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「夏休み、どう過ごさせよう…」——終業式が近づくたび、ため息が増えていませんか。40日近い長い休みは、子どもにとっては解放の時間である一方、生活リズムが最も崩れやすい期間でもあります。とくに行き渋りや不登校の兆しが見えているお子さまにとって、夏休みの過ごし方は2学期の登校に直結する大切な時間です。
こんにちは、看護師の星野レンです。児童思春期精神科の病棟で5年間、夏休み明けに「どうしても学校に行けなくなった」と入院してくるお子さんたちを見てきました。振り返ると、多くの子が夏休みの中盤から後半にかけてリズムを崩し、そのまま9月を迎えていたのです。
この記事では、「早寝早起きを無理強いする」のではなく、夏休みをまるごと使って予防的にリズムを整える考え方を現場視点でお伝えします。「楽しい夏」と「整う夏」は、両立できます。
- 夏休みが「リズム崩壊の危険期」になる理由
- 崩れやすい3つのリズム(起床・食事・運動)
- 予防する5つのコツと、崩れたときの戻し方
- 親が疲弊しないための心構え
- 夏休みは「リズム崩壊の危険期」
- 夏休みで崩れやすい3つのリズム
- 崩壊を予防する5つのコツ
- 朝のルーティン完全ガイド|時系列で家庭にできること
- 夜の入眠ルーティン|時系列で家庭にできること
- 不登校気味の子は夏休み前から準備
- ゲーム・スマホ時間のルール見直し
- 夏休みの食事リズムを保つメニューと工夫
- 家庭内アクティビティ20選|活動量を保つ工夫
- 不登校のお子さまの夏休み|タイプ別の過ごし方
- 家族の予定と子どものペースのバランス
- 2学期への移行期(8月後半〜9月)
- 9月1日対策|前日・当日・翌日
- 崩れてしまったらどう戻すか
- 病棟で見た夏休み崩壊と回復の3ケース
- 親が夏休みに陥りやすい5つの失敗
- 兄弟姉妹がいる家庭の夏休み運営
- 親が夏休みに疲弊しないために
- 夏休みに増えがちな心身の不調と対処
- 夏休みに取り組みたい「家族の振り返り時間」
- 夏休みのおすすめ過ごし方プラン3選
- 看護師として親御さんに伝えたい3つのこと
- 夏休み中の友達関係をどう保つか
- 夏休み中の学習をどう続けるか
- 夏休み中の発達特性のあるお子さまへの配慮
- 夏休みに見直したい家族のルール
- よくある質問
- 夏休み中の子どもの「サインを見逃さない」
- 夏休み終盤の「2学期前の不安」へのケア
- 夏休み最終週のチェックリスト
- 2学期スタート1週間の心構え
- まとめ|「楽しい夏」と「整う夏」は両立できる
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夏休みは「リズム崩壊の危険期」
長期休暇の中でも、夏休みは特別です。期間は40日前後と長く、猛暑で外遊びも難しい。塾や習い事以外に「決まった時間の予定」がほとんどない——この3つが重なると、子どもの体内時計を整える手がかりが、日常から消えてしまいます。
学校がある日は、朝の登校時間・給食・休み時間、というように生活の「節目」が自然に体に入っています。ところが夏休みは、節目がないまま一日が流れていく。特にすでに行き渋り・不登校の兆しがあるお子さまは、「起きる理由」がなくなった瞬間から昼夜逆転が始まりやすいのです。
病棟で何度も聞いた保護者の言葉があります。「7月までは何とかなっていたんです。でもお盆を過ぎた頃から、朝起きなくなって…」。これは特別なご家庭の話ではありません。だからこそ、崩れてから対応するのではなく、崩れない工夫が大切なのです。
夏休みで崩れやすい3つのリズム
1. 起床リズム
一番崩れやすいのが起床時間です。最初は「30分遅く起きるだけ」だったのが、1週間で1時間、2週間で2時間、とジリジリ後ろにズレていき、気づけば昼過ぎに起きる生活に。起床時間が崩れると、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌リズムも崩れ、夜眠れなくなるという悪循環に入ります。
2. 食事リズム
起床が遅れると、朝食を抜く、昼と兼ねるようになります。夕食までの時間が短くなり、夜食を食べる。食事時間がズレると、体温や血糖のリズムもズレるので、体全体のペースが乱れます。夜食が増えると、夕食の食欲がなくなり、さらに夜食に頼るという循環に入りやすいです。
3. 運動・活動リズム
学校がある日は、登下校・体育・休み時間で、意識せずとも一定の運動量があります。夏休みは猛暑で外に出づらく、活動量が極端に減るお子さまが多い。体が疲れないため夜眠くならず、布団に入ってもスマホを見て寝るのが遅くなる——これが就寝リズムの崩壊につながります。
崩壊を予防する5つのコツ
コツ1|起床は「平日 + 1〜1.5時間」まで
夏休みに「いつもどおり起きなさい」は、子どもも親もつらいです。平日の起床時間より1〜1.5時間遅いところを「夏休みの標準」にするのがおすすめ。普段7時起きなら、夏休みは8時〜8時半を目安に。これ以上遅くしないと決めておけば、完璧でなくても大きく崩れません。
コツ2|「朝の光」を浴びる時間を作る
起床後1時間以内に太陽の光を浴びると、体内時計がリセットされます。カーテンを開ける、ベランダで朝食を食べる、軽く散歩に出る——5〜10分でいいので、光を浴びる習慣を夏休みの最初のうちから作っておくと、後半になっても崩れにくいです。猛暑日は窓際で過ごすだけでも効果があります。
コツ3|1日1つ「時間が決まっている予定」を入れる
塾、習い事、家族での外出——「この時間までに◯◯をする」という予定が1つあるだけで、生活の節目が保たれます。不登校中のお子さまなら、「11時にお母さんと一緒におやつを作る」「14時にお父さんとカードゲームをする」など、家庭内の予定でも十分です。
コツ4|夕方以降のカフェイン・強い光を控える
エナジードリンク、アイスコーヒーなどは寝つきを悪くします。就寝2時間前からの強いスマホ・ゲームの光は、メラトニンの分泌を遅らせます。「18時以降はカフェインなし」「就寝1時間前はスマホを手放す」——このルールだけでも、夜の眠りの質が変わります。
コツ5|週1回は「リズム点検の日」を決める
夏休み中のリズムは、気づいたときには大きくズレているもの。日曜の夜など、週に1回「今週のリズムどうだった?」と振り返る時間を決めておくと、ズレが大きくなる前に戻せます。責めずに確認するだけでOK。親子の話題にもなります。
