この記事の要点
- 迷ったらまずかかりつけの小児科。紹介もしてもらえる
- 体の症状が中心なら小児科、気持ちの落ち込みが中心なら児童精神科
- 「死にたい」自傷・強い拒食は、順番を踏まず直接受診
- どちらか一方を選ぶのではなく、使い分けると考える
- 迷う段階で相談しても早すぎることはない
子どもの様子が気になるとき、最初につまずくのが「どこへ連れて行けばいいのか」です。小児科なのか、児童精神科なのか。調べるほど分からなくなって、そのまま数か月が過ぎてしまうご家庭も少なくありません。
児童思春期精神科の病棟で働く看護師の星野レンです。2018年4月から看護師として勤務し(2か月のブランクあり)、2021年4月から児童思春期精神科病棟で。この記事は「どちらへ行くかの判断」だけに絞ってまとめています。受診が決まったあとの手順(予約の電話・持ち物・初診の流れ)は別の記事に分けていますので、判断がついたらそちらへお進みください。
結論|迷ったら、まずかかりつけの小児科
先に答えをお伝えします。判断に迷うなら、まずかかりつけの小児科に相談してください。現場で何度もお伝えしてきた最初の答えです。
理由は、体の病気を先に確かめておけることと、小児科の医師が地域の児童精神科の事情を知っていることの二つです。どこが混んでいるか、何歳から診てもらえるか、紹介状が要るか。こうした情報は自分で探すより早く手に入ります。
ただし、この「まず小児科」には例外があります。次の状態のときは順番を踏まずに動いてください。
先に確認してください|待たずに相談する場合
次のいずれかがあるときは、下の目安にあてはめようとせず、期間を待たずにその日のうちに相談してください。傷が深い、出血が止まらない、意識がもうろうとしているなど命の危険を感じるときは、迷わず119番です。
- 「死にたい」「消えたい」と口にする(具体的な方法を語るときは特に急ぎます)
- 自傷行為がある、または繰り返している
- 食事や水分をほとんど摂れていない
- 幻覚・幻聴を訴える
- 他人への激しい暴力がある
こうした状態は「予約を待つ」段階ではありません。地域の精神科救急、救急外来、そして下の窓口を使ってください。
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
- いのちの電話(フリーダイヤル):0120-783-556(毎日16〜21時、毎月10日は8時〜翌朝8時・無料)/ナビダイヤル:0570-783-556(10〜22時)
- チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(16〜21時・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの公的窓口につながります)
目安|迷ったときの受診先の考え方
| 子どもの様子 | まず相談する先 | 理由 |
|---|---|---|
| 朝の腹痛・頭痛(学校のある日だけ) | 小児科 | 体の病気を先に確かめておくため |
| 発熱・嘔吐・下痢が続く | 小児科 | 身体疾患の可能性を確かめる |
| 夜尿が続く | 小児科 | 体の要因の確認が先になることが多い |
| 朝どうしても起きられない、立ちくらみがある | 小児科 | 起立性調節障害の可能性を調べる |
| 気分の落ち込みが続いている | 児童精神科 | 2週間以上続くときは特に相談を(それより短くても心配なら相談してよい) |
| 強い不安・パニック発作がある | 児童精神科 | 不安症の治療が必要なことがある |
| 不登校・引きこもりが長引いている | 児童精神科 | 背景の見立てが必要になる |
| 発達の特性について相談したい | 児童精神科 | 発達検査と併せて相談できる |
二つの科は、何が違うのか
どちらも子どもを診る診療科ですが、得意な領域が違います。
小児科
おおむね0歳から15歳(中学生まで)を対象に、体の病気を中心に診ます。近年は発達の相談や心の相談を受ける小児科も増えていて、「発達外来」を設けている施設もあります。かかりつけがある場合は、これまでの経過を知っているという強みがあります。
児童精神科
18歳未満の子どもの心の問題を専門に扱います。発達の特性、不登校、不安症、うつ状態、摂食障害、自傷など幅広く対応し、必要に応じて心理検査、カウンセリング、薬による治療、家族への支援まで一貫して行います。
