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この記事の要点
- 令和6年度の小・中学校の不登校は35万3970人で過去最多
- 1000人あたり38.6人。もはや「珍しいこと」ではない規模
- 不登校の定義は「年間30日以上の欠席」。実態はもっと幅広い
- 数字は親を責める材料ではなく、支援が増えている根拠になる
こんにちは。児童思春期精神科病棟で働く看護師の星野レンです。看護師歴8年、うち児童思春期精神科病棟で5年以上、学校に行けなくなった子どもたちやそのご家族と日々関わっています。
「不登校が過去最多」というニュースを、毎年秋になると目にするようになりました。令和5年度は約34万6千人、そして最新の令和6年度調査では約35万4千人。数字だけが独り歩きして、「大変なことになっている」という漠然とした不安だけが残る——そんな方も多いのではないでしょうか。
この記事では、文部科学省が公表している最新の統計を、保護者の目線で「やさしく」読み解いていきます。数字は冷たいものに見えますが、正しく読むと、いま不登校の子を抱えるご家庭にとって心強い材料がたくさん詰まっています。数値はすべて公表資料に基づいてお伝えしますので、安心して読み進めてください。
最新データの全体像——35万3970人という数字
文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(令和6年度)によると、2024年度に不登校とされた小・中学生は35万3970人でした。前年度(令和5年度)の34万6482人からさらに増え、12年連続の増加で過去最多を更新しています。
ただし、ここで見落とされがちな変化がひとつあります。増加の「ペース」です。令和5年度は前年度比15.9%増という急な伸びでしたが、令和6年度は2.2%増と、増え方は大きく緩やかになりました。新しく不登校になった子どもの数も減少に転じています。数字は増え続けているものの、その中身は少しずつ変わり始めている——これが最新データの正確な読み方です。
調査の詳細は文部科学省の調査ページで公表されています。報道の見出しだけでなく、一次資料の数字を確かめる習慣は、不安に飲み込まれないためにも役立ちます。
小学校と中学校、内訳はどうなっているか
35万3970人の内訳を見ると、小学校が13万7704人、中学校が21万6266人です。人数では中学校が多いのですが、伸び方には違いがあります。令和6年度は小学校が前年度比5.6%増だったのに対し、中学校は0.1%増とほぼ横ばいでした。
小学校での増加が続いているのは、低学年のうちから「行きたくない」と言えるようになった、周囲が無理をさせなくなった、という変化の表れでもあると考えられています。以前なら泣きながらでも登校させられていた子が、休むという選択肢を持てるようになった。数字の増加には、そういう側面も含まれているのです。
一方、中学校の人数の多さは、思春期という時期の特性と重なります。人間関係が複雑になり、学習内容が難しくなり、心と体が大きく変化する。私が病棟で出会う子どもたちも中学生が中心です。中学校で不登校が多いのは昔から一貫した傾向で、お子さんが中学生で学校に行けなくなったとしても、それは統計的にみて決して例外的なことではありません。
「1000人あたり38.6人」——クラスに換算してみる
35万人と言われてもピンとこない、という方のために、規模感をつかめる数字があります。在籍児童生徒1000人あたりの不登校の人数です。令和6年度は小・中学校全体で38.6人。およそ26人に1人、割合にして3.9%です。
学校別に見ると、小学校では1000人あたり23.0人、中学校では67.9人。中学校の67.9人という数字は、およそ15人に1人にあたります。つまり35人学級なら、1クラスに2人前後は不登校の生徒がいる計算です。学年全体で見れば、どの学校にも不登校の子が必ずいる時代だということです。
「うちの子だけがおかしいのではないか」と思い詰めている保護者の方に、私はよくこの換算の話をします。お子さんと同じ状況の子が、同じ学校に、同じ学年に、確実にいます。見えていないだけです。この事実を知るだけで、少し呼吸が楽になる方は多いです。
10年前と比べてみると、変化の大きさがさらにはっきりします。かつて不登校は「100人に1人いるかいないか」という感覚で語られていましたが、いまは小・中学校全体で26人に1人。もはや「ごく一部の特別な子どもの問題」という前提そのものが、データによって崩れているのです。学校も社会も、この前提の変化に合わせて対応を変えつつある——それが今の局面だと言えます。
高校の不登校と、90日以上欠席している子どもたち
高等学校の不登校生徒数は6万7782人で、1000人あたり23.3人。こちらは前年度から減少しました。高校には通信制・定時制など学び方の選択肢が広がっていることも、この数字の背景にあると考えられます。中学校で不登校だった子が、自分に合う高校を選んで再スタートを切るケースは、現場でも本当によく見ます。「中学で行けなかったらもう道がない」わけではないことを、この数字の動きは静かに示してくれています。
もうひとつ、大切な数字があります。不登校の小・中学生のうち、年間90日以上欠席していた子は19万1958人。全体の54.2%と半数を超えています。不登校は「数日休んで戻る」ものばかりではなく、長期にわたるケースが半分以上を占めているのが実情です。
これは裏を返せば、「休みが長引くこと自体は珍しくない」ということでもあります。3か月休んでいるからもう手遅れだ、ということはありません。長期の欠席は全国で19万人が経験している状態であり、そこからの回復の道筋も、それだけ多くの実例が積み重なっているのです。
なぜ増え続けているのか——背景として言われていること
増加の背景については、調査や報道でいくつかの要因が指摘されています。ひとつはコロナ禍以降の生活の変化です。休校や行事の縮小で生活リズムが崩れ、学校を休むことへの心理的なハードルが下がったまま戻っていない、という指摘があります。
もうひとつは、価値観そのものの変化です。「つらいときは休んでいい」「無理に行かせることがかえって子どもを追い詰める」という考え方が、保護者にも学校にも広がりました。2017年に施行された教育機会確保法も、休養の必要性を認める方向を後押ししています。つまり増加分の一部は、これまで我慢して通っていた子が「休める」ようになった結果でもあるのです。
令和6年度調査では、不登校の子ども本人の状況として「学校生活に対してやる気が出ない等」(30.1%)、「生活リズムの不調」(25.0%)、「不安・抑うつ」(24.3%)が上位に挙げられています。原因がひとつに絞れないケースが大半で、「怠け」や「甘え」で説明できるものではないことが、データからも読み取れます。
数字を読む前に——「不登校」の定義を知っておく
ここで一度立ち止まって、この統計の「ものさし」を確認しておきましょう。この調査で不登校とカウントされるのは、病気や経済的理由などを除き、年間30日以上欠席した児童生徒です。つまり「30日」という線引きの手前にいる子は、数字に含まれていません。
月に2〜3日ずつ休みながら通っている子、遅刻と早退を重ねながらぎりぎり出席している子。こうした子どもたちは統計上「不登校」ではありませんが、しんどさを抱えていることに変わりはありません。数字は実態の一部を切り取ったものであって、全体そのものではない——この前提を持って読むことが大切です。
また、この調査は学校が回答する形式です。学校側の把握や判断のしかたによって、数字の出方が変わる余地もあります。統計は貴重な手がかりですが、「わが子の状態」を測る道具ではありません。目の前のお子さんの様子のほうが、どんな数字よりも確かな情報です。
統計に表れない子どもたち——保健室登校・五月雨登校
教室には入れないけれど保健室や別室で過ごしている子、行けたり行けなかったりを繰り返す「五月雨登校」の子。出席扱いになっていれば、こうした子どもたちは不登校の統計には表れません。フリースクールやオンライン学習で出席扱いを受けている子も同様です。
つまり「学校がしんどい」子どもの実数は、35万人よりずっと多いと考えるのが自然です。民間の調査では、不登校傾向にある子どもは統計上の不登校の数倍にのぼるという推計も報じられています。数字にすると推計の幅が大きいので断定はしませんが、少なくとも「35万人」は氷山の一角だという見方は、多くの専門家が共有しています。
これは悲観すべき話ではなく、「あなたの子だけではない」という事実の裏づけです。教室に入れず保健室で過ごすことも、行ける日と行けない日が波のようにあることも、全国のたくさんの子どもが経験している、ありふれた道のりのひとつなのです。
現場の看護師として感じる、数字の向こう側
病棟で出会ったある中学生の話をさせてください。その子は入院当初、「学校に行けない自分は落ちこぼれだ」と繰り返していました。ある日、ニュースで不登校が過去最多だと知り、「こんなにいるの?」と驚いた顔をしたのをよく覚えています。「自分だけじゃなかった」と知ったその日から、少しずつ表情が変わり、院内学級への足が向き始めました。数字が、その子にとって「仲間の存在証明」になった瞬間でした。
※個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化しています
保護者の方も同じです。面会に来られるお母さんお父さんの多くが、最初は「育て方を間違えた」と自分を責めています。けれど、全国で35万の家庭が同じ朝を迎えていると知ると、「うちだけの失敗ではないのかもしれない」と、ほんの少し肩の力が抜ける。統計には、そういう使い方があると私は思っています。数字は子どもを分類するためのラベルではなく、孤立している家族に「仲間がいる」と伝えるための道具にもなり得るのです。
データは「親を責める材料」ではなく「支援を探す根拠」
35万人という数字が動かしているものがあります。それは制度とお金です。国や自治体は不登校対策の予算を年々拡充し、校内の別室支援、教育支援センター、学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置など、選択肢は確実に増えています。
支援が増えているのは、それだけ多くの子どもが必要としていることが数字で示されたからです。つまりこの統計は、「学校に戻す」以外の道が公に認められ、整備されていく根拠として働いています。保護者にとっては、学校や自治体に相談するときの後ろ盾にもなります。「全国でこれだけの子がいて、国も多様な学びを認めている」という事実は、交渉の場で堂々と使ってよいカードです。
一方で、令和6年度調査では、学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない子が約13万6千人いることも示されました。支援の枠は増えても、まだ届いていない家庭が多いのが現実です。だからこそ、使える支援は遠慮なく使ってほしいのです。相談することは、親の敗北ではありません。
よくある質問
Q1. 「不登校35万人」は令和何年度の数字ですか?
文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(令和6年度)の数字で、2024年度の小・中学校の不登校児童生徒数が35万3970人でした。公表は2025年10月です。内訳は小学校13万7704人、中学校21万6266人で、12年連続の増加、過去最多の更新となりました。前の年度(令和5年度)は34万6482人だったので、報道によって「34万人」「35万人」と表記が揺れることがあります。記事やニュースを読むときは、どの年度の数字か、小・中学校だけか高校も含むのかをまず確認するのがおすすめです。
Q2. 不登校の定義を教えてください。何日休んだら不登校ですか?
この調査での不登校は、「病気や経済的理由などを除き、年間30日以上欠席した状態」と定義されています。連続30日ではなく、年間の合計で30日です。ただしこれはあくまで統計上の区切りで、29日以下なら問題がないという意味ではありません。また、保健室登校や別室登校で出席扱いになっている場合は、この統計には含まれません。お子さんの支援を考えるうえで大切なのは日数ではなく、本人がどれくらいしんどいか、生活のリズムや心身の調子がどうか、という中身のほうです。日数はあくまで統計を読むためのひとつの目安と考えてください。
Q3. 不登校が増えているのは、親の甘やかしが原因なのでしょうか?
そう単純な話ではありません。増加の背景として指摘されているのは、コロナ禍以降の生活リズムの変化、休養の必要性への理解の広がり、無理して行かせない価値観の浸透など、社会全体の変化です。令和6年度調査でも、本人の状況として「やる気が出ない等」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」が上位で、複数の要因が絡み合うのが普通です。「昔は我慢して通っていた子が休めるようになった」という側面もあり、増加のすべてが悪い変化とは言えません。少なくとも、35万人という規模の現象を特定の家庭のしつけの問題に還元することはできない、ということはデータそのものが物語っています。ご自身を責める必要はありません。
Q4. 90日以上休んでいます。もう戻れないのでしょうか?
90日以上の欠席は、不登校の小・中学生のうち19万1958人、全体の54.2%と半数以上が経験している状態です。つまり長期の欠席は例外ではなく、不登校の標準的な経過のひとつと言えます。私が現場で見てきた実感でも、回復は「学校に戻るかどうか」だけで測るものではありません。生活リズムが整う、家で笑顔が増える、好きなことに手が伸びる——そうした小さな回復が先にあって、その先に登校再開だったり、フリースクールや通信制高校といった別の道だったりが見えてきます。焦らず、いまのお子さんの小さな変化に目を向けてあげてください。
Q5. 統計を見て、親はまず何をすればいいですか?
まず「うちだけではない」という事実を受け取ってください。1000人あたり38.6人、中学校なら1クラスに2人前後という規模です。そのうえで、統計が示す「支援の増加」を活用しましょう。学校には別室登校や教育支援センターの利用を相談できますし、フリースクールやオンライン学習が出席扱いになる制度もあります。支援を受けていない子が約13万6千人いるというデータは、裏を返せば「相談すれば使える枠が空いている」ということでもあります。学校の先生、スクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口など、話しやすいところからで構いません。一人で抱え込まないことが最初の一歩です。
今夜これだけ
「中学校では1クラスに2人前後」——この数字をひとつだけ覚えて、「うちだけじゃない」と自分に言ってあげてください。
まとめ
文部科学省『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査』(令和6年度)が示したのは、小・中学校で35万3970人、1000人あたり38.6人という、もはや「特別なこと」とは言えない規模の不登校の姿でした。90日以上の欠席が半数を超えること、統計に表れない子がさらに多くいること、そして支援の選択肢が確実に増えていることも、データは教えてくれています。
数字は、親であるあなたを採点するためのものではありません。「同じ道を歩いている家庭が全国に35万ある」という事実と、「だから制度が動いている」という根拠。この2つを受け取ってもらえたら、この記事の役目は果たせたと思います。児童思春期精神科の現場で、そして一人の父親として、学校に行けない子とその家族が孤立しない社会に近づいていくことを願っています。
参考にした公的情報・一次情報
この記事の内容に関連する制度・相談先・健康情報は、以下の公的情報・一次情報を2026年8月15日に確認しています。制度の運用や個別の医療判断は、学校・自治体・医療機関などへご確認ください。


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