子どもがなかなか寝ない・睡眠リズムが乱れる|眠りと心の関係と家庭でできる整え方【児童精神科看護師が解説】

月と星が見える窓辺のベッドで、眠る男の子の頭をやさしくなでる母親。子どもの眠りと睡眠リズムのイメージ 保護者向け

この記事の要点

  • 睡眠は心と体の回復に直結する
  • 就寝時刻より、起床時刻を一定にするほうが効く
  • 寝る前のスマホ・ゲームは寝つきを遅らせる
  • 眠れない背景に不安や心の不調があることもある
  • 朝起きられない・日中の眠気が強い場合は相談を

「なかなか寝つけず、夜遅くまで起きている」「布団に入っても、ごそごそして眠れない」「夜更かしが習慣になり、朝起きられない」「休みの日は昼まで寝ている」。わが子の睡眠の乱れに、頭を悩ませている親御さんは、とても多くいらっしゃいます。児童思春期精神科の看護師として現場に立っていると、睡眠の問題は、子どもの心の不調と切っても切れない関係にあることを、日々実感します。

睡眠は、ただ体を休めるだけのものではありません。成長ホルモンの分泌、脳の発達、記憶の整理、そして何より、感情を整える働きがあります。子どもにとって、よく眠れることは、心と体が健やかに育つための、土台そのものです。逆に、睡眠が乱れると、イライラ、不安、集中力の低下、情緒の不安定さといった形で、心と体のさまざまなところに影響が出てきます。

この記事では、子どもにとって睡眠がなぜ大切なのか、なぜ眠れない・リズムが乱れるのか、そして家庭でどう整えていけばよいかを、できるだけ平易にお伝えします。「早く寝なさい」と言うだけでは、なかなか解決しない睡眠の悩み。一晩で完璧にしようと焦らず、できることから一つずつ。肩の力を抜いて、一緒に考えていきましょう。

子どもにとって睡眠が大切な理由

睡眠中、子どもの体の中では、たくさんの大切な営みが行われています。成長ホルモンが分泌され、体が育つ。日中に学んだことが、記憶として整理・定着する。脳が休息し、翌日また活動するための準備が整えられます。

とくに見落とされがちなのが、睡眠と「感情の調整」の関係です。十分に眠れていると、子どもは感情を穏やかに保ちやすくなります。逆に、睡眠が足りないと、ささいなことでイライラしたり、不安が強まったり、感情が爆発しやすくなったりします。「最近、機嫌が悪いな」「キレやすいな」という子の背景に、睡眠不足が隠れていることは、少なくありません。

必要な睡眠時間は、年齢によって異なります。一般的に、幼児期は10〜13時間、小学生は9〜11時間、中高生でも8〜10時間程度が目安とされています。これは大人が思うよりずっと長く、現代の子どもの多くが、実は睡眠不足の状態にあるとも言われます。とくに現代は、習い事や塾、スマホなどで、就寝時刻が後ろにずれがちです。「うちの子は、夜遅くまで起きているけれど、本人は平気そう」という場合でも、実は隠れた睡眠不足が、日中のイライラや集中力の低下として、表れていることがあります。

とはいえ、睡眠時間は、あくまで目安です。必要な睡眠時間には個人差があり、数字に縛られすぎず、「日中、元気に過ごせているか」「機嫌よく活動できているか」を、大切な判断材料にしてください。

睡眠不足・乱れが心と体に与える影響

体の面では、朝起きられない、日中の眠気、だるさ、食欲不振、頭痛や腹痛、免疫力の低下など。心の面への影響は、さらに深刻です。睡眠不足は、イライラ、情緒不安定、不安の増大、意欲の低下を招きます。感情をコントロールする力が弱まり、ささいなことで怒ったり泣いたりしやすくなります。また、集中力や記憶力が落ち、学習にも影響します。

