不安が強い子・心配性な子への接し方|「大丈夫」が逆効果になることも【児童精神科看護師が解説】

ソファで手を握りしめて不安そうにうつむく男の子の肩を抱き、静かに寄り添う母親。不安の強い子への接し方のイメージ 保護者向け

この記事の要点

  • 不安は本来、身を守るための大切な感情
  • 「大丈夫」と繰り返す励ましは、かえって不安を強める
  • 腹痛・頭痛・不眠として体に出ることがある
  • 回避・確認・かんしゃくは、不安の行動面のサイン
  • 見通しを具体的に示すと落ち着きやすい

「新しいことに、なかなか踏み出せない」「失敗をこわがって、挑戦する前に諦めてしまう」「まだ起きてもいないことを、いつまでも心配している」「『大丈夫?』『本当に?』と何度も確認してくる」。こうした、人一倍不安が強く、心配性なわが子の姿に、どう関わればよいか悩んでいる親御さんは、とても多くいらっしゃいます。

不安が強い子に対して、親はつい「大丈夫だよ」「心配しすぎ」「気にしないで」と声をかけます。けれど、その言葉が、なぜか子どもにうまく届かない。それどころか、かえって不安が強まってしまうことさえあります。実は、不安の強い子への関わりには、ちょっとしたコツがあり、よかれと思った対応が逆効果になることも少なくないのです。

この記事では、不安が強いとはどういう状態か、なぜそうなるのか、そして家庭でどう関わればよいかを、できるだけ平易にお伝えします。「大丈夫」がなぜ逆効果になりうるのか、その代わりに何ができるのか。なお、お伝えするのは関わりの「ヒント」であって、唯一の正解ではありません。お子さんに合いそうなものを、一つでも持ち帰っていただけたら十分です。

不安とは|本来は身を守る大切な感情

まず知っておきたいのは、不安そのものは、決して悪い感情ではないということです。不安は、危険を察知し、身を守るために備わった、大切な感情。不安があるから、私たちは慎重に行動し、準備をし、危ないことを避けられます。

つまり、不安を感じること自体は、まったく正常で、健康なことなのです。問題なのは、不安が「ある」ことではなく、不安が「強すぎる」「長すぎる」「生活に支障をきたす」ようになったとき。その線引きを知っておくと、過度に心配せずにすみます。

ですから、関わりのゴールは、「不安をゼロにすること」ではありません。目指したいのは、「不安があっても、それに飲み込まれずに、行動できるようになること」「不安と上手に付き合えるようになること」です。不安を敵視するのではなく、つき合っていく対象として捉えるのです。

この考え方は、子どもにも伝えてあげたいことです。「不安を感じるのは、あなたが弱いからじゃない。不安は、危ないことから守ってくれる、大事な気持ちなんだよ」と。不安を「悪いもの」「恥ずかしいもの」と思っている子は、不安を感じる自分を責めてしまいます。けれど、不安が自然なものだと知れば、その自己否定が和らぎます。

「不安が強い子」とはどういう状態か

不安が強い子とは、同年齢の子に比べて、不安を感じやすく、その不安が強く、長く続きやすい子のことです。

具体的には、新しい環境や初めての経験を極端に怖がる、失敗やミスを過剰に恐れる、完璧でないと気がすまない、「もし〜だったらどうしよう」と起きてもいないことを心配する、何度も確認したり保証を求めたりする、といった様子。また、こうした心の不安が、腹痛や頭痛といった体の症状として表れることも、よくあります。

大切なのは、これらが「性格の弱さ」でも「気のせい」でもない、ということ。不安の強さには、その子の生まれ持った気質が関わっていることが多く、本人の努力でどうにかなるものではありません。「もっと強くなりなさい」「気にしすぎ」と言っても、不安は消えません。むしろ、その子の感じている不安を、まず「本物のもの」として受け止めることが、すべての出発点になります。

もう一つ、不安の強さには個人差があり、明確な線引きがあるわけではありません。大切なのは、不安の強さそのものより、その不安が、その子の生活や成長を、どれだけ妨げているか。本人が困っていて、生活に支障が出ているなら、支援が必要なサインです。

不安が強い子によく見られるサイン

  • 心のサイン——過剰な心配、緊張、こわがり、イライラ、自信のなさ、完璧主義
  • 体のサイン——腹痛、頭痛、吐き気、動悸、眠れない、食欲の変化
  • 行動のサイン——新しいことの回避、確認や保証を求める行動、行き渋り、かんしゃく、親から離れられない

