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この記事の要点
- 6〜7月は1学期の疲れがピークに達し、静かに崩れやすい時期
- 「夏休み、何したい?」に反応が返らないのは見逃されやすいサイン
- 朝の頭痛・腹痛は仮病ではない。「またか」と返すと言わなくなる
- 通知表の第一声を「1学期お疲れさま」に決めておく
- 夏休み前に相談窓口の番号を控えておくと、いざというとき動ける
夏休みは子どもにとって楽しみな時期——大人はそう考えがちです。ただ現場で見ていると、6月後半から7月にかけては、子どもの調子が静かに崩れやすい時期でもあります。
私は2018年4月から看護師として勤務し(2か月のブランクあり)、2021年4月から児童思春期精神科病棟で働いています。この時期に受診や入院につながる子は、決して少なくありません。この記事では、終業式までに気づいておきたいサインと、家庭でできる備えを整理します。
なぜ6〜7月に揺れやすいのか
理由はひとつではなく、いくつかの負荷が重なります。
- 1学期の疲れがピークになる——進級・進学から3ヶ月。大人でいえば転職3ヶ月目にあたる疲労感を抱えています。最初は気を張って乗り切れていたものが、6月後半にほどけてきます
- 通知表という評価が近づく——点数だけでなく生活の様子まで文章で評価されます。「親にどう見られるか」が頭から離れず、食欲や睡眠が乱れる子もいます
- 夏休みという大きな変化——毎日の型が一度崩れます。変化が苦手な子には、楽しみより先に「予定が分からない不安」が立ちます
- 気候による消耗——梅雨の気圧変化で自律神経が乱れやすく、早い時期からの暑さも体力を削ります。心の余裕は体力の上に乗っています
もうひとつ見落とされやすいのが、「友達と離れられてホッとしている自分」を責めてしまう子の存在です。周りが夏休みを喜んでいる中で、自分の安堵を口に出せず抱え込む。こうした子は、外からはむしろ静かに見えます。
見逃しやすい3つのサイン
A. 「夏休みが楽しみ」と言わない
「夏休み、何したい?」と聞いても「別に」「わかんない」しか返らない、あるいは話題そのものを避ける。これは、先のことを楽しみに思う余裕が今の心に残っていないサインかもしれません。
見逃しやすいのは、「思春期だからそっけないのが普通」と片づけてしまう点です。反応が薄くなる時期なのは確かですが、本来なら声が弾むはずの話題にも一切乗ってこないなら、意味が違うことがあります。
B. 成績への執着、または急な無関心
「100点じゃないと意味がない」と繰り返す、答案を隠す。こうした強い執着の背景には、成績でしか自分の価値を示せないという思いがあることがあります。
逆に「もうどうでもいい」と急に投げやりになるのも同じ根から来ていることがあります。やる気がないのではなく、頑張っても結果が出ない自分を見たくなくて、心が先に手を離している状態です。前者は「真面目でいいこと」、後者は「反抗期」と受け取られやすく、どちらも見過ごされがちです。
C. 朝の頭痛・腹痛・吐き気が増える
朝になると痛みを訴えるのに、休んだ日の昼には元気になっている。このパターンは現場でよく出会います。大事なのは、仮病ではないということです。本人の中では本当に痛い。ストレスが胃腸や頭に出るのは自然な反応です。
最初は心配していても、続くと「またか」と返してしまう。この一言で、子どもは次から症状を言わなくなります。頻度が増えてきたこと自体がサインだと受け止めてください。学校で休める場所があるかも確認しておきたいところです(保健室・別室登校という選択)。
学年別に、現れ方が変わる
- 小学校低学年——言葉にできない分、夜泣き、おもらし、ぐずり、甘えの増加として出ます。スキンシップを意識的に増やす時期です
- 小学校中学年——友達関係が複雑になります。会えなくなる不安と、離れられる安堵の両方を抱えがちです
- 小学校高学年——中学進学が視野に入り、「夏の過ごし方で決まる」という圧力がかかります。塾や夏期講習の負荷も重なります
- 中学生——定期テスト・部活・人間関係が同時に来ます。反抗的に見えても、内側は不安でいっぱいということが多いです