そして、最も注意したいのが、睡眠の乱れと、不登校や心の不調との関係です。睡眠リズムが崩れ、昼夜逆転になると、学校に行けなくなる。逆に、不安や心の不調から、眠れなくなる。睡眠と心は、互いに影響し合い、悪循環に陥りやすいのです。昼夜逆転については「不登校の昼夜逆転、どう戻す?」も参考になります。

逆に言えば、睡眠を整えることは、心の不調を防ぎ、和らげる、有効な手立てでもあります。睡眠は、誰でも、家庭で取り組める、いちばん基本的で、いちばん効果的なケアの一つなのです。ただし、睡眠を整えれば、すべての心の問題が解決するわけではありません。睡眠を整えても改善しない、あるいは背景に深い悩みがありそうなときは、睡眠を「入り口」としつつ、その奥にある子どもの心にも、目を向けてあげてください。

なぜ寝ないのか|原因はさまざま

「子どもが寝ない」と一口に言っても、その原因はさまざまです。原因によって、効果的な対応も変わってきます。

  • 生活リズムの乱れ(就寝・起床時刻が不規則、昼寝が長すぎる)
  • スクリーン(スマホ・ゲーム・動画)の影響
  • 不安や緊張で眠れない
  • 発達特性による睡眠の問題
  • 日中の活動量の不足/寝室環境(明るさ・音・温度)/体質的な要因

原因を探るとき、子どもを問い詰める必要はありません。「どうして寝ないの」と責めると、子どもは身構えてしまいます。それより、日々の生活を、親がそっと観察すること。何時に寝て、何時に起きているか。寝る前に何をしているか。簡単な記録をつけてみるのもおすすめです。

生活リズムの乱れ

人の体には、約24時間の「体内時計」が備わっており、毎日同じ時刻に起き、朝の光を浴びることで、規則正しく保たれます。逆に、起床・就寝の時刻がバラバラだと、体内時計が乱れ、眠れなくなります。

とくに、休みの日に夜更かし・朝寝坊をすると、体内時計が後ろにずれてしまい、平日のリズムに戻すのが難しくなります。「金曜・土曜に夜更かしして、日曜の夜に眠れず、月曜の朝がつらい」というのは、まさにこのパターン。

整える基本は、「毎日同じ時刻に起きること」。就寝時刻をそろえるより、まず起床時刻をそろえるほうが効果的です。休みの日も、平日と大きくずらさない(ずれても1〜2時間以内に)。また、家族みんなが夜型で、夜遅くまでテレビがついていたりすると、子どもも眠りにくくなります。家族ぐるみで、夜のリズムを整えるほうが、うまくいきます。

スクリーン(スマホ・ゲーム・動画)の影響

スクリーンが睡眠を妨げる理由は、大きく二つ。一つは、画面から出る強い光(ブルーライト)が、眠りを促すホルモン(メラトニン)の分泌を抑え、脳を覚醒させてしまうこと。もう一つは、ゲームや動画の刺激が、興奮状態を作り、寝つきを悪くすることです。

また、動画やSNS、ゲームは「もう少し、もう少し」と、ついやめられず、夜更かしの原因にもなります。対策としては、就寝の1〜2時間前には、スクリーンから離れることが理想。とはいえ、いきなり完全にやめさせるのは難しいもの。まずは「寝室にスマホを持ち込まない」「夜〇時以降は使わない」といった、無理のないルールから。一方的に取り上げるのではなく、子どもと話し合ってルールを決めると、守られやすくなります。スマホ・ゲームのルール作りは「親子で守れるゲーム・スマホのルール作り」も参考にしてください。

とはいえ、スクリーンを完全に悪者にする必要もありません。大切なのは、「夜、寝る前」のスクリーンを控えること。一日中禁止するのではなく、「夜だけはルールを守る」というメリハリのほうが、現実的で、続けやすいでしょう。