朝のルーティン完全ガイド|時系列で家庭にできること
夏休みの朝、何をすればリズムが整うのか。具体的な時系列で示します。これは平日の起床が7時のご家庭を想定した「夏休み標準モデル」です。お子さまや家族の状況に合わせて調整してください。
7:30〜8:00 起床
夏休みの起床時間の上限を「8時」と決めておくと、リズム崩壊を最小限に抑えられます。本人が自力で起きられないときは、無理に揺さぶり起こすのではなく、カーテンを開けて部屋を明るくする、軽い音楽を流すなど、刺激のグラデーションで起こします。アラームは複数を異なる時間に設定し、最後の一つで必ず起きる、というルールが効果的です。
8:00〜8:30 朝の光・水分補給
起きたらまず、コップ1杯の水を飲みます。眠っている間に失った水分を補い、内臓を起こす効果があります。同時にカーテンを全開にして、自然光を浴びる。ベランダや窓際に5分でも立つだけで、体内時計が「朝が来た」と認識します。スマホはこの時間は触らないことが望ましいです。
8:30〜9:00 朝食
朝食は「食べる」こと自体が大切で、品数は問いません。バナナ1本、ヨーグルト1個、おにぎり1個でも十分です。タンパク質(卵・チーズ・ハム・大豆製品)を一品加えると、午前中の体温が上がり、活動的に過ごせます。家族で同じ時間に食べる、という習慣が作れると、自然な節目になります。
9:00〜10:00 軽い活動の時間
朝食後の1時間は、軽い活動を入れます。宿題、読書、ストレッチ、家事の手伝いなど、何でも構いません。完全な「自由時間」にしてしまうと、ダラダラとスマホやゲームに流れがちなので、ある程度の方向付けがあるとよいです。エアコンの効いた部屋で、椅子に座って取り組む活動が現実的です。
10:00〜12:00 自由時間(ただし完全放任ではなく)
この時間帯は、お子さまの主体性に任せます。ただし「完全に何でもOK」ではなく、「家族で決めたルールの範囲内」で。スマホやゲームの時間、好きな本を読む、絵を描く、料理を手伝うなど、本人がやりたいことを選んでよいです。ここで親が口を出しすぎると、本人の自律性が育ちにくくなります。
夜の入眠ルーティン|時系列で家庭にできること
朝のルーティンと同じくらい、夜のルーティンも大切です。質のよい睡眠が、翌朝のリズムを支えます。就寝時間が23時のご家庭を想定した「夏休み標準モデル」をご紹介します。
19:00〜20:00 夕食
夕食は就寝の3時間前までに済ませるのが理想です。23時就寝なら20時までに食べ終わる。食後すぐに横になると消化に悪く、また入眠も妨げます。家族でゆっくり食卓を囲む時間を確保することで、生活の節目が一つ作れます。
20:00〜21:00 お風呂・くつろぎ時間
入浴は就寝の1〜2時間前が理想。ぬるめのお湯(38〜40度)に15〜20分浸かることで、体の深部体温が一旦上がり、その後の下降とともに眠気が訪れます。シャワーだけだとこの効果は得にくいので、可能なら湯船に浸かる習慣を。お風呂のあとはストレッチや読書など、リラックスできる活動を。
21:00〜22:00 デジタル時間(最後の余裕)
スマホやゲームをするなら、この時間帯までに。寝る1時間前からはデジタルを手放すルールにします。光の刺激がメラトニン分泌を妨げるからです。どうしてもの時はナイトモードや暗めの設定にして、画面と目の距離を空けて使う工夫を。
22:00〜23:00 入眠準備
22時を過ぎたら、本格的な入眠準備モードへ。部屋を暗めにして、静かな音楽や読書、家族との短い会話など、心を落ち着ける時間を。スマホは充電のためにリビングに置く習慣にすると、夜中の使用を防げます。22時半までにベッドに入ることを目指します。
23:00 消灯
23時に消灯し、眠りにつきます。すぐに眠れなくても、ベッドの中で目を閉じて呼吸を整えるだけで、体は休まります。眠れない時に「眠らなきゃ」と焦ると、かえって眠れなくなります。「眠れなくても横になっているだけで体は休まる」と知っておくと、気が楽になります。
不登校気味の子は夏休み前から準備
すでに行き渋り・不登校の兆しがあるお子さまは、夏休みに入ってからではなく、7月のうちから準備を始めるのがおすすめです。学校がある状態で少し整えておけば、夏休みに入った瞬間に崩れるのを防げます。
- 7月前半:就寝時間を30分早める/朝のルーティンを簡素化
- 7月後半〜夏休み突入:起床時間の上限を家族で決める/1日1予定
- 8月前半:お盆の帰省・旅行の前後でリズムを戻す日を作る
- 8月後半:2学期に向けて徐々に普段の起床時間に近づける
大切なのは、「2学期から絶対登校させる」という目標ではなく、「体と心が整った状態で9月を迎える」ことを目指すこと。整った状態であれば、本人が「行ってみようかな」と思ったときに動けます。
ゲーム・スマホ時間のルール見直し
夏休みは、ゲーム・スマホ・動画の時間が増える時期でもあります。全面禁止は現実的ではないですし、不登校中のお子さまにとってはオンラインが唯一の「人との繋がり」であることも多いので、取り上げるとかえってこじれます。おすすめは、「禁止」ではなく「見直し」。夏休みの最初の週に、お子さまと一緒に以下のようなルールを話し合ってみてください。
- 時間帯:「朝◯時以降〜夜◯時まで」と使える時間帯を決める(寝る前1時間を空ける)
- 合計時間:1日の上限を目安として決める
- 充電場所:寝る時間になったらリビングで充電する仕組み
- 例外日:「オンラインの大会がある日」など、ルールを緩める日を事前に決めておく
ポイントは「親が一方的に決めず、お子さまと相談すること」。本人が納得したルールは守られやすく、守れなかったときも話し合いやすくなります。
夏休みの食事リズムを保つメニューと工夫
夏休みは三食を家庭で用意することになり、保護者の負担も大きいです。リズムを保ちながら、保護者の負担を最小化するメニューと工夫をご紹介します。
朝食:3パターンを用意
毎朝違うメニューを考える必要はありません。3〜4パターンを決めておいて、ローテーションするだけで十分です。
- パターンA:トースト+ヨーグルト+果物
- パターンB:おにぎり+味噌汁+卵焼き
- パターンC:シリアル+牛乳+バナナ
- パターンD:ホットケーキ+ハム+オレンジジュース
