データで見る子どもの自殺統計|親が知っておきたいサインと相談先(自殺予防週間に寄せて)

データで見る子どもの自殺統計のイメージ(やさしい水彩イラスト) 思春期うつ・メンタルケア

この記事の要点

  • 小中高生の自殺は増加傾向。統計を「地図」として冷静に読む
  • 夏休み明けの8月末〜9月初旬は例年リスクが高まる時期
  • 前兆が見えるケースも見えないケースもある。だから日常の観察が要
  • 気になるサインがあれば早めに相談窓口・専門機関へ
  • 迷ったら24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310へ

9月10日は「世界自殺予防デー」、そしてこの日から一週間は日本の「自殺予防週間」にあたります。この時期にこの記事を書くのは、恐怖を煽るためではありません。数字を知っておくと、いざというときに親が「動ける」からです。何も知らないまま漠然と不安を抱えるより、事実の輪郭をつかんでおいたほうが、お子さんの小さな変化に気づきやすくなります。

児童思春期精神科の病棟で子どもたちと関わってきて、私は「知っていれば防げたかもしれない」と悔やむ親御さんの姿を何度も見てきました。この記事は、統計を親目線でやさしく翻訳し、今日から使える見方と相談先をお伝えするものです。

まず、今すぐ役立つ相談先を先にお伝えします。お子さんの様子が心配なとき、あるいはお子さん自身が苦しいとき、以下はいつでも使えます。

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間・年中無休。いじめなど子どものSOS全般)
  • チャイルドライン:0120-99-7777(18歳まで対象。毎日16時〜21時、無料)
  • #いのちSOS:0120-061-338(24時間・365日。つらい気持ちを受け止める)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)

危険が差し迫っていると感じたときは、迷わず119番・110番を使ってください。番号を控えておくだけでも、いざというときの一手が変わります。

この記事の読み方——数字は脅しではなく「地図」

統計を見るときに大切なのは、数字に飲み込まれないことです。「○○人」という数を見ると胸がざわつくかもしれませんが、その一つひとつは、防ぎたかった命であり、支えたかった家族です。数字はセンセーショナルに消費するものではなく、「どこに気をつければいいか」を教えてくれる地図として読むと役に立ちます。

この記事では、方法や手段の詳細には一切触れません。国際的なガイドライン(WHO)でも、そうした情報や「楽になる」といった美化表現は、かえって危険を高めるとされているためです。ここでお伝えするのは、あくまで「時期」「傾向」「サインへの気づき方」「相談先」です。地図の見方だと思ってお読みください。

最新統計の全体像——小中高生の自殺者数はいま

厚生労働省・警察庁の「令和7年中における自殺の状況」の確定値によると、2025年(令和7年)の小中高生の自殺者数は538人でした。2024年の529人から9人増え、統計のある1980年以降で過去最多となっています。これは2025年1月〜12月の小学生・中学生・高校生を対象とする警察庁の自殺統計で、18歳以下全体や学校の年度別調査とは対象・期間が異なります(2026年10月4日確認)。

2025年の学校段階別の内訳は、小学生10人、中学生172人、高校生356人で、合計538人です(同資料、図表3-1)。高校生の割合が大きい一方、学校段階を問わず、気になる変化があれば相談につなぐことが大切です。

近年の総数は高い水準にあり、厚生労働省は2026年9月の自殺予防週間の発表でも、2025年の538人を過去最多として、深刻な状況が続いているとしています。ただし、この統計だけで増加の原因を特定したり、特定の環境との因果関係を断定したりすることはできません。

ここで大切なのは、「増えている=うちの子も危ない」と短絡しないことです。統計は全体の傾向を示すもので、目の前のお子さん一人ひとりの運命を決めるものではありません。ただ、社会全体でこれだけの子どもが追い詰められている——その事実を知っておくことが、親としての備えの出発点になります。

時期のリスク——なぜ「休み明け」が語られるのか

子どもの自殺には、時期的な偏りがあることが以前から指摘されています。18歳以下の自殺は、学校の長期休業が明ける時期にかけて増える傾向があり、とりわけ夏休み明けの9月初旬に多いというデータがあります。文部科学省も毎年、夏休み明けを前に「自殺予防に特に取り組むよう」全国の学校へ通知を出しています(出典:文部科学省「児童生徒の自殺予防に係る取組について」通知)。

