「甘やかしすぎだ」「昔はそんな子いなかった」「叱ればいい」——発達障害や不登校の子を育てていると、自分の親や義両親から心ない言葉をぶつけられることがあります。味方であるはずの家族なのに、なぜか一番傷つけてくる。
私は児童思春期精神科の病棟で約8年、多くのご家族と関わってきました。「祖父母との関係に悩んでいる」「実家に行くたびに心が傷つく」という親御さんの声を、本当にたくさん聞いてきました。これは、現代の子育てで多くの親御さんが抱える、共通の悩みです。
本記事では、祖父母世代との理解のズレが生じる理由、傷つけ言葉への対処法、夫婦間の連携、距離の取り方、親自身のメンタルケアまで、現場視点で詳しく解説します。
- なぜ祖父母世代とは理解がズレるのか
- よくある「傷つけ言葉」と背景
- 親(あなた)を守る心の持ち方
- 配偶者との方針一致が最重要
- 祖父母を変えたいと思う時のアプローチ
- 距離を取る選択肢——心を守るために
- 病棟で見てきた合成ケース
- 同居・近居の場合の工夫
- 親自身のメンタルケアを最優先
- 理解してくれる人と繋がる
- 子どもへの影響に配慮する
- 祖父母の言葉の裏にある「不安」と「愛情」を読み解く
- 場面別・祖父母との会話の切り返し方
- 祖父母に子どもの特性を伝える——理解を促す情報の渡し方
- 祖父母が孫の理解者に変わるとき——歩み寄りのプロセス
- 「板挟み」の親が自分を守るための考え方
- 子どもの前での振る舞い方——板挟みでも子どもを守る
- 親戚・周囲の無理解とどう付き合うか
- 祖父母との関係も変化していく——長い時間軸で考える
- 親自身の「育てられ方」を振り返る——世代間で連鎖するもの
- 子どもを真ん中にした関係を、少しずつ育てる
- よくある質問(FAQ)
- Q1. 祖父母の発言で子どもが傷ついた時は?
- Q2. 「会いたい」と祖父母が頻繁に言ってくる
- Q3. 義両親と関係を完全に切ってもいい?
- Q4. 自分の親なのに会いたくない自分が嫌
- Q5. 子どもが祖父母大好きで、会わせたい
- Q6. 同居していて逃げ場がない
- Q7. 配偶者が実親の肩を持つ
- Q8. 「育て方が悪い」と言われた時の返し方
- Q9. 祖父母が子どもに勝手にお小遣いをあげる
- Q10. 祖父母が高齢で、関係改善を急いだ方がいい?
- Q11. 同居していて、毎日顔を合わせるのがつらいです
- Q12. 祖父母に子どもを預けるのが不安です
- Q13. 「孫がかわいくないのか」と言われ、傷つきました
- Q14. 配偶者が自分の親(祖父母)の味方をします
- Q15. 理解のない祖父母と、もう縁を切りたいです
- Q16. 祖父母が遠方で、たまにしか会いません。それでも対応が必要?
- Q17. 祖父母の理解を諦めたら、自分が冷たい人間に思えてつらいです
- Q18. 祖父母とうまくいっている人と比べて落ち込みます
- 看護師として、祖父母世代との間で悩む親御さんへ
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なぜ祖父母世代とは理解がズレるのか
祖父母世代が子育てをしていた30〜50年前は、発達障害・HSC・不登校といった概念が一般的ではありませんでした。「発達障害」という言葉自体、医学的に広く認知されたのは比較的最近のこと。当時は「ちょっと変わった子」「やんちゃな子」「内気な子」と片付けられていました。
不登校についても、当時は「学校嫌い」「サボり」とみなされ、無理にでも登校させるのが当たり前という風潮がありました。「学校は行くものだ」「泣いたら甘え」「我慢が大事」という価値観で育ってきた世代にとって、今の子育て事情は未知の世界なのです。
悪気がなくても、現代の知見とはズレた助言をしてしまうのは、ある意味当然のことです。彼らが間違っているというより、「時代と医学の進歩を知らない」だけ。情報のアップデートがされていない、というのが本質です。
また、自分が子育てをしてきた経験には強い自負があります。「自分の子育てが正解だった」と思いたいのが人情。だから、現代の子育て方法を否定することで、自分の過去を肯定したい——そんな心理も働いていることがあります。
祖父母世代の言葉を受け止める時、「悪意ではなく、知識不足と世代差」という構造を理解しておくと、少しは冷静に対応できます。とはいえ、傷つくものは傷つく。それも事実です。
よくある「傷つけ言葉」と背景
祖父母世代からよく聞く、心を傷つける言葉を整理します。それぞれの言葉の背景にある思いも併せて理解しておくと、対応の幅が広がります。
「甘やかしすぎ」「もっと厳しくしなさい」
背景:祖父母世代は「厳しいしつけ」「我慢を教える」が当たり前でした。叱る・厳しくすることが愛情の表現だと考える世代です。「優しすぎる現代の親」が心配で、こうした言葉が出てくることが多いです。
現代の知見では、「叱る・厳しくする」だけでは発達特性や心の問題は解決しません。むしろ、適切な対応と環境調整が回復への鍵です。あなたの選択は医学的に正しいです。
「昔はそんな子いなかった」
背景:実は昔にも「そんな子」はいました。ただ、「発達障害」「HSC」「不登校」といった概念がなかったため、見過ごされたり、別の名前で呼ばれたりしていただけ。社会的な認知が変わっただけで、子ども自体は変わっていません。
この発言には「現代の子は弱い」「親が悪い」というニュアンスが込められていることが多く、親としては傷つきます。
「学校に行かせないと将来どうするの」
背景:祖父母世代にとって、学校に行かないことは「人生終わり」のイメージがあります。当時は中卒・高卒で就職するルートが一般的で、不登校から将来を立て直す選択肢が見えにくかった時代。
現代では、フリースクール、通信制高校、高卒認定、社会人入学など、多様な進路があります。「学校に行かない=人生終わり」は誤解です。
「発達障害なんて言葉で逃げている」
背景:祖父母世代は「発達障害」という概念に馴染みがなく、医学的な診断を「言い訳」と感じてしまうことがあります。「ただのわがまま」「しつけの問題」と捉えがち。
発達障害は脳の特性であり、しつけや環境で「治る」ものではありません。診断は逃げではなく、適切な支援を受けるための入り口です。
「お前の育て方が悪い」
背景:親としては最も傷つく言葉です。祖父母世代は「親の責任」を強調しがち。子育ての結果はすべて親の手腕にかかっているという価値観が根強くあります。
現代の知見では、子どもの発達や心の問題は、親の育て方だけが原因ではないと分かっています。遺伝、環境、社会的要因など、多くの要素が絡んでいます。
「孫にもっと会わせて」(子が外に出られない中)
背景:祖父母にとって孫に会うのは大きな楽しみ。会えない理由が理解しにくく、「親が会わせてくれない」と感じてしまうことがあります。
本人が外に出られない事情を丁寧に説明する必要がありますが、それでも理解されないこともあります。
親(あなた)を守る心の持ち方
祖父母からの心ない言葉に対して、親自身の心を守る考え方を整理します。
1. 全員に理解してもらう必要はない
祖父母世代の価値観を変えるのは、正直に言って難しいことです。何十年もかけて培われた価値観を、短期間で変えることはほぼ不可能。「理解してもらうこと」をゴールにすると疲弊します。
「分かり合えないこともある」と受け入れる方が、心は守れます。「あなたの考えはそうなんですね」「私たちはこうします」と、平行線でも構いません。すべての人に分かってもらう必要はないのです。
2. あなたの子育ては間違っていない
現代の知見に基づいた子育ては、昔の常識とは違って当然です。「叱る・厳しくする」だけでは解決しないことは、医学的に証明されています。あなたが本を読み、専門家に相談し、子どもの気持ちに寄り添う姿勢は、現代の最良の子育てそのものです。
祖父母世代の言葉に揺らがないでください。あなたの選択を、医学は支持しています。
3. 距離を取る勇気も大切
会うたびに傷つけられるなら、会う頻度を減らしてOK。親戚であっても、心を守る距離感は必要です。「いつも会うものだから」「親だから」と義務感で会い続けると、自分も子どもも消耗します。
距離を取ることは「親不孝」ではなく、「自分と家族を守るための賢い選択」です。
4. 「ありがとう」と言わない選択も
傷つけられた時、つい「ありがとうございます」と返してしまう習慣があります。しかし、心を傷つけられた時にお礼を言う必要はありません。「そう思うんですね」「うちはこうしてます」と、シンプルに返すだけで十分です。
5. 言われた言葉を引きずらない工夫
傷つけ言葉は、頭の中で繰り返し再生されがちです。意識的に他のことに集中する、その日のうちに紙に書き出して処理する、信頼できる人に話して発散する——自分なりの「言葉を流す」方法を持っておきましょう。
配偶者との方針一致が最重要
祖父母との関係で最大のダメージは、配偶者が味方になってくれない時です。「母さんもああ言ってるし」「親の言うことも一理あるよ」と実親の肩を持たれると、親御さんは孤立します。
夫婦で「子育ての軸」を共有
祖父母の意見に対して一致して対応するためには、まず夫婦で「子育ての軸」を話し合うことが必要です。お互いの考えを擦り合わせ、共通の方針を作っておきましょう。
軸の例:
- 「医師の見立てに従って対応する」
- 「本人の気持ちを最優先する」
- 「学校復帰を急がない」
- 「発達特性を尊重した関わりをする」
外部からの批判には一致して対応
祖父母から何か言われた時、その場で「夫婦の意見」として返すことができれば、一人で受け止めずに済みます。「私たち夫婦で話し合って決めています」「医師の指示で対応しています」と、夫婦の盾を持って対応を。
配偶者の実親への対応
「自分の親には自分が話す」が基本ルール。義実家の言葉に傷つけられたら、配偶者にお願いして親に伝えてもらいましょう。「私の親には私が話す」役割分担を作ることで、義実家との関係も守れます。
配偶者が「親側」につく場合
残念ながら、配偶者が実親の肩を持ち、あなたを孤立させるケースもあります。この場合、夫婦間の話し合いから取り組む必要があります。家族療法、カウンセリングの活用も視野に。
定期的な夫婦の対話
祖父母との関係について、定期的に夫婦で話す時間を作りましょう。「最近どう感じている?」「何か困ったことはあった?」と確認し合うことで、お互いの状況を把握でき、孤立を防げます。
祖父母を変えたいと思う時のアプローチ
「変えるのは難しい」と分かっていても、せめて少しでも理解してほしい、と思う時もあるでしょう。試してみる価値のあるアプローチをいくつか紹介します。
発達障害の本を渡してみる
否定せず読む祖父母もいます。「最近こんな本を読んで、参考になったよ」と軽く渡してみる。直接の否定よりも、書籍を通じての方が伝わることがあります。
祖父母世代向けに書かれた、平易な本を選ぶのがコツ。専門書ではなく、漫画やイラスト入りの解説書、当事者の体験談などが入りやすいです。
医師・専門家の言葉として伝える
「先生がこう言ってました」「医師の見立てではこうなんです」と、専門家の言葉として伝えると、祖父母世代は受け入れやすい傾向があります。「親としての判断」より「専門家の判断」の方が、権威があると感じる世代です。
メディアの権威を借りる
NHKの番組、新聞記事、テレビのドキュメンタリーなど、信頼性のあるメディアで取り上げられた内容を共有するのも有効。「NHK でこんな番組をやってたよ」「新聞にこんな記事があったよ」と切り出しやすいです。
孫の「得意」を祖父母に自慢する
できない面ばかりを話すと、祖父母は「やはり問題がある」と感じてしまいます。逆に、孫の得意なこと、好きなこと、強みを前に出して話すと、祖父母も「この子はこういう才能があるのか」と前向きに見られるようになります。
「変わらない人は変わらない」と諦める
ただし、何をしても変わらない人もいます。労力をかけすぎないことも大切です。「変わってくれたら嬉しいけど、変わらなくても仕方ない」というスタンスで、無理に変えようとしないこと。
距離を取る選択肢——心を守るために
祖父母との関係を維持するのが難しい場合、距離を取ることも選択肢です。
会う頻度を減らす
毎週・毎月の訪問が辛いなら、年に数回、お盆と正月だけ、誕生日だけ——頻度を減らす方法があります。「最近忙しくて」「子どもの予定があって」など、自然な理由で頻度を調整しましょう。
滞在時間を短くする
会う時間自体を短くするのも有効。「2時間だけ」「お昼ごはんだけ」と、滞在時間を区切ることで、傷つく時間を限定できます。
子どもを連れて行かない
祖父母が子どもにも傷つける言葉を投げかける場合、子どもを連れて行かない選択も。「○○は今体調が悪いので留守番させます」と説明を。子どもの心を守ることが最優先です。
電話・メールに切り替える
対面が辛いなら、電話やメールでの近況報告に切り替える方法も。物理的な距離があると、心理的な距離も保ちやすくなります。
完全に距離を取る選択
状況によっては、完全に距離を取ることも一つの選択肢。「絶縁」までいかなくても、一定期間連絡を取らないという形で。これは「親不孝」ではなく、自分と家族を守るための選択です。
距離を取ることへの罪悪感
距離を取ることに罪悪感を持つ親御さんは多いです。「親なのに」「育ててもらったのに」と。しかし、自分を犠牲にして親に尽くしても、誰も幸せになりません。あなたが健康でいることが、長期的には家族全員のためにもなります。
病棟で見てきた合成ケース
※ 守秘義務のため、複数のケースを組み合わせた合成事例です。
ケース1:義母の言葉から距離を取り、回復した母親
不登校の娘を持つ母親。義母から「あなたの育て方が悪い」「もっと厳しくしなさい」と毎週のように言われ続け、自分を責めて燃え尽き状態に。児童精神科のソーシャルワーカーに相談し、「義母との接触を減らす」方針に。
夫と話し合い、義実家への訪問を半年に1回に削減。最初は罪悪感があったが、自分のメンタルが安定し、結果的に娘との関係も改善。「義母の言葉に振り回されない強さを身に着けた」と母親が話している。
ケース2:祖父が孫を理解してくれた例
ASDの孫を持つ祖父。最初は「変わった子」「もっとしっかり育てろ」と娘夫婦に厳しかった。娘が発達障害の本を何冊か渡し、医師の説明にも一緒に同席してもらった結果、祖父が「自分が知らなかっただけだった」と気付き、孫の理解者に。
今では祖父が孫の特性に合わせた関わりをしてくれて、孫にとって大切な存在に。「あの時、諦めずに少しずつ伝えてよかった」と娘夫婦が語っている。
ケース3:夫婦の連携で乗り越えた例
不登校の息子を持つ夫婦。夫の両親から「親の責任」と責められ続けていた。夫が最初は実親側につき、母親は孤立していた。家族カウンセリングを経て、夫が「自分の親と話してくる」と覚悟を決め、両親と話し合い。
「これからは私たち夫婦の方針で進める」と宣言。両親も最終的には受け入れ、関係は維持しつつ距離感が変わった。「夫婦が一致したことで、すべてが変わった」と母親が語っている。
同居・近居の場合の工夫
祖父母と同居・近居の場合、距離を取ることが難しく、より深刻な悩みになります。
物理的な空間の確保
同居の場合、家の中で「自分たちの空間」を確保することが心の安全につながります。子供部屋、寝室、リビングの一角——「ここは私たち家族の空間」というスペースを意識的に作りましょう。
家事・育児への介入の境界線
「子どものことには口出ししないでほしい」「家事の方針はこちらで決める」など、境界線を明確にする話し合いが必要。曖昧にすると、毎日小さな摩擦が積み重なります。
子どもへの接し方のルール
祖父母が子どもに傷つける言葉をかける場合、ルールを作る必要があります。「○○については話さない」「叱る役は親に任せる」など、明確なルールを共有します。
子どもとの時間を守る
祖父母がいると、親子だけの時間が取りにくくなります。意識的に「家族だけの時間」「外出での親子時間」を確保しましょう。
同居解消の選択肢
どうしても改善しない場合、同居解消も視野に入れる必要があります。経済的・物理的に難しい面もありますが、長期的な家族の健康のために、検討する価値があります。
親自身のメンタルケアを最優先
家族から責められる辛さは、他人から言われるより深く刺さります。そんな時こそ、親自身のメンタルケアを最優先にしてください。
感情を書き出す
「実家に行くと心がざわつく」「義母の言葉が頭から離れない」——こうした感情を書き出すだけでも、整理されます。日記、メモ、AI 対話型メンタルケアアプリ「Awarefy」など、自分に合う方法で。
誰かに話す
同じ経験を持つ友人、信頼できる家族、配偶者、専門家——誰かに気持ちを話すだけで、ずいぶん楽になります。「私だけがこんな思いをしているわけじゃない」と分かるだけで、孤独感が和らぎます。
カウンセリングの活用
家族問題で悩んでいる方には、カウンセリングが有効です。自宅から利用できるオンラインカウンセリング「cotree(コトリー)」のようなサービスは、子育てで時間が取れない親にも合いやすいです。
身体のケアも忘れずに
ストレスは身体にも現れます。睡眠、食事、運動——基本的な健康習慣を維持することが、メンタルの安定にも繋がります。
「自分のため」の時間を確保
週に1回でも、自分のための時間を意識的に確保。趣味、運動、読書、何もしない時間——子どもや祖父母のことから離れて、自分のための時間を持つことが回復には不可欠です。
専門家への相談
「自分のメンタルが限界かも」と感じたら、迷わず心療内科・精神科へ。「家族問題で疲弊している」というのは立派な受診理由です。
理解してくれる人と繋がる
家族に理解者がいなくても、外には必ずいます。家族以外の繋がりを意識的に作りましょう。
発達障害・不登校の親の会
同じ立場の親が集まる会は、全国各地にあります。オンライン・対面の両方の選択肢があり、自分に合う形を選べます。「自分だけじゃない」と知れるだけで、ずいぶん楽になります。
SNSの当事者コミュニティ
X(旧Twitter)、Facebook、Instagram など、SNS には発達障害・不登校の親のコミュニティが多数あります。匿名で参加でき、夜中でも気軽に交流できるのがメリット。
カウンセラー・ソーシャルワーカー
専門家との関係も、大切な「理解者」になります。継続的に話を聞いてくれる存在が、長期戦の支えになります。
同じ境遇のブログ・YouTube
同じ立場の親が発信しているブログや YouTube チャンネルも、共感の源泉になります。「同じことで悩んでいる人がいる」と知れるだけで、孤独感が和らぎます。
専門家の発信
児童精神科医、心理士、看護師、教師など、専門家による発信も学びの場になります。SNS・YouTube・書籍を通じて、信頼できる情報源を持っておきましょう。
子どもへの影響に配慮する
祖父母との関係で大切なのは、子どもへの影響です。子どもが祖父母から傷つけられないよう、また家族間の対立を子どもの前で見せないよう、配慮が必要です。
子どもの前で言い争わない
祖父母との対立を子どもの前で見せると、子どもは「自分のせいで家族が揉めている」と感じてしまいます。意見の違いは、子どもがいない場面で話し合いを。
子どもに祖父母の悪口を言わない
傷ついた気持ちはあっても、子どもの前で祖父母の悪口を言うのは避けて。子どもにとって祖父母は大切な存在でもあるため、複雑な感情を抱かせてしまいます。
子どもの希望を尊重
子ども自身が「祖父母に会いたい」「会いたくない」と意思表示することもあります。本人の気持ちを尊重して、無理に会わせない選択肢も。
子どもが祖父母から傷つく言葉を受けた時
子どもが祖父母から傷つく言葉を受けた時、「おじいちゃんはそう思ってるかもしれないけど、お母さんはそう思わないよ」と、明確に親の見解を伝えてください。子どもが板挟みにならないよう、親が盾になります。
祖父母の言葉の裏にある「不安」と「愛情」を読み解く
祖父母から心ない言葉をかけられると、親としては深く傷つき、「どうしてそんなことを言うのだろう」と怒りや悲しみがこみ上げてきます。けれども、現場で多くの家族を見てきた立場から言うと、祖父母の言葉の裏には、しばしば本人なりの「不安」と「愛情」が隠れています。その背景を理解することは、祖父母を許すためではなく、親自身が冷静さを取り戻し、無用に消耗しないために役立ちます。
たとえば「甘やかしているからだ」「もっと厳しくしなさい」という言葉。これは一見、親を責める言葉ですが、その奥には「孫が将来困らないでほしい」という心配があることが少なくありません。祖父母世代は、自分たちが「厳しさ」で子育てを乗り切ってきたという成功体験を持っているため、それが孫を守る唯一の方法だと信じているのです。やり方は古く、的外れであっても、その動機は「孫への愛情」であることが多いのです。
また、「気のせいだ」「考えすぎだ」「うちの家系にそんな子はいない」という否認の言葉も、よく聞かれます。これは、孫に障害や特性があるという現実を受け入れることへの、祖父母自身の不安や恐れの表れであることがあります。我が子(親世代)やかわいい孫が、世間から偏見の目で見られるのではないか、という心配。あるいは、「自分たちの育て方や血筋に問題があったのか」という自責。こうした複雑な感情が、否認という形で出てくるのです。受け入れがたい現実に直面したとき、人はまず否認から入る——これは自然な心の動きでもあります。
もちろん、背景を理解したからといって、傷つく言葉が許されるわけではありませんし、我慢し続ける必要もありません。ただ、「この人は悪意で言っているのではなく、不安や愛情がこじれた結果なのかもしれない」という視点を持てると、親の心は少し軽くなります。相手の言葉をまともに全部受け止めて、自分を責めたり、激しく対立したりするエネルギーを、少し節約できるのです。祖父母の言葉に振り回されすぎないために、まずその背景に思いを巡らせてみることをおすすめします。
場面別・祖父母との会話の切り返し方
祖父母との理解のズレは、日常の具体的な場面で表面化します。受診のこと、食事のこと、しつけのこと、行事のこと——それぞれの場面で、どう切り返せばよいのか、具体的に考えてみましょう。大切なのは、対立を避けつつ、こちらの方針は曲げない、という姿勢です。
まず、受診や療育をめぐる場面です。「病院なんて大げさだ」「そのうち治る」と言われたとき、正面から議論すると平行線になりがちです。「専門家に診てもらって、安心したいの」「早めに対応したほうが、本人が楽になるんだって」と、あくまで「孫のため」「安心のため」という切り口で伝えると、祖父母も受け入れやすくなります。専門家の言葉を借りる(「お医者さんがそう言っていた」)のも、有効な方法です。
次に、食事やしつけの場面です。祖父母が孫に対して、こちらの方針と違う関わり方をしたとき(過度に甘やかす、逆に厳しく叱る、など)。その場で孫の前で言い合うのは避けたいところです。後で二人になったときに、「ありがとう、でもこの子にはこういう関わり方が合っているみたいなの」と、感謝を添えつつ伝える。頭ごなしに「やめて」と言うのではなく、「協力してほしい」というスタンスで伝えると、角が立ちにくくなります。
そして、行事や集まりの場面です。親戚が集まる場で、孫の特性について心ない言葉が飛び交うこともあります。こうした場面では、無理にその場で理解を求めず、「うちはうちのやり方でやっているので」と、さらりと受け流す技術も必要です。すべての人を理解させようとすると、親が消耗してしまいます。「分かってもらえなくても、自分たちの方針は変えない」という芯を持っておくことが、こうした場面を乗り切る力になります。会話の切り返しは、相手を言い負かすためではなく、自分と子どもを守るためのもの。そう考えると、力みすぎずに対応できるようになります。
祖父母に子どもの特性を伝える——理解を促す情報の渡し方
祖父母に孫の特性を理解してもらうには、感情的に訴えるだけでなく、適切な「情報」を、適切な「形」で渡していくことが効果的です。やみくもに説明しても、世代の異なる祖父母には届きにくいもの。理解を促すための工夫を考えてみましょう。
まず有効なのが、「権威ある情報源」を活用することです。祖父母世代は、親(我が子)の言うことには反発しても、医師や専門家、テレビ番組、新聞記事といった「権威」には耳を傾けやすい傾向があります。発達障害や子どもの特性について分かりやすく書かれた本やパンフレット、信頼できるテレビ番組などを、さりげなく渡したり一緒に見たりするのは、とても有効な方法です。「お医者さんがこう言っていた」「この本に書いてあったんだけど」と、第三者の言葉として伝えると、すんなり受け入れられることがあります。
次に、専門家との場に同席してもらうことも考えられます。可能であれば、受診や面談に祖父母にも来てもらい、専門家から直接説明を聞いてもらう。親が何度説明しても響かなかったことが、専門家の一言であっさり伝わる、ということは現場でもよくあります。祖父母が「自分も孫のことを理解する当事者だ」と感じられるよう、情報の輪に入れていくことが、理解への近道になります。
そして、情報を渡すときは、一度に大量に渡さないことも大切です。受け入れには時間がかかります。少しずつ、孫の具体的なエピソードと結びつけながら(「この前、こういうことがあってね」)、消化できるペースで伝えていく。「理解してもらおう」と焦るあまり、一気に説得しようとすると、かえって相手は身構えてしまいます。長い目で、じっくりと理解の種をまいていく——その姿勢が、結果的に祖父母の変化を引き出します。
祖父母が孫の理解者に変わるとき——歩み寄りのプロセス
「祖父母には何を言っても無駄だ」と諦めかけている方もいるかもしれません。けれども、現場では、当初は強く否認していた祖父母が、時間をかけて孫の良き理解者へと変わっていくケースを、何度も見てきました。その変化には、いくつかの共通したプロセスがあります。希望を持っていただくために、その道筋をお伝えします。
多くの場合、祖父母の変化のきっかけは、「孫との直接の関わり」の中にあります。理屈で説明されても受け入れられなかった祖父母が、孫と一緒に過ごす時間の中で、「ああ、この子は本当に努力しているんだな」「こういうことが苦手なんだな」と、肌で理解していく。孫の頑張る姿、苦しむ姿を実際に目にすることが、何よりの説得力を持つのです。だからこそ、可能な範囲で、祖父母と孫が穏やかに関われる機会を作ることは、長い目で見ると理解を深める助けになります。
また、親世代が一貫した方針を持ち続けることも、祖父母の変化を促します。親がぶれずに「この子にはこの関わり方が合っている」と実践し、その結果として孫が少しずつ落ち着いていく——その変化を目の当たりにすると、祖父母も「親の言うやり方には意味があったのだ」と認めざるを得なくなります。言葉で説得するより、結果で示すほうが、ときに強い力を持つのです。
そして、祖父母が少しでも理解を示してくれたときには、その変化を見逃さず、感謝を伝えることも大切です。「お母さん(おばあちゃん)が分かってくれて、すごく助かる」「ありがとう」——小さな歩み寄りを肯定することで、祖父母はさらに理解しようという気持ちになります。変化は一直線ではなく、行きつ戻りつしながら進みます。焦らず、相手のペースも尊重しながら、少しずつ歩み寄っていく。その先に、祖父母が孫にとっての心強い味方になってくれる未来が、確かにあります。
「板挟み」の親が自分を守るための考え方
祖父母との理解のズレに悩む親は、しばしば「板挟み」の状態に置かれます。一方には、理解してくれない祖父母。もう一方には、守るべき子ども。その間で、親は孤独に消耗していきます。最後に、この板挟みの状態から、親自身が自分を守るための考え方をお伝えします。
まず大切なのは、「すべての人に理解してもらうことは、目標ではない」と知ることです。親は、つい「祖父母にも分かってもらわなければ」と背負い込みがちですが、それは必須ではありません。最優先すべきは、子どもを守ること、そして親自身が倒れないこと。祖父母の理解は、得られればありがたいけれど、得られなくても、子どもを守ることはできます。「理解させること」を手放すだけで、親の肩の荷は大きく軽くなります。
次に、「守るべき優先順位」を明確にすることです。板挟みになったとき、親が守るべきは、まず子ども、次に親自身、そしてその先に祖父母との関係、という順番です。祖父母との関係を保とうとするあまり、子どもや自分を犠牲にしてしまっては、本末転倒です。「この場面では、何を最優先すべきか」を意識すると、迷ったときの判断がしやすくなります。子どもが傷つく場面では、たとえ祖父母と対立してでも、子どもを守る——その覚悟が、親には必要なときがあります。
そして、板挟みの苦しさを、一人で抱え込まないことです。配偶者と気持ちを分かち合う、同じ悩みを持つ親同士でつながる、必要なら専門家やカウンセラーに相談する。「祖父母との関係で、こんなに苦しんでいるのは自分だけではない」と知るだけで、心は少し軽くなります。板挟みの苦しさは、決して親の弱さではありません。家族の間で誠実であろうとするからこそ生まれる、優しさゆえの苦しみです。どうか、その苦しさを抱える自分を、まず労ってあげてください。
子どもの前での振る舞い方——板挟みでも子どもを守る
祖父母との理解のズレで見落とされがちなのが、「その様子を子どもがどう見ているか」という視点です。祖父母と親が対立する場面、祖父母が子どもに心ない言葉をかける場面——こうした状況は、当事者である子ども本人の心にも、確実に影響を与えます。板挟みの中でも、子どもを守る振る舞いを意識したいところです。
まず大切なのは、子どもの前で祖父母と激しく言い争わないことです。自分のことで大好きな親と祖父母がもめている——その光景は、子どもに強い罪悪感と不安を与えます。「自分のせいで家族が仲違いしている」と感じ、自分を責めてしまう子も少なくありません。意見の対立があっても、それを子どもの前で見せない努力は必要です。話し合いが必要なときは、子どものいない場所で。これは、子どもの心を守るための、大切な配慮です。
次に、もし祖父母が子どもの前で傷つく言葉をかけてしまったときは、その場で、あるいは後で、必ず子どもをフォローすることです。「おばあちゃんはああ言ったけど、あなたは何も悪くないよ」「あなたはあなたのままで大丈夫だよ」と、子どもの側に立つ言葉をかけてあげてください。祖父母の言葉をそのまま子どもに浴びせ続けると、子どもの自己肯定感は深く傷つきます。親が「あなたの味方だ」という姿勢を明確に示すことが、子どもの心を守る盾になります。
そして、子どもが祖父母との関わりで傷ついていないか、ふだんから様子に目を配ることも大切です。祖父母の家に行くのを嫌がる、祖父母の話題が出ると表情が曇る——こうしたサインが見られたら、無理に関わらせないという選択も必要です。「おじいちゃんおばあちゃんを大切にしなさい」という一般論より、目の前の子どもの心の安全を優先する。それが、親にできる最も大切な役割です。子どもにとって、自分を理解し守ってくれる親の存在こそが、何よりの安心の源なのですから。
親戚・周囲の無理解とどう付き合うか
理解のズレは、祖父母だけの問題ではありません。おじ・おば、いとこ、あるいはママ友や近所の人など、子どもを取り巻くさまざまな人々から、心ない言葉や無理解な態度を向けられることがあります。祖父母以外の「わかってくれない人々」と、どう付き合っていけばよいのでしょうか。