昼食:「冷凍・レトルト・買ったもの」を活用
昼食を毎日手作りする必要はありません。冷凍うどん、冷凍チャーハン、レトルトカレー、コンビニのお弁当——これらを活用して、保護者の負担を減らします。お子さまが小学校高学年以上なら、自分で温める・盛り付けるという経験も貴重な学びになります。
夕食:作り置き+一品料理で完結
週末に2〜3品作り置きしておき、平日は新しく1品だけ作る方式が現実的です。野菜の煮物、ひじきの煮物、きんぴらごぼうなどの常備菜を作っておけば、忙しい平日でも野菜を取れます。週1〜2回は外食やデリバリーで気分転換するのも、夏休みを乗り切る大切な工夫です。
夏休みの食事で意識したいこと
- 水分補給を意識する(熱中症予防)
- 糖質に偏らない(タンパク質・野菜も意識)
- 食事時間をできるだけ一定に
- 家族の誰かと一緒に食べる
- 夜食は最小限に
家庭内アクティビティ20選|活動量を保つ工夫
猛暑で外に出られない夏休み、家庭内での活動を充実させることが、生活リズムを保つ鍵になります。お子さまの年齢や興味に合わせて、選んでみてください。
身体を動かすアクティビティ
- 家族で体操(ラジオ体操、ヨガ動画など)
- 室内サーキット(ジャンプ、スクワット、足踏みなど)
- ダンスゲーム(Just Danceなど)
- ストレッチ動画を一緒に見ながら
- 家の掃除を運動として取り組む
頭を使うアクティビティ
- 家族でボードゲーム・カードゲーム
- ジグソーパズル(家族で取り組む)
- クロスワード・ナンプレ
- 読書感想文の準備
- 自由研究のテーマ探し
創造的アクティビティ
- 料理・お菓子作り
- 絵を描く・水彩・色塗り
- 工作・粘土・折り紙
- 裁縫・編み物
- 写真撮影・編集
学びのアクティビティ
- 夏休みの宿題を一緒に取り組む
- オンライン学習(タブレット教材)
- 家族で映画鑑賞して感想を話し合う
- 歴史や科学のドキュメンタリーを見る
- 家族で読書時間を設ける
「やらせる」のではなく「一緒に楽しむ」がコツです。親が楽しんでいる姿を見せることが、お子さまの参加意欲を高めます。
不登校のお子さまの夏休み|タイプ別の過ごし方
不登校・行き渋り中のお子さまは、夏休みの過ごし方に特別な配慮が必要です。お子さまのタイプ別に、過ごし方の方向性をご紹介します。
タイプ① 活動的なお子さま
不登校でも家の中では活発に動けるタイプ。家族で外出(人の少ない時間帯の公園、博物館、図書館など)、家庭内アクティビティを多めに、習い事や塾を継続する、など、活動量を保つ方向で。エネルギーを発散できる場を確保することが、リズム維持につながります。
タイプ② 静かに過ごしたいお子さま
家でゆっくり過ごすことを好むタイプ。無理に活動を増やすのではなく、静かな活動(読書、絵を描く、音楽を聴く)を充実させます。家族との「一緒にいる時間」を意識的に作り、孤立を防ぐことが大切です。一日中部屋にこもらないよう、リビングで過ごす時間を増やす工夫を。
タイプ③ 波のあるお子さま
調子の良い日と悪い日の差が大きいタイプ。調子の良い日に詰め込みすぎないことが大切です。良い日と悪い日のバランスを保つために、活動と休養のメリハリをつける。スケジュールを固定せず、その日の調子で柔軟に変更できる体制を作ります。
タイプ④ ずっと寝ているお子さま
朝起きられず、一日の大半を寝て過ごすタイプ。起立性調節障害や思春期うつなど、医学的な背景が疑われる場合があります。無理に起こすのではなく、まずはかかりつけ医や児童精神科への受診を検討してください。家庭でできるのは、生活環境を整えること(部屋を明るく、規則正しい食事を提供するなど)です。
家族の予定と子どものペースのバランス
夏休みは、帰省・旅行・親戚の集まりなど家族のイベントが多い時期。楽しい予定である一方、お子さまにとっては刺激が多すぎて疲れてしまうこともあります。とくに発達特性のあるお子さまや、不登校中のお子さまにとっては、にぎやかな場や長距離移動が大きな負担になりがちです。
病棟で関わってきたご家族には、「予定のあとに必ず1日、何もしない回復日を作る」ことをお伝えしています。また、「全員参加」にこだわらないのも大切な視点です。お子さまがつらそうなら、「今回はおうちで留守番してもいいよ」という選択肢があるだけで、気持ちが軽くなることがあります。
帰省を乗り切るコツ
祖父母や親戚と過ごす時間は、お子さまにとって貴重な経験ですが、同時に「学校どうしてる?」「成績はどう?」といったプレッシャーのある質問を受ける場面でもあります。事前に祖父母や親戚に「学校の話は控えてください」と伝えておくと、お子さまの精神的負担が大幅に減ります。保護者が盾になる役割を果たしてください。
旅行を楽しむコツ
旅行は楽しい一方、移動や宿泊先の環境変化で疲労がたまります。詰め込みすぎない日程を組み、お子さまが「もう疲れた」と言ったら無理せず宿に戻る柔軟さを。お子さまが行きたい場所を一つ入れることで、本人の主体性も尊重できます。
留守番を選んだ時の配慮
お子さまが家族の予定に参加しないと選んだ場合、罪悪感を持たせない配慮を。「ゆっくり過ごしてね」「帰ってきたらお土産話聞かせて」と、ポジティブに送り出します。冷蔵庫に好きな食べ物を入れておく、緊急時の連絡手段を確認しておくなど、安心して過ごせる準備を。
2学期への移行期(8月後半〜9月)
8月後半になったら、少しずつ2学期モードへの移行を始めます。ここでも「突然戻す」のではなく、1週間〜10日かけて徐々にが鉄則です。下の表は、夏休み前・中・後のリズムをチェックする目安です。
| 時期 | 起床目安 | 就寝目安 | 主な意識点 |
|---|---|---|---|
| 夏休み前(7月) | 平日と同じ | 平日と同じ | 早めに就寝習慣を整える |
| 夏休み中盤(8月前半) | 平日 + 1〜1.5時間まで | 普段より1時間遅くまで | 1日1予定/朝の光/週1点検 |
| 夏休み後半(8月後半) | 毎日15〜30分ずつ早める | 平日リズムに近づける | 2学期を意識した過ごし方 |
| 2学期開始(9月) | 平日と同じ | 平日と同じ | 移行1週間は無理させない |
注意したいのは、9月1日から完璧を求めないこと。最初の1週間は、お子さまの心身が慣れるための「助走期間」と考えて、送り出すだけで十分と捉えるくらいがちょうどいいです。
9月1日対策|前日・当日・翌日
9月1日は、子どもの自殺が最も多い日とも言われています。長い夏休みから学校に戻る2学期初日のプレッシャーは、お子さまにとって想像以上に大きいです。家庭でできる対策を、前日・当日・翌日に分けてご紹介します。
前日(8月31日)の対応
- 「明日から学校だね」と急かさず、いつも通りの過ごし方を
- 持ち物の準備は本人と一緒に、無理ない範囲で
- 夕食は本人が好きなメニューを
- 早めに就寝できるよう、夕方以降は穏やかな時間を
- 「明日、行きたくなかったら休んでいいからね」と一言伝える
当日(9月1日)の対応
- 朝、本人が起きられないなら無理に起こさない
- 「行く」「行かない」「途中まで行く」の選択肢を渡す
- 休むと決めたら、罪悪感を持たせず家で過ごせる環境を
- 登校したら、帰宅時に「お疲れさま」と短く労う
- 「学校どうだった?」を質問攻めにしない
翌日(9月2日)以降の対応
- 登校できた日は淡々と「お疲れさま」
- 休んだ日も同じ姿勢で「今日はゆっくりね」
- 1週間は様子見の期間と捉える
- 2週間以上不調が続いたら、SC・医療機関へ相談
- 本人の調子を観察日記につけ始める
9月1日に登校できなくても、それは「失敗」ではありません。お子さまのペースで、9月の中で徐々に学校生活に慣れていけば十分です。焦らず、本人の状態を見ながら進めてください。
崩れてしまったらどう戻すか
- 一気に戻そうとしない:毎日15〜30分ずつ起床時間を早めるペースでOK
- 「朝起きる」を先に固定する:眠くないのに無理に寝かせるとこじれます
- 朝の光を浴びる:これだけで体内時計が動きます
- 昼寝は15時まで、30分以内:夕方以降の仮眠は夜の睡眠を崩します
- 1週間で戻らなくても焦らない:崩れた分を戻すには、同じくらいの時間が必要
2週間以上工夫しても戻らない、頭痛・めまい・立ちくらみがある、朝になると強い腹痛・吐き気がある——こういった場合は、起立性調節障害やうつ病などの可能性もあります。小児科や児童精神科への相談を検討してみてください。
病棟で見た夏休み崩壊と回復の3ケース
具体的なイメージを持っていただくため、病棟で出会ったお子さまの夏休みの過ごし方のケースを3つご紹介します。プライバシー保護のため、年齢や状況は大きく改変していますが、エッセンスは現場のリアルです。
ケース① 完全昼夜逆転から戻ったAさん
中学1年男子のAさん。7月までは何とか登校していましたが、夏休みに入ると朝起きる必要がなくなり、徐々に就寝時刻が後ろにズレていきました。8月中旬には朝5時就寝、夕方起床の完全昼夜逆転に。8月末には「学校行きたくない」と訴え、9月から不登校に。
受診後、起立性調節障害の合併も診断され、治療を開始。9月中旬から、毎日15分ずつ起床時間を早める「スモールステップ」で生活リズムを戻していきました。10月後半には朝7時に起きられるようになり、保健室登校から再開。崩れたリズムを戻すには、崩れたのと同じくらいの時間が必要と実感した事例です。
ケース② 「1日1予定」で崩壊を防いだBさん
小学5年女子のBさん。1年前から登校しぶりがあり、夏休み中の生活リズム崩壊が心配されました。お母さまが事前に「1日1予定」を心がけ、毎日10時にお母さまと一緒に朝食、午後に祖母とのオンライン通話、夕方に近所の友達との短い遊び、というルーティンを作りました。
結果、夏休み中も8時起き・22時就寝のリズムを大きく崩さずに過ごせ、9月以降も保健室登校を継続できました。「予定」が生活の節目となり、リズム維持に貢献した好例です。
ケース③ 一度崩れたが8月後半に立て直したCさん
高校1年男子のCさん。お盆の親戚集まりで疲弊し、8月中旬から朝起きられない日が続きました。お母さまが慌てて医療機関に相談し、「8月後半の10日間で徐々に戻す」プランを立てました。
毎日15分ずつ起床時間を早め、朝の光浴び、軽い運動を組み合わせて、9月1日には何とか平日のリズムに戻すことができました。「8月後半の立て直し」が間に合った事例です。
3つのケースに共通するのは、「早めの対応」「ステップ・バイ・ステップ」「家族の協力」。崩壊を放置せず、しかし焦らず、家族で支えていく姿勢が回復を早めます。
親が夏休みに陥りやすい5つの失敗
保護者として頑張りすぎて、かえって失敗してしまうパターンもあります。よくある5つの失敗と、その回避法をご紹介します。
失敗① 完璧なスケジュールを組もうとする
毎日詳細な時間割を作って、子どもをそれに従わせようとするパターン。夏休みはイレギュラーが多く、完璧なスケジュールは現実的ではありません。守れないことが続くと、親も子もストレスがたまります。
回避法:「起床」「就寝」「3食の時間」だけ大まかに決めて、あとは柔軟に。完璧より「大崩れしないこと」を目標に。
失敗② 宿題に口出ししすぎる
「もう8月後半なのに宿題終わってないの?」と毎日プレッシャーをかけるパターン。本人の自主性を奪い、宿題そのものへの嫌悪感を植え付けます。
回避法:宿題は本人の責任と割り切る。終わらなくても、最終的に困るのは本人。学校に「全部終わらなかった」と伝えるのも一つの経験。
失敗③ 親自身が休まない
「夏休みは子どもの世話で大変」と、自分のリフレッシュを後回しにするパターン。親が疲弊すると、子どもへの対応も雑になり、家全体の空気が悪くなります。
回避法:意識的に自分の時間を作る。週1回はカフェ、友人とのランチ、趣味の時間を確保。「親が休む」は子どもにとっての贈り物。
失敗④ 比較してしまう
「お友達は塾の夏期講習に行っているのに」「兄弟は宿題ちゃんとやっているのに」と比較してしまうパターン。本人の自己肯定感を大きく損ねます。
回避法:比較するなら過去の本人と。「6月よりちゃんと起きられているね」のように、本人の成長を見る。
失敗⑤ 2学期への不安を口にしすぎる
「9月から学校行けるかな」「リズム戻せるかな」と、親の不安を子どもに伝えてしまうパターン。本人の不安も増幅させてしまいます。
回避法:不安は配偶者、友人、SCに話す。子どもの前では「夏休み、楽しもうね」と前向きな声かけを。親の不安は、別の場所で処理する。
兄弟姉妹がいる家庭の夏休み運営
兄弟姉妹がいるご家庭の夏休みは、調整がさらに複雑になります。年齢差、不登校の子と通常通学の子の混在、それぞれの予定の調整など、保護者の負担も増えます。
兄弟姉妹それぞれのリズムを尊重