大切なのは、どちらか一方を選ぶものではないということです。小児科で体の病気を確かめてから児童精神科へ、あるいは児童精神科に通いながら風邪は小児科で、という形が現場では普通です。「使い分ける」と考えておくと、受診のハードルが下がります。
小児科から始めるほうがよい三つの理由
心の不調を疑っていても、小児科から始める価値があります。
ひとつ目は、体の病気を除いておけること。朝起きられない背景に起立性調節障害があることも、食欲の低下の裏に貧血や甲状腺の問題が隠れていることもあります。心の問題だと決めつける前に確かめておくと、あとの見立てが正確になります。
二つ目は、紹介状が手に入ること。大きな病院の児童精神科では紹介状を求められることが多く、あると初診が早まる施設もあります。これまでの経過が医師に正確に伝わるという利点もあります。
三つ目は、待ち時間が短いこと。児童精神科は初診まで1〜3か月かかることが珍しくありません。小児科なら数日で診てもらえます。待つあいだ何もできないという状況を避けられます。
朝の頭痛や腹痛が続いている場合はストレスが体に出る心身症の記事、朝起きられない状態が続く場合は起立性調節障害の記事もあわせてご覧ください。
児童精神科へ直接行ったほうがよい場合
一方で、小児科を経由せず直接向かったほうが早いケースもあります。
- すでに小児科で「専門医に診てもらいましょう」と言われている
- 体の検査で異常がないと分かっている
- 発達の特性について、検査を含めた評価を受けたい
- 不登校が長期化しており、背景の見立てが必要
- 家族に精神科の既往があり、早めに専門的な見立てを得たい
- すでに学校のスクールカウンセラーから受診を勧められている
発達の特性について相談したい場合は、発達検査(WISC)の記事で流れを把握しておくと、初診で聞くことが整理できます。
「受診するほどでもないかも」と迷うとき
いちばん多いのが、この迷いです。目安として、次のうち複数当てはまるなら、受診を前向きに考えてよい段階です。
- 困りごとが2週間以上続いている
- 家庭でできる工夫を試したが変わらない
- 本人が「つらい」と言っている
- 学校や園からも「気になる」と指摘されている
- 家族の生活にも影響が出はじめている
「念のため」の受診は、恥ずかしいことではありません。現場の実感をひとつ添えると、「もっと早く来ていれば」と振り返るご家族は多くいますが、「早く来すぎた」と言うご家族にはほとんど出会いません。
診断がつくかどうかの境目にいる状態については、グレーゾーンについての記事で詳しく扱っています。
判断に迷ったときの三ステップ
順番に進めれば、どこかで必ず次の道が見えます。
- ステップ1:かかりつけの小児科に相談する。体の検査で問題がないか確認する
- ステップ2:必要なら児童精神科を紹介してもらう。同時に予約だけ取っておく
- ステップ3:待つあいだ、学校のスクールカウンセラーや自治体の相談窓口も併用する
ステップ2で「予約だけ取っておく」のが要点です。予約はキャンセルできますが、順番は買い戻せません。待っているあいだに状態が落ち着けば、それは良い知らせとして受け取ればよいのです。
心療内科や大人の精神科ではだめなのか
対象年齢の問題があります。心療内科や一般の精神科は、多くが成人を主な対象にしており、小学生を診ていない施設も少なくありません。中学生・高校生であれば診てもらえることもありますが、事前に電話で確認が必要です。
子どもの心の不調は、発達の途上にあることや、学校・家庭という環境の影響が大きいことなど、大人とは見方が違います。可能であれば児童精神科、または児童を診ている小児科を選んでください。
お住まいの地域に児童精神科がない場合は、大人の精神科でも子どもを診ている施設があるかどうか、自治体の保健センターに問い合わせてみてください。
まず相談だけしたい場合の窓口
医療機関を決める前に、話を聞いてもらえる場所があります。どれも無料で、受診の前段階として使えます。
- 学校のスクールカウンセラー(保護者だけでも相談できます)
- 養護教諭(学校での様子を把握しています)
- 自治体の保健センター・子ども家庭支援センター
- 教育委員会の教育相談室
- 発達障害者支援センター(発達の相談に特化)
スクールカウンセラーは比較的早く会えて、学校での様子を踏まえて話せる利点があります。使い方はスクールカウンセラーに何を話せばいいかの記事にまとめています。
現場から|半年間、腹痛で小児科に通っていた子