- 高校生——進路の悩みに加え、「夏休みを有効に使わなければ」というプレッシャーそのものが消耗の原因になります
終業式までにできる5つの備え
サインに気づいても、問い詰める必要はありません。残りの数週間でできることがあります。
- 1対1の時間を週1回つくる——15分で構いません。車の中、お風呂、寝る前。「学校どう?」と聞かなくてよいので、ただ隣にいる時間を増やします。本音は聞き出そうとするほど出てきません
- 夏休みの予定を決めつけずに聞く——先回りして計画を立てず、「どんな夏にしたい?」と選択肢を渡します。「特にない」なら、そのまま受け取ります
- 通知表の第一声を決めておく——「1学期、お疲れさま」から始めると決めておくだけで、その日の空気が変わります
- 担任に最近の様子を聞く——「家では元気がないように見えるのですが、学校ではどうでしょうか」の一言で十分です。家と学校で見えている顔は違います
- 相談先の連絡先を控えておく——夏休み中は学校の窓口が閉まります。スクールカウンセラーの夏季対応、近くの児童精神科の予約状況を確認しておきます
最後の項目は、今すぐ受診するつもりがなくても意味があります。番号を控えてあるだけで、動きたくなった日に動けます(スクールカウンセラーの活用法/児童精神科の受診ガイド)。
通知表をどう渡すか
通知表を受け取る瞬間、子どもの体は無意識に固くなります。親の第一声が「どれどれ」「なんでここだけ?」になると、3ヶ月の頑張りがその一言で塗りつぶされてしまうことがあります。
おすすめは、評定より先に所見欄を読むことです。テストでは測れない様子が、担任の文章に書かれていることがあります。順番を決めておくだけで、家庭の空気は変わります。
比較も避けたい対応です。きょうだいやクラスメイトと比べる言葉は、「自分は誰かの劣化版だ」というメッセージになります。比べるなら過去のその子と今のその子です。振り返りの話は当日でなく、夏休みに入って表情がゆるんだ頃で十分間に合います。
夏休みに向けた3つの予防策
楽しい予定と一緒に、崩れないための仕組みも用意しておきます。
ひとつ目は生活リズム。完璧を目指さず、「起きる時間は平日と1時間以内のずれ」「朝ごはんは誰かと食べる」程度のゆるい軸を1〜2個決めます。細かい時間割は、不安の強い子にはかえって重荷になります。夏の過ごし方は夏休みの生活リズムの記事に詳しくまとめています。昼夜逆転が始まってしまった場合はこちらの記事を。
ふたつ目は「ひま」と「孤独」を分けること。ひまな時間は本来、回復と想像力の時間です。ただ、誰とも目が合わない日が続くと、それは孤独に変わります。同じ部屋で別のことをしている時間を1日1回、夕食のときだけスマホを置く。この程度の接点が、坂をゆるやかにします(部屋にこもる子との過ごし方)。
みっつ目は受診枠の確保です。2学期の始業式直前は予約が一気に埋まります。相談したくなるかもしれないと感じているなら、夏休みの前半に余裕のある日程で取っておく。必要なければキャンセルすれば済みます。
病棟で見た3つのケース
※以下のエピソードは、個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化しています。
小学5年の女の子は、6月後半から朝の腹痛を訴え、口数が減っていました。ご家族がスクールカウンセラーに相談し、週1回、二人だけで散歩する時間を作ったところ、少しずつ言葉が出てきました。「クラスに合わない子がいる」「夏休みに会わなくて済んでホッとしている」。話せたことで大きな崩れはなく、2学期も元のペースに戻れています。
中学1年の男の子は、終業式の通知表で予想より低い評価があり、その場で厳しく叱責されました。すでに6月から疲労が見えていたところで、この一言が決定打になり、夏休み中に部屋にこもるようになって2学期から不登校に。後の面談で、ご家族が「渡し方が違っていたら」と振り返っていたのが印象に残っています。
高校1年の女の子は、1学期に不調で受診し、夏休み中も月2回の相談を続けました。生活リズムを大きく崩さずに過ごせたことで、2学期から徐々に登校を再開しています。休みの間に支援を切らさなかったことが効いたケースです。
