子どもの赤ちゃん返り|下の子の誕生や環境の変化で甘えが強くなったときの接し方【看護師×父親の視点】

赤ちゃんを抱く母親の服のすそをつかみ、そばに寄る上の子。下の子の誕生で甘えが強くなる赤ちゃん返りのイメージ 保護者向け

本記事にはプロモーションが含まれています。

この記事の要点

  • 赤ちゃん返りは発達の後退ではなく、不安を伝える正常な反応
  • 下の子の誕生だけでなく、入園・進級・引っ越しでも起こる
  • 「お兄ちゃんでしょう」は、いちばん言ってはいけない一言
  • 長い時間より、短くても中断されない時間のほうが効く
  • 数か月以上続く・自傷や強い攻撃を伴う場合は相談を

下の子が生まれてから、上の子が急に甘えるようになった。できていたはずのトイレが間に合わなくなった。抱っこをせがみ、赤ちゃん言葉で話しかけてくる。手がかかる下の子を抱えながら、上の子まで幼くなってしまったように見えると、親御さんの余裕は一気に削られます。

これはいわゆる「赤ちゃん返り」と呼ばれる状態です。子どもが後戻りしているように見えますが、実際には成長の過程で起きる自然な反応であり、多くの場合は一時的なものです。

この記事では、2018年4月から看護師として勤務し(2か月のブランクあり)、2021年4月から児童思春期精神科病棟で働いてきた立場から、赤ちゃん返りの意味と、上の子の心を満たす関わり方をお伝えします。父親としても、この時期の家庭がどれほど余裕を失うかは想像がつきます。がんばりを増やす方法ではなく、今の負担のままできる工夫を中心にまとめました。

赤ちゃん返りとは何が起きている状態か

赤ちゃん返りは、いったんできるようになったことが一時的にできなくなったり、以前より甘えが強くなったりする状態を指します。医学的な診断名ではなく、子育ての場面で使われる言葉です。

大切なのは、これが能力の後退ではないという点です。トイレのやり方を忘れたわけでも、話し方を忘れたわけでもありません。「今は不安だから、確かめたい」という気持ちが行動に出ているだけです。

子どもは自分の不安を言葉で説明できません。「お母さんの気持ちが下の子に向いてしまうのが怖い」と話せる幼児はいません。その代わりに、かつて確実に世話をしてもらえた頃の姿に戻ることで、愛情がまだあるかを確認しようとします。

よく見られるサイン

  • 抱っこや添い寝を強く求める
  • できていたトイレが間に合わなくなる、おねしょが復活する
  • 赤ちゃん言葉になる、哺乳瓶を欲しがる
  • 着替えや食事を「やって」と言う
  • 下の子に意地悪をする、または過剰に世話を焼く
  • 登園をしぶる、園で泣くようになる
  • 些細なことで泣く、かんしゃくが増える

下の子への意地悪と過剰な世話は、正反対に見えて同じ根から出ています。どちらも「自分の位置を確かめたい」という気持ちの表れです。良い子として振る舞っている場合のほうが、実は無理をしていることもあります。

下の子の誕生以外のきっかけ

赤ちゃん返りは、きょうだいの誕生だけで起きるものではありません。入園・進級でクラスが変わった、引っ越しをした、親の仕事が忙しくなった、家族の入院があった。子どもにとって環境が大きく変わる出来事は、すべてきっかけになりえます。

ですから「下の子はいないのに甘えが強くなった」という場合も、心配しすぎる必要はありません。最近の環境の変化を振り返ってみると、思い当たることが見つかるはずです。

また、親自身の余裕のなさも子どもは敏感に察します。仕事や体調で親がぴりぴりしている時期に甘えが増えるのは、自然な反応です。

やってしまいがちなNG対応

①「お兄ちゃんでしょう」「お姉ちゃんでしょう」。もっとも避けたい言葉です。年上であることを理由に我慢を求めると、子どもは「自分は下の子より大事にされない」と学習します。上の子といっても、多くはまだ幼い子どもです。

②できなくなったことを叱る。おもらしや赤ちゃん言葉を注意しても、不安が減らない限り行動は変わりません。むしろ叱られることで不安が増し、症状が長引きます。

③下の子と比べる。「赤ちゃんのほうが手がかからない」といった言葉は、冗談のつもりでも深く残ります。きょうだい間の比較は、その後何年も影響することがあります。

上の子の心を満たす関わり方

短くても中断されない時間を作る。長時間相手をする必要はありません。5分でよいので、下の子を誰かに預けるか寝ている間に、上の子だけと過ごす時間を作ってください。途中で中断されないことが重要です。

甘えてきたら、そのまま受け入れる。抱っこを求められたら抱く、やってと言われたらやる。要求に応じることで甘えが固定するのではないかと心配になりますが、実際は逆です。満たされた子から先に離れていきます。

「大好き」を行動と言葉の両方で。子どもは察してくれません。伝わっているだろうと思っていることは、たいてい伝わっていません。名前を呼んで目を見て伝えるだけでも違います。

役割を与えすぎない。「お手伝いしてくれてありがとう」は良いのですが、下の子の世話を任せすぎると、その子は甘える機会をさらに失います。手伝いは選べる形にしてください。

