学校を休んだ日、ゲームはさせていい?【児童精神科看護師が解説】

平日の昼にゲームをする子どもを穏やかに見守る親の水彩イラスト 不登校

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この記事の要点

  • 学校を休んだ日のゲームは基本「させていい」
  • 無理に取り上げると、かえって回復が遅れることが多い
  • 見るのは時間より、昼夜逆転・課金・イライラの質の3つ
  • ルールは親が決めて渡すより、子どもと「合意」をつくる
  • 昼夜逆転の固定化や生活の崩れが続くなら専門機関へ相談

「今日は学校をお休みしていいよ」と声をかけたはずなのに、気づけば子どもは朝からゲーム機を握りしめている——。そんな光景を前にして、モヤモヤした経験はないでしょうか。しんどそうにしていたから休ませたのに、画面に向かう姿は一見元気そのもの。「休ませたのは間違いだったのかな」「これってズル休みを許したことになるんじゃないか」と、複雑な気持ちになる親御さんはとても多いです。

こんにちは。児童思春期精神科病棟で働く看護師の星野レンです。看護師として8年、そのうち5年以上を子どもの心の医療の現場で過ごしてきました。私自身も一人の父親として、「休んだ日にゲームばかりでいいのか」という問いが、理屈だけでは割り切れない悩みであることはよく分かります。

この「休んだ日のゲーム問題」は、病棟で親御さんから受ける相談の中でも、特に多いテーマのひとつです。結論から先にお伝えすると、私は「基本的にはさせていい」と考えています。むしろ、無理に取り上げたことでかえって回復が遠回りになったケースを、現場で何度も見てきました。この記事では、その理由と、放任とは違う「見守り方」、注意して見たいサイン、家庭でのルールのつくり方まで、順番にお話ししていきます。

結論:学校を休んだ日のゲームは「基本OK」と考えていい理由

まず前提として整理したいのは、「学校を休むほどエネルギーが落ちている子ども」と「元気だけど今日はサボりたい子ども」は、見た目が似ていても中身がまったく違うということです。心の不調で学校に行けない子どもの多くは、行けない自分を誰よりも責めています。「みんなは行けているのに」「親に迷惑をかけている」という自己否定の声が、頭の中でずっと鳴り続けている状態です。

その状態でゲームまで取り上げられると、子どもに残るのは「何もない一日」です。布団の中で自分を責める材料だけが延々と供給される時間になります。大人でいえば、体調を崩して仕事を休んだ日に、スマホもテレビも本も禁止されて、天井だけを見て過ごすように言われるのと近い状況です。それが回復につながるかというと、なかなか難しいのは想像できるのではないでしょうか。

もちろん「ゲームなら何時間でも無条件にOK」という話ではありません。あとで詳しくお話しするように、注意して見たいサインはありますし、家庭としての合意も必要です。ただ、出発点として「休んだ日のゲーム=悪いこと」という前提を一度手放すこと。ここがスタートラインになります。ゲームを許すかどうかで悩む前に、「この子は今、エネルギーが切れている状態なんだ」という見立てをまず置いてみてほしいのです。

なお、この記事でお話しするのは家庭での関わり方の考え方であって、診断や治療の判断に代わるものではありません。お子さんの状態について心配が続く場合は、必ず医師や専門機関に相談してください。記事の後半で、相談先の目安も紹介します。

なぜ親は「休んだ日のゲーム」がこんなに気になるのか

「させていい」と頭で分かっても、モヤモヤが消えないのが親心です。このモヤモヤの正体を分解してみると、大きく3つの不安が隠れていることが多いと感じます。ひとつめは「ズルを覚えるのではないか」という不安。学校を休んでゲームができるなら、子どもは楽な方に流れてしまうのではないか、という心配です。

ふたつめは「癖になるのではないか」という不安です。一度これを許したら、休むことへのハードルが下がって、ずるずると不登校につながるのではないか。三つめは「世間の目」です。平日の昼間に子どもがゲームをしている姿は、祖父母や近所の人から見れば「甘やかしている」と映るかもしれない。親として責められている気がして、つらくなる方も少なくありません。