不安・緊張と眠り

不安や緊張が強いと、眠れなくなります。心配事が頭から離れない、明日のことを考えると緊張する、こわい考えが浮かんでくる。不安の強い子は、睡眠の問題を抱えやすいのです。

子どもの場合、不安が「眠るのがこわい」という形で表れることもあります。暗いのがこわい、一人で寝るのがこわい、こわい夢を見る。「寝るのが怖い」と言う子」も参考になります。

不安で眠れない子に、「早く寝なさい」と言っても、解決しません。むしろ、「眠らなきゃ」というプレッシャーが、さらに不安を強め、眠れなくしてしまいます。不安が強い子への関わりは「子どもの不安症・分離不安への関わり方」もご覧ください。なお、新学期、行事の前、環境の変化があったときなどの一時的な不眠は、状況が落ち着けば、自然に戻ることが多いものです。慌てず見守ってあげてください。

発達特性と睡眠

ASDのある子は、感覚の過敏さ(音・光が気になって眠れない)や、こだわり、不安の強さから、寝つきにくいことがあります。また、体内時計の調整がうまくいきにくい、メラトニンの分泌に特性があるといったことも指摘されています。

ADHDのある子も、日中の多動や、頭の中が常に活発に動いていることから、夜になっても脳が静まらず、寝つけない。あるいは、過集中で時間を忘れ、夜更かしになる。発達特性のある子の「寝ない」は、本人の努力不足ではなく、特性に根ざしていることが多いのです。

その子の特性に合わせた配慮が必要になります。感覚過敏には、寝室の環境調整。こだわりには、決まった入眠の手順(ルーティン)。不安には、安心できる関わり。発達特性全般については「発達障害(ADHD・ASD・LD)の子の親 完全ハンドブック」も参考になります。生活の工夫だけでは改善しない場合、医療的なサポートが助けになることも。睡眠を整える薬が処方されることもありますが、それは「眠らせるため」というより、乱れた睡眠リズムを立て直すきっかけとして使われます。

看護師として見てきた、眠りと心の関係

児童思春期精神科の現場では、睡眠の問題は、ほぼすべての子に関わるテーマと言っても過言ではありません。不安やうつがあると眠れなくなり、眠れないとさらに心が不安定になる。睡眠と心は、まさに表裏一体なのです。

実感するのは、睡眠を整えることが、心の回復の大きな助けになるということ。だからこそ、子どもの心の不調に向き合うとき、私たちはまず、睡眠の状態に目を向けます。「よく眠れていますか」という問いは、心の健康を測る、大切なバロメーターなのです。

そして、睡眠の乱れは、心のSOSのサインであることがあります。それまで普通に眠れていた子が、急に眠れなくなった、夜中に目を覚ますようになった、というとき、その背景に、学校でのつらさや、心の不調が隠れていることがあります。眠りは、心の状態を映す鏡なのです。「ちゃんと眠れてる?」という何気ない問いかけが、子どもの心に寄り添う、入り口になることもあります。

やってはいけない対応|叱る・無理に寝かしつける

一つめは、「早く寝なさい!」と叱ること。眠れない子にとって、これはプレッシャーになり、「眠らなきゃ」という焦りが、かえって目を冴えさせてしまいます。眠りは、リラックスした状態でこそ訪れるもの。叱責は、その正反対の効果を生みます。

二つめは、無理に寝かしつけようとすること。眠くない子を布団に押し込め、「目をつぶりなさい」と強制する。けれど、眠気が来ていないのに横になっていると、「布団=眠れない、つらい場所」という結びつきができてしまい、かえって入眠が難しくなります。

三つめは、親が焦り、不安をあらわにすること。「また眠れないの」と親が困った顔をすると、その不安が子どもに伝わり、子どもも「眠れない自分はダメだ」と感じてしまいます。親がどっしり構え、「眠れない日もあるよ、大丈夫」とおおらかでいることが、かえって子どもの眠りを助けます。

もし、これまで「早く寝なさい」と叱ってきたとしても、自分を責めないでください。大切なのは、気づいたところから変えていくこと。叱るより、環境を整えるほうが、ずっと効果的です。

家庭でできる整え方|朝の光と生活リズム

基本にして最強の方法が、「朝、決まった時刻に起きて、光を浴びる」ことです。体内時計は、朝の光でリセットされます。起きたらまずカーテンを開け、太陽の光を浴びる。夜の寝かしつけより、朝の光のほうが、実は睡眠改善の鍵なのです。

そして、起床時刻を一定に保つこと。「夜眠れないから、朝はゆっくり寝かせる」と思いがちですが、これは逆効果です。朝寝坊をすると、体内時計がさらに後ろにずれ、夜ますます眠れなくなります。たとえ前の晩に眠れなくても、朝は決まった時刻に起こし、光を浴びさせる。つらいようですが、これが最も確実な方法です。

日中の活動も大切です。昼間にしっかり体を動かし、活動的に過ごすと、夜に自然な眠気が訪れます。「朝は光、昼は活動、夜は暗く静かに」。このリズムが、よい睡眠の土台になります。

ただし、一度に完璧にやろうとすると、親も子も疲れてしまいます。まずは「朝、決まった時刻に起きて、カーテンを開ける」という、一つのことから。親子で一緒に朝の光を浴びる習慣は、親自身の心身の調子も整えます。

夜の過ごし方・入眠儀式

就寝に向けて、心と体を、少しずつ「お休みモード」に切り替えていく。そのための工夫が、「入眠儀式(ルーティン)」です。毎晩、同じ手順で就寝に向かうことで、体が「もうすぐ眠る時間だ」と準備を始めます。

具体的には、お風呂に入る→歯を磨く→パジャマに着替える→絵本を読む→電気を消す、といった一連の流れを、毎晩同じ順番でくり返します。入浴は、就寝の1〜2時間前に済ませると、体温が下がるタイミングで自然な眠気が訪れます。就寝前は、激しい遊びや興奮することは避け、穏やかな時間を。

また、就寝前の1〜2時間は、部屋の照明を少し落とし、強い光を避けると、眠りを促すホルモンが分泌されやすくなります。「夜は、暗く、静かに、穏やかに」を心がけてください。

入眠儀式は、子どもにとって、一日を締めくくる、安心の時間でもあります。「眠らせるため」というより、「一日の終わりに、親子で穏やかに過ごす」という気持ちで。その安心感が、結果として、よい眠りにつながります。年齢に合わせて形は変わってかまいません。思春期になっても、ひとことふたこと言葉を交わすだけで、子どもは安心して眠りにつけます。

寝室環境を整える

基本は、「暗く、静かで、快適な温度」です。光は、わずかでも睡眠を妨げるので、できるだけ暗くする。遮光カーテンを使う、豆電球も消す(暗いのがこわい子には、ごく弱い明かりを)。温度や湿度も、暑すぎず寒すぎず。

とくに、感覚過敏のある子には、寝具の肌触りも重要。チクチクする素材、重すぎる・軽すぎる布団が、不快で眠れない原因になることがあります。お気に入りのぬいぐるみやタオルなど、安心できるものがあると、入眠しやすい子もいます。

もう一つ大切なのが、「寝室・布団は、眠るための場所」という結びつきを保つこと。布団の中でスマホを見たり、勉強したりすると、「布団=起きて活動する場所」という結びつきができ、入眠しにくくなります。

とはいえ、住宅事情で完璧な環境を用意できないご家庭も多いでしょう。「眠るときは、明かりを落とす」「テレビを消す」「静かにする」といった工夫をするだけで、睡眠の質は変わります。また、季節による調整も大切。子どもは大人より体温調節が未熟なこともあるので、季節に合わせて、心地よく眠れる環境を。