基本的な姿勢は、祖父母への対応と同じです。「すべての人に理解してもらう必要はない」と割り切ること。親戚の集まりや地域の場で、心ない言葉を耳にしても、いちいち全部に反応して説明しようとすると、親が疲弊してしまいます。「うちはうちのやり方で」と、さらりとかわす技術を身につけておくと、こうした場面を乗り切りやすくなります。関係が浅い相手であればあるほど、深く説明する必要はありません。
一方で、これからも付き合いが続く相手で、子どもと関わる機会が多い人(たとえば頻繁に会う親戚など)には、ある程度の理解を求めたい場合もあります。その際は、祖父母への対応と同様、感情的にならず、具体的なエピソードや専門家の情報を交えながら、少しずつ伝えていく。ただし、ここでも「理解してもらえたらありがたい」くらいの気持ちで、過度な期待はしないことが、親の心を守ります。
そして、無理解な人々との関わりで傷ついたときは、その気持ちを否定せず、しっかり労ってあげてください。「わかってもらえなくて、悲しかった」「腹が立った」——そうした感情を抱くのは当然です。理解されない孤独は、本当につらいものです。だからこそ、わかってくれる人とのつながりを大切にし、無理解な人とは適切な距離を取る。この「つながりと距離のバランス」を上手に取ることが、長く子育てを続けていくうえでの、大切な知恵になります。
祖父母との関係も変化していく——長い時間軸で考える
今、祖父母との関係に深く悩んでいる方も、その関係が「今のまま、ずっと続く」わけではない、ということを心に留めておいていただきたいと思います。家族の関係は、時間とともに変化していきます。長い時間軸で捉えることで、今の苦しさが少し違って見えてくることがあります。
先ほどもお伝えしたように、祖父母は孫との関わりや、孫の成長を見守る中で、少しずつ理解を深めていくことがあります。今は否認していても、数年後には良き理解者になっているかもしれません。逆に、どうしても理解が得られないまま、適度な距離を保って付き合っていく、という形に落ち着くこともあります。どちらにしても、「今のつらい関係が永遠に続く」わけではないのです。
また、時間が経つと、祖父母自身が老い、やがて介護や支援が必要になる時期が訪れます。立場が変化し、これまで「指導する側」だった祖父母が「支えられる側」になっていく。その過程で、関係性が変わり、わだかまりが解けていくこともあれば、新たな課題が生まれることもあります。いずれにせよ、家族の関係は固定されたものではなく、常に移り変わっていくものだと知っておくと、今の関係に過度にとらわれずにすみます。
大切なのは、長い時間軸の中で、「自分と子どもにとって、無理のない関わり方」を、その時々で選び続けることです。今は距離を取る時期かもしれない。数年後には歩み寄れる時期が来るかもしれない。関係のあり方は、一度決めたら終わりではなく、状況に応じて柔軟に変えていけるものです。焦らず、その時々の自分と子どもの心の状態を大切にしながら、祖父母との関係を、長い目で築いていってください。今の苦しさが、いつか和らぐ日が来ることを、どうか信じていてほしいと思います。
親自身の「育てられ方」を振り返る——世代間で連鎖するもの
祖父母との理解のズレに向き合うとき、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。それは、「今、祖父母としてあなたに向き合っているその人は、かつてあなたを育てた人でもある」という事実です。祖父母の言動に深く傷つくとき、その傷の一部は、自分が子どもだった頃に受けた関わりと、どこかでつながっていることがあります。少しつらいテーマかもしれませんが、この視点は、親自身が楽になるための助けになります。
たとえば、「甘やかすな」「厳しくしろ」という祖父母の言葉に、人一倍強く反応してしまうとき。その背景には、自分自身が厳しく育てられ、甘えることを許されなかった経験が、隠れているかもしれません。「気のせいだ」「我慢しなさい」と言われて、自分の気持ちを受け止めてもらえなかった子ども時代の記憶が、今の祖父母の言葉に重なって、より深く心を刺すのです。祖父母の言動が、ただの「今の問題」ではなく、自分の過去の傷を呼び覚ますものであると気づくだけで、その反応の強さの理由が見えてきます。
こうした「世代間の連鎖」に気づくことには、大きな意味があります。なぜなら、自分の代で、その連鎖を止めることができるからです。自分が満たされなかった思いを、自分の子どもには味わわせない。自分がしてほしかった関わりを、子どもにはしてあげる——そう意識することで、過去の傷を、子育てを通じて少しずつ癒やしていくことができます。祖父母を変えることは難しくても、自分が「どう子どもに関わるか」は、自分で選ぶことができるのです。
同時に、自分の親(祖父母)もまた、その親から受け継いだやり方で、精一杯あなたを育てたのだ、という視点を持てると、少し心が和らぐこともあります。祖父母世代もまた、彼らなりの時代の制約の中で、知っている方法で子育てをしてきました。それを今さら責めても、過去は変わりません。大切なのは、過去を裁くことではなく、連鎖に気づき、自分の代でより良い関わりを選び取っていくこと。あなたが今、子どもの特性を理解し、その子に合った関わりを探していること自体が、世代を超えて受け継がれてきたものを、より良い形に変えていく尊い営みなのです。その歩みを、どうか誇りに思ってください。
子どもを真ん中にした関係を、少しずつ育てる
ここまで、祖父母との理解のズレに、どう対処し、どう自分と子どもを守るかを中心にお伝えしてきました。最後に、視点を少し変えて、「それでも祖父母と、よりよい関係を育てていけるとしたら」という、前向きな可能性についても触れておきたいと思います。すべての家庭に当てはまるわけではありませんが、ひとつの希望として読んでいただければと思います。
対立の構図でとらえると、祖父母は「わかってくれない厄介な存在」になってしまいます。けれど、視点を「子どもを真ん中にした関係」に置き換えてみると、祖父母もまた、その子の幸せを願う一人の家族として見えてきます。親と祖父母は、関わり方こそ違っても、「この子に幸せになってほしい」という願いは、案外、同じ方向を向いていることが多いのです。その共通の願いを土台にできれば、対立ではなく、協力への糸口が見えてくることがあります。
そして、祖父母には、親には果たせない特別な役割があることも、心に留めておきたいところです。親が日々のしつけや教育の責任を担うのに対し、祖父母は、もう少し肩の力を抜いた「ナナメの関係」で子どもに関わることができます。何の見返りも求めず、ただ孫の存在を喜び、かわいがる——そんな祖父母の無条件の愛情は、子どもにとって、親とはまた違った安心の源になります。特性のある子にとって、家庭の外に「自分を丸ごと受け入れてくれる大人」がいることは、大きな心の支えになるのです。祖父母が、しつけや評価から離れて、ただ孫を慈しむ存在になれたとき、それは子どもにとってかけがえのない宝物になります。
もちろん、すべての祖父母がそうなれるわけではありませんし、無理に理想の関係を求める必要もありません。ただ、今は理解のズレに苦しんでいても、長い時間をかけて、祖父母が孫の良き理解者・応援者に変わっていく可能性は、確かにあります。その日を信じて、焦らず、できる範囲で関わりの糸を保っておく。そして、その時々で、自分と子どもにとって無理のない距離を選んでいく。子どもを真ん中に置いた家族の関係は、一朝一夕には築けませんが、時間をかけて、少しずつ育てていけるものなのです。あなたの今の悩みが、いつかよりよい家族の形へとつながっていくことを、心から願っています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 祖父母の発言で子どもが傷ついた時は?
A. その場ですぐに子どもをフォロー。「おじいちゃんはそう思ってるけど、お母さんはあなたが大事」とはっきり伝える。その後、祖父母にも「そういう言い方はやめてほしい」と冷静に伝えましょう。
Q2. 「会いたい」と祖父母が頻繁に言ってくる
A. 子どもの状態を理由に断るのが現実的。「今、本人の体調が安定しないので」「子どもが嫌がるので」と具体的に。罪悪感を持つ必要はありません。
Q3. 義両親と関係を完全に切ってもいい?
A. 状況によっては選択肢の一つです。ただし、配偶者との関係にも影響するので、夫婦でよく話し合うことが必要。
Q4. 自分の親なのに会いたくない自分が嫌
A. その気持ちは自然な反応です。「親だから愛さなければ」というプレッシャーから解放されていいです。あなたの心を守ることが優先。
Q5. 子どもが祖父母大好きで、会わせたい
A. 子どもにとって良い関係なら、会わせる方向で。あなたが立ち会わずに、配偶者や子どもだけで会う形も可能。
Q6. 同居していて逃げ場がない
A. 物理的な空間の確保、外出時間の確保、長期的な同居解消の検討など、現実的な対策を。一人で抱えず、専門家にも相談を。
Q7. 配偶者が実親の肩を持つ
A. 夫婦間の根本的な話し合いが必要。家族療法やカウンセリングの活用を検討してください。
Q8. 「育て方が悪い」と言われた時の返し方
A. 「医師の見立てに基づいて対応しています」「私たちなりに最善を尽くしています」とシンプルに。長く議論する必要はありません。
Q9. 祖父母が子どもに勝手にお小遣いをあげる
A. 「うちの方針で、お小遣いの金額は決めているので」と明確に伝える。子どもへの教育方針は、親が決める権限があります。
Q10. 祖父母が高齢で、関係改善を急いだ方がいい?
A. 急ぐ必要はありません。無理して関係改善を目指して傷つくより、現状維持の方が良いことも。「亡くなった時に後悔するかも」と感じるかもしれませんが、傷つきながら関わり続ける方が大きな後悔につながることもあります。
Q11. 同居していて、毎日顔を合わせるのがつらいです
A. 同居の場合、距離を取ることが難しく、ストレスが日常的に蓄積しやすくなります。物理的に完全に離れられなくても、「心理的な距離」を保つ工夫はできます。生活時間をずらす、自分と子どもだけの空間や時間を確保する、聞き流す技術を身につける——こうした小さな工夫の積み重ねが、心を守ります。それでも限界を感じるなら、別居や近居への移行を、長期的な選択肢として考えることも、決して逃げではありません。家族みんなが穏やかに暮らせる形を、最優先に考えてよいのです。
Q12. 祖父母に子どもを預けるのが不安です
A. 祖父母が子どもの特性を理解せず、こちらの方針と違う関わりをする場合、預けることに不安を感じるのは当然です。預ける際は、最低限守ってほしいことを具体的に、簡潔に伝えておく。短時間から試す。子どもの様子を預けた後に確認する——こうした工夫で、リスクを減らせます。どうしても不安が大きい場合は、無理に預けず、一時預かりや支援サービスなど、別の選択肢を検討してもよいでしょう。子どもの安全と安心が、何より優先されます。
Q13. 「孫がかわいくないのか」と言われ、傷つきました
A. こちらが子どもを守ろうとしての言動を、そう受け取られると、本当に深く傷つきますね。けれど、あなたは誰よりも子どもを大切に思い、守ろうとしているからこそ悩んでいるのです。祖父母の言葉を真に受けて自分を責める必要はありません。「かわいいからこそ、この子に合った関わりを大事にしたいの」と伝えられれば理想ですが、伝わらなくても、あなたの愛情が揺らぐわけではありません。その言葉に傷ついた自分を、まず労ってあげてください。
Q14. 配偶者が自分の親(祖父母)の味方をします
A. これは非常につらい状況です。本来、子どもを守るうえで最大の味方であるはずの配偶者が、祖父母側に立ってしまうと、親は完全に孤立してしまいます。まずは夫婦二人で、子どもの特性について同じ情報に触れ、理解をそろえる努力が必要です。それでも難しい場合は、専門家やカウンセラーに間に入ってもらい、第三者の視点を交えて話し合うことをおすすめします。夫婦の足並みがそろうことが、子どもを守る土台になります。
Q15. 理解のない祖父母と、もう縁を切りたいです
A. それだけ追い詰められ、傷ついてこられたのですね。関係を完全に断つことも、自分と子どもを守るための選択肢の一つです。ただ、縁を切るかどうかは、感情が高ぶっているときに即断せず、少し冷静になってから判断することをおすすめします。「完全に切る」だけでなく、「連絡頻度を減らす」「会う場面を限定する」といった、段階的に距離を取る方法もあります。あなたと子どもの心が穏やかでいられることを最優先に、無理のない距離を選んでください。
Q16. 祖父母が遠方で、たまにしか会いません。それでも対応が必要?
A. 会う頻度が少ない場合、無理に深く理解を求める必要はないかもしれません。たまに会うときだけ、最低限のことを伝え、あとは穏やかに過ごせれば十分という考え方もあります。ただ、たまに会うからこそ、その短い時間に心ない言葉をかけられて子どもが傷つくこともあります。会う前に「こういう言い方は避けてほしい」と簡潔に伝えておく、訪問時間を短めにするなど、頻度に応じた工夫をするとよいでしょう。
Q17. 祖父母の理解を諦めたら、自分が冷たい人間に思えてつらいです
A. 理解を求めることを手放すのは、冷たさではなく、自分と子どもを守るための知恵です。すべての人を理解させようと頑張り続けることのほうが、長続きしませんし、親を消耗させます。「今は理解を求めない」と決めることは、関係を完全に断つことではありません。エネルギーを、いちばん大切な子どもとの関わりに注ぐための、前向きな選択なのだと考えてみてください。
Q18. 祖父母とうまくいっている人と比べて落ち込みます
A. 祖父母が良き理解者・協力者になってくれている家庭を見ると、うらやましく、自分の状況を嘆きたくなりますね。けれど、家庭の事情は一つひとつ違い、表からは見えない苦労を抱えている家庭も多いものです。他の家庭と比べるのではなく、「自分の家族にとって、無理のない関わり方」を見つけることに目を向けてください。あなたが子どもを大切に思い、守ろうとしていること——それだけで、あなたの子育ては十分に価値があります。
看護師として、祖父母世代との間で悩む親御さんへ
児童思春期精神科の病棟で約8年働く中で、子ども本人だけでなく、その背後で「祖父母世代との理解のズレ」に苦しむ親御さんの姿を、数えきれないほど見てきました。最後に、現場で感じてきたことを、看護師の立場から少しお伝えさせてください。
私が現場でよく感じるのは、祖父母との関係に悩む親御さんほど、誠実で、家族を大切にしようとしている方が多い、ということです。「どうでもいい」と思っていれば、悩みません。子どもも、祖父母との関係も、どちらも大切にしたいと願うからこそ、その間で苦しむのです。だからまず、その苦しみを抱えているご自身を、責めないであげてください。あなたが悩んでいるのは、あなたが家族思いだからにほかなりません。
そして、お伝えしたいのは、「子どもを守ることに、迷わなくていい」ということです。祖父母を立てること、家族の和を保つこと——それらも大切ですが、何かを選ばなければならない場面では、迷わず子どもを守る側に立ってください。子どもにとって、自分を理解し、守ってくれる親の存在は、何ものにも代えがたい安心の源です。たとえ祖父母に理解されなくても、親が「あなたの味方だ」と示し続けるかぎり、子どもの心は守られます。世間体や周囲の評価より、目の前の子どもの心を優先する——その選択を、私は看護師として、心から応援します。
最後に、どうか一人で抱え込まないでください。祖父母との関係の悩みは、誰にも言えず、孤独になりがちです。けれど、同じように悩む親御さんは、たくさんいます。配偶者と分かち合う、同じ立場の親同士でつながる、専門家やカウンセラーに相談する——頼れる先は、必ずあります。親が支えられ、心に余裕を取り戻せることが、巡り巡って子どもの安心につながります。あなたが穏やかでいられることは、決してわがままではなく、子どものためにも大切なことなのです。どうか、ご自身を大切にしながら、歩んでいってください。
看護師視点でのまとめ
祖父母との理解のズレは、すぐに埋められるものではありません。でも、あなたの子育ては正しい方向に向かっています。家族に分かってもらえなくても、あなた自身を責めないで。理解者は必ずいます。
大事なポイントを整理すると:
- 祖父母世代との価値観のズレは時代差
- 「全員に理解してもらう」は手放してOK
- あなたの子育ては医学的に正しい
- 配偶者との方針一致が最重要
- 距離を取ることは「親不孝」ではない
- 子どもへの影響に配慮
- 変えたいなら段階的に
- 変わらない人もいると諦める勇気
- 親自身のメンタルケアを最優先
- 家族以外の理解者と繋がる
まず自分の心を守ること、それが子どもを守る最大の近道です。一人で抱え込まず、配偶者、専門家、同じ立場の親同士と繋がりながら、ゆっくり進んでいきましょう。応援しています。
祖父母との理解のズレは、多くの家庭が直面する、根の深い悩みです。すぐに解決できるものではありませんが、「すべての人に理解してもらう必要はない」「最優先すべきは子どもと自分の心」という視点を持つだけで、肩の力が抜けていきます。理解が得られればありがたい。得られなくても、子どもを守ることはできる——そう思えたとき、祖父母との関係に振り回される苦しさは、少しずつ和らいでいきます。
どうか、一人で抱え込まないでください。あなたが穏やかな気持ちでいられることが、子どもにとっての何よりの安心になります。焦らず、その時々の自分と子どもの心を大切にしながら、無理のない関わり方を選び続けていきましょう。
祖父母との理解のズレに悩むあなたは、決して一人ではありません。同じ思いを抱えながら、子どもを守ろうと日々奮闘している親御さんは、全国にたくさんいます。完璧な対応ができなくても、正解が見つからなくても、それでいいのです。大切なのは、子どもを思う気持ちと、自分自身を労る気持ち。その両方を持ち続けながら、あなたとお子さんが、少しずつ穏やかな毎日を取り戻していけるよう、心から願っています。
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