静かな時間を意識的に取る
- 学校から帰ったら、一人になれる空間を作る
- テレビやスマホの音量・時間を意識する
「休息の時間」は、HSCの子にとって必要不可欠なものです。
② 感情を否定せず、受け止める
「そんなことで泣かないの」「気にしすぎだよ」という言葉は、HSCの子の心を深く傷つけます。感じていることそのものが「間違い」だと伝わってしまうからです。
代わりに「そう感じたんだね」「それだけしっかり感じ取れるのは、素敵なことだよ」と、感じていることそのものを肯定してあげてください。子どもは自分の感受性を「大切な個性」として育てていけるようになります。
③ 一人でクールダウンできる場所を作る
病棟では、刺激で疲れた子のために「落ち着ける小さなスペース」を用意していました。ご家庭でも、布団の中、押し入れの隅、階段下など、「そこに行けば安心できる場所」を決めておくと、子どもの心が守られます。
「疲れたら、そこでしばらくゆっくりしていいよ」というメッセージを、日頃から伝えておきましょう。
HSCと発達障害は違う|専門機関への相談の目安
HSCは気質であり、発達障害(ASD、ADHDなど)とは異なるものです。ただし、症状や行動が似て見えることもあり、見分けが難しい場合もあります。
以下のような様子が続く場合は、一度専門機関に相談することも検討してください。
- 学校や集団生活が極端に続けられない
- 感覚過敏により日常生活に大きな支障が出ている
- 体調不良(腹痛、頭痛)や睡眠の乱れが慢性的
- 子ども自身が強い生きづらさを訴えている
詳しくは発達障害グレーゾーンの記事やカウンセリングの選び方もご参考にしてください。
おわりに|敏感さは、その子の大切な個性
HSCの考え方を知ると、「うちの子は気にしすぎ」ではなく「細やかで感じる力のある子」と見方が変わります。
敏感さは、生きづらさにつながることもあれば、豊かな感性や優しさとして花開くこともあります。大切なのは、その子の気質を否定せず、受け止めて寄り添う大人がそばにいること。現場で多くの子どもたちを見てきた看護師として、私はそう確信しています。
お子さんのペースで、ゆっくり、その子らしい育ち方を見守っていきましょう。


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