スクリーンとの付き合い方

おすすめのルールは、「就寝の1時間前には、スクリーンを終わりにする」「寝室にスマホを持ち込まない」「夜〇時以降は使わない」といったものです。とくに、寝室にスマホを持ち込まないことは、効果が大きいです。充電は、リビングなど、寝室の外でする習慣に。

ルールを決めるときは、「なぜそうするのか」を、子どもにも分かるように伝えることが大切。「夜のスマホは、脳を興奮させて、眠れなくするんだよ」と、理由を共有する。そして、親自身も、夜のスクリーンを控える姿を見せられると、説得力が増します。

ルールを破ってしまう日があっても、頭ごなしに叱らず、「どうすれば守れるか」を一緒に考える姿勢が大切。また、就寝前のスマホの代わりになる、楽しい習慣を用意するのも効果的です。読書、音楽、軽いストレッチ、家族との会話。「やめさせる」だけでなく、「代わりの楽しみ」を用意する。

不安で眠れない子への関わり

まず、その不安を受け止めること。「眠れないの、つらいね」「何か心配なことがある?」と、気持ちに寄り添う。眠れないことを責めるのではなく、その背景にある不安に、目を向けてあげてください。

就寝前に、その日あったことや、心配事を話す時間を持つのも効果的です。気がかりを言葉にして、誰かに聞いてもらえると、心が少し軽くなり、眠りやすくなります。また、「明日の準備をしておく」「心配事をメモに書き出す」といった工夫で、頭の中の不安を整理すると、安心して眠れることも。

眠ること自体がこわい子には、そばにいる、手をつなぐ、優しく声をかける、ごく弱い明かりをつける。「ここは安全だよ」「お父さん(お母さん)がそばにいるよ」という安心が伝わると、子どもは少しずつ、眠りに身をゆだねられるようになります。

就寝前に、リラックスできる習慣を取り入れるのも効果的です。深呼吸、軽いストレッチ、好きな音楽を小さくかける、温かい飲み物。それでも眠れない夜は、「眠れなくてもいいから、横になって、お話ししようか」と、添い寝をしながら、穏やかに過ごすのも一つ。眠れない子を一人にせず、そばで安心を与えること。それが、不安な夜の、何よりの薬になります。

「寝なさい」が逆効果になるとき

眠れない子にとって、「寝なさい」は、「眠らなければならない」というプレッシャーになります。そして、「眠らなきゃ」と意識すればするほど、脳は緊張し、かえって目が冴えてしまうのです。

眠りは、「頑張って眠ろう」とするほど、遠ざかってしまう、不思議なものです。だからこそ、「眠くなったら寝ればいいよ」「目を閉じて、横になっているだけでも休息になるよ」と、プレッシャーを取り除く言葉のほうが、かえって眠りを助けます。

眠れない夜が続くと、子ども自身が「眠れない自分」に不安を感じ、それがさらに眠りを妨げる、という悪循環に陥ることがあります。「眠れなくても、横になって体を休めれば大丈夫」「人は、本当に必要なら自然に眠れる」と、眠りへの過度なこだわりを手放すことが、かえって眠りを楽にします。眠りは、追いかけるほど逃げ、力を抜くほど近づく。

昼夜逆転からの戻し方

戻し方の基本は、やはり「朝、決まった時刻に起きて、光を浴びる」ことです。一気に何時間も早めようとせず、起床時刻を、毎日15〜30分ずつ、少しずつ前倒ししていきます。昼間は、できるだけ活動的に過ごし、昼寝は控えめに。夜は、暗く静かな環境で。

ただし、昼夜逆転の背景に、不登校や心の不調がある場合は、睡眠だけを無理に正そうとすると、かえって子どもを追い詰めることがあります。「学校に行くために、生活リズムを戻させる」という目的が前面に出ると、子どもは反発します。まずは心の回復を大切にしながら、無理のない範囲で。詳しくは「不登校の昼夜逆転、どう戻す?」もご覧ください。

また、本人だけに「早く起きなさい」と求めるのではなく、家族が朝の時間を一緒に過ごす、朝ごはんを用意して待つ、といった、起きたくなる雰囲気を作る。叱って起こすより、「起きたら、楽しいことがある」という気持ちを育てるほうが、子どもは動きやすくなります。実際、不登校から回復していく過程で、自然と昼夜逆転が解消していく子も、たくさんいます。

思春期の睡眠|夜型化は自然なこと

思春期になると、子どもの睡眠リズムは、自然と「夜型」に傾きます。これは、思春期の体の変化に伴う、生理的な現象です。眠りを促すホルモンの分泌される時刻が、思春期には後ろにずれるため、夜眠くなる時刻が遅くなり、朝起きるのがつらくなります。

このことを知っておくと、思春期の子の睡眠を、過度に責めずにすみます。「だらしないから夜更かしする」のではなく、「体の変化で、夜型になりやすい」のだと理解する。極端な夜更かしは整える必要がありますが、頭ごなしに叱るのではなく、生理的な背景を理解したうえで、一緒に工夫していく姿勢が大切です。

とくに気をつけたいのが、スマホです。夜型化しやすい時期に、スマホが加わると、睡眠不足が深刻になります。思春期全般の関わりは「思春期メンタル 完全ガイド」もご覧ください。なお、思春期の子に睡眠の大切さを伝えるときは、「健康のため」より、「やりたいことのため」という切り口が響くことがあります。「よく眠ると、勉強の効率が上がる」「肌の調子がよくなる」など、本人の関心に結びつけて伝えると、自分から睡眠を大切にするようになります。

起立性調節障害と睡眠

「朝、どうしても起きられない」という背景に、「起立性調節障害(OD)」という体の状態が関わっていることがあります。自律神経の調整がうまくいかず、朝に血圧が上がらないために、起き上がれない、午前中は体調が悪い、という状態です。思春期の子に多く見られ、「夜は元気なのに、朝は起きられない」のが特徴。

本人の「気合い」や「やる気」では、どうにもならない、体の問題です。「怠けている」「だらしない」と誤解されやすいのですが、決してそうではありません。詳しくは「起立性調節障害(OD)と不登校の関係」や「朝起きられない子への関わり方」にまとめています。

起立性調節障害のある子にとって、いちばんつらいのは、「怠けている」と誤解され、責められること。本人は、起きたくても起きられない。「つらいね」「怠けているわけじゃないよね」という理解の言葉が、本人を支えます。そのうえで、医療と連携しながら、無理のない範囲で、少しずつ生活を整えていく。

受診・相談を考える目安

  • 睡眠の乱れが長く続き、生活に支障が出ている
  • 朝どうしても起きられず学校に行けない/日中の強い眠気がある
  • 眠れないことで本人がとてもつらそう
  • 睡眠の乱れとともに気分の落ち込みや不安が見られる

相談先としては、まずかかりつけの小児科が入りやすい入り口です。起立性調節障害もここで相談できます。心の不調が背景にありそうな場合は、児童精神科や児童思春期外来。睡眠を専門に診る外来(睡眠外来)もあります。

受診の際は、睡眠の記録を持っていくと、専門家に状況が伝わりやすくなります。何時に寝て、何時に起きたか、夜中に目を覚ましたか、日中の眠気はどうか。1〜2週間ほど記録をつけておくと、その子の睡眠の全体像が見えてきます。また、睡眠のことだけでなく、気になっていること(食欲、気分、学校の様子など)も、あわせて伝えてください。

緊急性が高いサインと、すぐ頼れる窓口

睡眠の問題そのものが緊急を要することは多くありませんが、睡眠の乱れの背景に、深刻な心の不調が隠れていることがあります。

「死にたい」「消えたい」と口にする、自分を傷つけている、ほとんど眠れない・食べられない状態が続く、強い気分の落ち込みが続く。これらは見逃してはならないSOSです。緊急時の対応は「子どもが「死にたい」と言ったときの親の対応」にまとめています。

