話すのが苦手な子に何を聞けばいい?|筆談・指差しなど本人が選べる伝え方

筆談4−19 子供への声掛け・接し方

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この記事の要点

  • 話さないことを拒否や反抗と決めません
  • 筆談は本人が選べる伝達手段の一つです
  • 返事を急かさず、答えない選択も残します
  • 生活への支障が続けば学校や医療へ相談します

家ではよく話すのに、学校では声が出ない。先生から質問されても固まる。親が「何かあった?」と聞いても返事がない。その様子が続くと、親御さんは「学校でつらいことがあるのでは」「このまま話せなくなったら」と不安になります。

心配なほど、質問を増やしたり、「紙なら書ける?」と何度も勧めたりしたくなります。しかし、話せないときは、書く、選ぶ、指を動かすことも難しい場合があります。返事がないことは、伝えたいことがない、親を拒んでいる、助けを求めたくないという意味とは限りません。

この記事では、看護師歴8年、うち児童思春期精神科で5年以上働いてきた視点から、筆談を含む伝達手段の使い方を整理します。筆談は話すための訓練でも、本人の気持ちを引き出す万能な方法でもありません。本人がその日に選べる手段を増やし、伝えられない日も関係が切れないようにするための選択肢です。

話せないことを「話したくない」と決めない

子どもが返事をしないと、大人は理由を知るために質問を重ねます。しかし、強い緊張や不安があると、内容を理解していても声が出なかったり、体が固まったりすることがあります。家では話せるのに特定の場面で一貫して話せない状態は、場面緘黙などでみられることがあります。

ただし、家では話し学校では話さないからといって、家庭で場面緘黙と診断することはできません。言語の発達、聞こえ、発達特性、母語と学校で使う言葉の違い、対人不安、いじめ、体調など、確認したいことは複数あります。本人の様子と生活への影響を学校や専門家へ伝えます。

まずは「話してくれない子」ではなく、「この場所では言葉を出しにくい子」と捉えます。話せるかどうかだけを見ず、表情、視線、うなずき、動作、文字など、本人がすでに使っている伝え方を観察します。声が出ない場面でも、周囲を理解し、自分なりに参加していることがあります。

筆談は選べる伝達手段の一つ

筆談は、声を出さなくても、自分のペースで言葉を考えられる方法です。国立特別支援教育総合研究所の事例にも、メモやタブレット端末のアプリを意思疎通に使った学校での支援があります。ただし、一つの実践例がすべての子に当てはまるわけではありません。

書くこと自体に負担がある子、考えを文章へまとめにくい子、人に読まれるのが怖い子には、筆談がかえって難しくなる場合があります。「話せないなら書いて」と代わりの課題を与えるのではなく、「話す、書く、指さす、今は答えないならどれが楽?」と選択肢の一つにします。

使う道具も、ノートだけではありません。小さなメモ、ホワイトボード、スマートフォンやタブレットの入力画面、絵カード、数字の尺度などがあります。端末を使う場合は、学校のルール、個人情報、保存や共有の範囲を確認します。使った記録を誰が見るかも本人へ説明します。

YES・NOから始め、答えを急かさない

「学校で何があったの?」は、答える範囲が広く、緊張している子には難しい質問です。最初は「今は話したくない?」「体がつらい?」「学校のこと?」と、YES・NOや指さしで答えられる形にします。「分からない」「どちらでもない」「答えたくない」のカードも用意します。

質問したあとは待ちます。数秒で返事がなくても、すぐ別の質問を重ねません。「今すぐでなくていい。この紙はここに置くね」と伝え、その場を離れる方法もあります。親が待っている視線そのものが負担になる子もいます。

返事が来たときも、すぐ詳細を聞き出そうとしません。「学校のこと」に丸がついたなら、「教えてくれてありがとう。続きは今、あとで、先生と一緒のどれがいい?」と次の選択を聞きます。少し伝えられたことを、さらに話す義務へ変えないことが大切です。

子どもが答えないままでも、「今は答えられないんだね」と結論づける必要はありません。「紙を置いておく。必要なら使って」と、伝達の入口だけ残します。緊急の安全確認が必要な場合は、待つだけにせず、「けがをした?」「死にたい気持ちはある?」など必要なことを短く確認し、専門機関へつなぎます。

親も返事を待ち続けると不安になります。いつまでも向かい合うのではなく、「私は夕食を作るね。必要なら呼んで」と自分の生活へ戻ってかまいません。質問をやめることは、子どもへの関心をなくすことではありません。返事を求めない時間があることで、子どもが自分から伝達手段を使いやすくなる場合もあります。

本人の同意なく人前で読まない

筆談で受け取った言葉は、本人が声で話した内容と同じように扱います。友人、教員、家族の前で「この子はこう書いています」と勝手に読み上げると、本人は書くこと自体を避けるようになる場合があります。誰へ伝えてよいか、どこまで伝えるかを確認します。

「先生には伝えていい?」「内容を見せるのと、私から要点だけ話すのはどちらがいい?」と選べるようにします。本人が同意できない場合でも、命や安全に関わる内容は、大人が必要な支援者へ共有することがあります。その場合は、可能な範囲で「安全のため先生と医師には伝える」と本人へ説明します。

紙や端末の記録を残すかどうかも決めます。見られる不安が強い子には、その場で消す、本人が持ち帰る、鍵のかかる場所で保管するなどの方法があります。学校で使う場合は、担当者、保管場所、共有範囲を決め、本人が知らないところで内容が広がらないようにします。

筆談でも答えられない日はある

昨日はメモで答えたのに、今日は何も書けないことがあります。これは後戻りや、親への反抗とは限りません。疲労、相手、場所、質問内容、その日の不安によって、使える伝達手段は変わります。「昨日できたでしょう」と求めると、筆談も試される場になります。

答えられない日は、生活に必要な情報だけを一方向で伝えます。「食事は台所にある」「学校への欠席連絡は済ませた」「困ったらこのカードを出して」と短くします。返事を条件に世話をしたり、安心させたりしないことが大切です。話さなくても一緒に食事をする、同じ部屋で別のことをするなど、質問のないつながりを残します。

病棟でも、書くことなら使える子が、疲れた日は筆記具を持てないことがあります。指さし、うなずき、カードなど複数の方法を置き、使わないことも認めると、別の日に本人から選べる場合があります。これは個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化した例です。同じ選択肢がすべての子に合うわけではありません。

話せることを目標にしすぎない

周囲が「声を出せた」を成功にすると、子どもは毎回話せるか試されているように感じることがあります。今の目標を、話すことだけに置かず、困ったと伝えられる、選べる、授業へ参加できる、安全に休めることへ広げます。声が出なくても、自分の希望を伝えられたなら大切なやり取りです。

声が出たときも、みんなの前で大きく褒めたり、「話せるじゃない」と指摘したりしません。周囲の注目が集まると、次に話す負担が大きくなる場合があります。普段どおり受け取り、必要なら後で本人に「さっきの返事、受け取ったよ」と静かに伝えます。

話す練習や治療が必要か、どの方法が合うかは、専門家が本人の状態を見て考えます。家庭で段階を勝手に進めたり、録音した声を学校で流したり、人前で発表を促したりしません。本人の同意と支援計画を確認します。

学校とは使える手段と守る約束を共有する

学校へは、「家では話します」と伝えるだけでなく、どの条件なら反応しやすいかを共有します。一対一、静かな場所、YES・NO、メモ、端末、返事を待つ時間など、家庭で分かったことを具体的に伝えます。家で話せることを理由に、学校でも話せるはずと求めないよう依頼します。

担任、養護教諭、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーなどと、緊急時の合図、授業での返答方法、発表の代替、筆談内容の保管と共有範囲を決めます。国立特別支援教育総合研究所の事例にも、担任や支援員らの協力のもと、メモやアプリを使った意思疎通があります。

支援方法は一度決めて終わりではありません。本人が負担に感じていないか、授業へ参加しやすくなったか、帰宅後の疲労が増えていないかを確認します。「使えた回数」だけで評価せず、使わなかった理由も聞けるときに確かめます。本人抜きで支援が広がりすぎないよう、変更時にも意向を確認します。

クラスメートへの説明も、本人の同意なしに行いません。説明する場合は、診断名や家庭での様子まで広げず、「返事を待つ」「カードを使うことがある」など、学校生活で必要な内容に絞ります。誰が、いつ、どの言葉で伝えるかを本人と確認し、説明しない選択も尊重します。

生活への支障が続くときの相談先

学校で話せないことで、授業参加、トイレや体調不良の申告、友人関係に支障がある、登校を強く嫌がる、睡眠や食事が崩れる状態が続くなら、相談を考える目安です。場面緘黙かどうかを家庭で決めず、できる場面と難しい場面、始まった時期、生活への影響を伝えます。

相談先は、担任、養護教諭、スクールカウンセラー、自治体の教育・発達相談、小児科、かかりつけ医、児童精神科などです。聞こえや言葉の発達について確認が必要な場合もあります。診断や治療、学校での練習方法は、専門家と本人の状態を見ながら決めます。

自傷、「死にたい」という訴え、強い食事・睡眠の崩れ、暴力など安全上の心配がある場合は、筆談で答えを待ち続けず、医療機関や地域の相談窓口へ早めに連絡します。差し迫った危険がある場合は119や110を利用し、一人にしないことを優先します。

筆談と伝達手段に関するよくある質問

Q1. 家で話せるなら学校でも話すよう促すべきですか?

場所や相手によって話せる状態が変わることがあります。家で話せることを証拠に、学校で発声を求めると負担になる場合があります。学校では、筆談、指さし、カード、端末など、本人が使える方法を確認し、授業参加や安全な意思表示を先に整えます。

Q2. 筆談を続けると話さなくなりませんか?

筆談は、話すことを諦めさせるためではなく、今の意思疎通を支える選択肢です。ただし、どのように使うか、発声への支援をどう考えるかは本人の状態で異なります。話す練習を家庭だけで進めず、学校や医療・相談機関の専門家と計画を確認してください。

Q3. メモを見せてくれないときはどうしますか?

無理に取り上げたり、のぞいたりしません。「私に見せる、先生に見せる、自分だけで持つ、捨てる」のどれにするか選んでもらいます。ただし、安全に関わる内容があると考えられる場合は、親だけで判断せず、医療機関や相談先へ対応を相談します。

Q4. 端末でのやり取りは学校へ頼めますか?

学校の設備やルールによって対応は異なります。端末利用の目的、使う場面、保存する内容、閲覧できる人、充電や管理方法を具体的に相談します。端末が合わない子もいるため、紙、カード、指さしなど別の方法も残し、本人が選べるようにします。

今夜これだけ

紙に「話す・書く・指さす・今は答えない」と書き、今夜は子どもに一度だけ選んでもらってください。

まとめ|声以外の道を残し、返事を待つ

家では話すのに学校では話せない、何を聞いても答えない状態には、強い不安や緊張、発達や言語、環境など複数の要因が関わることがあります。家庭で場面緘黙と診断せず、どこで、誰と、どの方法なら伝えやすいかを見ます。

筆談は、本人が選べる伝達手段の一つです。YES・NO、指さし、カード、端末、答えない選択も残します。返事を急かさず、本人の同意なく人前で読んだり、記録を共有したりしません。筆談でも答えられない日は、質問のないつながりを保ちます。

目標を「声を出すこと」だけにせず、困りごとを伝えられる、授業に参加できる、安全に休めることへ広げます。生活への支障が続く場合は、学校、自治体の相談、医療機関と連携してください。親御さんが答えを引き出す責任を一人で負う必要はありません。

【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

🌙 つらいとき、ひとりで抱えないでください
お子さん本人も、親御さんも使える相談窓口です(無料・匿名OK)。
#いのちSOS:0120-061-338(24時間365日)
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(毎日16〜21時)
児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
子供への声掛け・接し方発達障害・特性理解
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