気づくコツは、「いつものその子」との違いに注目すること。よその子と比べるのではなく、ふだんのわが子と比べて、最近、不安が強まっていないか。毎日そばで見ている家族だからこそ気づける、その小さな変化が、大切な手がかりになります。

注意したいのは、不安のサインが、一見「不安」とは結びつかない形で表れることがある点です。イライラしやすい、反抗的になる、甘えが強くなる、わざとふざける。これらが、実は不安の裏返しであることがあります。「最近、機嫌が悪いな」という変化の奥に、不安が隠れていないか。表面的な行動だけでなく、その背景に思いを向けることが大切です。

体に出る不安|腹痛・頭痛・眠れない

子どもの不安は、とくに体の症状として表れやすいという特徴があります。大人のように「不安だ」と言葉で表現するのが難しいぶん、不安が体のサインとして出てくるのです。「行事の前になるとお腹が痛くなる」「発表の日に頭が痛いと言う」。こうした訴えは、仮病ではなく、不安が自律神経を通じて、本当に痛みを生み出していることが少なくありません。

また、眠りにも影響が出やすくなります。心配事が頭から離れず、なかなか寝つけない。睡眠は、心の状態を映す鏡のようなものです。

大切なのは、「痛いと感じている本人の体験を否定しない」こと。検査で異常がなくても、その痛みは本物です。朝の体調不良については「起立性調節障害(OD)と不登校の関係」も参考になります。見分けるヒントとして、症状が出るタイミングに注目してみてください。特定の場面(行事、テスト、登校時など)の前に症状が出て、その場面が終わると和らぐ、という波がある場合、不安が背景にある可能性が高まります。ただし、本当に体の病気が隠れていることもありますので、気になる症状が続くときは、一度小児科で確認を。

できる対処もあります。お腹をさすってあげる、温かい飲み物を用意する、ゆっくり深呼吸を一緒にする。「つらいね、少し休もうか」と体をいたわりつつ、「何か心配なことがあるのかな」と心にも目を向ける。体と心はつながっているので、両面からのケアが、子どもを楽にしてくれます。

行動に出る不安|回避・確認・かんしゃく

最も多いのが「回避」です。一見「わがまま」「やる気がない」ように見える行動の裏に、強い不安が隠れていることがあります。回避は、不安から自分を守るための、本人なりの防衛策なのです。

もう一つ多いのが、「確認」や「保証を求める行動」。「大丈夫?」「本当に?」と何度も繰り返し尋ねる。けれど、これは一時しのぎにしかならず、すぐにまた不安が湧いてきて、確認を繰り返す、という悪循環に陥ることがあります。

そして、不安が高まったとき、かんしゃくや怒り、泣きわめきとして爆発することも。不安をうまく言葉で表現できない子は、その苦しさを、激しい感情として出すことがあるのです。

こうした行動を「困った行動」として叱るだけでは、根っこにある不安は解消されず、別の形で表れるだけです。行動そのものをなくそうとするより、その奥にある不安に気づき、それを和らげることが、結果として行動の落ち着きにつながります。行動は、言葉にならない不安のメッセージなのです。

看護師として見てきた、不安と子どもの心

現場で痛感するのは、不安の強い子の多くが、「自分はダメだ」「みんなはできるのに」と、自分を責めていることです。不安で行動できない自分を、本人がいちばん歯がゆく思い、嫌だと感じている。その自己否定が、不安をさらに強め、悪循環を生みます。だからこそ、「不安を感じるあなたが悪いのではない」というメッセージが、何よりも大切になります。

一方で、不安の強さは、裏を返せば、慎重さ、まじめさ、想像力の豊かさ、共感性の高さといった、素晴らしい長所でもあります。不安という気質を「なくすべき欠点」と捉えるのではなく、「上手に付き合えば、強みにもなる個性」として捉える。不安症全般については「子どもの不安症・分離不安への関わり方」も参考になります。

現場で出会った子の中には、強い不安を抱えながらも、家庭で温かく受け止められ、少しずつ不安と付き合えるようになっていった子が、たくさんいます。不安が完全になくなったわけではありません。けれど、「不安でも大丈夫」「困ったら助けてもらえる」という安心を得て、自分なりのペースで前に進めるようになっていく。

