この記事の要点
- 不安が強い子には、無理に言葉を引き出そうとせず、短いやり取りから関わっています。
- 分離不安への入院中の関わりでは、母親に加えて看護師やほかの大人にも相談できるよう、支援の幅を広げることを目指しています。
- 入院中の電話への対応を、そのまま家庭で行う方法として勧めるものではありません。
- 本人の不安だけでなく、保護者自身の健康や負担にも目を向けています。
児童思春期精神科病棟で働く看護師の星野レンです。「家族と離れるのが難しい」「人と話す場面で緊張が強い」といった子どもに、病棟でどのように関わっているかをお伝えします。
私の実務上の経験と、公的機関・専門学会の資料による一般的な説明を分けて紹介します。不安の背景や必要な支援は一人ひとり異なります。この記事だけで不安症と判断したり、入院中の対応を家庭でそのまま再現したりせず、個別の対応は担当の医療者と相談してください。
子どもの不安と、不安症の違い
成長に伴って、家族と離れることや人前に出ることなどに不安を感じることがあります。不安があるというだけで、不安症とは限りません。一方、強い不安が続き、本人のつらさや日々の生活への影響がある場合は、専門家に相談する手がかりになります。
不安症には、家族などから離れることへの不安が強い分離不安症、人に注目される場面などで不安が強い社交不安症、さまざまなことへの心配が続く全般不安症などがあります。診断は、症状の現れ方や発達段階、生活への影響などを確認して医師が行います。米国児童青年精神医学会(AACAP)「不安症についてのFAQ」
登校できているかどうかだけで、支援の必要性を決めないでください。また、登校しぶりの原因を不安だけに決めつけず、体調や学校で起きていることも含めて確認することが大切です。
不安が強い子には、短い挨拶から
不安が強い子に対して、私は最初から会話を広げようとはしません。挨拶など、簡単で短いやり取りを続けます。無理に話そうとしたり、言葉を引き出そうとしたりしないことを心がけています。
病棟では、ほかの入院中の子が話しかけに行くなど、子ども同士の関わりが生まれることもあります。少しずつ緊張がほぐれてきたところで、遊んでいるゲームが面白いかを尋ねたり、そのときの表情を見たりしながら、本人の状態を確かめていきます。
資料による補足として、英国の診療指針NICEは、社交不安のある子が初対面の相手に話しにくいことなどに配慮し、文字や絵といった方法でも本人が伝えられる機会を設けるよう勧めています。会話の量だけで本人の状態を判断しないための参考になります。NICE「社交不安症の診療指針」子どもとのコミュニケーション
分離不安への関わり|相談できる相手を広げる
分離不安が強い子から、毎日「ママに電話したい」「声が聞きたい」といった希望が出ることがあります。入院中には、治療の一環として電話の希望に応じない対応をとることがあります。医師の指示によることが多いですが、看護師側からこの対応を提案することもあります。
その際に目を向けるのは、本人が何に不安を感じているのか、母親でなければ難しいと感じるのはなぜか、ということです。母親に加えて、看護師やほかの大人にも相談したり、不安を打ち明けたりできるよう、関わる相手を広げていきます。その関わりを通じて、本人が自分の不安に対処する力を身につけていくことを目指しています。
ここで紹介しているのは、私が関わっている入院治療の中での対応です。家庭で一律に電話や面会を断ったり、急に母親から離したりすることを勧めるものではありません。連絡や付き添いの調整が必要か、どのように進めるかは、本人の状態を踏まえて担当の医療者と相談してください。AACAPも、子どもと家族の必要に合わせて治療計画を立てると説明しています。AACAP「不安症についてのFAQ」
不安の内容に目を向けることは、話せない理由を問い詰めることではありません。また、不安に対処する力を育てることは、助けを求めず一人で解決させることでもありません。
保護者へ伝えていること
保護者には、入院に至るまでさまざまな苦労があったことを念頭に、まずその苦労をねぎらう言葉を伝えています。
外泊から病棟に戻った際などに保護者から話を聞くときは、最後に、保護者自身も体に気をつけてほしいと伝えています。子どもの様子を確認するだけでなく、保護者自身の健康にも目を向けています。
外泊などが思うようにいかず、落ち込んでいる保護者には、「失敗」ではなく、次に活かせる経験を得たと捉えてほしいと伝えています。
家庭での関わりを考えるとき
ここからは、病棟での経験を踏まえた家庭向けの提案です。入院中と同じ対応を行う指示ではありません。
話すこと自体が負担になっているときは、その場で理由を説明させようとせず、短い声かけにとどめる方法もあります。本人が話せるタイミングや方法を探しながら、言葉以外の様子にも目を向けてください。
「大丈夫」と言うことを一律に禁止する必要はありません。一方、何度答えても本人の不安が強いままで、本人や家族が困っている場合は、どのような場面で、どのようなやり取りが続いているかを担当の医療者へ伝えてください。返答や付き添いを変える必要があるかは、具体的な状況をもとに相談します。
学校への参加についても、無理に連れていくか、すべて避けるかを家庭だけで決めきろうとせず、本人の体調や学校での安全を確認し、学校や医療者と対応を考えてください。
腹痛・頭痛、食事や睡眠の変化にも目を向ける
子どもの不調は、気持ちの訴えだけでなく、睡眠・食欲・体調・行動の変化に現れることがあります。寝つけない、食べる量が変わった、腹痛や頭痛を訴える、人と過ごす様子が変わったなど、普段との違いを相談先へ伝えてください。厚生労働省「こころのSOSサインに気づく」
身体の症状があるときは、最初から「不安のせい」「仮病」と決めつけず、小児科などで相談してください。検査で異常が見つからなかったということだけでも、不安症とは判断できません。症状が続く場合は、その後の変化を診察した医師へ伝えます。受診先については児童精神科と小児科の選び方も参照してください。
相談のタイミングと治療
不安で本人がつらそうなとき、食事や睡眠、家庭・学校での生活に影響が出ているときは、専門家に相談してください。家族が対応に困っていることも、相談で伝えてよい内容です。一定の期間が過ぎるまで待たなければならないわけではありません。
相談の際には、いつ・どのような場面で不安が強くなるか、本人の言葉、生活の変化、これまで行った対応を、分かる範囲で伝えます。本人が理由を説明できない場合も、家族が気づいたことから相談できます。
治療には心理療法などがあり、症状に応じて薬を検討する場合もあります。方法は子どもと家族の状況に合わせて選びます。AACAP「不安症についてのFAQ」
認知行動療法(CBT)は、考え方や行動の傾向を本人と支援者が一緒に整理し、困りごとへの対処を学ぶ心理療法です。治療の進め方、受けられる場所、費用などは医療機関に確認してください。国立精神・神経医療研究センター「認知行動療法」
命や身体に危険が迫っている場合
「死にたい」と話したときや、自分を傷つける行動があるときは、不安の話を聞くだけで対応を終えず、医療機関などへ状況を伝えてください。自殺の危険が感じられる場合は、安全を確保できる範囲で一人にせず、危険が切迫しているときは速やかに緊急の支援を求めます。厚生労働省「『消えてしまいたい』というサイン」
意識や呼吸の異常、大きなけがなど救急対応が必要な場合は119番、暴力などで警察の緊急対応が必要な場合は110番です。通常の予約日や相談窓口の受付開始を待たないでください。厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」/警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」
緊急ではない相談先が分からない場合は、地域の保健所・保健センター・精神保健福祉センターなどへ相談できます。厚生労働省「困ったときの相談先」
看護師視点でのまとめ
私が不安の強い子との関わりで心がけているのは、無理に話そうとせず、言葉を引き出そうとしないことです。短い挨拶から始め、緊張がほぐれてきた場面で、遊びの様子や表情も含めて本人の状態を確かめます。
分離不安への関わりでは、不安の内容に目を向け、母親以外にも相談できる相手を広げることを目指しています。そして、保護者自身の健康にも目を向け、うまくいかなかった経験を次に活かすための関わりを続けています。
著者について
星野レン。2018年4月から看護師として勤務(2か月のブランクあり)。2021年4月から児童思春期精神科病棟に携わっています。この記事の経験部分は、特定の患者の経過ではなく、実務で心がけている関わり方をまとめたものです。
本記事は一看護師の経験と一般的な情報を整理したものです。個別の診断や治療指示に代わるものではありません。参考資料は各段落のリンク先に掲載しています。情報確認日:2026年9月20日。


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