兄弟が「自分もこころの病気じゃないか」と言い出した時|きょうだい児の不安の受け止め方【看護師×父親の視点】

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※本記事は児童思春期精神科で5年以上勤務している看護師(星野レン)の臨床経験をもとに書いています。診断や治療方針は必ず主治医・専門機関にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療判断を代替するものではありません。

※「きょうだい児」とは、病気・障害・不登校などの困りごとを抱えた兄弟姉妹を持つ子どものことを指します。本記事では、きょうだいのうち誰かが精神科を受診している家庭で、もう一方の子どもが「自分もそうかもしれない」と訴えてきた時の受け止め方について解説します。

  1. はじめに|「私もうつかも」と言われて固まってしまったあなたへ
  2. きょうだい児とは何か——基礎知識
  3. なぜきょうだい児はそう感じるのか
  4. 3つのパターンの見分け方
  5. パターン別の対応|それぞれにふさわしい関わり方
  6. 「気のせいだよ」「考えすぎ」と言ってはいけない理由
  7. 受診を考えるタイミング
  8. きょうだい児の心の発達課題
  9. 親ができるきょうだい児ケア5つ
  10. きょうだい児が「自分も病気かも」と言わない理由
  11. 看護師としての一言|よく聴くと別の不安だったケース
  12. 病棟で見てきたきょうだい児の3ケース
  13. きょうだい児の年齢別の特徴
  14. きょうだい児の心の発達を支える日常
  15. 父親の関わり方
  16. 家族構成によって変わるきょうだい児の悩み
  17. 学校との連携
  18. きょうだい児への声かけ集
  19. きょうだい児の支援団体・サポート資源
  20. きょうだい児への「ありがとう」を伝える
  21. 大人になったきょうだい児の声
  22. きょうだい児の「アイデンティティ形成」
  23. きょうだい児の進路選択
  24. きょうだい児が抱える「将来の不安」
  25. きょうだい児の友達関係
  26. 家族会議の進め方
  27. きょうだい児の自己肯定感を育てる
  28. よくある質問(FAQ)
  29. きょうだい児が「自分も病気かも」と言わない時の見守り
  30. 親自身のセルフケア
  31. 「きょうだい児だからこそ得たもの」を見つける
  32. まとめ|きょうだい児の声を、家族の真ん中に置く
  33. 関連記事

はじめに|「私もうつかも」と言われて固まってしまったあなたへ

「お母さん、私もうつなのかな」「俺もADHDかも」。上の子の通院や付き添いで毎日へとへとになっている時に、もう一人の子どもからこんな言葉を投げかけられて、心臓が止まりそうになった親御さんは少なくないと思います。

「えっ、この子まで?」という驚きと、「もしかしてずっと我慢させてた?」という申し訳なさ、そして正直に言えば「もう一人ぶんは抱えきれない」という疲労感。色々な感情が一気に押し寄せて、つい「気のせいだよ」「考えすぎ」と返してしまう。あとから自己嫌悪に陥る——病棟で出会うご家族からよく聞く話です。

結論からお伝えすると、きょうだい児が「自分も病気かも」と言い出すのは、決して珍しいことでも、おかしいことでもありません。そしてその訴えには、いくつかの異なる意味が隠れています。本記事では、児童精神科の現場で見てきたパターンを整理しながら、お子さんの言葉をどう受け止めればいいのかをお伝えします。

きょうだい児とは何か——基礎知識

本題に入る前に、「きょうだい児」という概念を整理しておきましょう。きょうだい児について理解を深めることが、適切なサポートへの第一歩です。

「きょうだい児」の定義

「きょうだい児」とは、慢性疾患、精神疾患、発達障害、不登校など、何らかの困りごとを抱えた兄弟姉妹を持つ子どものこと。日本では「障害のある兄弟姉妹を持つ子」を指すことが多いですが、近年は精神疾患や不登校のきょうだいを持つ子も含めて、広く認識されるようになっています。

きょうだい児の数

日本のきょうだい児の正確な統計はありませんが、発達障害だけで子どもの約6.5%(文部科学省調査)と推定されることから、その兄弟姉妹を含めると、推定数百万人のきょうだい児がいると考えられます。決して特殊な立場ではありません。

きょうだい児が抱える課題

「親の関心が病気の兄弟に向く」「家族の話題が病気の兄弟中心になる」「自分が我慢役になる」「友達に説明しにくい」「将来の家族関係への不安」——独特の課題を抱えています。

「きょうだい児ケア」の動き

近年、きょうだい児への支援が注目されています。NPO法人、家族会、医療機関——様々な場所で、きょうだい児支援のプログラムが広がっています。「きょうだい児の声」を社会全体で聞こうとする動きが進んでいます。

ヤングケアラーとの関係

近年クローズアップされている「ヤングケアラー」(家族のケアを担う子ども)も、きょうだい児が含まれることがあります。家事や上の子の世話を担い、本人の発達課題が後回しになっている場合は、社会的支援の対象に。

きょうだい児の権利

きょうだい児にも、「子どもとして大切にされる権利」があります。「健康だから」と後回しにせず、一人の子どもとして向き合うことが、家族全体の幸せに繋がります。

なぜきょうだい児はそう感じるのか

まず大前提として、「自分もこころの病気じゃないか」と感じるきょうだい児には、ちゃんとした理由があります。気まぐれや甘えではありません。

1. 病気の兄弟と暮らす中で「自己観察」が鋭くなる

家のなかで「うつ」「不安障害」「ADHD」「自閉スペクトラム症」といった言葉が日常的に飛び交うようになると、きょうだい児はその言葉の意味を自分なりに調べ始めます。すると、どんな人にも多少はある気分の落ち込みや集中の難しさが、自分のなかにも見えてくる。「あれ、これ私もある」「兄ちゃんと同じだ」となるわけです。

2. 親の関心が病気の兄弟に向くなかでの承認欲求

これは親御さんにとって耳の痛い話かもしれませんが、現実問題として、入院・通院・登校付き添いなどがあると、健康な側のきょうだいは後回しになりがちです。「自分は手のかからない子」と無意識に役割を引き受け、それでも本当はもっと見てほしい。「自分も病気だ」と言うことで、ようやく親の目が自分に向く——そんな構造が背景にあることがあります。