「全員同じ時間に起きる、同じ時間に食事をする」を強制すると、それぞれのペースが守れません。基本的な時間(朝食・夕食)は一緒にして、あとは個別に動ける時間を作るとよいです。
不登校の子ときょうだいの違いをフラットに扱う
不登校の子は塾や夏期講習に行かない一方、きょうだいは習い事や塾で忙しい——という状況で、不登校の子が「ずるい」と感じたり、きょうだいが「自分も休みたい」と感じたりすることがあります。それぞれの状況に応じた声かけが必要です。
きょうだいへのケアも忘れずに
不登校の子の対応に手を取られて、きょうだいが「自分は放っておかれている」と感じることが多いです。週1回でも、きょうだいだけと過ごす時間を作る、特別な外出を企画するなど、きょうだいへの配慮も忘れずに。
家族全体での楽しい時間を確保
夏休み中に家族全員で楽しめる時間を、最低1回は作る。映画館、外食、近場の小旅行など、本人たちが希望する活動を。家族の絆を確認する時間が、それぞれの安定にも繋がります。
親が夏休みに疲弊しないために
ここまで子どものリズムの話をしてきましたが、一番疲弊するのは親御さん自身だということも、お伝えしておきたいです。40日間、昼食を用意し、生活を見守り、声をかけ続ける——これは想像以上にエネルギーがいる仕事です。
- 毎日完璧じゃなくていい:週の半分整っていれば上出来です
- 冷凍食品・レトルト・外食を活用する:昼食を毎日手作りする必要はありません
- 一人時間を意図的に作る:30分でいいので、親自身のリフレッシュの時間を
親が疲れ切ってしまうと、子どもの変化に気づきにくくなります。親御さん自身のリズムを守ることも、立派な子どもへの関わりです。
夏休み中の親のセルフケア具体策
- 朝、子どもより15分早く起きて、コーヒーを1杯ゆっくり飲む時間を作る
- 週1回、半日でも子どもを配偶者や祖父母に任せて、自分の時間を持つ
- SNSの「楽しい夏休み投稿」を見すぎない(比較で疲れる)
- 愚痴を話せる相手を1人持つ(友人、配偶者、SCなど)
- 自分のメンタル不調のサインに敏感になる
- 「子どものために」より「自分のために」を意識する時間を持つ
夏休みに増えがちな心身の不調と対処
夏休み中は、リズムの乱れだけでなく、心身の不調も増えやすい時期です。よくある不調と、その対処法をまとめます。
食欲不振・夏バテ
暑さで食欲が落ち、冷たい物ばかり食べてしまうと、夏バテが起きやすくなります。食欲がないときは、無理に量を食べさせるのではなく、消化の良い食べ物(おかゆ、うどん、豆腐、卵料理)を少量ずつ。脱水予防のため、こまめな水分補給は意識して。
熱中症
家の中でも熱中症は起きます。エアコンは適切に使い、こまめな水分・塩分補給を。お子さま自身が暑さを訴えにくいこともあるので、保護者が室温・湿度をチェックし、定期的に水分を勧めてください。めまい・頭痛・吐き気が出たら、涼しい場所で休ませ、症状が続くなら受診を。
頭痛・腹痛
生活リズムの乱れから、頭痛や腹痛が起きやすくなります。原因が分かりにくい慢性的な頭痛・腹痛は、自律神経の乱れや、心理的なストレスのサインのこともあります。長引く場合は小児科を受診し、必要に応じて児童精神科への紹介を相談してください。
気分の落ち込み
夏休み後半は、2学期が近づくプレッシャーから、気分が落ち込みやすくなります。「だるい」「やる気が出ない」「眠れない」「食欲ない」が2週間以上続く場合は、思春期うつの可能性も視野に入れ、専門家に相談を。
SNS疲れ
夏休み中、友達のSNS投稿を見て「自分だけ何もしていない」と感じることがあります。これも夏休み特有のストレスです。SNS時間を制限する、見ない時間帯を作る、保護者がフォロー対象を一緒に見直すなど、必要に応じて距離を置く工夫を。
夏休みに取り組みたい「家族の振り返り時間」
夏休みは、学校がある時期にできない「家族でゆっくり話す時間」を作るチャンスでもあります。お子さまの現状や、これからの方向性を、ゆっくり話し合うことで、家族の絆が深まります。
1学期の振り返り
「1学期、どうだった?」と本人に聞いてみる時間を作ります。学校での出来事、友達関係、勉強、心の状態など、本人が話したい範囲で。評価したり批判したりせず、ただ聞くだけで十分です。本人の中で1学期が整理され、夏休みの過ごし方も見えてきます。
夏休みにやりたいことリスト
本人と一緒に「夏休みにやってみたいこと」を10個書き出してみます。大きなことでも小さなことでもOK。「アイス専門店に行く」「猫カフェに行く」「映画を3本見る」「好きな漫画を全巻読む」など。実現可能なものから一つずつ取り組んでいくと、夏休みに方向性が生まれます。
2学期に向けての気持ち
8月中旬以降、「2学期どう過ごしたい?」と本人と話してみます。「2学期は絶対学校に行こう」と決めつけるのではなく、本人の希望と不安を聞く時間。保健室登校、別室登校、午前中だけの登校など、複数の選択肢を一緒に検討します。
家族の将来の話
夏休みは、家族の将来についても話しやすい時期です。家族旅行の計画、進路の話、家族として大切にしたい価値観など、普段話せないテーマに触れる機会に。お子さまも、家族の一員として将来を考える経験ができます。
夏休みのおすすめ過ごし方プラン3選
具体的なイメージを持っていただくため、夏休みの過ごし方プランを3つご紹介します。お子さまや家庭の状況に合わせて、参考にしてみてください。
プランA:「整える夏」(不登校・行き渋り中の子向け)
- 朝8時起床、夜23時就寝を守る
- 1日1予定(家庭内アクティビティでも可)
- 家族との会話時間を1日1回確保
- 週1回、家族でちょっとした外出
- 2学期に向けては「整った状態で迎える」を目標に
プランB:「リフレッシュの夏」(通常通学中で疲れている子向け)
- 1学期の疲れを取ることを最優先
- 前半は「やりたいことだけやる」期間に
- 習い事・塾は本人が希望するもののみ
- 家族で旅行・帰省など、思い出作りを優先
- 8月後半から徐々に2学期モードへ
プランC:「挑戦の夏」(活動的な子向け)
- 夏期講習、習い事、自由研究など、活動を充実
- 家族でアクティブな外出(キャンプ、海、登山など)
- 自分で計画を立てる経験を積む
- リズムは平日と大きく変えない
- 2学期の目標を本人と一緒に設定
これらはあくまで参考プランです。お子さまの状態と希望を最優先に、家族で話し合って、その年の夏休みのプランを作ってみてください。固定的でなく、夏休み中に柔軟に変更してもOKです。