そして、忘れないでいただきたいのは、不安の強い子は、決して「弱い子」ではないということ。むしろ、人一倍多くのことを感じ、考え、それでも毎日を一生懸命に生きている、とても頑張り屋の子が多いのです。「不安なのに、よくやっているね」という一言が、頑張りすぎて疲れた子どもの心を、そっと支えます。

不安の背景|気質・経験・発達特性

まず大きいのが、生まれ持った「気質」です。新しいものに慎重で、刺激に敏感な気質を持つ子は、もともと不安を感じやすい傾向があります。これは、HSC(ひといちばい敏感な子)の特徴とも重なります。気質は、育て方で生まれるものではなく、その子が生まれ持った個性です。

次に、「経験」も影響します。怖い思いをした、失敗して恥ずかしい思いをした、といった経験が、不安を強めることがあります。とくに、その経験が十分に受け止められず、一人で抱え込んだ場合、不安として心に残りやすくなります。

さらに、発達特性が背景にあることも。ASDのある子は、見通しの立たない変化に強い不安を感じやすく、ADHDのある子は、失敗経験の積み重ねから不安が強まることがあります。HSCについては「HSC(ひといちばい敏感な子)とは?」もご覧ください。

背景を理解しようとするとき、「育て方のせいだ」と自分を責める必要はありません。不安の強さの最も大きな要因は、生まれ持った気質であり、親の関わりが「原因」になるわけではないからです。ただ、背景に応じて、効果的な関わりは変わってきます。ASDの特性が背景にあるなら見通しを示す工夫が効きますし、過去のつらい経験が影響しているなら、その傷を癒すことが先になります。

なぜ「大丈夫」が逆効果になることがあるのか

一つは、「大丈夫」という言葉が、子どもの不安を否定するメッセージとして伝わってしまうからです。本人は「大丈夫じゃない」と感じているのに、「大丈夫」と言われると、「自分の感じていることは間違っているのか」「分かってもらえない」と感じてしまいます。

もう一つは、「大丈夫」と保証することが、確認行動を強化してしまうことです。「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫だよ」と答えると、その瞬間は安心しますが、子どもは「不安になったら親に保証してもらえばいい」と学習し、ますます確認を求めるようになります。親が安心を与えれば与えるほど、子どもは自分で不安に対処する力を育てる機会を失っていきます。

誤解しないでいただきたいのは、「大丈夫」と言ってはいけない、という単純な話ではないことです。大切なのは順番です。まず気持ちを受け止めてから「大丈夫」と伝えるなら、その言葉は支えになります。問題なのは、気持ちを受け止めずに、いきなり「大丈夫」で済ませてしまうこと。同じ言葉でも、前に「不安なんだね」があるかどうかで、子どもへの届き方は、まるで変わってくるのです。

やってはいけない対応|否定・無理強い・過保護

一つめは、不安を否定すること。「そんなの怖くない」「気にしすぎ」「考えすぎだよ」。本人にとって不安は本物なのですから、まずそれを認めることが必要です。

二つめは、無理に直面させること。確かに少しずつ慣らしていくことは大切ですが、準備のないまま無理強いすると、強い恐怖体験になり、かえって不安を悪化させてしまいます。「克服させよう」と焦るほど、逆効果になりやすいのです。

三つめは、逆に、不安を避けさせすぎる「過保護」。子どもが不安がるからと、不安な場面をすべて取り除いてしまうと、子どもは「不安なことはやらなくていい」と学び、ますます回避が強まります。

これらに共通するのは、「不安を早くなくそう」という焦りです。けれど、不安はすぐにはなくなりません。焦って消そうとするほど、こじれてしまいます。「すぐになくそう」とせず、「少しずつ付き合えるように」と長い目で構えること。その心の余裕が、適切な関わりを支えます。

家庭でできる関わり

まず不安を受け止める

土台は、「不安を否定せず、まず受け止める」こと。「そうか、不安なんだね」「こわいよね」と、その気持ちをそのまま受け止める。たったこれだけのことが、不安の強い子には、大きな安心になります。

不安は、否定されると強まり、受け止められると和らぐ、という性質があります。逆に、否定されると、子どもは「この気持ちは持ってはいけないんだ」と感じ、不安を一人で抱え込むようになります。

受け止めるとき、親が落ち着いていることも大切です。親が一緒におろおろすると、子どもの不安はさらに強まります。穏やかに、どっしりと受け止める。子どもにとって、親が落ち着いて受け止めてくれること自体が、「これは乗り越えられることなんだ」という安心のメッセージになります。

言葉の具体例としては、「そうか、それが心配なんだね」「こわいと感じているんだね」「不安になるの、よく分かるよ」。アドバイスや励ましを急がず、まず気持ちを映し返す。子どもは、自分の気持ちが言葉にして受け止められると、「分かってもらえた」と感じ、ふっと力が抜けます。

不安を言葉にする手伝いをする

不安が強い子は、自分が何に、どう不安なのかを、うまく言葉にできないことがよくあります。漠然とした不安に飲み込まれ、頭の中がもやもやして、ますます苦しくなる。気持ちは、言葉にできると、扱いやすくなるのです。

具体的には、「何が、いちばん心配なのかな?」「どんなことが起きそうで、こわいの?」と、整理できるよう問いかけます。漠然とした不安が、具体的な言葉になるだけで、「正体の分からない怖さ」が「向き合える心配事」に変わります。

また、不安を数値で表す方法も有効です。「今の不安は、10のうちどれくらい?」と聞いてみる。「さっきは8だったけど、今は5になった」と、不安が変化するものだと気づけます。不安は、ずっと同じ強さで続くわけではなく、波があって、やがて和らぐ。その実感が、不安と付き合う力を育てます。

スモールステップで「できた」を積む

いきなり大きな挑戦をさせるのではなく、ごく小さな、確実にできる一歩から始めて、少しずつ慣らしていく方法です。人前で話すのが不安な子なら、まず家族の前で、次に一人の友達の前でと段階を踏みます。

大切なのは、その子が「これならできそう」と思える、小さな一歩に設定すること。「不安でも、やってみたらできた」という自信が育ちます。このとき、結果ではなく、挑戦したこと自体を認めてください。「こわかったのに、やってみたね」と、勇気を出したことをねぎらう。

そして、後戻りを失敗と捉えないこと。昨日できたことが、今日はできない。不安との付き合いには、こうした波がつきものです。「波があるのが普通」とおおらかに構える。一進一退を受け入れる親の姿勢が、子どもの焦りも和らげます。

考え方の癖に気づく

不安が強い子は、しばしば不安を生み出しやすい「考え方の癖」を持っています。「最悪のことばかり想像する」「少しの失敗を、すべての失敗のように感じる」「『絶対』『いつも』『みんな』と決めつける」「自分だけがダメだと思う」。

家庭でできるのは、こうした癖に、子どもが気づけるよう、そっと手伝うこと。「本当に、絶対そうなるかな?」「ほかの可能性は考えられる?」「前にも同じこと心配したけど、どうだった?」と、優しく問いかけてみる。決して「考え方が間違っている」と否定するのではなく、別の見方もあることに、一緒に気づいていくのです。

親が手本を見せるのも効果的。親自身が「最悪のことを考えてたけど、よく考えたら大丈夫かも」と、考え方を切り替える姿を声に出してみせる。ただし、強い不安のなかにいる子に、理屈で考え方を変えさせようとしても、うまくいきません。まずは気持ちを受け止めることが先で、考え方の見直しは、子どもが少し落ち着いているときに、押し付けずに。

安心の土台をつくる

不安と付き合う力の根っこにあるのは、「安心の土台」です。何があっても受け止めてもらえる、失敗しても大丈夫、ありのままの自分が愛されている。そういう安心感が心の底にあると、子どもは不安な場面にも、少しずつ立ち向かえるようになります。

特別なことは必要ありません。子どもの話に耳を傾ける、気持ちを受け止める、「あなたの味方だよ」と伝える、できないことがあっても責めない。とくに不安が強い子には、「不安になっても、いつでも戻ってこられる場所がある」という安心が、何よりの支えになります。安心できる場所があるからこそ、子どもは外の世界へ一歩を踏み出せ、こわくなったら戻ってこられる。自己肯定感を育てる関わりは「子どもの自己肯定感を育てる7つの具体的な声かけ」も参考になります。

とくに重要なのが、「できなくても愛される」という体験です。不安が強い子は、「うまくできないと、見捨てられるのでは」という恐れを抱いていることがあります。とはいえ、毎日完璧に無条件の愛を注ぐのは、現実には難しいもの。大切なのは、完璧であることではなく、全体としての方向性です。ときに失敗しても、「さっきはごめんね」と修復できれば、子どもは「人は間違えても、やり直せる」と学びます。

学校との連携

とくに、発表や行事、新しい活動など、不安が高まりやすい場面で、配慮をお願いできると助けになります。具体的には、発表を無理強いしない、見通しを事前に伝えてもらう、不安が高まったときに落ち着ける場所(保健室など)を確保してもらうといった配慮。とくに、「次に何があるか」が分かると、不安の強い子は安心しやすくなります。

連携のコツは、「特別扱いを求める」のではなく、「この子が安心して力を発揮できる方法を一緒に考えたい」という協力的な姿勢で伝えること。担任に相談しにくいときは、スクールカウンセラーや養護教諭を通す方法もあります。「スクールカウンセラーの活用法」も参考にしてください。

また、家庭と学校で対応がちぐはぐにならないよう、足並みをそろえることも大切。家庭では不安を受け止めているのに、学校では「気にしすぎ」と言われると、子どもは混乱します。とくに、入学・進級・転校など、環境が大きく変わるタイミングでは、不安が高まりやすいもの。事前に教室を見ておく、先生と顔合わせをしておくなど、見通しを持てる準備があると、環境の変化を乗り越えやすくなります。

不安と上手に付き合う力を育てる

最終的に目指すのは、子どもが「不安と上手に付き合う力」を育てること。不安をなくすのではなく、不安があっても、それに飲み込まれずに行動できる。不安を感じたとき、自分で落ち着く方法を持っている。

そのために、不安を感じたときの「対処法」を、いくつか一緒に見つけておくとよいでしょう。深呼吸をする、好きなものを思い浮かべる、信頼できる人に話す、紙に気持ちを書き出す、体を動かす。その子に合った方法を持っていると、「これをすれば少し楽になる」と思えます。自分で不安に対処できたという経験が、自信になります。

そして、子どもが少しでも不安を乗り越えられたときには、その経験を、一緒に振り返ってあげてください。「こわかったけど、できたね」「あのとき、どうやって落ち着いたんだっけ?」と。乗り越えた経験を言葉にして確認すると、それが「自分は不安を乗り越えられる」という実感として、心に刻まれます。

この力が育つには、時間がかかります。何年もかけて、ゆっくりと育っていくもの。「いつになったら」と焦るのではなく、「少しずつ育っている」と信じて、根気よく水をやり続ける。

親自身の不安が、子に伝わること

見落とされがちなのが、「親の不安が、子どもに伝わる」ということです。親が、子どもの将来を過剰に心配したり、子どもが不安がるたびに親もおろおろしたりすると、その不安は、知らず知らずのうちに子どもに伝わり、子どもの不安をさらに強めてしまうことがあります。

不安の強い子の親もまた、不安を感じやすい気質を持っていることが少なくありません。それは決して悪いことではありませんが、親が自分の不安に飲み込まれていると、子どもを落ち着いて支えることが難しくなります。

とはいえ、「不安に思うな」というのは無理な注文です。親自身も、不安を抱え込まず、吐き出せる場を持ってください。配偶者、友人、同じ悩みを持つ親、専門家。そして、子どもの前では、できる範囲で「どっしり構える」ことを意識してみてください。親の落ち着きが、子どもにとって、何よりの安心材料になります。親のケアについては「親のメンタルヘルス 完全ガイド」もご用意しています。

思春期の不安

思春期は、自分が人からどう見られるかに敏感になり、対人面での不安(人前で話す、人の目が気になる、嫌われたくない)が強まりやすい時期です。また、進路や将来への不安も加わり、不安の対象が広がっていきます。

この時期の関わりは、あれこれ口を出すより、本人の不安な気持ちを、否定せずに聞ける関係を保つことが大切。「心配しすぎ」と言わず、「そう感じているんだね」と受け止める。「いつでも味方だよ」というメッセージを保ちつつ、本人の自立を尊重します。

不安が強い場合、社交不安症やパニック症、全般性不安症といった状態に至っていることもあります。日常生活に大きな支障が出ている、強い不安が長く続いている、という場合は、専門的な支援が本人を大きく楽にすることがあります。思春期全般の関わりは「思春期メンタル 完全ガイド」もご覧ください。また、「相談できる相手」が家庭の外にもいることが、大きな支えになります。親がすべてを抱え込もうとせず、本人が頼れる先を広げてあげることも、大切な支援です。

受診・専門相談を考える目安

  • 不安のために学校に行けない
  • 日常生活(食事・睡眠・外出など)に支障が出ている
  • 不安からくる身体症状が続いている
  • 本人がとてもつらそう/気分の落ち込みも見られる

強い不安が続くと、不安症(分離不安症、社交不安症、全般性不安症、パニック症など)という状態に至っていることもあります。これらは、適切な支援によって、和らげていくことができます。相談先としては、児童精神科や児童思春期外来、かかりつけの小児科、学校のスクールカウンセラーなど。

受診をためらう気持ちは、よく分かります。けれど、強い不安を放っておくと、回避が広がり、生活がどんどん狭まってしまうこともあります。早めの相談は、こじれる前の賢い選択です。児童精神科と小児科、どちらに行けばいい?」も参考にしてください。相談したからといって、必ず薬を使うわけでも、大げさな治療が始まるわけでもありません。多くは、状況をていねいに聞き取り、今の関わりの良い点を確認し、必要な工夫を一緒に考える、という流れです。

緊急性が高いサインと、すぐ頼れる窓口

「死にたい」「消えたい」と口にする、自分を傷つけている形跡がある、強い不安で全く動けない、パニックを起こす、食事や睡眠がまったくとれない。これらは見逃してはならないSOSです。

親はまず落ち着いて、子どもを責めず、否定せず、そばにいてあげてください。緊急時の対応は「子どもが「死にたい」と言ったときの親の対応」に詳しくまとめています。

  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):0120-0-78310 ── いじめや学校生活の悩みを24時間相談できます
  • チャイルドライン:0120-99-7777 ── 18歳までの子どものための電話・チャット相談
  • よりそいホットライン:0120-279-338 ── 24時間、どんな悩みでも受け止めてくれる相談窓口
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556 ── お住まいの公的な相談窓口につながります

※番号は変更される場合がありますので、利用時は各窓口の公式情報もご確認ください。「これくらいで相談していいのかな」とためらう必要はありません。一人で抱え込まないことが、子どもを守る第一歩です。

きょうだい・家族の理解

きょうだいには、年齢に応じて、「お兄ちゃん(お姉ちゃん)は、不安を感じやすいところがあるけれど、それはその子の気質で、からかったりしてはいけないんだよ」と伝えておきましょう。

一方で、不安の強い子に親の関心が集中すると、そのきょうだいが我慢を強いられたり、寂しさを感じたりすることがあります。一人ひとりと向き合う時間を持ち、どの子も大切にされていると感じられる家庭であること。きょうだいへの配慮は「きょうだい児のケア」も参考になります。

祖父母など、周囲の親族の理解も大切です。「気が小さい」「もっと強くなれ」といった、悪気のない一言が、子どもを傷つけることがあります。そして、家族の中で、不安について明るく話せる空気があると、子どもは安心します。「お母さんも、人前で話すのは緊張するよ」と、家族が自分の不安をオープンに話せると、子どもは「不安を感じるのは自分だけじゃない」「不安があっても、ちゃんと生きていける」と思えます。

よくあるご質問

Q. 「大丈夫」と言ってはいけないのですか?

「大丈夫」が絶対にダメというわけではありません。ただ、気持ちを受け止める前に「大丈夫」とだけ言うと、不安を否定されたように感じることがあります。まず「不安なんだね」と受け止め、そのうえで「一緒に考えよう」「きっと大丈夫」と伝えると、同じ言葉でも届き方が変わります。順番が大切です。

Q. 心配性は、大人になれば自然に治りますか?

不安を感じやすい気質は、ある程度その子の個性として続くことが多いですが、不安と上手に付き合う力は、経験を通して育っていきます。「治る・治らない」より、「付き合い方が上手になる」と考えるとよいでしょう。

Q. 不安がる子を、励ましてはいけないのですか?

励まし自体が悪いわけではありませんが、気持ちを受け止める前の励ましは、プレッシャーになりがちです。「頑張れ」より、まず「こわいよね」と寄り添う。そのうえで、本人が一歩踏み出そうとしたら、「やってみよう」とそっと後押しする。

Q. 確認や保証を求めてくるとき、どう答えれば?

毎回完璧に保証するのではなく、「不安なんだね。でも、あなたなら大丈夫だと思うよ」と気持ちを受け止めつつ、少しずつ自分で対処できるよう促していきます。確認に応じすぎると、かえって確認行動が強まることがあります。気持ちは受け止めつつ、保証は控えめに、が一つの目安です。何度言っても安心しないときは、「不安なんだね。でも、前にも乗り越えられたよね」と、本人が自分で安心を見つけられるよう促してみてください。