ここでお伝えしたいのは、これらの不安を抱くこと自体は、ごく自然な反応だということです。子どもの将来を真剣に考えているからこそ湧いてくる感情であって、親御さんが厳しすぎるわけでも、心配しすぎなわけでもありません。ただ、現場の実感として言えるのは、「ズルになる」「癖になる」という予測は、心のエネルギーが落ちている子どもには当てはまりにくい、ということです。

エネルギーが落ちた子どもは、ゲームができたから「休むって最高、明日も休もう」とはなりません。むしろ「ゲームをしていても心から楽しめない」「楽しんだあとに罪悪感が押し寄せる」という体験をしていることが多いのです。楽な方に流れているように見えて、本人の内側では全然「楽」ではない。この内と外のギャップを知っておくだけでも、モヤモヤとの付き合い方は変わってくると思います。

エネルギーが切れた子どもにとって、ゲームが果たしている役割

では、休んだ日のゲームは子どもにとってどんな意味を持っているのでしょうか。病棟で子どもたちと過ごしてきた経験から、大きく3つの役割があると考えています。

役割1:つらい現実からの「避難所」になる

学校に行けない日の子どもの頭の中は、静かではありません。「なんで行けないんだろう」「明日はどうしよう」「友だちに何て思われているだろう」。こうした考えが、放っておくとぐるぐると回り続けます。ゲームに没頭している時間は、この反すうが一時的に止まる時間です。つまりゲームは、つらい考えから距離を取るための避難所として機能しています。

避難所は、ずっと住む場所ではありませんが、嵐の間に身を寄せる場所としては必要なものです。「現実逃避」という言葉はネガティブに使われがちですが、心が限界のときに一時的に逃げる場所があることは、回復のためにむしろ大切な条件だと私は考えています。

役割2:友だちとの「つながり」を保つ命綱になる

今の子どもたちにとって、オンラインゲームは友だち関係の続きです。学校に行けなくなると、教室でのつながりは一気に細くなりますが、ゲームの中でなら「昨日のイベントどうだった?」と対等に話せる。学校に行けていない自分でも、パーティーの一員としては変わらず迎えてもらえる。この体験は、孤立を防ぐ命綱のような役割を果たします。

ゲームを取り上げるということは、この細いつながりまで断ち切ってしまう可能性がある、ということでもあります。学校というつながりが切れている時期に、残っているつながりをどう保つか。その視点で見ると、ゲームの意味は「遊び」だけではないことが分かってきます。

役割3:回復の度合いを映す「ものさし」になる

意外に思われるかもしれませんが、ゲームへの向き合い方は、子どもの回復の度合いを映すものさしにもなります。エネルギーが底をついている時期は、実はゲームすらできません。画面を見る気力もなく、ただ横になっている。そこから少し回復してくると、短い動画なら見られるようになり、やがて受け身ではないゲームができるようになってきます。

つまり「ゲームができている」ことは、見方を変えれば「遊べる程度のエネルギーが戻ってきている」というサインでもあるのです。病棟でも、子どもがゲームの話を自分からしてくれるようになると、回復の入り口に立ったなと感じることがよくあります。ゲームを敵として監視するのではなく、回復のバロメーターとして眺める。この視点の切り替えが、親御さんの心の余裕にもつながります。

ただし注意して見たい3つのサイン

「基本はさせていい」とお伝えしてきましたが、放任でいいという意味ではありません。ゲームそのものより、ゲームの「周辺」に現れる変化に注意を向けてほしいのです。具体的には、次の3つのサインです。

サイン1:昼夜逆転が「固定化」してきたとき

休んだ日に夜更かしをして翌日昼まで寝る、ということ自体は、それほど珍しいことではありません。注意したいのは、それが数週間単位で固定化し、夕方に起きて明け方に寝る生活が「その子の標準」になってしまうことです。睡眠のリズムが大きくずれたまま固定すると、気分の落ち込みが強まりやすく、学校に戻る・戻らない以前に、日中の活動そのものが難しくなっていきます。

このとき「夜のゲームを禁止する」だけでは、たいていうまくいきません。眠れないからゲームをしているのか、ゲームのために起きているのかは、子どもによって違うからです。背景に眠りの問題が隠れていることもあるため、固定化の兆しが見えたら、生活リズムのことを相談できる医療機関につなぐことを考えてほしいタイミングです。

サイン2:課金をめぐるお金のトラブル

親のクレジットカードを無断で使ってしまった、予定していた以上の課金を隠していた、といったお金のトラブルは、ゲーム時間の長さとは別枠で対応が必要なサインです。ここは「休んでいる子を刺激したくないから」と見過ごしていい領域ではありません。金額の大小にかかわらず、事実を確認し、支払いの仕組み(パスワード管理や上限設定など)を親側でコントロールし直す必要があります。

ただしその際も、「あなたはダメな子だ」と人格を責めるのではなく、「仕組みとして防げなかったから、仕組みを直す」という姿勢で臨むのがポイントです。課金の背景に「ガチャの高揚感でしか気分が上がらない」という状態が見えるときは、心のエネルギーがかなり下がっているサインでもあるので、専門機関への相談を検討してください。

サイン3:ゲーム中のイライラの「質」が変わったとき

ゲームで負けて悔しがる、思わず声が出る、というのは普通の反応です。注意したいのは、イライラの質の変化です。負けたときに物を壊す・壁を殴るなどの行動が出てきた、ゲームを中断させようとしただけで別人のように激しく怒る、ゲームをしていない時間もずっと不機嫌でピリピリしている。こうした変化は、ゲームの問題というより、心の余裕が底をつきかけているサインとして受け取ってほしいのです。

この状態のときに正面から注意すると、衝突が激しくなりやすいものです。まずは刺激を増やさず、安全を確保しながら様子を見て、続くようであれば早めに専門機関に相談してください。「ゲームのせいでイライラしている」ように見えて、実際は「イライラの出口がゲームの場面しかない」ということが、現場では少なくありません。

「取り上げる」ではなく「合意をつくる」——家庭ルールの考え方

サインの話をすると、「ではルールはどう決めればいいのか」という疑問が出てくると思います。ここで大事なのは、ルールを「親が決めて子どもに渡す」のではなく、「子どもと一緒に合意をつくる」という発想です。一方的に決められたルールは、子どもにとって「破るか従うか」の対象にしかなりません。一緒に決めたルールは、「自分も決めた約束」になります。この違いは、思春期の子どもには特に大きく効いてきます。

合意をつくるときのコツをいくつか挙げます。まず、話し合いのタイミングは「問題が起きた直後」を避けること。ゲームを巡って言い合いになった直後は、お互いに冷静な話し合いができません。少し落ち着いた、機嫌のよいタイミングで「ゲームのことで一回ちゃんと話したいんだけど、いつがいい?」と予告してから話すのがおすすめです。

次に、決める項目は少なく絞ること。時間・場所・お金・睡眠のうち、今いちばん困っていることを1〜2個だけ選びます。たとえば「課金は必ず事前に相談する」「夜中の2時以降は通信を切る」など、具体的で確認しやすい形にします。「ゲームは1日2時間まで」のような時間制限は、休養期の子どもには守るのが難しく、破られるたびに親子関係が削れていくので、最初の合意には向かないことが多いです。

そして、合意には「見直し日」をセットにすること。「とりあえず2週間これでやってみて、うまくいかなかったらまた相談しよう」と伝えておくと、ルールが「絶対の掟」ではなく「調整できる約束」になります。守れなかったときに責めるのではなく、「この約束、うちには合わなかったね。どう変える?」と一緒に修正していく。この積み重ね自体が、子どもにとって「自分の意見を聞いてもらえた」という回復の材料になります。

病棟で見てきた「ゲームと回復」のエピソード

ここで、私が病棟で経験してきたエピソードを2つ紹介します。

ひとつめは、中学生の男の子のケースです。学校に行けなくなった当初、ご家庭では「休むならゲームは没収」というルールを徹底していました。本人は日中ずっと自室にこもり、家族との会話もほぼゼロ。入院してきたときは、表情も動きも乏しく、こちらの問いかけにも首を振るだけの状態でした。関わりの糸口がなかなか見つからない中で、唯一反応が返ってきたのが、あるゲームの話題でした。私がそのゲームの用語を覚えて話しかけるうちに、少しずつ言葉が増え、「本当は学校で何があったか」を話してくれたのは、それからしばらく経ってからです。ゲームの話は、本題に入るための入り口だったのだと思います。退院に向けては、ご家族と本人が「没収はしない、そのかわり夜は充電器をリビングに置く」という合意をつくり、家庭でも会話が戻っていきました。

ふたつめは、高校生の女の子のケースです。彼女は休養に入ってから、オンラインゲームで学校の友だちと毎晩つながっていました。親御さんは「休んでいるのに友だちと遊ぶのはおかしいのでは」と悩まれていましたが、話を聞いていくと、彼女にとってその時間は「学校に行けない自分でも、まだ友だちでいられる」ことを確認する時間でした。実際、登校を再開する最初のきっかけになったのは、ゲーム内で「明日ちょっとだけ学校おいでよ」と誘ってくれた友だちの一言でした。もしゲームを取り上げていたら、この糸は切れていたかもしれません。

※個人が特定できないよう、複数のケースを合成し、状況を抽象化しています。

どちらのケースにも共通するのは、ゲームが「問題」ではなく「窓口」だったということです。大人から見ると遮断したくなる対象が、子どもにとっては世界とつながる数少ない窓になっている。その窓をどう扱うかで、回復の道筋は変わってくると感じています。

相談・受診を考える目安

最後に、家庭での見守りから一歩進めて、外の力を借りることを考えたい目安を整理します。まず、休みが単発ではなく続き始めたときは、担任の先生やスクールカウンセラーに早めに状況を共有しておくと、その後の選択肢が広がります。「まだ大ごとにしたくない」と感じるかもしれませんが、相談は「大ごとにする」ことではなく、味方を増やすことだと考えてください。

そのうえで、先ほどの3つのサイン——昼夜逆転の固定化、課金トラブルの繰り返し、イライラの質の変化——のいずれかが見られるとき。あるいは、食事の量が明らかに減った、お風呂に入れない日が続く、死にたい気持ちを口にする、といった生活と安全に関わる変化があるときは、かかりつけの小児科や、児童精神科・児童思春期を診てくれる精神科への相談を検討してください。受診までの待機が長い地域もあるので、「予約だけ先に取っておく」のも現実的な方法です。

受診というと「うちの子を病気扱いするのか」と抵抗を感じる方もいらっしゃいます。ただ、専門機関に相談することは、診断名をつけることが目的ではなく、「この子に今どんな休み方と関わり方が合っているか」を一緒に考えてくれる伴走者を得ることです。ゲームとの付き合い方についても、家庭だけで抱えるより、ずっと具体的な作戦が立てやすくなります。判断に迷うときこそ、必ず医師に相談してください。

今夜これだけ

今夜は、ゲームをやめさせる声かけをひとつだけお休みして、かわりに「何のゲームやってるの?」と一言きいてみてください。答えが返ってこなくても大丈夫、きいたこと自体が子どもに届いています。

まとめ:ゲームは敵ではなく、回復を映す鏡

学校を休んだ日のゲームは、基本的にはさせていい。その理由を、避難所・つながり・回復のものさしという3つの役割からお話ししてきました。そして、時間の長さよりも、昼夜逆転の固定化・課金トラブル・イライラの質の変化という3つのサインに目を向けること。ルールは取り上げるためではなく、合意をつくるために使うこと。これがこの記事でお伝えしたかったことです。

看護師として子どもたちのそばにいて感じるのは、ゲームを巡る親子の衝突の多くが、「心配している親」と「責められていると感じる子ども」のすれ違いから生まれている、ということです。親御さんの心配は本物ですし、子どものしんどさも本物です。どちらも間違っていないからこそ、ゲームという分かりやすい的に矛先が集まってしまう。

だからこそ、ゲームを「敵」ではなく「今のこの子の状態を映す鏡」として眺めてみてほしいのです。鏡に映ったものが心配なら、それはゲームを取り上げる理由ではなく、専門機関に相談する理由になります。休んだ日にゲームができているなら、その子にはまだ遊べるだけの力が残っているということ。その力を信じて見守る親御さんを、私たち医療者は現場からいつでも応援しています。

参考にした公的情報・一次情報

記事内の制度・相談先・健康情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。

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【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
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