看護師として親御さんに伝えたい3つのこと
① 夏休みは「整える時間」と捉える
夏休みは「楽しむ時間」であり「学びの時間」でもあります。でも、不登校・行き渋りのお子さまにとっては、それ以上に「整える時間」。学校というプレッシャーから一度離れて、家族のなかで心身を整え直す貴重な機会です。「2学期から登校する」を目標にせず、「整った状態で9月を迎える」ことを目標にしてください。
② 「完璧」より「大崩れしない」
毎日完璧なリズムは無理です。それでも構いません。「大崩れしないこと」だけ意識すれば、十分です。週の半分はうまくいかなくても、半分は整っているなら上出来。長期戦の不登校支援は、完璧を求めない姿勢が、結果的に長続きします。
③ 親の安定が最大のリズム
お子さまのリズムは、家庭全体のリズムに左右されます。そして家庭のリズムを支えるのは、親の安定です。親自身が穏やかで、楽しい気持ちでいられること——それが、お子さまにとっての最大の生活リズムです。「親が楽しんでいる」姿が、お子さまにとっての安心になります。
夏休み中の友達関係をどう保つか
夏休みは学校に行かないため、友達と会う機会が減ります。これは普通のお子さまでも寂しさを感じる時期ですが、不登校・行き渋り中のお子さまにとっては、特に気を遣う問題です。
無理に友達と会わせない
夏休みだから友達と遊ばせよう、と保護者が積極的にセッティングするのは逆効果のことが多いです。本人の準備が整っていない段階で会わせると、関係が悪化することも。本人が「会いたい」と言うまで待つ姿勢を。
本人が選んだ友達とだけ短時間
本人が「会いたい」と希望する友達がいたら、短時間から始めます。家で1〜2時間遊ぶ、近所のコンビニまで散歩する、など、無理のない範囲で。「夏休み中に1回会えた」だけでも、本人にとって大きな経験です。
オンラインの繋がりを尊重
直接会えなくても、LINEやオンラインゲームでの繋がりは大切な社会的接点です。「ゲームばかり」と見ずに、繋がりを保つ手段として尊重を。ルールの範囲内であれば、活用するスタンスがよいです。
友達からの誘いへの対応
友達から遊びの誘いが来た時、本人の意思を確認してから返答します。「行きたい」「行きたくない」「考えてから返事する」のいずれもOK。保護者が代わりに断るのではなく、本人が自分の言葉で返答することを応援しましょう。
夏休み中の学習をどう続けるか
不登校・行き渋りのお子さまにとって、夏休み中の学習は悩ましい問題です。学校の宿題、夏期講習、家庭学習など、どう取り組むかの考え方をご紹介します。
夏休みの宿題
不登校中でも、夏休みの宿題は配布されます。全部終わらせる必要はないと割り切るのも選択肢です。本人が取り組める範囲で進める、終わらなければ「ここまでできました」と提出する、提出自体を見送る——どれも本人と話し合って決めればOK。学校に事情を伝えておくと、配慮してもらえることが多いです。
夏期講習・塾
学校以外の環境(塾)なら通える子もいます。少人数制、個別指導、オンライン塾など、本人に合いそうなものを試してみる価値あり。ただし、「学校の代わり」として無理に通わせるのは逆効果。本人が「行きたい」と言うものだけにしましょう。
家庭学習
タブレット教材、市販のドリル、オンライン教材など、家庭でできる学習も豊富です。1日30分でも続けることで、学習習慣を維持できます。本人が興味を持てる教材を選ぶことが続けるコツです。学習面で遅れることへの不安があれば、家庭学習で最低限のフォローを。
「学習しない夏休み」も選択肢
逆に、「夏休み中は学習しない」と決めるのも選択肢です。心身を整えることを最優先し、学習は2学期以降に取り戻す。長期戦の不登校支援では、無理に学習を続けるより、休養を優先する方が結果的に回復が早いこともあります。
夏休み中の発達特性のあるお子さまへの配慮
発達特性(ASD、ADHD、LDなど)のあるお子さまは、夏休み中に特別な配慮が必要なことがあります。よくある困りごとと対策をご紹介します。
ルーティンの崩れに過敏
ASD傾向のあるお子さまは、ルーティンが崩れると不安が高まります。夏休みも、できるだけ「決まったリズム」を維持することが安定につながります。視覚的なスケジュール表を作って、毎日のルーティンを可視化するのも有効です。
感覚過敏への配慮
暑さ、人混み、音、匂いなど、感覚的な刺激が強い夏。本人の感覚過敏に合わせて、外出を控える、エアコンの効いた静かな場所を優先するなど、配慮を。家の中で過ごす時間が長くなっても、本人が落ち着けることを優先します。
注意の持続が難しい
ADHD傾向のあるお子さまは、長時間の学習や活動が続きません。15分活動、5分休憩のように、短いサイクルで活動を区切るとよいです。タイマーを使う、達成感を視覚化する、ご褒美を設定するなど、モチベーション維持の工夫を。
放課後等デイサービスの活用
発達特性のあるお子さま向けの放課後等デイサービスは、夏休み中も利用できる施設が多いです。家以外の居場所として活用すると、本人の社会的接点が保たれ、保護者の負担も軽減できます。利用していない場合は、自治体や相談支援事業所に問い合わせを。
夏休みに見直したい家族のルール
夏休みは、家族のルールを見直すよい機会です。学校がある時期には決められなかったルールや、家族の関わり方について、ゆっくり話し合う時間が取れます。
スマホ・ゲームのルール
家族で改めて使用ルールを話し合う。使用時間、使用場所、お金(課金)のルールなど、本人の年齢と状況に合わせて柔軟に決めます。一方的に決めるのではなく、本人と話し合って決めることが守りやすさに直結します。
お手伝いのルール
夏休み中、お子さまにお手伝いを担ってもらうのも、責任感と達成感を育てる機会です。料理の補助、洗濯物たたみ、掃除など、本人ができる範囲で。お小遣いと絡めるかは家庭の方針次第です。
家族の時間と個人の時間
「家族で過ごす時間」と「一人で過ごす時間」のバランスを見直します。思春期になると一人時間が増えるのは自然ですが、家族で食事する時間、月1回は家族でお出かけする、など、家族の繋がりを維持する仕組みを。
家のお金のルール
夏休み中、お小遣い、外食費、レジャー費など、お金の使い方を家族で共有するのもよいです。家計について子どもに少しずつ伝えていく機会としても活用できます。
よくある質問
Q1. 夏休み中、朝何時に起きるのが理想ですか?
平日の起床時間の1〜1.5時間後を上限と考えてください。普段7時起きなら、夏休みは8時〜8時半。それ以上遅くしないことが、リズム維持の鍵です。早すぎる必要はありません。本人が無理なく起きられる時間を、家族で話し合って決めるとよいです。
Q2. お盆に親戚集まりがあります、参加させた方が良いですか?
お子さまの状態次第です。不登校中で「学校どうしてる?」と聞かれるのが負担なら、無理に参加させない方が良いです。参加する場合は、事前に親戚に「学校の話題は控えて」と伝える、休憩できる別室を用意してもらうなど、配慮を依頼しましょう。
Q3. 宿題が全然進みません、強制すべきでしょうか?
強制するより、本人と一緒に計画を立て直しましょう。毎日少しずつできる量を決めて、達成感を積み重ねる方が効果的です。最終的に終わらなくても、それは本人の経験。学校で「全部終わらなかった」と報告することも、責任を学ぶ機会になります。
Q4. ゲーム時間が増えすぎて心配です
ゲームを取り上げるのは逆効果のことが多いです。「使える時間帯」「上限時間」「寝る前1時間は手放す」など、本人と相談してルールを決めてください。完全禁止より、適切な使用法を一緒に作っていく姿勢が大切です。
Q5. 不登校なのに塾の夏期講習に行かせるべきですか?
本人の希望次第です。塾は学校とは違う環境なので、行きやすいこともあります。一方で、追いつくプレッシャーで負担になることも。本人の意思を尊重し、参加するなら少ない回数から試してみる、合わなければやめる、という柔軟さを。
Q6. 8月後半でも全然リズムが戻りません、どうしたら?
2週間以上工夫しても戻らない場合は、起立性調節障害や思春期うつなど、医学的な背景がある可能性があります。小児科や児童精神科の受診を検討してください。家庭の工夫だけで解決しようとせず、専門家の力を借りる選択肢を持ってください。
Q7. 9月1日に登校できなかったら、その後どうしたら?
慌てる必要はありません。9月1日に登校できなくても、9月の中で徐々に再開していく道もあります。本人のペースを見ながら、保健室登校、別室登校、午前中だけの参加など、複数の選択肢を一緒に考えてください。
夏休み中の子どもの「サインを見逃さない」
夏休み中は、学校という客観的な観察の目がなくなるため、お子さまの不調のサインを見逃しがちです。保護者が意識して観察すべきサインをまとめます。
身体面のサイン
- 食欲の極端な低下または増加
- 睡眠時間の極端な変化
- 朝起きられない日が続く
- 頭痛、腹痛、めまいなどの身体症状
- 体重の急激な変化
行動面のサイン
- 部屋から出てこない時間が増える
- 家族との会話が極端に減る
- 趣味や好きなことに興味を示さない
- 清潔行動(入浴、歯磨き)が減る
- ゲーム・スマホへの依存度が異常に高い
感情面のサイン
- 表情が乏しくなる、笑わなくなる
- イライラや怒りっぽさが増える
- 急に泣くことが増える
- 「消えたい」「死にたい」などの発言
- 自分を傷つける行動の形跡
これらのサインが複数、2週間以上続く場合は、専門家への相談を検討してください。夏休みだから、と様子見にせず、早めの対応が回復を早めます。とくに「死にたい」「消えたい」などの発言は、見過ごさず必ず受診を。
夏休み終盤の「2学期前の不安」へのケア
8月後半になると、お子さまにも保護者にも「2学期どうなるか」の不安が高まります。この時期の心のケアを意識しておきましょう。
本人の不安に寄り添う
本人が「2学期、行けるかな」「友達と話せるかな」と不安を口にしたら、否定せず受け止めます。「大丈夫だよ」と励ますより、「不安だよね。一緒に考えよう」と寄り添う方が、本人の心が落ち着きます。
選択肢を一緒に整理
2学期の過ごし方の選択肢を、本人と一緒に整理します。通常登校、保健室登校、別室登校、午前中だけの登校、休む、適応指導教室の利用など、複数の道があることを示します。「これしかない」と思わせないことが大切です。
学校との事前連絡
不登校・行き渋り中の場合、8月後半に学校と連絡を取り、9月以降の関わり方を相談しておくとよいです。担任、養護教諭、スクールカウンセラーと連携し、本人の状態に合わせた対応を準備しておきます。本人の負担を最小限にする工夫を、学校側と共有します。
保護者の不安ケア
保護者自身も不安です。配偶者、友人、SCなど、信頼できる人に不安を吐き出す時間を作ってください。「自分の不安を子どもに見せない」ためには、別の場所で処理する仕組みが必要です。
夏休み最終週のチェックリスト
夏休み最終週(8月25日〜31日頃)に確認しておきたいチェックリストです。準備が整っていると、9月の始業がスムーズになります。
生活リズム面
- 起床時間が平日に近づいているか
- 就寝時間が平日に近づいているか
- 朝食を取る習慣ができているか
- 日中の活動量が確保されているか
- 夜のスマホ使用が制限されているか
持ち物・学習面
- 夏休みの宿題の状況確認(できる範囲で)
- 新学期の教科書・ノート・文房具の確認
- 制服・体操着のサイズ確認、洗濯
- 提出物の準備(保健書類など)
- 持ち物のリストアップ
心の準備
- 本人の気持ちを聞く時間を作る
- 2学期の選択肢を一緒に整理
- 学校への連絡(必要に応じて)
- 9月1日の予定を本人と共有
- 「行けなかったら休んでOK」の安心感を伝える
保護者の準備
- 仕事のスケジュール調整(9月1日前後)
- 万が一の対応プランを夫婦で共有
- SCや医療機関の連絡先を再確認
- 自分自身の心の準備(不安を吐き出す時間)
- 家族みんなで「お疲れさま」を伝え合う
このチェックリストは「完璧にやる」ためのものではなく、「漏れを防ぐ」ためのもの。できることから順に取り組んでみてください。家族みんなで確認しながら進めると、それ自体が9月への助走になります。
2学期スタート1週間の心構え
2学期初日から1週間は、特に大切な時期です。お子さまも保護者も、心構えを整えておきましょう。
「行けた・行けなかった」で一喜一憂しない
1日行けたから次の日も行けるとは限りません。1日行けなかったから不登校確定でもありません。1週間単位、1ヶ月単位で本人の状態を見ていく姿勢を。
本人のペースを最優先
「みんな普通に行ってるのに」という比較は禁物。本人なりの一歩を、家族で大切に見守ってください。少しずつでも前に進んでいれば、それは確かな成長です。
家庭を安心の場に
学校でどんな状態であれ、家庭は安心できる場所であり続けたいです。「学校どうだった?」の質問攻めをせず、「お疲れさま」と短い労いだけで十分。家庭が安心の場であれば、本人は必ずまた一歩を踏み出せます。
保護者の不安を子どもに見せない
保護者の不安は、お子さまに直接伝わります。配偶者、SC、信頼できる友人など、別の場所で不安を処理し、家ではできるだけ穏やかな表情で。それが、お子さまの安定の土台になります。
専門家との連絡体制を確保
9月以降、不調が続くようなら、早めに専門家に連絡できる体制を整えておきます。SC、かかりつけ医、児童精神科など、相談先の連絡先を手元に。状況に応じて、すぐに動ける準備が、長期戦の支援には欠かせません。家族だけで抱え込まず、専門家と二人三脚で進めていく姿勢が、結果的にお子さまの回復を早めます。そして、専門家に頼ることは、保護者の責任放棄ではなく、家族全体を守るための賢明な選択です。一人で抱え込まず、必要な時には必ず手を伸ばしてください。あなたの周りには必ず、手を差し伸べてくれる人がいます。一人で頑張りすぎないでくださいね。家族の支援は、長い道のりです。一歩ずつ、家族みんなで進んでいきましょう。あなたの努力は、必ずお子さまの未来へと繋がっていきます。今日もここまでお読みくださり、本当にありがとうございました。
まとめ|「楽しい夏」と「整う夏」は両立できる
夏休みは、子どもにとって解放と成長の時間。同時に、生活リズムが崩れやすい危険期でもあります。大切なのは、「完璧に崩さないこと」ではなく、「大崩れしないこと」。起床時間の上限を決める、朝の光を浴びる、1日1予定を入れる——この3つだけでも、夏休みの過ごし方は大きく変わります。
もう一つ忘れないでほしいのは、夏休みは「2学期のための準備期間」ではなく、お子さま自身にとっての大切な時間だということ。整えすぎも放任しすぎも、どちらも極端です。お子さまのペースを尊重しながら、ゆるやかに節目をつけていく——それが、不登校の兆しが見える子にこそ必要な「夏の過ごし方」だと、私は思います。
本記事の要点を整理します。
- 夏休みは「リズム崩壊の危険期」と認識する
- 崩れやすいのは起床・食事・運動の3つのリズム
- 起床は平日+1〜1.5時間、朝の光、1日1予定で予防
- 朝と夜のルーティンを時系列で持っておく
- 不登校気味の子は7月から準備を始める
- 食事は3パターン用意してローテーション
- 家庭内アクティビティ20選で活動量を確保
- お子さまのタイプ別に過ごし方を調整
- 家族の予定は無理せず、回復日を作る
- 9月1日対策は前日・当日・翌日を意識
- 崩れたら15分ずつスモールステップで戻す
- 親自身のセルフケアも最優先で
今年の夏も、お子さまとあなたの家族にとって、穏やかな時間でありますように。完璧でなくて大丈夫です。大崩れしないこと、家族で楽しめる時間を一つでも作ること、それで十分です。
もしこの記事を読んで「うちもできそう」と思ったコツが一つでもあれば、ぜひ明日から試してみてください。「平日+1時間までの起床」「朝のカーテン開け」「1日1予定」——どれも今日から始められる小さな工夫です。完璧に全部やる必要はなく、できそうな一つから始めるのが続けるコツです。
面談で関わったご家族で、夏休みの過ごし方を工夫したことで、2学期の登校がスムーズになったケースをたくさん見てきました。その共通点は、「夏休みを意識して整える時間にした」こと。事前に計画を立て、家族で協力し、本人のペースを尊重する——この姿勢が、結果として家族全体の安定につながっています。
そして、夏休みが終わった9月、もしお子さまが「学校行けない」となっても、それは「夏休みの過ごし方が間違っていた」のではありません。9月から、また家族で考えていけばよいのです。長期戦の不登校支援は、その時々で柔軟に対応していくことが何より大切です。
本ブログでは、不登校・発達障害・思春期メンタルに関する記事を、現役の児童思春期精神科看護師の視点から継続的に発信しています。夏休みに限らず、年間を通じてのお子さまへの関わり方、家族のケア、学校との連携など、幅広く取り扱っています。関連記事もお読みいただけたら、何かしらのヒントが見つかるかもしれません。
お子さまもあなたご自身も、どうかご自愛くださいませ。今日もお疲れさまでした。明日もまた、ここでお会いできますように。児童思春期精神科看護師の星野レンより、心を込めて。今年の夏が、家族にとって穏やかで、思い出に残る時間でありますように。
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著者プロフィール
星野レン(ほしの れん)|看護師歴8年、うち児童思春期精神科の病棟勤務5年。不登校・発達特性・睡眠の不調を抱えたお子さまとご家族に、日々の臨床現場で関わっています。「治す」より「整える」、「正しさ」より「その子に合った形」を大切に、医学的な視点と家庭での実践を橋渡しする情報を発信しています。
免責事項
本記事は児童思春期精神科の看護現場での経験をもとに構成した一般向けの情報です。医学的診断・治療の代替となるものではありません。お子さまの状態が気になる場合は、かかりつけの小児科、児童精神科、スクールカウンセラー等にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報であり、個別の症例への適用を保証するものではありません。

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