3. 思春期特有の「自分は普通か」という不安

思春期は「自分は周りと比べてどうなのか」を強烈に気にする時期です。SNSや学校の友達と自分を比べ、ちょっとした気分の浮き沈みを「異常なんじゃないか」と感じやすい。これに加えて家にメンタル不調の兄弟がいると、「自分にも遺伝してるんじゃないか」という不安が乗ってきます。

4. 発達特性は遺伝要素もあるため、実際にあり得る

ここは正直にお伝えしておきます。ADHDや自閉スペクトラム症などの発達特性には、ある程度の遺伝的背景があることが知られています。きょうだいの一方に診断がついている場合、もう一方にも特性が見られることは珍しくありません。「気のせい」と切り捨てられない場合があるのです。だからこそ、最初から否定せず、丁寧に話を聞くことが大切になります。

5. 家庭内の緊張感を感じ取っている

病気の兄弟がいる家庭は、知らず知らずのうちに緊張感が高まりがちです。親同士の会話、生活リズムの変化、医療費の心配——きょうだい児は、こうした家庭内の雰囲気を敏感に感じ取り、自分の体調や気持ちに影響を受けることがあります。

6. 自分の感情を「マイナス」と評価しがち

「家族が大変なのに、自分が落ち込んでいる場合じゃない」と、自分の感情を抑え込みがち。それが続くと、自分の感情を「マイナス」「ダメ」と評価する癖がつき、「自分は病気かも」と感じる引き金になります。

3つのパターンの見分け方

「自分も病気かも」という訴えは、ざっくり3つのパターンに分けて考えると整理しやすいです。あくまで臨床現場で出会うご家族の傾向であって、医学的な分類ではありませんが、初動の判断には役立つはずです。

パターンA:本当に症状がある(要受診)

朝起きられない、食欲が落ちた、学校に行きたがらなくなった、好きだったものに興味を示さない、夜眠れない、急に成績が下がった、自傷をほのめかす——こうした生活上の具体的な変化を伴っているケースです。「気持ちの話」だけでなく、「行動」や「身体」の変化が見えていることがポイント。この場合は、早めに専門機関に相談する必要があります。

パターンB:注目してほしい・愛されたい欲求の表現

言葉では「うつかも」と言うけれど、生活はそれなりに回っている。学校にも行けているし、ごはんも食べられている。ただ、親と二人きりになったときや、上の子の通院日が近づいてくると、急にそういう発言が増える——という場合は、注目欲求が背景にある可能性があります。これは「嘘をついている」「演技している」とは別物で、本人の中では本当に苦しい感覚があります。

パターンC:自己理解・思春期心性の延長としての気づき

「私、人より気持ちの切り替えに時間かかる気がする」「集中続かないの、もしかしてADHDっぽいのかな」と、比較的フラットなトーンで話してくる場合です。日常生活に大きな支障はなく、むしろ自分を客観的に理解しようとしている。これは思春期に多い、健康的な自己探求の延長線上にあります。

見分けの3つのポイント

具体的にどう見分ければいいのか。私が現場で意識しているのは次の3点です。

  • 生活機能はどうか:食事・睡眠・登校・友人関係など、日常が回っているか
  • 持続期間はどうか:その状態が2〜3週間以上続いているか、一時的か
  • 本人の苦痛の質はどうか:「困っている」「助けてほしい」が中心か、「分かってほしい」が中心か

パターン別の対応|それぞれにふさわしい関わり方

パターンAへの対応:早めの専門機関相談

生活機能の低下、持続的な落ち込み、自傷念慮などが見られる場合は、迷わずスクールカウンセラー、かかりつけ医、児童精神科などに相談してください。「上の子で手一杯だから、この子はもう少し様子を見よう」と先延ばしにすると、症状が固定化してしまうことがあります。

受診前には、いつから・何が・どんなふうに変わったのか、簡単な箇条書きメモを作っておくと診察がスムーズです。スマホのメモで十分です。

パターンBへの対応:1対1の時間を意識的につくる

注目欲求が背景にある場合、必要なのは「診察」ではなく「親との時間」です。「あなたは病気じゃないよ」と言う前に、「最近どう?」と聞ける時間を、意識して確保してください。週に15分でいいので、その子だけと話す時間を作る。買い物に一緒に行く、コンビニのアイスを買いに行く、それくらいで十分です。

大事なのは、上の子の話題ばかりにならないこと。「あなたの今日」を聞くこと。これができると、「自分も病気だ」と訴える必要が減っていきます。

パターンCへの対応:知的な対話のパートナーになる

自己理解の延長で言ってきている場合は、否定も肯定もせず、一緒に考える姿勢が一番です。「そう感じるんだね」「どんなところでそう思ったの?」と聞き返してあげてください。本やネット情報を一緒に読んでもいいし、「気になるなら一度先生に聞いてみる?」と選択肢を提示するのもありです。

このパターンの子は、押し付けや否定に敏感です。「お母さんが決める」より、「あなたが決めていい」というスタンスのほうが、安心して話せます。

共通して大切なこと:まず「教えてくれてありがとう」

どのパターンであっても、最初の反応で大事なのは「言ってくれてありがとう」「気づいてくれてありがとう」です。これは表面的な言葉ではなく、本当にそうなのです。きょうだい児が自分の不調を口にできた、それ自体が家庭の安全度を示しています。

「気のせいだよ」「考えすぎ」と言ってはいけない理由

つい口をついて出てしまう「気のせい」「考えすぎ」「あなたは大丈夫」。実はこの言葉は、きょうだい児を二度傷つけてしまうことがあります。

一度目の傷は、自分の感覚を否定されたこと。本人にとっては勇気を出して打ち明けた言葉が、たった一言で「無いこと」にされる体験です。

二度目の傷は、「やっぱり自分のことは聞いてもらえないんだ」という諦めです。きょうだい児は、上の子の病気を見て、「親に心配かけちゃいけない」と感じやすい立場にあります。そこを乗り越えてようやく口にした訴えを否定されると、「もう言わない」という選択をしてしまう。これが思春期以降のメンタル不調の見落としにつながります。

否定の代わりに使ってほしいのは「もう少し聞かせて」「いつからそう思ってた?」という、判断を保留する言葉です。診断を急がず、まず聞く。これだけで、子どもの安心感はかなり違います。