  • 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省):0120-0-78310 ── いじめや学校生活の悩みを24時間相談できます
  • チャイルドライン:0120-99-7777 ── 18歳までの子どものための電話・チャット相談
  • よりそいホットライン:0120-279-338 ── 24時間、どんな悩みでも受け止めてくれる相談窓口
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556 ── お住まいの公的な相談窓口につながります

※番号は変更される場合がありますので、利用時は各窓口の公式情報もご確認ください。「これくらいで相談していいのかな」とためらう必要はありません。一人で抱え込まないことが、子どもを守る第一歩です。

親自身の睡眠と心の余裕

見落とされがちなのが、親自身の睡眠です。寝かしつけに何時間もかかる、夜中に起こされる、昼夜逆転の子に付き合う。親が慢性的な睡眠不足になると、心の余裕が失われ、子どもにも穏やかに関われなくなります。

親が睡眠不足でイライラしていると、その空気は子どもに伝わり、子どもも落ち着いて眠れなくなる、という悪循環もあります。完璧な対応を目指して、自分の睡眠を犠牲にしすぎないでください。ときには、配偶者と交代する、周囲を頼る、といった工夫も必要です。親のケアについては「親のメンタルヘルス 完全ガイド」もご用意しています。

そして、長い目で見てほしいのです。睡眠の問題は、すぐには解決しないこともありますが、子どもの成長とともに、また適切な関わりによって、少しずつ整っていくもの。目の前の一晩に一喜一憂せず、その子の成長を、ゆったりと信じて見守ること。そして、これだけ子どもの睡眠を気にかけているあなたは、それだけで、十分に良い親です。

よくあるご質問

Q. 「早く寝なさい」と言ってはいけないのですか?

絶対にダメというわけではありませんが、眠れない子へのプレッシャーになりがちです。「眠くなったら寝ればいいよ」「横になっているだけでも休息になるよ」と、プレッシャーを取り除く言葉のほうが、かえって眠りを助けます。

Q. 昼夜逆転を、一気に戻すことはできますか?

一気に戻すのは難しく、無理をすると失敗しやすいです。起床時刻を毎日15〜30分ずつ前倒しし、朝の光を浴びる。背景に心の不調がある場合は、睡眠だけを無理に正そうとせず、心の回復とあわせて進めてください。

Q. 朝、どうしても起きられません。怠けですか?

怠けとはかぎりません。起立性調節障害という体の状態や、睡眠リズムの乱れ、思春期の生理的な夜型化が背景にあることがあります。「気合いが足りない」と決めつけず、朝起きられない状態が続く場合は、小児科などで相談することをおすすめします。

Q. 必要な睡眠時間は、どのくらいですか?

目安として、幼児期は10〜13時間、小学生は9〜11時間、中高生でも8〜10時間程度とされています。ただし個人差もあるので、日中元気に過ごせているかも、あわせて見てあげてください。

Q. 添い寝は、いつまで続けていいですか?

「何歳まで」という決まりはありません。子どもが安心して眠れるなら、添い寝は悪いことではなく、むしろ心の安定につながります。子どもが自分から「一人で寝る」と言うまで、無理に引き離す必要はありません。

Q. 昼寝は、させないほうがいいですか?

年齢によります。幼児期は昼寝が必要ですが、夜眠れない子の場合、昼寝が長すぎたり遅すぎたりすると、夜の睡眠を妨げます。昼寝をするなら、午後の早い時間に、短めに。

Q. 寝かしつけに何時間もかかり、親が疲弊しています

つらいですね。まず、就寝時刻が、その子の自然な眠気より早すぎないか見直してみてください。眠くないのに布団に入れても、寝つけません。また、寝かしつけを完璧にしようと気負わず、ときには「眠くなったら寝てね」と委ねるのも一案。親が疲れ果てる前に、配偶者と交代したり、頼れる人を頼ったりしてください。