※個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化しています。
小学校高学年の子が、朝の腹痛で半年ほど小児科に通っていました。血液検査もエコーも異常なし。整腸剤を飲みながら、月に何度か学校を休む状態が続いていました。
転機は、小児科の医師が「一度、心の側からも見てもらいましょうか」と提案したことでした。児童精神科で話を聞いていくと、教室で発表する場面への強い不安があることが分かりました。腹痛が出るのは、発表のある曜日でした。
この半年を「回り道だった」と受け取る必要はありません。体の病気を除外したという事実が、心の側からの見立てを確かなものにしました。順番として、決して間違っていなかったのです。
ただし、教訓もあります。原因不明の症状が数か月続いたら、「もう一度別の角度から見てもらえませんか」と自分から言ってよいということです。医師に任せきりにせず、こちらから提案する。それが半年を三か月に縮めます。
本人が受診を嫌がるとき
「行きたくない」と言われて動けなくなるご家庭は多くあります。理由として最も多いのは、「心の問題だと思われるのが嫌」というものです。
この場合、小児科から始めるほうが応じてもらえることがあります。「体の調子を調べに行こう」という伝え方なら抵抗が小さく、実際に体の検査から始まるので嘘にもなりません。
それでも動かないときは、保護者だけで相談に行くことができます。親だけの相談から始めて、数か月後に本人が来られるようになるケースはよくあります。本人を説得できないことを、行けない理由にしなくて大丈夫です。
よくある質問
Q1. 小児科で「様子を見ましょう」と言われました
その言葉で終わらせず、「どのくらい様子を見て、変わらなければ次はどうしますか」と聞いてください。期限を決めておくと、次に動く目安ができます。数か月変わらないなら、別の角度から見てもらう相談をしてよい段階です。
Q2. 両方に同時に通ってもよいのですか
問題ありません。児童精神科に通いながら、風邪や体の不調は小児科でというのが普通の形です。ただし薬を出されている場合は、それぞれの医師に飲んでいる薬を必ず伝えてください。
Q3. 高校生はどちらへ行けばよいですか
児童精神科は18歳未満が対象なので、高校生も対象に入ります。施設によって上限が違うため、予約の電話で年齢を伝えて確認してください。小児科は中学生までとしている施設が多くあります。
Q4. 近くに児童精神科がありません
発達外来のある小児科、子どもを診ている精神科、自治体の保健センターが選択肢になります。オンライン診療を行っている施設もあります。自治体の保健センターに「子どもの心の相談ができる医療機関」を問い合わせるのが早道です。
Q5. 受診したことが学校に伝わりますか
医療機関から自動的に伝わることはありません。共有するかどうかはご家庭が決められます。配慮を求めるために伝えたほうがよい場面もありますので、判断は医師と相談してください。
Q6. 受診が決まったら、次は何をすればよいですか
予約の電話、持ち物の準備、初診で聞かれることを押さえておきます。手順は児童精神科の受診方法の記事にまとめていますので、判断がついたらそちらへお進みください。
今夜これだけ
今夜は受診先を決めなくて大丈夫です。かかりつけの小児科の診療時間だけ調べて、いつなら行けるかを一日決めておいてください。判断はその日の医師と一緒にすればよいのです。
看護師視点でのまとめ
迷ったらまずかかりつけの小児科へ。これが現場での標準的な流れです。体の病気を確かめておけて、紹介状が手に入り、待ち時間も短い。三つとも実務的な利点です。
ただし、「死にたい」という言葉、自傷、強い拒食、幻覚・幻聴があるときは順番を踏みません。その日のうちに相談してください。この一線だけは、目安の表より優先されます。
そして、どちらか一方を選ぶものではないということ。体は小児科、心は児童精神科と使い分けながら、必要に応じて行き来してよいのです。受診先を完璧に選ぼうとして動けなくなるより、まず話を聞いてもらえる場所に行くことのほうが、はるかに先へ進みます。診断や治療の判断は必ず医師にご相談ください。
参考にした公的情報・一次情報
記事内の制度・相談先・健康情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。


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