孫が不登校になったおじいちゃん・おばあちゃんへ|孫と親を支える言葉・傷つける言葉【児童精神科看護師が解説】

祖父母と孫の不登校を表すやさしい水彩タッチのイラスト 不登校

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この記事の要点

  • 不登校は今、全国で35万人超(令和6年度は35万3970人で過去最多)。「特別な家庭の問題」の時代は終わりました
  • 国の方針も「無理に登校させない・休養の必要性を認める」に変わっています
  • 「甘やかしでは」「昔はいなかった」は、孫と子育て中の親をいちばん深く傷つける言葉
  • 祖父母の最強の役割は「評価しない避難所」。学校の話をしない大人の存在が孫を救う
  • いちばんの支援は、孫より先に「親(あなたのお子さん)」をねぎらうこと

こんにちは。児童思春期精神科の病棟で働く看護師の星野レンです。この記事は、いつもと少し違って、お孫さんが学校に行けなくなった「おじいちゃん・おばあちゃん」に向けて書きます。親御さんへ——もしご自身の親世代との温度差に悩んでいたら、この記事をそのまま共有してください。「これを読んでほしい」と渡せる手紙のつもりで書きました(親御さん自身の悩みには祖父母との理解のズレの記事があります)。

お盆や帰省で、久しぶりにお孫さんに会う方も多い時期です。学校に行けていないと聞いて、心配で、何か言ってあげなければと思っておられるかもしれません。その気持ちは、間違いなく愛情です。ただ、その愛情が届く形になるように、今の不登校について、現場からいくつかお伝えさせてください。

まず知ってほしいこと:時代は本当に変わりました

皆さんが子育てをされていた頃と、今とでは、不登校をめぐる状況が大きく変わっています。いま、学校に行けない小中学生は全国で34万人を超えています。1クラスに1人か2人いる計算で、もはや「特別な家庭の、特別な子の問題」ではありません。

そして、国の方針そのものが変わりました。文部科学省は現在、不登校の子どもへの対応について「学校に登校するという結果のみを目標にしない」「休養が必要な場合がある」ことをはっきり認めています。フリースクールや自宅学習など、学校以外の学びの場も制度として認められるようになりました。「何が何でも学校へ」は、今や国の方針ですらないのです。

つまり、親御さん(あなたのお子さん)が無理に登校させていないのは、甘やかしでも諦めでもなく、今の時代の標準的で正しい対応だということです。まずここを知っていただくだけで、家族の会話はずいぶん変わります。

「昔はそんな子いなかった」が事実と違う理由

「私たちの頃は、嫌でもみんな学校に行った」「昔はそんな子はいなかった」——そう感じられるのは自然です。ただ、現場から見える実態を申し上げると、昔も「行けない子」はいました。ただ、その多くが無理を重ねて通い続け、大人になってから心身の不調という形でツケを払ったり、あるいは静かに学校から消えて誰にも数えられなかったりしただけです。

今は、子どもの心の悲鳴を早く見つけて、折れ切ってしまう前に休ませる時代になりました。数が増えたように見えるのは、悲鳴を無視しなくなったから、という側面が大きいのです。それは社会の後退ではなく、進歩です。

孫と親を深く傷つけてしまう言葉

愛情から出た言葉でも、次の言葉は、お孫さんとその親を深く傷つけます。病棟で、これらの言葉に傷ついてきた親子を数え切れないほど見てきました。

  • 「甘やかしているからだ」——親御さんは毎日、誰よりも自分を責めています。その傷口に塩を塗る言葉です
  • 「昔はそんな子はいなかった」——「あなたはおかしい」と孫に直接言うのと同じ響きになります
  • 「学校ぐらい行かないでどうする」——本人がいちばん分かっていて、いちばんできずに苦しんでいることです
  • 「私が話してやろう」「連れて行ってやろう」——善意の介入が、子どもの逃げ場を奪います
  • きょうだいや従兄弟との比較——「◯◯ちゃんは頑張ってるのに」は、孫の心に長く残る棘になります