この時期の声かけ|言い換えの例
| 避けたい言い方 | 言い換え |
|---|---|
| またお腹痛いの? | お腹痛いんだね。つらいね |
| 夏休みなんだから楽しみでしょ | どんな夏にしたい?特になくてもいいよ |
| なんでこの評価なの | 1学期、お疲れさま |
| ○○ちゃんはできてるのに | 前より書けるようになったね |
| そんなことで悩まないの | そう感じてたんだね |
右側の言い方に共通しているのは、評価も助言も入っていないことです。この時期はまず、受け取るだけの返事を増やすほうがうまくいきます。
受診を検討するタイミング
- 朝の身体症状が週の半分以上ある
- 眠れない、または朝まったく起きられない日が続く
- 食事量が明らかに減った、体重が落ちた
- 好きだったことにも関心を示さなくなった
- 「消えたい」「いなくなりたい」と口にする
2週間以上続く場合は、かかりつけの小児科や児童精神科に相談してください。それより短くても、心配なら相談して構いません。「消えたい」という言葉が出たときは、期間を待たずに動いてください。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)、よりそいホットライン(0120-279-338・24時間・無料)も使えます。
親自身も、この時期は疲れている
子どもが1学期を走り切ったということは、保護者も同じだけ走っています。加えて夏休みは、日中の食事の用意や過ごし方の調整が増える期間です。始まる前から気が重い、というのは自然な感覚です。
完璧な夏休みを用意する必要はありません。予定が埋まっていない日があってよいし、外出しない週があってもよい。保護者が消耗しきった状態では、サインに気づく余裕もなくなります。まず自分の睡眠を確保することを、優先順位の上のほうに置いてください。
よくある質問
Q1. 学校を休ませていいのか迷います
朝に強い症状が出ているなら、休ませて構いません。1日休んで回復するなら、それは必要な休みだったということです。休んだ日に「ずるい」と責める言葉は避けてください。判断に迷うなら、担任や養護教諭に相談しながら決めるのが現実的です。
Q2. 終業式だけは出させたほうがいい?
本人が行けそうなら、区切りとして意味があります。ただ、無理に連れて行って嫌な記憶で1学期が終わるくらいなら、通知表を後日受け取る形でも問題ありません。学校に相談すれば対応してもらえることが多いです。
Q3. 夏休みの宿題はどうすれば?
調子が落ちている時期は、量の調整を学校に相談してよい部分です。全部やることより、生活が保たれることを優先してください。終盤に一気に追い込む形になると、2学期のスタートに響きます。
Q4. 何も話してくれません
無理に聞き出す必要はありません。話さないまま同じ空間にいる時間を増やすほうが、結果的に早く口が開きます。質問ではなく、こちらの出来事を短く話すのも入口になります。
Q5. 去年の夏休み明けに不登校になりました
同じ時期に同じことが起きるとは限りませんが、備えておく価値はあります。夏休み中に支援とのつながりを切らさないこと、2学期の始まり方を学校と事前に相談しておくことが有効です(小学生の不登校の記事)。
今夜これだけ
通知表を受け取った日の第一声を、今のうちに決めておいてください。「1学期、お疲れさま」。それだけで、その日の家の空気が変わります。
看護師視点でのまとめ
6〜7月の不調は、夏休みに入るといったん見えなくなります。学校がないので、朝の症状も出ません。そのまま「治った」と思っていると、2学期の始まりで一気に表面化する——これが現場でよく見るパターンです。
だから、終業式までの数週間にできることには意味があります。1対1の時間を少し増やす、通知表の第一声を決めておく、相談先の番号を控える。どれも小さな準備ですが、夏休み明けの景色を変えます。
参考にした公的情報・一次情報
記事内の制度・相談先・健康情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。


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