Q. 休日に、たっぷり寝かせるのはよくないですか?

平日の睡眠不足を、休日の寝だめで補うのは、体内時計を乱す原因になります。理想は、休日も平日と大きくずらさないこと(ずれても1〜2時間以内)。とはいえ、極端でなければ神経質になりすぎなくて大丈夫。まずは平日の睡眠を十分にとることを優先しましょう。

困ったときの相談先

まずは、かかりつけの小児科。起立性調節障害もここで相談できます。心の不調が背景にありそうな場合は、児童精神科・児童思春期外来。睡眠を専門に診る睡眠外来もあります。学校関係では、養護教諭やスクールカウンセラー。

迷ったときは、まずかかりつけの小児科に相談してみてください。睡眠の問題は、軽く見られがちですが、子どもの心身の健康に深く関わる、大切なテーマです。とくに、睡眠の乱れが、不登校や心の不調と結びついている場合は、睡眠だけを切り離して考えず、子ども全体を支える視点が大切。医療・学校・家庭が連携して、その子を支える。そうした多面的な支えが、子どもの回復を、確かなものにしていきます。

今夜これだけ

今夜は寝かしつけの時刻を早めるより、明日の起床時刻を決めて伝えてみてください。眠りのリズムは、起きる時間から整っていきます。

まとめ|眠りは、心と体を育てる土台

子どもにとって、睡眠は、成長と学び、そして心の安定を支える、かけがえのない土台です。そして、眠れない原因は、生活リズム、スクリーン、不安、発達特性など、さまざま。だからこそ、「早く寝なさい」と言うだけでなく、その背景を理解し、無理なく整えていく関わりが大切になります。

そして、睡眠を整えることは、子どもの今だけでなく、未来にもつながります。子ども時代に身につけた睡眠の習慣は、大人になってからの健康の土台になります。

家庭でできることは、朝決まった時刻に起きて光を浴びる、日中は活動的に過ごす、夜は暗く静かに穏やかに過ごす、入眠儀式を整える、スクリーンと上手に付き合う、不安に寄り添う。そして何より、「眠れない日もある、大丈夫」と、親がおおらかに構えること。

最後に、もう一度。眠りは、「頑張って眠る」ものではなく、「安心して、自然に訪れる」ものです。だからこそ、プレッシャーをかけるより、安心できる環境と、おおらかな心を整えることが、何よりの近道です。焦らず、責めず、その子のペースで。完璧を目指さなくていいのです。今日できることを、一つだけ。その小さな積み重ねが、いつか、お子さんの健やかな眠りにつながります。お子さんと、そしてあなた自身を、どうかいたわってあげてください。

参考にした公的情報・一次情報

記事内の制度・相談先・健康情報・サービス情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。料金・特典・提供条件は変更されることがあるため、利用前にリンク先の最新情報もご確認ください。

関連記事

免責事項

本記事は、児童思春期精神科での看護経験をもとにした一般的な情報提供を目的としており、特定の子どもへの医学的な診断・治療を行うものではありません。お子さんの状態には個人差があり、記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。睡眠の乱れが長く続く場合や、起立性調節障害が疑われる場合、心の不調を伴う場合は、自己判断で抱え込まず、かかりつけ医・小児科・児童精神科・睡眠外来等の専門家にご相談ください。緊急性が高いと感じられる場合は、本文中に記載した相談窓口や、お住まいの地域の医療・相談機関を速やかにご利用ください。掲載した相談窓口の情報は変更される場合がありますので、ご利用の際は各機関の公式情報をご確認ください。

【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

🌙 つらいとき、ひとりで抱えないでください
お子さん本人も、親御さんも使える相談窓口です(無料・匿名OK)。
#いのちSOS:0120-061-338(24時間365日)
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(毎日16〜21時)
児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
保護者向け
星野レンをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました