不安が強い子・心配性な子への接し方|「大丈夫」が逆効果になることも【児童精神科看護師が解説】

ソファで手を握りしめて不安そうにうつむく男の子の肩を抱き、静かに寄り添う母親。不安の強い子への接し方のイメージ 保護者向け

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「新しいことに、なかなか踏み出せない」「失敗をこわがって、挑戦する前に諦めてしまう」「まだ起きてもいないことを、いつまでも心配している」「『大丈夫?』『本当に?』と何度も確認してくる」。こうした、人一倍不安が強く、心配性なわが子の姿に、どう関わればよいか悩んでいる親御さんは、とても多くいらっしゃいます。児童思春期精神科の看護師として現場に立っていると、こうした「不安の強さ」をめぐるご相談に、たびたび出会います。

不安が強い子に対して、親はつい「大丈夫だよ」「心配しすぎ」「気にしないで」と声をかけます。けれど、その言葉が、なぜか子どもにうまく届かない。それどころか、かえって不安が強まってしまうことさえあります。実は、不安の強い子への関わりには、ちょっとしたコツがあり、よかれと思った対応が逆効果になることも少なくないのです。

この記事では、児童思春期精神科で子どもたちのこころに向き合ってきた看護師の視点から、不安が強いとはどういう状態か、なぜそうなるのか、そして家庭でどう関わればよいかを、できるだけ平易にお伝えします。「大丈夫」がなぜ逆効果になりうるのか、その代わりに何ができるのか。父親として、そして看護師として、両方の立場から書きます。読み終えたとき、不安の強いわが子への関わりが、少し楽に、そして温かいものになれば幸いです。

なお、本記事でお伝えするのは、不安の強い子への関わりの「ヒント」であって、唯一の正解ではありません。子ども一人ひとり違うように、関わり方にも決まった答えはありません。すべてを取り入れる必要はなく、お子さんに合いそうなものを、一つでも持ち帰っていただけたら十分です。気負わず、ご自身のお子さんを思い浮かべながら、読み進めてください。

不安とは|本来は身を守る大切な感情

まず知っておきたいのは、不安そのものは、決して悪い感情ではない、ということです。不安は、危険を察知し、身を守るために備わった、大切な感情です。不安があるから、私たちは慎重に行動し、準備をし、危ないことを避けられます。もし不安がまったくなかったら、人は無謀な行動をして、命を危険にさらしてしまうかもしれません。

つまり、不安を感じること自体は、まったく正常で、健康なことなのです。子どもが新しい場面で緊張したり、失敗を恐れたりするのも、ごく自然な反応です。問題なのは、不安が「ある」ことではなく、不安が「強すぎる」「長すぎる」「生活に支障をきたす」ようになったときです。その線引きを知っておくと、過度に心配せずにすみます。

ですから、関わりのゴールは、「不安をゼロにすること」ではありません。それは不可能ですし、必要でもありません。目指したいのは、「不安があっても、それに飲み込まれずに、行動できるようになること」「不安と上手に付き合えるようになること」です。この視点を持つだけで、関わり方の方向性が、ぐっと定まってきます。不安を敵視するのではなく、つき合っていく対象として捉えるのです。

この考え方は、子どもにも伝えてあげたいことです。「不安を感じるのは、あなたが弱いからじゃない。不安は、危ないことから守ってくれる、大事な気持ちなんだよ」と。不安を「悪いもの」「恥ずかしいもの」と思っている子は、不安を感じる自分を責めてしまいます。けれど、不安が自然なものだと知れば、その自己否定が和らぎます。不安そのものを否定しない。その姿勢が、親子の関わりの出発点になります。

「不安が強い子」とはどういう状態か

不安が強い子とは、同年齢の子に比べて、不安を感じやすく、その不安が強く、長く続きやすい子のことです。多くの子があまり気にしないような場面でも、強い不安を感じてしまう。一度不安になると、なかなかそこから抜け出せない。先のことを、繰り返し心配してしまう。そうした傾向が見られます。

具体的には、新しい環境や初めての経験を極端に怖がる、失敗やミスを過剰に恐れる、完璧でないと気がすまない、「もし〜だったらどうしよう」と起きてもいないことを心配する、何度も確認したり保証を求めたりする、といった様子です。また、こうした心の不安が、腹痛や頭痛といった体の症状として表れることも、よくあります。

大切なのは、これらが「性格の弱さ」でも「気のせい」でもない、ということです。不安の強さには、その子の生まれ持った気質が関わっていることが多く、本人の努力でどうにかなるものではありません。「もっと強くなりなさい」「気にしすぎ」と言っても、不安は消えません。むしろ、その子の感じている不安を、まず「本物のもの」として受け止めることが、すべての出発点になります。

もう一つ知っておきたいのは、不安の強さには個人差があり、明確な線引きがあるわけではない、ということです。「どこからが心配しすぎか」という境界線が、はっきりあるわけではありません。大切なのは、不安の強さそのものより、その不安が、その子の生活や成長を、どれだけ妨げているかです。本人が困っていて、生活に支障が出ているなら、支援が必要なサイン。その視点で見てあげてください。

不安が強い子によく見られるサイン

不安が強い子のサインは、心・体・行動の三つの側面に表れます。これらは別々に起きるのではなく、互いに関係し合いながら現れます。一つの側面だけを見るのではなく、全体を重ね合わせて捉えることで、その子の不安の状態が見えてきます。

心のサインとしては、過剰な心配、緊張、こわがり、イライラ、自信のなさ、完璧主義などが挙げられます。体のサインとしては、腹痛、頭痛、吐き気、動悸、眠れない、食欲の変化など。行動のサインとしては、新しいことの回避、確認や保証を求める行動、行き渋り、かんしゃく、親から離れられない、などが見られます。

これらのサインに気づくコツは、「いつものその子」との違いに注目することです。よその子と比べるのではなく、ふだんのわが子と比べて、最近、不安が強まっていないか。新しい状況で、過剰に固まっていないか。毎日そばで見ている家族だからこそ気づける、その小さな変化が、子どもの心の状態を知る大切な手がかりになります。次の章で、体と行動のサインを、もう少し詳しく見ていきます。

注意したいのは、不安のサインが、一見「不安」とは結びつかない形で表れることがある点です。イライラしやすい、反抗的になる、甘えが強くなる、わざとふざける。これらが、実は不安の裏返しであることがあります。「最近、機嫌が悪いな」「甘えん坊になったな」という変化の奥に、不安が隠れていないか。表面的な行動だけでなく、その背景に思いを向けることが大切です。

体に出る不安|腹痛・頭痛・眠れない

子どもの不安は、とくに、体の症状として表れやすいという特徴があります。大人のように「不安だ」と言葉で表現するのが難しいぶん、不安が体のサインとして出てくるのです。代表的なのが、腹痛と頭痛です。「行事の前になるとお腹が痛くなる」「発表の日に頭が痛いと言う」。こうした訴えは、仮病ではなく、不安が自律神経を通じて、本当に痛みを生み出していることが少なくありません。

また、不安が強い子は、眠りにも影響が出やすくなります。心配事が頭から離れず、なかなか寝つけない。夜中に目が覚める。朝、起きるのがつらい。睡眠は、心の状態を映す鏡のようなもので、不安が強いと、睡眠も乱れやすくなります。眠れていない様子が続くときは、心に何か負担がかかっているサインかもしれません。

体の症状に気づいたとき、大切なのは、「痛いと感じている本人の体験を否定しない」ことです。検査で異常がなくても、その痛みは本物です。「気のせいでしょう」「我慢しなさい」と言ってしまうと、子どもは「自分のつらさは分かってもらえない」と感じてしまいます。まずは痛みを受け止め、そのうえで、背景に不安がないかを、そっと見てあげてください。朝の体調不良については「起立性調節障害(OD)と不登校の関係」も参考になります。

見分けるヒントとして、症状が出るタイミングに注目してみてください。特定の場面(行事、テスト、登校時など)の前に症状が出て、その場面が終わると和らぐ、という波がある場合、不安が背景にある可能性が高まります。ただし、本当に体の病気が隠れていることもありますので、気になる症状が続くときは、一度小児科で体の状態を確認しておくと、親も安心して子どもに関わることができます。

体の症状が出たときには、できる対処もあります。お腹をさすってあげる、温かい飲み物を用意する、ゆっくり深呼吸を一緒にする。症状そのものへのケアと、その背景にある不安への寄り添いを、両方行うのです。「つらいね、少し休もうか」と体をいたわりつつ、「何か心配なことがあるのかな」と心にも目を向ける。体と心はつながっているので、両面からのケアが、子どもを楽にしてくれます。

行動に出る不安|回避・確認・かんしゃく

不安は、行動にも表れます。最も多いのが「回避」です。不安を感じる場面を、避けようとする。新しいことに挑戦しない、行事を休みたがる、特定の場所や活動を嫌がる。一見「わがまま」「やる気がない」ように見える行動の裏に、強い不安が隠れていることがあります。回避は、不安から自分を守るための、本人なりの防衛策なのです。

もう一つ多いのが、「確認」や「保証を求める行動」です。「大丈夫?」「本当に?」「もし〜だったらどうなる?」と、何度も繰り返し尋ねる。親に「大丈夫だよ」と言ってもらうことで、一時的に安心しようとします。けれど、これは一時しのぎにしかならず、すぐにまた不安が湧いてきて、確認を繰り返す、という悪循環に陥ることがあります。

そして、不安が高まったとき、それがかんしゃくや、怒り、泣きわめきとして爆発することもあります。不安をうまく言葉で表現できない子は、その苦しさを、激しい感情として出すことがあるのです。一見すると「困った行動」に見えても、その奥には「不安でいっぱいで、どうしていいか分からない」という、その子のSOSが隠れています。行動の背景にある不安に目を向けることが、適切な関わりの第一歩です。

こうした行動を「困った行動」として叱るだけでは、根っこにある不安は解消されず、別の形で表れるだけです。回避を叱れば、不安を抱えたまま無理をすることになり、かんしゃくを叱れば、不安をうまく出せなくなる。行動そのものをなくそうとするより、その奥にある不安に気づき、それを和らげることが、結果として行動の落ち着きにつながります。行動は、言葉にならない不安のメッセージなのです。

とくに、確認や保証を求める行動が増えてきたときは、不安が高まっているサインです。「大丈夫?」が口癖のようになっている、何度も同じことを尋ねる、親から離れたがらない。こうした様子に気づいたら、叱るのではなく、「最近、不安が強くなっているのかな」と、その子の心の状態に目を向けてください。行動の変化は、心の変化を映しています。

看護師として見てきた、不安と子どもの心

児童思春期精神科の現場には、強い不安を抱えた子が、たくさん訪れます。不安が強すぎて学校に行けなくなった子、確認や心配がやめられなくなった子、不安からくる身体症状で生活が立ちゆかなくなった子。不安は、子どもの心の健康と、とても深く結びついています。そして、適切に対応されないと、不安はさらに強まり、生活を狭めていきます。

現場で痛感するのは、不安の強い子の多くが、「自分はダメだ」「みんなはできるのに」と、自分を責めていることです。不安で行動できない自分を、本人がいちばん歯がゆく思い、嫌だと感じている。その自己否定が、不安をさらに強め、悪循環を生みます。だからこそ、「不安を感じるあなたが悪いのではない」というメッセージが、何よりも大切になります。

一方で、不安の強さは、裏を返せば、慎重さ、まじめさ、想像力の豊かさ、共感性の高さといった、素晴らしい長所でもあります。不安が強い子は、よく考え、人の気持ちを察し、リスクに備えることができます。不安という気質を「なくすべき欠点」と捉えるのではなく、「上手に付き合えば、強みにもなる個性」として捉える。その視点が、子どもの可能性を広げます。不安症全般については「子どもの不安症・分離不安への関わり方」も参考になります。

現場で出会った子の中には、強い不安を抱えながらも、家庭で温かく受け止められ、少しずつ不安と付き合えるようになっていった子が、たくさんいます。不安が完全になくなったわけではありません。けれど、「不安でも大丈夫」「困ったら助けてもらえる」という安心を得て、自分なりのペースで前に進めるようになっていく。その姿に、何度も希望をもらいました。不安の強さは、適切な支えがあれば、必ず和らげていけるのです。

そして、忘れないでいただきたいのは、不安の強い子は、決して「弱い子」ではない、ということです。むしろ、人一倍多くのことを感じ、考え、それでも毎日を一生懸命に生きている、とても頑張り屋の子が多いのです。その頑張りを、まず認めてあげてください。「不安なのに、よくやっているね」という一言が、頑張りすぎて疲れた子どもの心を、そっと支えます。

不安の背景|気質・経験・発達特性

不安が強くなる背景には、いくつかの要素が絡んでいます。まず大きいのが、生まれ持った「気質」です。新しいものに慎重で、刺激に敏感な気質を持つ子は、もともと不安を感じやすい傾向があります。これは、HSC(ひといちばい敏感な子)の特徴とも重なります。気質は、育て方で生まれるものではなく、その子が生まれ持った個性です。

次に、「経験」も影響します。怖い思いをした、失敗して恥ずかしい思いをした、といった経験が、不安を強めることがあります。とくに、その経験が十分に受け止められず、一人で抱え込んだ場合、不安として心に残りやすくなります。また、身近な大人が不安が強いと、その関わり方を通じて、子どもも不安を強めることがあります。

さらに、発達特性が背景にあることもあります。ASD(自閉スペクトラム症)のある子は、見通しの立たない変化に強い不安を感じやすく、ADHDのある子は、失敗経験の積み重ねから不安が強まることがあります。不安の背景は一つではなく、これらが複雑に絡み合っています。だからこそ、「なぜ不安なのか」を一つに決めつけず、その子の全体を、柔らかく理解しようとすることが大切です。HSCについては「HSC(ひといちばい敏感な子)とは?」もご覧ください。

背景を理解しようとするとき、「育て方のせいだ」と自分を責める必要はありません。不安の強さの最も大きな要因は、生まれ持った気質であり、親の関わりが「原因」になるわけではないからです。ただ、これからの関わりによって、子どもが不安と上手に付き合えるよう支えることは、十分にできます。原因探しに心を費やすより、これからどう関わるかに目を向けるほうが、ずっと子どものためになります。

とはいえ、背景を理解することには意味があります。たとえば、ASDの特性が背景にあるなら、見通しを示す工夫が効きますし、過去のつらい経験が影響しているなら、その傷を癒すことが先になります。背景に応じて、効果的な関わりは変わってきます。一人で見極めるのは難しいので、気になるときは専門家の力を借りながら、その子の不安の背景を、少しずつ理解していくとよいでしょう。理解が深まるほど、関わりの糸口も見えてきます。

なぜ「大丈夫」が逆効果になることがあるのか

不安が強い子に、親はつい「大丈夫だよ」「心配しないで」と声をかけます。これは自然な、愛情からの言葉です。けれど、この「大丈夫」が、不安の強い子には、うまく届かない、あるいは逆効果になることがあります。なぜでしょうか。

一つは、「大丈夫」という言葉が、子どもの不安を否定するメッセージとして伝わってしまうからです。本人は「大丈夫じゃない」と感じているのに、「大丈夫」と言われると、「自分の感じていることは間違っているのか」「分かってもらえない」と感じてしまいます。気持ちを受け止められないまま「大丈夫」と言われても、不安は消えないどころか、孤独感が加わってしまうのです。

もう一つは、「大丈夫」と保証することが、確認行動を強化してしまうことです。「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫だよ」と答えると、その瞬間は安心しますが、子どもは「不安になったら親に保証してもらえばいい」と学習し、ますます確認を求めるようになります。親が安心を与えれば与えるほど、子どもは自分で不安に対処する力を育てる機会を失っていきます。よかれと思った保証が、依存を生むこともあるのです。次の章から、では何ができるのかを見ていきます。

誤解しないでいただきたいのは、「大丈夫」と言ってはいけない、という単純な話ではないことです。大切なのは順番です。まず気持ちを受け止めてから「大丈夫」と伝えるなら、その言葉は支えになります。問題なのは、気持ちを受け止めずに、いきなり「大丈夫」で済ませてしまうこと。同じ言葉でも、前に「不安なんだね」があるかどうかで、子どもへの届き方は、まるで変わってくるのです。

やってはいけない対応|否定・無理強い・過保護

不安が強い子への対応で、親がやってしまいがちな、けれど逆効果になることがあります。一つめは、不安を否定することです。「そんなの怖くない」「気にしすぎ」「考えすぎだよ」。これらは、子どもの不安を軽く扱い、「分かってもらえない」という思いを生みます。本人にとって不安は本物なのですから、まずそれを認めることが必要です。

二つめは、無理に直面させることです。「怖くても、やればできる」と、不安を感じている場面に、いきなり強く押し出す。確かに、少しずつ慣らしていくことは大切ですが、準備のないまま無理強いすると、強い恐怖体験になり、かえって不安を悪化させてしまいます。「克服させよう」と焦るほど、逆効果になりやすいのです。

三つめは、逆に、不安を避けさせすぎる「過保護」です。子どもが不安がるからと、不安な場面をすべて取り除いてしまうと、子どもは「不安なことはやらなくていい」と学び、ますます回避が強まります。不安に立ち向かい、乗り越える経験を積めないまま、世界が狭まっていきます。否定でも、無理強いでも、過保護でもない、ちょうどよい関わり。それが、次の章からお伝えする「不安を受け止めつつ、少しずつ慣らす」関わりです。

これらのNG対応に共通するのは、「不安を早くなくそう」という焦りです。否定するのも、無理強いするのも、すべて取り除くのも、根っこには「不安をなんとかしたい」という気持ちがあります。けれど、不安はすぐにはなくなりません。焦って消そうとするほど、こじれてしまいます。「すぐになくそう」とせず、「少しずつ付き合えるように」と長い目で構えること。その心の余裕が、適切な関わりを支えます。

家庭でできる関わり|まず不安を受け止める

不安が強い子への関わりの土台は、「不安を否定せず、まず受け止める」ことです。「大丈夫」と打ち消すのでも、「気にしすぎ」と退けるのでもなく、「そうか、不安なんだね」「こわいよね」と、その気持ちをそのまま受け止める。たったこれだけのことが、不安の強い子には、大きな安心になります。

不安は、否定されると強まり、受け止められると和らぐ、という性質があります。「分かってもらえた」という感覚が、不安でこわばった心を、少しゆるめてくれるのです。逆に、不安を否定されると、子どもは「この気持ちは持ってはいけないんだ」と感じ、不安を一人で抱え込むようになります。すると、不安はますます大きくなってしまいます。

受け止めるとは、不安に「同意する」こととは違います。「そうだね、こわいね」と気持ちに寄り添いつつ、「でも、きっとできるよ」と励ますのでもなく、まず「不安なんだね」と、その感情の存在を認める。解決を急がず、まず気持ちに寄り添う。この「受け止める」関わりが、すべての支援の土台になります。気持ちを受け止めたうえで、次のステップへと進んでいきます。

受け止めるとき、親が落ち着いていることも大切です。子どもが強い不安を訴えると、親まで動揺してしまいがちですが、親が一緒におろおろすると、子どもの不安はさらに強まります。「そうか、不安なんだね」と、穏やかに、どっしりと受け止める。子どもにとって、親が落ち着いて受け止めてくれること自体が、「これは乗り越えられることなんだ」という安心のメッセージになります。受け止めは、言葉だけでなく、態度でも伝わるのです。

受け止める言葉の具体例を、いくつか挙げておきます。「そうか、それが心配なんだね」「こわいと感じているんだね」「不安になるの、よく分かるよ」。どれも、子どもの気持ちを、そのまま言葉にして返すものです。アドバイスや励ましを急がず、まず気持ちを映し返す。子どもは、自分の気持ちが言葉にして受け止められると、「分かってもらえた」と感じ、ふっと力が抜けます。この小さな積み重ねが、子どもの安心を育てていきます。

不安を言葉にする手伝いをする

不安が強い子は、自分が何に、どう不安なのかを、うまく言葉にできないことがよくあります。漠然とした不安に飲み込まれ、頭の中がもやもやして、ますます苦しくなる。そんなとき、親が、その不安を言葉にする手伝いをしてあげると、子どもは少し楽になります。気持ちは、言葉にできると、扱いやすくなるのです。

具体的には、「何が、いちばん心配なのかな?」「どんなことが起きそうで、こわいの?」と、子どもが自分の不安を整理できるよう、問いかけてあげます。ただし、問い詰めるのではなく、ゆっくり、子どものペースで。子どもが言葉にしたら、「そうか、それが心配なんだね」と受け止める。漠然とした不安が、具体的な言葉になるだけで、「正体の分からない怖さ」が「向き合える心配事」に変わります。

また、不安を数値で表す方法も、年齢によっては有効です。「今の不安は、10のうちどれくらい?」と聞いてみる。不安を客観的に見られるようになると、「さっきは8だったけど、今は5になった」と、不安が変化するものだと気づけます。不安は、ずっと同じ強さで続くわけではなく、波があって、やがて和らぐ。その実感が、不安と付き合う力を育てます。

言葉にする手伝いをするとき、親が答えを与えるのではなく、子ども自身が気づけるよう、そばで伴走する姿勢が大切です。「こうすればいいよ」と解決策を先に示すより、「どうしたらいいと思う?」と一緒に考える。自分で気持ちを整理し、対処を考えられた経験は、子どもの自信になります。すぐに答えを出さず、子どもが自分の力で不安と向き合えるよう、根気よく付き合ってあげてください。

スモールステップで「できた」を積む

不安な場面に少しずつ慣れていくには、「スモールステップ」が効果的です。不安の強い子に、いきなり大きな挑戦をさせるのではなく、ごく小さな、確実にできる一歩から始めて、少しずつ慣らしていく方法です。階段を一段ずつ上るように、無理のないペースで進めていきます。

たとえば、人前で話すのが不安な子なら、いきなり大勢の前ではなく、まず家族の前で、次に一人の友達の前で、と段階を踏みます。新しい場所が苦手な子なら、まず外から見るだけ、次に少しだけ入ってみる、と慣らしていきます。大切なのは、その子が「これならできそう」と思える、小さな一歩に設定すること。成功体験を積み重ねることで、「不安でも、やってみたらできた」という自信が育ちます。

このとき、結果ではなく、挑戦したこと自体を認めてあげてください。「できたね」だけでなく、「こわかったのに、やってみたね」と、勇気を出したことをねぎらう。たとえうまくいかなくても、一歩踏み出したこと自体に価値があります。そして、無理は禁物です。その日の様子を見て、難しそうなら一段下げる。焦らず、その子のペースで。スモールステップの積み重ねが、不安を乗り越える力を、少しずつ育てていきます。

スモールステップで大切なのは、後戻りを失敗と捉えないことです。昨日できたことが、今日はできない。一歩進んだと思ったら、二歩下がる。不安との付き合いには、こうした波がつきものです。後戻りしても、「また戻ってしまった」と落ち込まず、「波があるのが普通」とおおらかに構える。長い目で見れば、確実に前に進んでいます。一進一退を受け入れる親の姿勢が、子どもの焦りも和らげます。

考え方の癖に気づく|不安を生む「思考のパターン」

不安が強い子は、しばしば、不安を生み出しやすい「考え方の癖」を持っています。たとえば、「最悪のことばかり想像する」「少しの失敗を、すべての失敗のように感じる」「『絶対』『いつも』『みんな』と決めつける」「自分だけがダメだと思う」。こうした思考のパターンが、不安をどんどん大きくしていきます。

家庭でできるのは、こうした考え方の癖に、子どもが気づけるよう、そっと手伝うことです。「本当に、絶対そうなるかな?」「ほかの可能性は考えられる?」「前にも同じこと心配したけど、どうだった?」と、優しく問いかけてみる。決して「考え方が間違っている」と否定するのではなく、別の見方もあることに、一緒に気づいていくのです。

親が手本を見せるのも効果的です。親自身が、何かを心配したときに「最悪のことを考えてたけど、よく考えたら大丈夫かも」と、考え方を切り替える姿を、声に出してみせる。子どもは、親のそうした姿から、不安との付き合い方を、自然に学んでいきます。完璧に切り替えられなくてもかまいません。「いろいろな見方ができるんだ」と子どもが知ること自体に、意味があります。

ただし、これは年齢や状態によっては難しいこともあります。強い不安のなかにいる子に、理屈で考え方を変えさせようとしても、うまくいきません。まずは気持ちを受け止めることが先で、考え方の見直しは、子どもが少し落ち着いているときに、押し付けずに行います。「こういう考え方もあるね」と、新しい視点をそっと差し出す。それだけでも、子どもの心は少しずつ柔らかくなっていきます。

安心の土台をつくる

不安と付き合う力の根っこにあるのは、「安心の土台」です。何があっても受け止めてもらえる、失敗しても大丈夫、ありのままの自分が愛されている。そういう安心感が心の底にあると、子どもは不安な場面にも、少しずつ立ち向かえるようになります。逆に、この土台がぐらついていると、不安は際限なく大きくなってしまいます。

安心の土台をつくるために、特別なことは必要ありません。子どもの話に耳を傾ける、気持ちを受け止める、「あなたの味方だよ」と伝える、できないことがあっても責めない。こうした日々の関わりの積み重ねが、「ここにいて大丈夫」という感覚を育てます。とくに、不安が強い子には、「不安になっても、いつでも戻ってこられる場所がある」という安心が、何よりの支えになります。

また、安心の土台は、子どもが不安に挑戦するための「ベースキャンプ」のような役割も果たします。安心できる場所があるからこそ、子どもは外の世界へ一歩を踏み出せ、こわくなったら戻ってこられる。家庭という安全基地があることが、子どもが不安を乗り越えていくための、出発点になるのです。自己肯定感を育てる関わりは「子どもの自己肯定感を育てる7つの具体的な声かけ」も参考になります。

安心の土台をつくるうえで、「できなくても愛される」という体験は、とくに重要です。不安が強い子は、「うまくできないと、見捨てられるのでは」という恐れを抱いていることがあります。だからこそ、できてもできなくても、あなたの価値は変わらない、と繰り返し伝えてあげてください。条件つきの愛ではなく、ありのままを認める無条件の愛。それが、不安の根っこを和らげる、最も深い支えになります。

とはいえ、毎日、完璧に無条件の愛を注ぐのは、現実には難しいものです。疲れているとき、イライラしているとき、つい厳しい言葉が出てしまう日もあります。それでいいのです。大切なのは、完璧であることではなく、全体としての方向性です。ときに失敗しても、「さっきはごめんね」と修復できれば、子どもは「人は間違えても、やり直せる」と学びます。不完全でも、愛そうとし続けること。それで十分なのです。

学校との連携

不安が強い子が学校で安心して過ごすには、学校との連携も大切です。とくに、発表や行事、新しい活動など、不安が高まりやすい場面で、配慮をお願いできると助けになります。まず、担任の先生に、子どもが不安を感じやすいこと、家庭で心がけている関わり方を伝えておくとよいでしょう。

具体的には、発表を無理強いしない、見通しを事前に伝えてもらう、不安が高まったときに落ち着ける場所(保健室など)を確保してもらう、といった配慮が考えられます。とくに、「次に何があるか」が分かると、不安の強い子は安心しやすくなります。スケジュールや段取りを事前に共有してもらうだけで、過ごしやすさが大きく変わることがあります。

連携のコツは、「特別扱いを求める」のではなく、「この子が安心して力を発揮できる方法を一緒に考えたい」という協力的な姿勢で伝えることです。担任に相談しにくいときは、スクールカウンセラーや養護教諭を通すという方法もあります。専門家が間に入ることで、子どもの不安への理解が深まることもあります。「スクールカウンセラーの活用法」も参考にしてください。

連携にあたっては、家庭と学校で対応がちぐはぐにならないよう、足並みをそろえることも大切です。家庭では不安を受け止めているのに、学校では「気にしすぎ」と言われると、子どもは混乱します。家庭で心がけていることを具体的に伝え、学校でも同じ方向で関わってもらえるようお願いする。子どもを真ん中に置いて、家庭と学校が手を取り合う。その連携が、子どもの安心を一貫して支えます。

とくに、入学・進級・転校など、環境が大きく変わるタイミングでは、不安が高まりやすいものです。そうした節目の前には、あらかじめ学校と情報を共有し、新しい環境への移行を、できるだけなだらかにする工夫を相談しておくと安心です。事前に教室を見ておく、先生と顔合わせをしておくなど、見通しを持てる準備があると、不安の強い子も、環境の変化を乗り越えやすくなります。

不安と上手に付き合う力を育てる

ここまでお伝えしてきた関わりは、最終的に、子どもが「不安と上手に付き合う力」を育てることを目指しています。不安をなくすのではなく、不安があっても、それに飲み込まれずに行動できる。不安を感じたとき、自分で落ち着く方法を持っている。そういう力が育てば、子どもは不安を抱えながらも、自分らしく生きていけます。

そのために、不安を感じたときの「対処法」を、いくつか一緒に見つけておくとよいでしょう。深呼吸をする、好きなものを思い浮かべる、信頼できる人に話す、紙に気持ちを書き出す、体を動かす。その子に合った、心を落ち着ける方法を持っていると、不安な場面でも「これをすれば少し楽になる」と思えます。自分で不安に対処できたという経験が、自信になります。

大切なのは、こうした力は、一朝一夕には育たない、ということです。何度も不安な場面を経験し、受け止めてもらい、少しずつ乗り越えていく。その積み重ねのなかで、ゆっくりと育っていきます。焦らず、長い目で見守ること。今はうまくできなくても、その子のなかに、不安と付き合う力は、確実に育っていきます。親は、その成長を信じて、伴走する存在でありたいものです。

そして、子どもが少しでも不安を乗り越えられたときには、その経験を、一緒に振り返ってあげてください。「こわかったけど、できたね」「あのとき、どうやって落ち着いたんだっけ?」と。乗り越えた経験を言葉にして確認すると、それが「自分は不安を乗り越えられる」という実感として、心に刻まれます。成功体験は、振り返ることで、より確かな自信に変わっていくのです。

不安と付き合う力が育つには、時間がかかります。何年もかけて、ゆっくりと育っていくものです。だから、今すぐ結果が出なくても、焦らないでください。種をまいてから花が咲くまでに時間がかかるように、日々の関わりが実を結ぶまでには、相応の時間が必要です。「いつになったら」と焦るのではなく、「少しずつ育っている」と信じて、根気よく水をやり続ける。その積み重ねが、いつか必ず、子どもの中で花開きます。

親自身の不安が、子に伝わること

少し、親御さん自身についてお話しします。子どもの不安に関わるうえで、見落とされがちなのが、「親の不安が、子どもに伝わる」ということです。親が、子どもの将来を過剰に心配したり、子どもが不安がるたびに親もおろおろしたりすると、その不安は、知らず知らずのうちに子どもに伝わり、子どもの不安をさらに強めてしまうことがあります。

不安の強い子の親もまた、不安を感じやすい気質を持っていることが少なくありません。それは決して悪いことではありませんが、親が自分の不安に飲み込まれていると、子どもを落ち着いて支えることが難しくなります。だからこそ、まず親自身が、自分の不安と上手に付き合うことが、子どもへの何よりの支援になります。親が落ち着いていると、子どもも安心できるのです。

とはいえ、「不安に思うな」というのは無理な注文です。親自身も、不安を抱え込まず、吐き出せる場を持ってください。配偶者、友人、同じ悩みを持つ親、専門家。一人で抱えないことが、長く子どもを支える力になります。そして、子どもの前では、できる範囲で「どっしり構える」ことを意識してみてください。親の落ち着きが、子どもにとって、何よりの安心材料になります。親のケアについては「親のメンタルヘルス 完全ガイド」もご用意しています。

もし、あなた自身が強い不安を抱えやすく、それが子育てに影響していると感じるなら、あなた自身がケアを受けることも、立派な選択です。親が自分の不安と向き合い、楽になることは、まわりまわって、子どもへの何よりの支援になります。自分を後回しにせず、必要なら専門家の力も借りてください。親が穏やかでいられることが、家庭全体に安心をもたらします。

思春期の不安

不安の強さは、思春期になると、また違った形で表れることがあります。思春期は、自分が人からどう見られるかに敏感になり、対人面での不安(人前で話す、人の目が気になる、嫌われたくない)が強まりやすい時期です。また、進路や将来への不安も加わり、不安の対象が広がっていきます。

この時期の関わりは、幼児期とは変える必要があります。あれこれ口を出すより、本人の不安な気持ちを、否定せずに聞ける関係を保つことが大切です。「心配しすぎ」と言わず、「そう感じているんだね」と受け止める。そして、本人が助けを求めてきたときには、しっかり支える。距離感が難しい時期ですが、「いつでも味方だよ」というメッセージを保ちつつ、本人の自立を尊重します。

思春期の不安が強い場合、社交不安症やパニック症、全般性不安症といった状態に至っていることもあります。日常生活に大きな支障が出ている、強い不安が長く続いている、という場合は、専門的な支援が本人を大きく楽にすることがあります。思春期は、本人が自分の不安とどう付き合っていくかを、主体的に考え始める時期でもあります。思春期全般の関わりは「思春期メンタル 完全ガイド」もご覧ください。

思春期の不安が強い子には、「相談できる相手」が家庭の外にもいることが、大きな支えになります。親には話しにくいことも、スクールカウンセラーや、信頼できる第三者になら話せることがあります。親がすべてを抱え込もうとせず、本人が頼れる先を広げてあげることも、大切な支援です。本人の世界が広がり、複数の支えを持てることが、思春期の不安を和らげます。

受診・専門相談を考える目安

不安について、いつ専門家に相談すればよいか、目安をお伝えします。あくまで目安であり、迷ったら早めに相談してよいのですが、次のような場合は、相談を検討するとよいでしょう。不安のために学校に行けない、日常生活(食事・睡眠・外出など)に支障が出ている、不安からくる身体症状が続いている、本人がとてもつらそう、気分の落ち込みも見られる、といった場合です。

強い不安が続くと、不安症(分離不安症、社交不安症、全般性不安症、パニック症など)という状態に至っていることもあります。これらは、適切な支援によって、和らげていくことができます。相談先としては、児童精神科や児童思春期外来、かかりつけの小児科、学校のスクールカウンセラーなどがあります。早めに相談することで、その子に合った関わりが分かり、親の不安も軽くなります。

受診をためらう気持ちは、よく分かります。「考えすぎかもしれない」「そのうち落ち着くかも」と思うこともあるでしょう。けれど、強い不安を放っておくと、回避が広がり、生活がどんどん狭まってしまうこともあります。早めの相談は、こじれる前の賢い選択です。「相談に行ってみる」くらいの気持ちで、敷居を下げて考えてください。「児童精神科と小児科のどちらに行けばいいか」と迷う方は「児童精神科と小児科、どちらに行けばいい?」も参考にしてください。

相談したからといって、必ず薬を使うわけでも、大げさな治療が始まるわけでもありません。多くは、まず子どもと家族の状況をていねいに聞き取り、今の関わりの良い点を確認し、必要な工夫を一緒に考える、という流れです。「相談したら大げさにされるのでは」という心配は、たいてい杞憂に終わります。正しい知識を得て、その子に合った関わりが分かることが、何よりの安心につながります。

緊急性が高いサインと、すぐ頼れる相談窓口

強い不安は、ときに子どもを深く追い詰めてしまうことがあります。次のようなサインが見られたときは、緊急性が高いと考え、ためらわずに相談機関を頼ってください。「死にたい」「消えたい」と口にする、自分を傷つけている形跡がある、強い不安で全く動けない、パニックを起こす、食事や睡眠がまったくとれない。これらは見逃してはならないSOSです。

このようなとき、親はまず落ち着いて、子どもを責めず、否定せず、そばにいてあげてください。そして、家庭だけで抱え込まず、専門機関へつなぐことが大切です。緊急時の対応は「子どもが「死にたい」と言ったときの親の対応」に詳しくまとめています。すぐに頼れる主な相談窓口を挙げておきます。いずれも無料で、子ども本人も保護者も利用できます。番号は変更される場合がありますので、利用時は各窓口の公式情報もご確認ください。

  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):0120-0-78310 ── いじめや学校生活の悩みを24時間相談できます
  • チャイルドライン:0120-99-7777 ── 18歳までの子どものための電話・チャット相談
  • よりそいホットライン:0120-279-338 ── 24時間、どんな悩みでも受け止めてくれる相談窓口
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556 ── お住まいの公的な相談窓口につながります

「これくらいで相談していいのかな」とためらう必要はありません。迷ったら、相談してかまわないのです。専門家に話すことで、親自身の不安もやわらぎます。一人で抱え込まないことが、子どもを守る第一歩です。

きょうだい・家族の理解

不安が強い子を支えるには、家族みんなの理解が大切です。とくにきょうだいには、年齢に応じて、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)は、不安を感じやすいところがあるけれど、それはその子の気質で、からかったりしてはいけないんだよ」と伝えておきましょう。家族が理解者になってくれれば、家庭はより安心できる場所になります。

一方で、不安の強い子に親の関心が集中すると、そのきょうだいが我慢を強いられたり、寂しさを感じたりすることがあります。きょうだいにも、それぞれの気持ちや悩みがあります。一人ひとりと向き合う時間を持ち、どの子も大切にされていると感じられる家庭であること。それが、家族全体の安定につながります。きょうだいへの配慮は「きょうだい児のケア」も参考になります。

祖父母など、周囲の親族の理解も大切です。「気が小さい」「もっと強くなれ」といった、悪気のない一言が、子どもを傷つけることがあります。不安の強さは性格の弱さではなく、その子の気質であること、温かく見守ってほしいことを、家族みんなで共有しておけると理想的です。子どもを取り巻く大人みんなが同じ理解を持つこと。それが、子どもにとって何より安心できる環境になります。

家族の中で、不安について明るく話せる空気があると、子どもは安心します。「お母さんも、人前で話すのは緊張するよ」「お父さんも、こういうことが苦手なんだ」と、家族が自分の不安をオープンに話せると、子どもは「不安を感じるのは自分だけじゃない」「不安があっても、ちゃんと生きていける」と思えます。不安を隠すべきものにせず、家族みんなで、おおらかに受け止める。その空気が、子どもの心を守ります。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 「大丈夫」と言ってはいけないのですか?
「大丈夫」が絶対にダメというわけではありません。ただ、気持ちを受け止める前に「大丈夫」とだけ言うと、不安を否定されたように感じることがあります。まず「不安なんだね」と受け止め、そのうえで「一緒に考えよう」「きっと大丈夫」と伝えると、同じ言葉でも届き方が変わります。順番が大切です。

Q. 心配性は、大人になれば自然に治りますか?
不安を感じやすい気質は、ある程度その子の個性として続くことが多いですが、不安と上手に付き合う力は、経験を通して育っていきます。「治る・治らない」より、「付き合い方が上手になる」と考えるとよいでしょう。子ども時代に安心の土台を築き、対処法を身につけることが、その後を大きく支えます。

Q. 不安がる子を、励ましてはいけないのですか?
励まし自体が悪いわけではありませんが、気持ちを受け止める前の励ましは、プレッシャーになりがちです。「頑張れ」より、まず「こわいよね」と寄り添う。そのうえで、本人が一歩踏み出そうとしたら、「やってみよう」とそっと後押しする。寄り添いと励ましの順番を意識してみてください。

Q. 確認や保証を求めてくるとき、どう答えれば?
毎回完璧に保証するのではなく、「不安なんだね。でも、あなたなら大丈夫だと思うよ」と気持ちを受け止めつつ、少しずつ自分で対処できるよう促していきます。確認に応じすぎると、かえって確認行動が強まることがあります。気持ちは受け止めつつ、保証は控えめに、が一つの目安です。

Q. 不安が強いのは、私の関わり方のせいでしょうか?
いいえ。不安の強さの最も大きな要因は、生まれ持った気質であり、親の育て方が「原因」になるわけではありません。自分を責める必要はありません。むしろ、こうして関わり方を学ぼうとしているあなたの姿勢が、子どもの大きな支えになります。原因探しより、これからの関わりに目を向けていきましょう。

Q. 不安が強い子に、習い事や挑戦をさせるべきでしょうか?
本人が興味を持ち、無理のない範囲なら、新しい挑戦はよい経験になります。ただし、不安を感じる場面に無理に押し出すのは逆効果です。本人の「やってみたい」を尊重し、スモールステップで、安心できる範囲から少しずつ。「させるべき」と気負わず、本人のペースに合わせてあげてください。

Q. きょうだいの一方だけ不安が強く、対応に差が出ます。
それぞれの子に必要な関わりが違うのは、自然なことです。「平等」とは全員に同じことをすることではなく、一人ひとりに必要な支えを届けることです。ただ、きょうだいが不公平を感じていないか気持ちには目を配り、それぞれと一対一で過ごす時間を持つことが、どの子も大切にされているという安心につながります。

Q. 何度「大丈夫」と言っても、安心してくれません。
「大丈夫」という保証は、その場しのぎにしかならず、くり返すほど効果が薄れます。保証を求められたら、毎回応じるのではなく、「不安なんだね。でも、前にも乗り越えられたよね」と、本人が自分で安心を見つけられるよう促してみてください。保証で安心させるより、自分で対処する力を育てるほうが、長い目で見て子どもを支えます。

困ったときの相談先

不安が強い子のことで頼れる先を整理しておきます。医療・専門機関では、児童精神科・児童思春期外来、かかりつけの小児科。学校関係では、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー。公的機関では、各自治体の教育相談センター、子ども家庭支援センター。そして、緊急時には前の章で挙げた電話相談窓口があります。

どこに相談すればよいか迷ったときは、まず学校か、かかりつけの小児科に一声かけてみてください。そこから、必要な窓口へとつないでもらえます。不安は、子どもにとって、とてもありふれた、けれど見過ごされやすい困りごとです。一人で抱え込まず、頼れる先を少しずつ増やしていきましょう。相談することは、子どもを守るための、前向きな一歩です。

近年は、子どもの不安に関する情報や、同じ悩みを持つ親のコミュニティも、広がってきました。同じように不安の強い子を育てる親の体験談に触れるだけで、「自分たちだけじゃない」と心が軽くなることがあります。専門機関だけでなく、そうした横のつながりも、大きな支えになります。情報を得て、仲間とつながり、専門家を頼る。いくつもの支えを重ねながら、その子とともに、一歩ずつ歩んでいってください。

まとめ|不安をなくすより、付き合う力を育てる

不安が強い子への関わりで、いちばん大切なのは、「不安をゼロにすること」ではなく、「不安と上手に付き合う力を育てること」です。不安は、本来、身を守るための大切な感情であり、なくすことはできませんし、その必要もありません。慎重さ、まじめさ、想像力の豊かさといった、その子の素晴らしい長所の裏返しでもあるのです。

不安と上手に付き合えるようになった子は、その慎重さや想像力を、長所として発揮できるようになります。リスクをよく考えて行動できる、人の気持ちに敏感に気づける、丁寧に物事を進められる。不安の強さは、適切に育てば、その子の大きな武器になります。今は、不安に振り回されてつらい時期かもしれませんが、その繊細さは、いつか必ず、その子自身を支える力に変わっていきます。

家庭でできることは、不安を否定せず、まず受け止めること。不安を言葉にする手伝いをし、スモールステップで「できた」を積み、安心の土台をつくること。そして、「大丈夫」と保証で安心させすぎるのではなく、子どもが自分で不安に対処する力を、ゆっくり育てていくこと。一つひとつは小さなことですが、その積み重ねが、子どもが不安を抱えながらも、自分らしく前に進む力を育てます。

最後に、もう一度お伝えします。不安を感じるのは、悪いことではありません。不安の強いあなたのお子さんは、人一倍ものごとを深く考え、人の気持ちを感じ取れる、繊細で優しい子なのだと思います。その個性を、否定するのではなく、まるごと受け止めてあげてください。焦らず、責めず、その子のペースで。不安と付き合う力は、必ず育っていきます。この記事が、その小さな支えになれば幸いです。

不安の強い子の子育ては、ときに、親のほうが心配で疲れてしまうものです。子どもが不安がるたびに胸が痛み、「この先、大丈夫だろうか」と、親自身が不安に飲み込まれそうになる。けれど、どうか忘れないでください。あなたが今、こうして子どものために学ぼうとしていること、その姿勢こそが、何よりの支えです。完璧でなくていいのです。受け止めきれない日があってもいい。その子を思う気持ちが続いていれば、それは必ず子どもに伝わります。お子さんと、そしてあなた自身を、信じてあげてください。

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本記事は、児童思春期精神科での看護経験をもとにした一般的な情報提供を目的としており、特定の子どもへの医学的な診断・治療を行うものではありません。お子さんの状態には個人差があり、記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。気になる症状や強い不安がある場合は、自己判断で抱え込まず、かかりつけ医・児童精神科・スクールカウンセラー等の専門家にご相談ください。緊急性が高いと感じられる場合は、本文中に記載した相談窓口や、お住まいの地域の医療・相談機関を速やかにご利用ください。掲載した相談窓口の情報は変更される場合がありますので、ご利用の際は各機関の公式情報をご確認ください。

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出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
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