受診を考えるタイミング

「様子を見る」と「受診する」の境目で迷う親御さんは多いです。一般的な目安として、次のどれかに当てはまる場合は、専門機関への相談を検討してください。

  • 気分の落ち込みや不安が3週間以上続いている
  • 食事・睡眠・登校など、生活機能の低下が見えている
  • 「死にたい」「消えたい」など、自傷念慮を口にしている
  • 自分や他人を傷つける行動が出ている
  • 家族から見て「明らかに様子がおかしい」状態が続いている

最初の窓口は、かかりつけの小児科、スクールカウンセラー、自治体の子育て・教育相談、児童相談所、地域の精神保健福祉センターなどがあります。いきなり児童精神科を予約するハードルが高いと感じる場合は、まずスクールカウンセラーや小児科に相談して、必要に応じて専門機関を紹介してもらう流れが現実的です。

「迷ったら相談する」が原則です。受診して「大丈夫でした」となるのは、一番いい結末です。

きょうだい児の心の発達課題

「自分も病気かも」という訴えの背景には、きょうだい児ならではの心の発達課題があります。これを知っておくと、対応の優先順位が見えてきます。

罪悪感|自分は健康なのに、という後ろめたさ

「お兄ちゃんは病気でつらいのに、自分は学校に行けて、友達と笑っていていいのかな」。この罪悪感を抱えるきょうだい児は本当に多いです。家族の前では元気を見せられず、外でも「私だけ楽しくしていい資格があるのか」と迷う。これが慢性化すると、本人の幸福感そのものを蝕んでいきます。

親代わり化(ヤングケアラー化)のリスク

「私がしっかりしなきゃ」「お母さんを支えなきゃ」と、年齢以上の役割を引き受けてしまうきょうだい児は珍しくありません。家事を多く担う、上の子の世話をする、親の愚痴を聞く——本人の発達段階を超えた負荷がかかり、自分の進路や友人関係を犠牲にしてしまうことがあります。これがヤングケアラー化のリスクです。

自分の感情を言いにくい

家のなかで「病気の兄弟の感情」が常に最優先されると、きょうだい児は自分の感情を後回しにする癖がつきます。「お母さんを困らせたくない」「これくらい言わなくていい」と、自分のなかで処理しようとする。「自分も病気かも」という言葉は、その我慢が限界を超えたサインかもしれません。

友達に説明しにくい

「うちの兄ちゃん、病気でね」と友達に話せないきょうだい児は多いです。「変な目で見られたくない」「同情されたくない」——本人の中で複雑な感情があります。友達と「家族の話」をするのが辛い、と感じることも。

将来への不安

「親が亡くなった後、自分が兄弟の面倒を見ないといけないのかな」「結婚する時に、相手に説明しないといけないかな」——きょうだい児が抱える将来への不安は、想像以上に大きいです。

親ができるきょうだい児ケア5つ

① きょうだい児だけの時間をつくる

週に1回でも、月に1回でも構いません。「上の子のいない時間」「あなただけの時間」を意識的に作ってください。短くてもいい、特別なイベントじゃなくていい。一緒にコンビニに行くだけでも違います。

② 家族会議に巻き込みすぎない

上の子の治療方針や進路について、きょうだい児を「相談相手」にしすぎないことも大切です。意見を聞くこと自体は悪くありませんが、最終決定の責任を背負わせない。「お父さんとお母さんで決めるから、あなたは安心して」と伝えてあげてください。

③「あなたは病気じゃない」と言う前に「気持ちを聞かせて」

診断の有無を急がない。まずは話を聞くことを最優先にしてください。「あなたは病気じゃないよ」は、本人が話し終わったあとで構いません。順番が大事です。

④ きょうだい児が学校で言いたくない選択を尊重する

上の子の病気や不登校について、学校で話したくない、友達に知られたくない、というきょうだい児の気持ちは、必ず尊重してください。「隠すなんて」と思わないこと。これは本人にとって自分のアイデンティティを守るための大切な選択です。

⑤ 親自身がカウンセリングを受ける

これは意外と見落とされがちですが、親自身のメンタルが安定していると、きょうだい児への影響は劇的に変わります。一人で抱え込まず、オンラインカウンセリングや地域の保護者向け相談を活用してください。最近はスマホから手軽に始められるサービスも増えていて、夜間や子どもが寝たあとに相談できるのが助かります。親が「自分の話を聞いてもらえる場所」を持つこと自体が、家族全体の支えになります。

きょうだい児が「自分も病気かも」と言わない理由

多くのきょうだい児は、実は「自分も病気かも」と言いません。「言えない理由」を家族として知っておきましょう。

「親に心配かけたくない」

「お母さんは兄弟のことで大変なのに、自分が心配かけたら申し訳ない」——多くのきょうだい児が持つ気持ち。本人が言いやすい環境を、家族が意識的に作る必要があります。

「兄弟と比べたくない」

「兄弟は本当に病気で苦しんでいる。自分の悩みなんて小さい」と、自分の感情を矮小化。「あなたの悩みも大事」と、家族が伝え続ける。

「もう一度受診の準備をするのが負担」

家族が兄弟の通院で疲弊しているのを見て、「自分まで受診したら、家族の負担が増える」と気を遣う。「あなたの受診も大事」と、家族が積極的に。

「親がいないとき」しか言えない

「お父さんと二人きりの時」「友達と話している時」など、親がいない場面でしか本音を話せないきょうだい児も。家族で情報共有して、本人の本音を拾う体制を。

「言葉にならない不安」

「何が辛いか分からないけど、なんとなく辛い」——言葉にならない不安を抱えるきょうだい児も多い。家族が「気持ちを言葉にする練習」を一緒にする。

「自分なりの対処」をしている

本人なりに、ゲーム、SNS、読書、運動——自分なりの対処法を持っているきょうだい児も。健全な対処は応援しつつ、過度になっていないか見守る。


看護師としての一言|よく聴くと別の不安だったケース

※以下は架空のケースです。個人の特定を避けるため、複数の事例を組み合わせて構成しています。

中学2年生の妹さんが、摂食障害で入院していたお姉さんを心配しながら、ある日親御さんに「私も、もしかしたら摂食障害かもしれない」と言いました。親御さんはびくっとして、その日のうちに外来予約を取ろうとしました。でも、外来で本人とゆっくり話してみると、出てきたのは別の話だったのです。

「お姉ちゃんが入院してから、お母さんが家にいない日が増えて、私のごはんもコンビニばっかりで、太った気がする。でもお母さんは疲れてるから言えなくて、自分でカロリー調べたら止まらなくなった」。摂食障害というより、生活の変化と寂しさへの反応でした。親御さんと一緒に夕食を作る時間を週2回に決めただけで、その訴えは1か月で落ち着きました。

「自分も病気かも」の奥には、こうした「言えなかった本当の言葉」が潜んでいることが、本当によくあります。だからこそ、最初の一言を否定せず、丁寧にめくっていってあげてほしいのです。

病棟で見てきたきょうだい児の3ケース

守秘義務に配慮し一般化したケースとして、3つのパターンを紹介します。きょうだい児の世界を、現場の視点でお伝えします。

ケース1:「私もADHDかも」と訴えた中学生

兄がADHDで通院中の中学生のお子さま。「私も集中できなくて、ADHDかもしれない」と母親に訴えました。詳しく聞くと、テスト勉強で集中できないだけで、日常生活に支障はなし。「兄ばかり構われるのが寂しい」という気持ちが背景にありました。週1回、母親と二人で買い物に行く時間を作ったところ、訴えは消えていきました。

ケース2:本当に発達特性があった姉妹

妹がASD(自閉スペクトラム症)で通院中。「私も人付き合いが苦手」と訴えたお姉さん。詳しく聞いてみると、姉も実際に対人面の困難を抱えていました。発達検査の結果、姉もASD傾向があると判明。「家族で同じ特性を共有している」と理解できたことで、姉妹の絆が深まりました。

ケース3:ヤングケアラー化していた長女

母親がうつ病、弟が不登校で、家事と弟の世話を担っていた小学6年生のお姉さん。「私もうつかも」と訴えた時、本当はヤングケアラー化による疲弊が背景でした。社会福祉協議会のヤングケアラー支援につながり、家事支援を受けることで、お姉さんの心も少しずつ穏やかになっていきました。

きょうだい児の年齢別の特徴

きょうだい児の悩みは、年齢によって変化します。発達段階に応じた理解が、適切なサポートに繋がります。

幼児期(〜6歳)

「お兄ちゃん(お姉ちゃん)が病気」という意味がまだ理解できない時期。「なぜ自分だけお留守番なの」「親が忙しい」という寂しさを抱えやすい。年齢に応じたシンプルな説明と、たっぷりのスキンシップが大事。

小学校低学年(7〜9歳)

「病気」という言葉を理解し始める時期。「自分も病気になるのかな」と心配することも。学校で「お兄ちゃんは病気だよね」と聞かれて困ることも。家族で「学校での話し方」を一緒に考える。

小学校高学年(10〜12歳)

「家庭の状況」を客観的に理解できるようになる時期。「自分が我慢しなきゃ」と感じやすくなる。本人の感情を尊重し、「我慢しなくていい」というメッセージを伝える。

中学生

思春期で、自分のアイデンティティを問う時期。「自分も病気かも」「将来どうなるんだろう」という不安が顕在化。本人の自立を支えつつ、家族の繋がりを保つ。

高校生

進路選択、自立への準備期。「家を出るか」「兄弟のケアをどうするか」という具体的な悩みが出てくる。本人の選択を尊重しながら、家族の体制を一緒に考える。

大学生・成人期

本人の自立、結婚、出産——人生の節目で、きょうだい児としての悩みが再燃。「親亡き後の体制」「自分の家族計画」など、長期的な視点での話し合いが必要。


きょうだい児の心の発達を支える日常

きょうだい児の心の発達を支えるための、日常での工夫を共有します。特別なケアではなく、日常の関わりが何より大事です。

朝の時間に余裕を持つ

朝のバタバタした時間に、きょうだい児が「自分は後回し」と感じやすい。10分早く起きて、きょうだい児の朝食も丁寧に作る、声をかける。

夕食の時間を大切に

夕食は家族で揃って食べる、または親と二人で食べる時間に。「学校どうだった?」「今日何があった?」と、きょうだい児の話を聞く時間を作る。

寝る前の時間

寝る前の数分でも、きょうだい児と話す時間を。「今日もありがとう」「おやすみ」——日常の小さな積み重ねが、本人の安心感を育てます。

週末の家族時間

週末は、家族で楽しい時間を共有。映画、外食、散歩——きょうだい児が「家族の中で大切な存在」と感じられる時間を意識的に作る。

季節のイベントを大切に

誕生日、クリスマス、お正月——季節のイベントを、きょうだい児も主役になれる形で。「兄弟のためのイベント」ばかりにならないよう、家族全体のバランスを。

長期休暇の使い方

長期休暇は、きょうだい児にとって「親と過ごせる時間」が増えるチャンス。一緒に旅行、お出かけ——本人が楽しめる活動を計画。


父親の関わり方

きょうだい児のケアは、母親に集中しがち。父親の関わりも非常に重要です。

父親ときょうだい児の時間

母親が上の子のケアに時間を取られている分、父親がきょうだい児と過ごす時間を意識的に作る。一緒に趣味を共有する、出かける、話を聞く——父親ならではの関わり方を活かしましょう。

父親が「弱音を吐ける」モデルに

父親自身が「弱音を吐く」「助けを求める」姿を見せることで、きょうだい児も「困った時に話していい」と感じられます。「父さんも今日疲れたよ」と素直に言える関係が大事。

母親をサポート

母親が疲れている時、父親がきょうだい児のケアを担う。「お母さんは今日疲れているから、お父さんとお出かけしよう」と、母親に休息を与える役割も大事。

父親もきょうだい児支援を学ぶ

父親自身も、きょうだい児支援について学ぶ。書籍を読む、家族会に参加する——夫婦で同じ知識を持つことで、家族全体のサポートの質が上がります。

家族構成によって変わるきょうだい児の悩み

家族構成によって、きょうだい児の悩みは変わります。それぞれの状況に応じた配慮が大事です。

長子(上の子)が病気の場合

「お兄ちゃん(お姉ちゃん)の方が病気なのに、自分が頼られる」という独特の感覚。年下なのに上の子の世話をする「役割逆転」が起きやすい。本人の年齢に応じた役割に戻れる時間を確保。