順番を上の子から。おやつを配るとき、名前を呼ぶとき、お風呂に入れるとき。可能な場面では上の子を先にしてみてください。下の子は順番を覚えていませんが、上の子は覚えています。この積み重ねが「自分は後回しではない」という感覚を作ります。

できていた頃と比べない。「前はひとりで着替えられたのに」という言葉は、つい口をついて出ます。けれども本人にとっては、できなくなったこと自体がすでに不本意な状態です。比較の言葉は、その不安をさらに強めてしまいます。

看護師として見てきたこと

病棟で出会った子どもたちの中には、幼い頃から「しっかりした上の子」として振る舞い続けてきた子が少なくありません。手のかかるきょうだいがいる家庭で、甘えを我慢する側に回った子たちです。

その子たちが思春期になって崩れたとき、口にするのは決まって「自分は迷惑をかけてはいけないと思っていた」という言葉でした。幼い頃に甘えられなかったぶんが、何年も経ってから表面化するのです。※個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化しています。

ですから、赤ちゃん返りは面倒な行動ではなく、むしろありがたいサインだと私は考えています。子どもが「不安だ」と表現できているということですから。何も言わずに我慢してしまう子のほうが、後から心配になります。

きょうだいへの配慮の全体像についてはきょうだい児へ十分にできないと悩む親へにもまとめてあります。

親が疲れてしまうのも当然です

ここまで対応をお伝えしてきましたが、下の子の世話をしながら上の子の甘えにも応じるというのは、そもそも体力的に無理があります。「もっと向き合わなければ」と自分を追い込まないでください。

完璧に対応できなくても、子どもは育ちます。イライラして強く言ってしまった日があっても、後から「さっきはごめんね」と一言添えれば十分に回復します。

使える手はすべて使ってください。祖父母、一時保育、家事の外部化。親が倒れないことが、結局は子どもにとっていちばんの環境です。上の子へのイライラが強くなっているときはきょうだいへのイライラが偏るときもご覧ください。

相談を考える目安

多くの赤ちゃん返りは数週間から数か月で落ち着きます。ただし次のような場合は、園の先生や自治体の相談窓口、かかりつけの小児科に相談してください。

  • 半年以上続き、日常生活に支障が出ている
  • 下の子への攻撃が強く、けがにつながりそう
  • 自分を叩く、髪を抜くなど自分を傷つける行動がある
  • 食事や睡眠に大きな影響が出ている
  • 園で気になる様子を指摘された

よくある質問

Q1. 甘やかすと、そのまま戻らなくなりませんか

戻らなくなることはほとんどありません。むしろ我慢させ続けたほうが長引きます。安心を確かめられた子から順に、自分で離れていきます。

Q2. どのくらいで落ち着きますか

数週間から数か月が目安です。ただし波があり、落ち着いたと思ったらまた出ることもあります。環境の変化が重なった時期は長引きやすくなります。

Q3. おねしょが復活しました

赤ちゃん返りではよくあることです。叱らず、淡々と片づけてください。本人がいちばん気にしています。長く続く場合や日中のおもらしを伴う場合は、小児科で相談してください。

Q4. 下の子に手を出します

行動は止めますが、気持ちは否定しないでください。「叩くのはだめ」と伝えたうえで、「取られたみたいで嫌だったんだね」と気持ちを言葉にしてあげると、繰り返しが減ります。安全確保のため、二人きりにしない工夫も必要です。

Q5. 上の子の時間を作る余裕がありません

3分でも構いません。下の子が寝た後に絵本を1冊、お風呂で少し話す、それだけでも効果があります。時間の長さより「その間はこの子だけを見ている」という状態のほうが大事です。

Q6. 園でも赤ちゃん返りが出ています

家庭の状況を先生に共有しておくと、園でも配慮してもらえます。「弟が生まれて不安定になっている」と一言伝えるだけで、対応が変わることが多いものです。

今夜これだけ

今夜、下の子が寝たあとに3分だけ、上の子と二人になる時間を作ってみてください。特別なことはしなくて大丈夫です。名前を呼んで「大好きだよ」と伝えるだけで、その子の一日が変わります。

看護師視点でのまとめ

赤ちゃん返りは後退ではなく、「不安だ」と伝えられている状態です。表現できているということ自体が、健やかな育ちの証拠でもあります。

やることは難しくありません。甘えてきたら受け入れる。短くても中断されない時間を作る。「お兄ちゃんでしょう」を言わない。この3つだけでも、子どもの安心は確実に増えます。

そして、完璧にできなくて構いません。親が倒れないことのほうが、ずっと大事です。

今日も、あなたとお子さんの時間が、少しでも穏やかでありますように。

あわせて読みたい関連記事

参考にした公的情報・一次情報

記事内の制度・相談先・健康情報・サービス情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。料金・特典・提供条件は変更されることがあるため、利用前にリンク先の最新情報もご確認ください。

【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

🌙 つらいとき、ひとりで抱えないでください
お子さん本人も、親御さんも使える相談窓口です(無料・匿名OK)。
#いのちSOS:0120-061-338(24時間365日)
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(毎日16〜21時)
児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
保護者向け
星野レンをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました