癇癪(かんしゃく)を起こす子どもへの対応|児童精神科看護師が病棟で学んだこと

保護者向け

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「また癇癪が始まった…」
「何を言っても泣き叫んで止まらない」
「周りの目が気になって、外出が怖い」

子どもの癇癪に、日々疲れ切っている親御さんの声をよくお聞きします。私は児童思春期精神科の病棟で5年間、多くの子どもたちの癇癪の場面に立ち会ってきました。最初は私も「どう関わればいいのか」と戸惑うことばかりでしたが、先輩看護師や経験を通して、少しずつ子どもたちへの向き合い方が変わっていきました。

今日は、現場で私が学んだ癇癪への関わり方を、親御さんにもお届けしたい気持ちでまとめます。大切なのは「癇癪を早くおさめる技術」ではなく、「子どもが安心して感情を出せる関わり方」だと感じています。

癇癪はなぜ起きるのか

癇癪は「わがまま」ではなく、子どもの脳がまだ感情のコントロールを発達の途中で学んでいる過程で起きる、ごく自然な反応です。

感情をつかさどる脳の部分(扁桃体)は早い時期から発達する一方で、それを抑える役割の前頭前野はゆっくりと時間をかけて育ちます。つまり、子どもは「怒り」や「悲しみ」の感情が強く湧いても、それを言葉や行動で適切に処理する力がまだ十分にないのです。

病棟でも、癇癪を起こしている子に「どうしてそんなに怒るの!」と問い詰めても、何も解決しません。子ども自身も「どうしてこんなに苦しいのか、わからない」という状態になっていることが多いからです。

病棟で学んだ、癇癪への3つの関わり方

① まずは安全を守る。言葉より行動で

癇癪の最中の子どもに、長々と話しかけても耳には届きません。まず優先すべきは「自分や周りを傷つけない環境を整えること」です。

病棟では、物を投げたり壁にぶつかったりしそうな場合、静かに危ないものを片付け、クッションなどの安全なスペースを整えます。言葉は最小限にして、そっとそばにいるだけの時間を作ります。

ご家庭でも「ダメ!」「やめて!」と叱るより先に、テーブルの角や尖ったものから子どもを離す・危ないものを遠ざけることを意識してみてください。

② 落ち着くまで待つ。先回りして解決しない

親御さんが一番つらいのは、子どもが泣き叫ぶ時間かもしれません。でも、癇癪の最中は「言葉で解決する時間」ではなく「感情を出し切る時間」です。

現場で見てきた子どもたちは、気持ちを全部出し切ったあとに、ふと静かになる瞬間があります。その瞬間こそが「回復の入り口」です。途中で「ほら、お菓子買ってあげるから泣き止んで」と先回りしてしまうと、子どもは「泣けば要求が通る」と学んでしまうこともあります。

入院したばかりの時期には、大声で泣く、壁を蹴る、強い言葉を投げつけるなど、さまざまな形で感情を爆発させる子どもたちに出会ってきました。そんな時、私が意識していたのは、淡々と対応しながら、静かに一人になれる環境をそっと整えること。無理に言葉で制止せず、安全を守りつつ、子どもが感情を出し切る時間を保障することに徹していました。

壁を叩いていた子も、やがて泣き声を上げ、感情を流し出していくと、最後にはふっと静かになり、そのまま眠りに落ちていくことが本当によくありました。その寝息を聞きながら「一つの嵐が、ようやく過ぎたんだな」と感じた瞬間が、今でも胸に残っています。

子どもは、湧き上がる感情をどう扱えばいいのか、まだ学んでいる途中です。だからこそ、泣くという最も原始的な感情表現が出るまで、そばで見守ること。それこそが、子どもが自分の感情を自分で扱えるようになっていく、一番の土台になるのかもしれないと、現場で何度も感じてきました。

③ 落ち着いた後に、気持ちを言葉にしてあげる

癇癪が収まったあとの時間が、実は一番大切です。子どもはまだ「自分の気持ちに名前をつけること」が上手ではないので、大人がそっと手渡してあげるのです。

「悔しかったね」「びっくりしたんだね」「思い通りにならなくて、悲しかったんだね」。こう声をかけることで、子どもは「あ、これは”悔しい”って気持ちなんだ」と、自分の感情を少しずつ理解していきます。

この繰り返しが、やがて「癇癪を言葉で表現する力」へと育っていきます。

逆効果になりやすい3つのNG対応

病棟でも、現場の看護師として避けるように教わった対応があります。

  • 「いい加減にしなさい!」と大声で叱る:子どもの不安が強まり、癇癪が長引くことが多い
  • 「○○したらおやつあげる」と交換条件を出す:一時的に止まっても、癇癪が「要求を通す手段」になってしまう
  • みんなの前で強く叱る:恥ずかしさや恐怖が重なり、子どもの心が深く傷つく

ご家庭で完璧にできなくて当然です。私も現場で、先輩看護師に「ちょっと焦りすぎていたね」と声をかけてもらうことが何度もありました。気づいた時に、次から少しずつ変えていけば十分です。

専門機関への相談を考えたい目安

以下のような状態が続く場合は、一人で抱え込まず専門家に相談することも考えてみてください。

  • 癇癪が毎日1時間以上続く、または週に複数回の強い発作がある
  • 自分や他人を傷つける行動が繰り返される
  • 年齢が上がっても癇癪の頻度や強さが減らない
  • 親御さん自身が精神的に限界を感じている

相談先として、かかりつけの小児科、児童精神科、自治体の発達相談窓口、スクールカウンセラーなどがあります。詳しくは児童精神科の受診方法の記事カウンセリングの選び方もご参考にしてください。

おわりに|癇癪は「困った行動」ではなく「心のSOS」

癇癪は、子どもが大人に向けた「今、わたしはこんなに苦しいんだよ」というメッセージでもあります。困った行動として対処するのではなく、心のSOSを受け止める視点を持つだけで、親御さんの気持ちも少し軽くなるかもしれません。

そして何より、癇癪に付き合う毎日を頑張っている親御さん自身も、決して完璧を目指す必要はありません。疲れた時は休む、周りに頼る、相談する。そのすべてが、お子さんを守ることにつながっています。

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