末子(下の子)が病気の場合

「お兄ちゃん(お姉ちゃん)として自分がしっかりしなきゃ」という重圧。「年上だから我慢」と扱われがち。本人にも甘える時間を確保する必要があります。

中間子のケース

3人以上の兄弟で、真ん中の子が健康なきょうだい児の場合、特に注意が必要。上下の兄弟に挟まれて、存在感が薄くなりがち。意識的に「あなた」に焦点を当てる時間を作る。

双子・年子のケース

双子や年子の片方が病気で、もう片方が健康な場合、本人の苦しみは特に深い場合があります。「同じように生まれたのに、なぜ自分だけ健康」という複雑な感情。専門家のサポートも検討。

一人っ子のような立場

病気の兄弟が長期入院している場合、健康な子が「一人っ子のような立場」になることも。寂しさを抱えながら、家族の負担も感じる複雑な状況。

複数の兄弟が病気の場合

兄弟のうち複数が病気で、健康なきょうだい児が一人だけ——という家庭もあります。健康な子の負担が大きく、社会的支援が特に必要なケース。


学校との連携

きょうだい児が抱える悩みは、学校生活にも影響します。学校との連携を考えていきましょう。

担任への情報共有(本人の同意のもと)

必要に応じて、きょうだい児の担任に「家庭で兄弟が病気で、本人にも影響が出ているかもしれない」と伝える。ただし、本人の同意を得てから。本人が「学校では言いたくない」と希望する場合は、その気持ちを尊重。

スクールカウンセラーの活用

きょうだい児自身がスクールカウンセラーに話を聞いてもらえる体制を作る。家族以外で話せる相手がいることが、本人の心の支えになります。

勉強・進路への配慮

家庭の状況が勉強や進路選択に影響することも。学校に必要な配慮を求める。「家庭の事情で塾に通えない」「家で勉強する時間が取りにくい」——伝えることで、対応してもらえることもあります。

養護教諭との連携

養護教諭はきょうだい児の体調変化に気づきやすい存在。家庭の状況を共有しておくことで、本人の見守りができます。

きょうだい児への声かけ集

きょうだい児に対する家族の声かけは、本人の自己肯定感に大きく影響します。OKとNGの例を整理しました。

NGな声かけ

  • 「あなたまで具合悪くなったら困る」
  • 「お兄ちゃん大変なんだから、あなたはしっかり」
  • 「あなたは健康なんだから幸せでしょ」
  • 「気のせい、考えすぎ」
  • 「お母さん忙しいから、後でね」(何度も)

OKな声かけ

  • 「教えてくれてありがとう」
  • 「もう少し聞かせて」
  • 「あなたの気持ちが大事」
  • 「一緒に考えていこう」
  • 「あなたもしんどい時はちゃんと言ってね」

毎日伝えたい言葉

「ありがとう」「大好き」「あなたがいてくれて嬉しい」——日々の中で、きょうだい児への愛情を言葉にして伝える。「お兄ちゃんが大変な中で頑張ってくれているあなたが、本当に大事」というメッセージを忘れずに。

きょうだい児の支援団体・サポート資源

きょうだい児支援に活用できる団体・資源があります。一人で抱え込まず、社会資源を活用しましょう。

シブリングサポーター

きょうだい児を支援する民間団体。きょうだい児同士が交流できるイベントを開催。同じ立場の仲間に出会える場として有効です。

地域の家族会

精神疾患・障害のある子を持つ家族会では、きょうだい児支援の活動も。家族会に参加することで、きょうだい児も同じ立場の仲間に出会えます。

SNSのコミュニティ

Twitter、Facebookなどで「#きょうだい児」「#ヤングケアラー」と検索すると、同じ立場の人と繋がれます。地理的な制約なく、共感し合える場として活用。

ヤングケアラー支援

2024年以降、ヤングケアラー支援が法的に強化されています。市区町村のヤングケアラー支援窓口で相談を。家事支援、学習支援などのサービスが受けられる可能性があります。

NPO法人

「日本ケアラー連盟」「シブリング・ジャパン」など、ケアラー・きょうだい児支援を行うNPO法人があります。情報提供、講演会、相談などを行っています。

きょうだい児への「ありがとう」を伝える

きょうだい児に対して、家族が「ありがとう」を伝える機会を意識的に作っていきましょう。本人は「自分は家族の中で目立たない」と感じやすいので、感謝の言葉が大きな救いになります。

具体的な「ありがとう」

「お兄ちゃんのお薬を出してくれてありがとう」「夕食の準備を手伝ってくれてありがとう」「学校で頑張ってくれてありがとう」——具体的な行動への感謝を、毎日のように伝える。

「あなたがいてくれて助かる」

「あなたが家にいてくれるから、お母さんも頑張れる」「あなたの存在が、家族の支えになっている」——本人の存在そのものへの感謝を、繰り返し伝える。

誕生日・特別な日を大切に

きょうだい児の誕生日、節目の日は特に大切に。「あなたの日」をしっかりお祝いする。「兄弟の病気で、自分の誕生日が忘れられた」と感じさせないように。

「あなたは大事」を毎日伝える

「お兄ちゃんもあなたも、どちらも大事」「健康だからって、後回しにしないよ」——本人の存在を全肯定するメッセージを、繰り返し伝える。

手紙やLINEで残す

言葉だけでなく、手紙やLINEで「ありがとう」を残す。本人がいつでも振り返れる宝物になります。

「あなたがいてくれてよかった」

「あなたが生まれてきてくれてよかった」「あなたと家族でよかった」と、改めて伝える。本人の存在の意味を、しっかり言葉にする。


大人になったきょうだい児の声

きょうだい児として大人になった方々の声から、家族として大事にしたい姿勢を学べます。

「自分の人生を生きていい」

「兄弟のために自分の人生を犠牲にする必要はないと、大人になって気づいた」「もっと自分のことを優先してもよかった」——多くのきょうだい児が振り返る言葉。

「親に話せてよかった」

「親が話を聞いてくれたから、寂しさを乗り越えられた」「親の前で自分の気持ちを話せる関係があった」——親との関係が、きょうだい児の人生を支えます。

「兄弟との関係は変化する」

「子どもの頃は複雑な気持ちだったけど、大人になって兄弟との関係が変わった」「兄弟だからこそ深い絆になることもある」——時間の経過とともに変わる関係性。

「結婚・出産での葛藤」

「自分の子どもにも遺伝するかもと不安」「結婚相手にどう説明するか悩んだ」——大人になっても続く独特の悩み。

「同じ経験者と繋がれた」

「きょうだい児支援団体に参加して、初めて『分かってもらえた』と感じた」「自分だけじゃないと知れた」——仲間との繋がりが救いに。

きょうだい児の「アイデンティティ形成」

きょうだい児は、独特のアイデンティティ形成のプロセスを経験します。家族として知っておきたい背景を共有します。

「兄弟と自分」の比較

兄弟と自分を比較する中で、「自分は何者か」を考える。「兄弟は病気、自分は健康」という比較から、自分の役割を見出していきます。

「家族の中での自分」

「家族の中で、自分はどんな役割か」を意識する。「健康な子」「親を支える子」「我慢する子」——様々な役割を引き受けがち。本人らしい役割を見つけられるよう支援を。

「社会の中での自分」

学校、友達、社会——家族以外での自分を確立していくプロセスも大事。家族の事情に縛られず、本人らしい社会的アイデンティティを築けるよう、支える。

「将来の自分」

「自分はどうなりたいか」「どんな人生を送りたいか」——将来の自分像を描く時期。兄弟のことに縛られず、本人の夢を応援する。

「家族と社会の橋渡し」

きょうだい児は、家族と社会の橋渡しの役割を担うことも。「兄弟のことを社会に伝える」「社会で得た情報を家族に持ち帰る」——重要な役割。

「自分らしさ」を大事に

「兄弟のため」だけでなく、「自分らしさ」を大事にする。本人の趣味、興味、特技——本人だけの「個性」を家族で認め、育てる。


きょうだい児の進路選択

きょうだい児が進路選択をする時、独特の葛藤があります。家族として知っておきたい配慮を共有します。

「家を出る」ことへの罪悪感

進学・就職で家を出ることに罪悪感を感じるきょうだい児もいます。「自分が家を出たら、誰が兄弟をサポートするのか」——本人の人生を大事にしながら、家族で話し合いを。

「家から通える進学先」を選びがち

「親を一人にしたくない」と、家から通える進学先を選ぶきょうだい児が多いです。本人の希望と家庭状況のバランスを、丁寧に話し合う。

医療・福祉系を選ぶケース

きょうだい児の中には、看護師、心理士、ソーシャルワーカーなど、医療・福祉系の道を選ぶ方も多くいます。家族の経験を活かす道として有意義です。

本人の希望を最優先に

進路は本人の人生。家族の事情で本人の希望を制限しないこと。「あなたの人生を一番大事にしていいんだよ」と伝えてあげる。

経済面のサポート

兄弟の治療費がかかる中、きょうだい児の進学費用も大事。奨学金、教育ローンなど、利用できる制度を活用。「家族の事情で進学を諦める」を防ぐ。

きょうだい児が抱える「将来の不安」

きょうだい児は、独特の「将来の不安」を抱えています。家族として、その不安に寄り添う姿勢が大事です。

「親亡き後」の不安

「親が亡くなった後、兄弟の面倒は自分が見るのか」という不安は、きょうだい児が抱える最大級の悩みの一つです。家族で「将来の体制」について話し合っておくことが、本人の安心感に繋がります。

結婚・パートナーシップへの不安

「結婚相手に兄弟のことをどう伝えるか」「相手の親に受け入れてもらえるか」——きょうだい児の結婚にも、独特の葛藤があります。本人の選択を尊重しながら、サポートを。

自分の子どもへの遺伝の不安

「自分の子どもにも遺伝するかも」という不安。これは遺伝カウンセリングで相談できる項目です。必要なら、遺伝専門医に相談を。

家族の介護への不安

親の介護、兄弟のケア——大人になっても続く家族の責任。早めに家族で話し合い、社会資源の活用も検討。

「将来は安心」と伝える

「兄弟の将来は、社会福祉や成年後見人制度などで支える仕組みがある」「あなただけが背負わなくていい」——具体的な情報を家族で共有することで、きょうだい児の不安が和らぎます。

きょうだい児の友達関係

きょうだい児の友達関係には、独特の難しさがあります。家族として知っておきたい配慮を共有します。

友達への説明の難しさ

「お兄ちゃんが病気で」と友達に話せない、話したくない——きょうだい児の複雑な感情。本人の選択を尊重しながら、必要なら家族で「学校での話し方」を一緒に考える。

友達を家に呼びにくい

「家に友達を呼んだら、兄弟のことを知られる」と感じて、友達を呼びにくい。家族で「友達を呼べる時間帯」「呼べない時間帯」をルール化することも一案。

友達との時間が削られる

家のことで忙しく、友達と遊ぶ時間が取れない。これは本人の社会的発達に影響します。意識的に「友達と遊ぶ時間」を確保。

友達の前で「家族の話」をしたくない

友達同士で「家族の話」になると、本人だけ話せない感じることも。「言いたくない時は言わなくていい」と、本人の選択を尊重。

友達からの理解

本人が信頼できる友達には、家族のことを話す機会も。理解してくれる友達との繋がりが、本人の大きな支えになります。

「友達と家族」のバランス

家族のために友達との関係を犠牲にしないよう、家族でサポート。「友達との時間も大事」と、家族から伝える。


家族会議の進め方

家族の中できょうだい児の声を大事にするには、定期的な家族会議が有効です。進め方のヒントを共有します。

頻度の目安

月に1回、30分〜1時間の家族会議を持つのが理想。日常的な話題ではなく、家族全体の状況を話し合う時間。

きょうだい児も参加

きょうだい児も年齢に応じて参加させる。「家族の一員として大切にされている」感覚が、本人の自己肯定感に繋がります。

「あなたの今週」を聞く

家族会議で、必ずきょうだい児の「今週」を聞く時間を設ける。「学校はどう?」「友達と何があった?」——病気の兄弟だけでなく、きょうだい児の話題にも時間を割く。

意見を尊重

家族会議で出たきょうだい児の意見を尊重。「意見を聞いてもらえる」体験が、本人の自尊心を育てます。

「責任を負わせない」

家族会議で、きょうだい児に過剰な責任を負わせない。「最終決定は親がする」「あなたは安心して」と伝える。

きょうだい児の自己肯定感を育てる

きょうだい児の自己肯定感を育てることは、長期的な家族の課題です。具体的な関わり方を共有します。

「あなた個人」を認める

「お兄ちゃんの妹」ではなく「あなた個人」として認める。本人の名前を呼び、本人の個性を認める言葉を意識的に使う。

本人の得意分野を伸ばす

本人の得意分野、好きなことを応援。「兄弟のために」ではなく「自分のために」打ち込めるものを、家族で育てていく。

小さな成功体験を積み上げる

本人ができたこと、頑張ったことを、家族で一緒に喜ぶ。「家族の役に立った」だけでなく、「自分のために頑張った」体験を大事に。

「比較しない」

「兄弟と比べてどう」ではなく、「あなただけの成長」を見守る。比較は本人を追い詰めるだけ。

「失敗してもいい」

「いい子でいなきゃ」というプレッシャーから解放する。「失敗してもいいよ」「完璧じゃなくていい」という家族のメッセージが、本人の心を軽くします。

家族以外の支えを作る

家族以外の支え(先生、友達、習い事の指導者、家族会の仲間など)を意識的に作る。家族だけに頼らない関係性が、本人の自立を支えます。


よくある質問(FAQ)

Q1. きょうだい児にも検査を受けさせるべき?

A. 生活機能の低下があれば、検査を検討。「兄弟と同じ」と心配するレベルなら、まず話を聞くことから。

Q2. きょうだい児が「家を出たい」と言ったら?

A. 本人の希望を尊重。「家から出たい」気持ちは健全な自立の表れです。家族の事情で本人の人生を縛らないこと。

Q3. 兄弟同士の喧嘩はどうする?

A. 病気の兄弟をかばいすぎないこと。「病気だから許してあげて」は、きょうだい児を追い詰めます。両者の気持ちを公平に聞く。

Q4. きょうだい児のメンタルが心配

A. 早めにスクールカウンセラーや小児科に相談を。「病気の兄弟で精一杯」と思わず、きょうだい児にもしっかり目を向ける。

Q5. きょうだい児に病気のことをどう説明する?

A. 年齢に応じて、シンプルに説明。「兄弟は心の病気で困っている」「治療を受けている」——年齢に応じた説明を。

Q6. きょうだい児のサポート資源は?

A. シブリングサポーター、家族会、SNSコミュニティ、ヤングケアラー支援窓口など、様々な資源があります。

Q7. 友達に話せない時の対処は?

A. スクールカウンセラー、家族会のオンラインコミュニティ——家族・友達以外で話せる場を確保。

Q8. 進路選択をどう支える?

A. 本人の希望を最優先。「家族の事情で諦めて」と言わない。経済面のサポート、奨学金などを活用。

Q9. きょうだい児の「我慢」をどう見抜く?

A. 「いい子すぎる」「我慢が当然」と感じたら要注意。意識的に、本人の気持ちを聞く時間を作る。

Q10. 大人になったきょうだい児のサポート

A. 大人になっても、きょうだい児支援は続きます。「いつでも頼っていい」「あなたの人生を生きていい」というメッセージを継続的に。

きょうだい児が「自分も病気かも」と言わない時の見守り

きょうだい児が「自分も病気かも」と訴えてこない場合でも、家族として注意したいサインがあります。「言えない」きょうだい児への見守り方を共有します。

「いい子すぎる」サイン

「我慢が当然」「親に迷惑をかけない」——いい子すぎるきょうだい児は要注意。本人が自分の感情を抑え込んでいる可能性があります。

身体症状での表現

頭痛、腹痛、めまい、不眠——感情を言葉で表現できないきょうだい児は、身体症状として現れることがあります。「気のせい」と片付けず、医療機関にも相談を。

不登校・登校しぶり

「家族の心配をかけたくない」と、不登校・登校しぶりが出るきょうだい児も。家族の状況と関連している可能性も含めて、丁寧に話を聞く。

友達関係の変化

友達関係が変化した、急に一人で過ごす時間が増えた——きょうだい児の心の変化のサインかも。家族で気にかける。

成績の急変

成績が急に下がった、または急に上がった(過剰に頑張っている)——どちらも本人の心の状態を表すことがあります。

定期的な声かけ

本人が訴えなくても、定期的に「最近どう?」「困ってることない?」と聞いてあげる。きっかけを家族から作ってあげることが大事。


親自身のセルフケア

きょうだい児ケアは、親自身のケアと一体です。親が健康でいることが、家族全体の幸せに繋がります。

「親も完璧でなくていい」

「上の子も、きょうだい児も、完璧にケアできるわけがない」と認める。100点満点を目指さず、できる範囲で。

「親の自分時間」を確保

週に1回でも、自分のための時間を確保。読書、お茶、散歩、趣味——「自分のため」の時間が、心の余裕を生みます。

同じ立場の親と繋がる

家族会、SNSコミュニティで、同じ立場の親と繋がる。「自分だけじゃない」と知れる安心感が、心の支えに。

カウンセリングの活用

「同じ悩みを共有できる人がいない」時には、自宅から利用できるオンラインカウンセリング「cotree(コトリー)」のようなサービスを活用するのもおすすめです。

夫婦で話し合う時間

夫婦で家族の状況を話し合う時間を持つ。一方が抱え込まず、夫婦で支え合う体制を作る。

体の健康も大事に

長期戦でストレスが続くと、親の健康にも影響。定期的な健康診断、適度な運動、十分な睡眠——基本的な生活習慣を整える。

「きょうだい児だからこそ得たもの」を見つける

きょうだい児としての経験は、辛いことばかりではありません。「得たもの」にも目を向けることで、本人の人生がより豊かになります。

共感力の高さ

家族の中で病気の兄弟と関わることで、共感力が育つきょうだい児は多いです。「人の気持ちに寄り添える」のは、人生の大きな財産。

責任感・自立心

幼い頃から責任を担うことで、自立心が育つ。これは大人になってからの大きな強みになります。

多様性への理解

「人はみんな違う」「多様な生き方がある」と、自然に理解できる。多様性を尊重できる視点は、これからの社会で求められる力です。

医療・福祉への理解

医療・福祉制度への理解が深まる。社会的視点を持つきょうだい児は、将来様々な分野で活躍できます。

家族の絆の強さ

困難を一緒に乗り越える家族の絆は、何にも代えがたいものです。きょうだい児として過ごした時間は、家族の宝物になります。

「得たもの」を本人と共有する

「あなたのこの力は、きょうだい児だからこそ得たもの」と、本人に伝える。本人が自分の経験をポジティブに捉えられるよう、家族でサポート。


まとめ|きょうだい児の声を、家族の真ん中に置く

きょうだい児の「自分も病気かも」は、診断が必要なサインのこともあれば、もっと根本的な「私を見て」のサインのこともあります。どちらにしても、最初にやることは同じ。否定せず、聞くこと。そして、その子だけの時間を取り戻すこと。

上の子のケアで疲弊している親御さんに、もう一段階の負荷をお願いするようで申し訳ない気持ちもあります。でも、きょうだい児の不安に早めに気づけることは、家族全体を守ることにつながります。一人で抱え込まず、専門機関や周りの人を頼ってください。

きょうだい児は、家族の中で「健康だから大丈夫」と扱われがちな存在です。でも、健康であることと、ケアが必要ないことは違います。「私もここにいるよ」というきょうだい児の小さな声に、家族の真ん中に位置を確保してあげてください。

本人と、ご家族と、きょうだい児——みなさまの毎日が、少しずつ穏やかで温かいものになっていきますように。心から応援しています。

きょうだい児への家族のメッセージ

きょうだい児のみなさまへ、家族として伝えたいメッセージをまとめます。

「あなたの気持ちは大事」「あなたの人生はあなたのもの」「我慢しなくていい」「困った時は何でも話して」「いつでもあなたの味方」——これらの言葉を、機会あるごとに伝えてあげてください。きょうだい児は、家族の中で見過ごされがちな存在です。だからこそ、意識的に「あなたを見ているよ」というメッセージを発信し続けることが大事。

きょうだい児の声は、家族の幸せのバロメーターでもあります。きょうだい児が「自分も病気かも」と訴えてきた時、それは家族全体が立ち止まって、お互いを見つめ直すタイミングかもしれません。一人で抱え込まず、家族で、専門家で、社会全体で——きょうだい児を支えていきましょう。

本記事が、きょうだい児のいるご家族のみなさまの、心の支えになれば嬉しいです。これからも、現場で出会うご家族の声を、お届けし続けていきます。応援しています。

「きょうだい児だった私」の声を信じて

きょうだい児として育った大人の方々の声から学ぶことは、本当に多いです。「もっと話を聞いてほしかった」「自分も大事だと感じたかった」——彼らの声を、今のきょうだい児への関わりに活かしていきましょう。

長期的な視点で見守る

きょうだい児ケアは、子ども時代だけで終わるものではありません。大人になっても、結婚しても、出産しても——人生の節目で、きょうだい児としての悩みが再燃することがあります。長期的な視点で、家族として寄り添い続けることが大事。

「いつかきっと」を信じて

本人と家族の毎日が大変な時期も、必ず通り過ぎていきます。「いつかきっと、家族全員が穏やかに過ごせる日が来る」——その希望を、家族で持ち続けてください。

「家族の力」を信じる

困難を乗り越える家族の力は、想像以上に強いものです。「私たち家族なら、必ず乗り越えられる」——その信念が、本当の力を引き出します。

「過去の自分」を許す

「もっと早くきょうだい児に目を向けていればよかった」「あの時の対応が間違っていた」——過去を悔やむこともあるでしょう。でも、過去を悔やむより、今からできることに目を向けましょう。家族の歴史は、これからも続いていきます。

「家族の未来」を描く

「5年後、10年後、家族はどんな姿でいたいか」——未来のイメージを家族で共有することで、現在の困難を乗り越える力が湧いてきます。前向きな未来を、家族で描いていきましょう。

本人と家族の幸せを願って

本人、ご家族、きょうだい児——みなさまの毎日に、温かい光が満ちますように。家族の幸せを心から願って、私もこの場所から応援し続けます。

最後に

本記事をここまで読んでくださったご家族のみなさまへ。きょうだい児への愛情が、ここまで読み進める力になったのだと思います。あなたの想いは、必ずきょうだい児に届きます。きょうだい児への一言、一行動が、本人の人生を支える力になります。

家族の幸せは、家族みんなが大切にされてこそ。病気の兄弟もきょうだい児も、両親もみんな、それぞれの幸せを大事にしながら、家族の絆を深めていきましょう。一人で抱え込まず、社会全体の支援を活用しながら——温かい家族の未来を、一緒に作っていきましょう。最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

きょうだい児という立場は、見えにくい立場です。だからこそ、家族が意識的に「あなたを見ているよ」というメッセージを発信し続けることが、何より大事。きょうだい児の小さな声に耳を傾け、家族の真ん中に位置を確保してあげてください。あなたの一言が、本人の人生を変える力を持っています。これからも、きょうだい児支援の輪が広がっていくことを、心から願っています。応援しています。

看護師として、現場で出会ってきた多くのご家族の姿が、本記事を書く力になりました。みなさまの日々の頑張りに、心から敬意を表します。本人と、きょうだい児と、ご家族みなさまの毎日が、温かく満たされていきますように。

本記事を通じてご縁のあった、すべての方の幸せを、心から願って。

そして、もし本記事を読んで「うちもきょうだい児ケアを始めよう」と思っていただけたら、まず今日、きょうだい児の名前を呼んで、「あなたが大事」と一言伝えてみてください。それが、きょうだい児ケアの第一歩です。家族の中で目立たない存在になりがちなきょうだい児に、家族の真ん中の位置を取り戻してあげる——その小さな一歩が、家族全体を温かく包んでいきます。

みなさまのご家庭が、すべての家族メンバーにとって、安心できる場所でありますように。心からの願いを込めて。

きょうだい児への家族の関わりが少しでも温かくなり、本人の心が軽くなることを、心から願っています。本記事が、その一助となれば嬉しいです。これからも、家族で支え合いながら、進んでいきましょう。応援しています。看護師として、現場での経験を、これからも必要としているご家族にお届けし続けます。みなさまの幸せを、心から願って。本人と、ご家族と、ご縁のあったすべての方の毎日が、温かい光に包まれますように。家族の絆を、これからも大切に育てていってください。長く続く家族の旅路を、私もここから応援しています。最後まで読んでくださり、心から感謝します。みなさまの幸せを祈って。星野レンより。


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【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
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