もし過去に言ってしまっていても、大丈夫です。今日から言わない、それだけで十分に取り返せます。

祖父母にしかできない、最高の役割

では、何もしないのが正解なのか。いいえ。祖父母には、親にも学校にもできない役割があります。それは「評価しない避難所」になることです。

学校に行けない子どもの毎日は、実は評価だらけです。親の表情、先生からの電話、周囲の視線——どこにいても「学校」がついてきます。そんな中で、学校の話を一切しない大人、会うと将棋や釣りや畑や料理の話しかしないおじいちゃん・おばあちゃんの存在は、子どもにとって砂漠のオアシスのようなものです。

「学校どうだ」と聞かない。代わりに「大きくなったなあ」「また来いよ」「一緒に餃子を包もう」。それだけでいい。病棟の子どもたちに「安心できる人は誰?」と聞くと、「ばあちゃん」「じいちゃん」という答えが本当によく返ってきます。理由を聞くと、みんな同じことを言います——「何も聞かないでいてくれるから」

孫より先に、親(あなたのお子さん)をねぎらってください

そして、これがこの記事でいちばんお伝えしたいことです。お孫さんの回復にいちばん効くのは、実は親が安定していることです。そして親がいま何に飢えているかというと、助言ではなく、ねぎらいです。

不登校の子の親は、毎日が綱渡りです。仕事を調整し、学校と連絡を取り、昼食を用意し、世間の視線と自分の不安と戦っている。そこに実の親から「あなたの育て方が」と言われるのと、「あなたはよくやっている。私はあなたの味方だ」と言われるのとでは、翌日からの体力がまったく違います。

助言をしたくなったら、こう言い換えてみてください。「何か手伝えることはあるか?」。昼食を一食分作って届ける、通院の送迎を代わる、きょうだいを遊びに連れ出す——具体的な手伝いは、百の助言より雄弁に愛情を伝えます。

お盆・帰省で会うときの心得5つ

ちょうど帰省の季節ですので、実践編を5つにまとめます。

  • ①学校・勉強の話題を出さないと、事前に心に決めておく(その場で我慢するのは案外難しいものです)
  • ②親戚一同の前で不登校の話をしない。「あの子、学校は?」と聞く親戚がいたら、さりげなく話題を変えて守ってあげてください
  • ③来られなかったら、責めない。人が集まる場が今つらい時期かもしれません。「元気になったらまた来い」と伝言だけ
  • ④変化を指摘しない。「痩せたな」「顔色が悪い」も、本人には評価に聞こえます
  • ⑤帰り際にひとこと。「あなたが来てくれてうれしかった」。学校に行けても行けなくても変わらない愛情を、言葉にして持たせてあげてください

お金の支援をしたいとき:「口は出さず、そっと出す」の作法

経済面の支援を考えておられる方もいるでしょう。実際、不登校にはお金がかかります。フリースクールは月数万円かかることが多く、公的な支援はまだ限られています。カウンセリング、通院、教材——親御さんの家計には見えない負担が積み重なっています。

支援の申し出は、大きな力になります。ただし作法がひとつだけ。お金に意見をつけないことです。「塾に行かせるなら出す」「学校に戻る努力をするなら」と条件をつけた瞬間、支援は圧力に変わります。「使い道はあなたたちが決めていい。必要なときに言ってくれ」——この渡し方ができれば、あなたの支援は本当の意味で家族を支えます。

遠方に住んでいる場合:会えなくてもできること

遠くに住んでいて年に数回しか会えない方も、できることはあります。むしろ距離がある分、「評価しない存在」になりやすいという強みさえあります。

おすすめは、学校と関係のない定期便です。畑の野菜を送る、孫の好物を送る、季節の便りを書く。返事を求めないのがコツです。LINEができるなら、「じいちゃんの畑のスイカ、今年はでかいぞ」と写真を送る。既読がつかなくても気にしない。「あなたを気にかけている。でも何も要求しない」という発信を、細く長く続けてください。返事のない手紙も、子どもはちゃんと読んでいます——これは病棟で何度も確かめてきた事実です。

祖父母同士でも、足並みをそろえてください

最後に、意外な盲点をひとつ。おじいちゃんとおばあちゃんの間で方針が割れているご家庭が、実は少なくありません。おばあちゃんは見守り派なのに、おじいちゃんが会うたびに「学校はどうした」と言ってしまう——このパターンです。

孫にとって、祖父母の家が「安全な場所かどうか」は、二人のうち厳しいほうの言動で決まってしまいます。せっかくの避難所が、片方の一言で立入禁止になるのはもったいない。この記事を、ぜひご夫婦で共有して、「うちでは学校の話はしない」を二人の共通ルールにしてください。孫の前で意見が割れそうになったら、その話は孫が帰った後に。

現場の小さな風景から(複数の事例を合成しています)

長く入院していた中学生に、面会の帰り際、おじいちゃんがぼそっと言ったそうです。「学校なんか行っても行かんでも、お前はわしの自慢の孫や」。その子はその夜、枕に顔を埋めて泣いて、翌朝、私にこう言いました。「じいちゃんだけは、おれが何にもできなくても、おれのままでいいんだって」。

回復の転機は、治療や登校刺激ではなく、こういう一言であることが、現場では本当に多いのです。祖父母の言葉には、親とも先生とも違う、独特の重みと温かさがあります。その力を、どうか「登校させる」方向ではなく、「存在を認める」方向に使ってください。

よくある質問

Q1. それでも、学校には行くべきだと思ってしまいます。

そう思うこと自体は自由ですし、学校教育を大切に思う気持ちは立派なものです。ただ、その考えを孫や親に伝えることが、回復を早めるか遅らせるか——答えは遅らせる、です。意見を持つことと、口にすることを分けていただければ十分です。

Q2. 孫に会ったら、何と声をかければいいですか?

「よく来たな」「大きくなったな」「飯食ってけ」。それで満点です。気の利いた励ましは要りません。もし二人きりの時間ができて、孫が自分から話し始めたら、そのときだけ、口を挟まずに聞いてあげてください。

Q3. 親(自分の子)が疲れ果てているように見えます。

よく見ておられます。実際、不登校対応で最初に倒れるのは親であることが多いのです。「たまには夫婦で出かけておいで。孫と留守番してるから」——この申し出ができるのは祖父母だけです。親の休息については「休んでいい理由」の記事を、そっと勧めてあげてください。

Q4. もっと不登校のことを知りたいのですが。

その気持ちが何よりの支援です。全体像は不登校 完全ガイドにまとまっています。少し長い記事ですが、目次から気になるところだけでも読んでいただければ、親子との会話の土台が変わるはずです。

Q5. 帰省しても、孫が部屋から出てきません。嫌われているのでしょうか?

嫌われているのではなく、「学校のことを聞かれるかもしれない場」に出る力が、今ないだけです。ドア越しに「来たぞ。無理して出てこんでいい。お土産置いとくからな」とだけ声をかけて、あとは普通に過ごしてください。会えなくても、その声は届いています。「出てこられない自分を責めなかった大人」として、あなたは孫の記憶に残ります。

今夜これだけ

今度会ったら(または電話で)、お孫さんではなく、まず親であるあなたのお子さんに一言だけ——「あなたはよくやってるよ」。それがお孫さんへの最短の支援です。

まとめ:孫の一生の記憶に残るのは「味方でいてくれた人」

不登校は34万人の時代になり、国の方針も「休ませて支える」に変わりました。祖父母の役割は、登校させることではなく、学校の話をしない避難所になること。そして孫より先に、毎日戦っている親をねぎらうこと。比較せず、詮索せず、「お前はうちの自慢だ」と伝えること。

そして、この記事を親御さんから渡されて読んでくださった方へ。渡すという行為には、「分かってほしい、味方になってほしい」という願いが込められています。ここまで読んでくださった時点で、その願いの半分はもう叶っています。あとは、次に会ったときの最初のひとことだけです。

お孫さんは必ず大きくなります。そのとき記憶に残っているのは、学校に行かせようとした人ではなく、行けない自分をそのまま可愛がってくれた人です。どうか、その人でいてください。ご家族みなさんの穏やかなお盆を願っております。他の記事は状況から探す案内板からどうぞ。

参考にした公的情報・一次情報

記事内の制度・相談先・健康情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。

【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
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