Q. 不安が強いのは、私の関わり方のせいでしょうか?

いいえ。不安の強さの最も大きな要因は、生まれ持った気質であり、親の育て方が「原因」になるわけではありません。自分を責める必要はありません。むしろ、こうして関わり方を学ぼうとしているあなたの姿勢が、子どもの大きな支えになります。

Q. 不安が強い子に、習い事や挑戦をさせるべき?

本人が興味を持ち、無理のない範囲なら、新しい挑戦はよい経験になります。ただし、不安を感じる場面に無理に押し出すのは逆効果。本人の「やってみたい」を尊重し、スモールステップで、安心できる範囲から少しずつ。

Q. きょうだいの一方だけ不安が強く、対応に差が出ます

それぞれの子に必要な関わりが違うのは、自然なことです。「平等」とは全員に同じことをすることではなく、一人ひとりに必要な支えを届けること。ただ、きょうだいが不公平を感じていないか気持ちには目を配り、それぞれと一対一で過ごす時間を持ってください。

困ったときの相談先

医療・専門機関では、児童精神科・児童思春期外来、かかりつけの小児科。学校関係では、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー。公的機関では、各自治体の教育相談センター、子ども家庭支援センター。

迷ったときは、まず学校か、かかりつけの小児科に一声かけてみてください。そこから、必要な窓口へとつないでもらえます。不安は、子どもにとって、とてもありふれた、けれど見過ごされやすい困りごとです。近年は、同じ悩みを持つ親のコミュニティも広がってきました。同じように不安の強い子を育てる親の体験談に触れるだけで、「自分たちだけじゃない」と心が軽くなることがあります。

今夜これだけ

今夜は「大丈夫だよ」と言う代わりに、明日の予定を順番に伝えてみてください。見通しが立つと、不安は自然に小さくなります。

まとめ|不安をなくすより、付き合う力を育てる

いちばん大切なのは、「不安をゼロにすること」ではなく、「不安と上手に付き合う力を育てること」です。不安は、本来、身を守るための大切な感情であり、なくすことはできませんし、その必要もありません。慎重さ、まじめさ、想像力の豊かさといった、その子の素晴らしい長所の裏返しでもあるのです。

不安と上手に付き合えるようになった子は、その慎重さや想像力を、長所として発揮できるようになります。リスクをよく考えて行動できる、人の気持ちに敏感に気づける、丁寧に物事を進められる。今は、不安に振り回されてつらい時期かもしれませんが、その繊細さは、いつか必ず、その子自身を支える力に変わっていきます。

家庭でできることは、不安を否定せず、まず受け止めること。不安を言葉にする手伝いをし、スモールステップで「できた」を積み、安心の土台をつくること。そして、「大丈夫」と保証で安心させすぎるのではなく、子どもが自分で不安に対処する力を、ゆっくり育てていくこと。

最後に、もう一度。不安を感じるのは、悪いことではありません。不安の強いあなたのお子さんは、人一倍ものごとを深く考え、人の気持ちを感じ取れる、繊細で優しい子なのだと思います。焦らず、責めず、その子のペースで。そして、完璧でなくていいのです。受け止めきれない日があってもいい。その子を思う気持ちが続いていれば、それは必ず子どもに伝わります。お子さんと、そしてあなた自身を、信じてあげてください。

参考にした公的情報・一次情報

記事内の制度・相談先・健康情報・サービス情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。料金・特典・提供条件は変更されることがあるため、利用前にリンク先の最新情報もご確認ください。

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免責事項

本記事は、児童思春期精神科での看護経験をもとにした一般的な情報提供を目的としており、特定の子どもへの医学的な診断・治療を行うものではありません。お子さんの状態には個人差があり、記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。気になる症状や強い不安がある場合は、自己判断で抱え込まず、かかりつけ医・児童精神科・スクールカウンセラー等の専門家にご相談ください。緊急性が高いと感じられる場合は、本文中に記載した相談窓口や、お住まいの地域の医療・相談機関を速やかにご利用ください。掲載した相談窓口の情報は変更される場合がありますので、ご利用の際は各機関の公式情報をご確認ください。

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本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
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