なぜ休み明けなのか。はっきりと単一の原因が特定されているわけではありませんが、現場感覚として理解できる部分があります。長い休みのあいだは、学校での人間関係やプレッシャーからいったん離れられます。その解放された状態から、また「あの場所」へ戻らなければならないという現実が近づくと、不安が一気に高まる子がいます。「明日からまた始まる」という感覚が、大人の想像以上に重くのしかかることがあるのです。

自殺予防週間を、日ごろの見守りや相談先を確かめる機会にしたいと考えています。8月末から9月初旬は、親が意識してお子さんの様子に目を向けたい時期だと、多くの専門機関が口をそろえて伝えています。逆に言えば、「この時期は注意」と知っているだけで、いつもより一言多く声をかけられるようになります。

ただし、これは「9月だけ気をつければいい」という意味ではありません。時期の傾向はあくまで確率の話で、苦しさは一年中、どの日にも起こりえます。休み明けを一つの目印にしつつ、日常の観察を絶やさないことが本筋です。

病棟でも、長期休みが明ける時期は入院が目に見えて増えます。ただ、意外に思われるかもしれませんが、8月下旬に病棟の空気が張りつめる、という感じはあまりありません。入院中の子が日中に通うのは病棟内の学級で、在籍している学校とは環境が違うからだと思います。「夏休みが終わる」ことについても、「また勉強か」という程度の受け止めで話している子が多い印象です。

つまり休み明けの負荷は、病棟の中で目に見えて現れるというより、学校や家庭で抱えきれなくなった結果が、入院というかたちで現れる——そういう順序で見えてきます。外来の受診がどれくらい増えているかまでは病棟からは分かりませんが、入院が増えることははっきりしています。

原因・動機の内訳を読む

2025年の小中高生について、警察庁の自殺統計に記録された原因・動機は、「学校問題」251件、「健康問題」174件、「家庭問題」147件でした(同資料、図表3-4)。一人について複数の原因・動機が計上されるため、合計は自殺者数とは一致しません。把握された背景の分類であり、一つの原因を確定するものではありません。

「学校問題」と聞くと、いじめを真っ先に思い浮かべるかもしれません。もちろんいじめも含まれますが、この分類には進路の悩み、学業不振、教員や友人との関係、部活動のプレッシャーなど、学校生活にまつわるさまざまな要素が入ります。子どもにとって学校は生活のほとんどを占める世界です。そこでのつまずきは、大人が転職や退職で悩むのと同じ、あるいはそれ以上の重さを持ちます。

「健康問題」には精神疾患などの項目も含まれますが、この分類だけで個々の子どもの状態は判断できません。学校・家庭・健康など複数の背景に目を向け、心配な変化があれば専門家に相談するための手がかりとして読みたいと思います。

ここから親が読み取れることがあります。「学校で何かあっていないか」と「心が疲れていないか」——この二つは、日ごろから目を向けておきたい領域です。子どもの世界の中心にある二つの領域を気にかけるだけでも、気づける変化はあります。

ただ、現場の実感を正直に書くと、つらくなった理由を自分の言葉で説明できる子はほとんどいません。聞いても「なんとなく」「んー、分かんない」という答えが返ってくるのがふつうです。隠しているというより、言葉にすること自体が難しいのだと思います。

ですから病棟での仕事は、本人に語らせることではありません。環境や背景から原因を予測して、一つずつ確かめ、取り除いて、また戻していく——その繰り返しです。そのうえで、分かってきたことを少しずつ本人にも気づいてもらい、生活に戻れるところまで持っていきます。統計の3つの分類にきれいに収まる子はむしろ少なく、どれにも当てはまらないことのほうが多いのですが、その子が置かれてきた状況を並べていくと、見当がついてくることは少なくありません。

ご家庭でも同じことが言えます。「どうしてつらいの」と聞いて答えが返ってこないのは、親子の関係が悪いからではありません。答えられないほうがふつうです。理由を言わせようとするより、いつ・どこで・何をしているときに調子が落ちるのか、そばにいる人が気づいたことを覚えておく。そのほうが、結果的に近道になることが多いと感じています。

「前兆が見えない」ことの意味

統計や事例を追っていくと、二つのパターンが見えてきます。あとから振り返れば「あのサインがそうだったのか」と気づけたケースと、周囲がまったく気づけなかった、あるいは気づけないように見えたケースです。この両方が存在することが、この問題のいちばん難しいところです。

「前兆が見えなかった」場合、親御さんは自分を強く責めがちです。けれど、思春期の子どもは苦しさを隠すのがとても上手になります。心配をかけたくない、情けないと思われたくない、そもそも自分の気持ちをうまく言葉にできない——さまざまな理由で、いちばんつらいことほど言わずに抱え込みます。だから「見えなかった」のは、親の愛情や注意が足りなかったからではありません。

病棟でも、昼間はにこやかに話していた子が、消灯後に眠れずにいることがあります。診察室で1時間ほど話を聞き、泣いたあとで自分のベッドに戻って眠る——そういう夜があります。日中に見えていた姿と、その夜に出てきた姿は、どちらもその子です。

入院してくる子は、しばらくのあいだ「よそゆきの顔」でいることが多く、それが外れるまでに1週間ほどの子もいれば、3か月かかる子もいます。外れたときに出てくるものが、家族が見逃していたサインであることは少なくありません。ただし出方は子どもによって違います。言葉で出る子、態度で出る子、行動で出る子——同じ形にはなりません。

親御さんから「気づけなかった」と言われたとき、私がお伝えしているのは、気づけなかったこと自体は問題ではない、ということです。大事なのは、気づいたあとにどう動くかのほうです。

※本記事に登場するエピソードは、個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化しています。

この事実が教えてくれるのは、「サインを見逃すな」というプレッシャーではありません。むしろ逆で、「見えないこともあるからこそ、日ごろの土台づくりが大切」ということです。何かあったとき、子どもが「この人になら言える」と思える関係を平時から少しずつ育てておく。それが、見えにくいサインを補う最大の備えになります。

家庭で気づけるサイン

専門機関では、注意したい変化がいくつか整理されています。ただし、どれか一つがあれば危険という単純なものではありません。「いつものその子」と比べて、複数の変化が重なっていないか、という視点で見るのが実践的です。

  • 眠れない、あるいは眠りすぎる。食欲が急に落ちる・増える
  • これまで好きだったことに興味を示さなくなる
  • 口数が減る、または急にイライラして当たりが強くなる
  • 「消えたい」「いなくなりたい」など否定的な言葉が増える
  • 身の回りの物を人にあげる、大切にしていた物を手放す
  • 成績や生活リズムが急に大きく崩れる
  • 体の不調(頭痛・腹痛)を頻繁に訴えるが、休むと少し楽になる

大事なのは「変化」と「持続」です。一日だけ元気がないのは誰にでもあります。けれど、いつものその子らしさが数日〜数週間にわたって失われている、複数のサインが同時に見える——そんなときは、心のエネルギーが枯れかけているサインかもしれません。

ここで一つ大切な線引きを。これらのサインは「危険度を測るチェックリスト」ではなく、「専門家に相談する材料」です。気になるサインがあれば、親だけで抱えて判断しようとせず、スクールカウンセラーや医療機関、相談窓口へつないでください。診断や治療の判断は必ず医師に委ねるのが安全です。

聴き方の基本——TALKの原則

いざお子さんの様子が心配になったとき、どう声をかけ、どう聴けばいいのか。自殺予防の分野で広く知られている「TALKの原則」という考え方が、親にとっても道しるべになります。四つの頭文字で覚えるものです。

Tell——心配していると言葉で伝える

「最近元気がないように見えて、心配しているよ」と、あなたを気にかけているという事実をはっきり言葉にします。遠回しな探りではなく、まっすぐな心配は子どもに安心を与えます。

Ask——つらさについて率直に尋ねる

「死にたいと思うくらいつらいの?」と尋ねることを、多くの親はためらいます。「口にしたら誘発してしまうのでは」と怖くなるからです。しかし、正面から尋ねることが引き金になるという証拠はなく、むしろ「気持ちを話していいんだ」という許可になると考えられています。落ち着いて、率直に聞いてよいのです。

Listen——評価せずに聴く

いちばん難しく、いちばん大切なのがこれです。「そんなことで」「気の持ちよう」「もっと頑張れば」——励ましのつもりの言葉が、子どもの口を閉ざしてしまうことがあります。まずはさえぎらず、否定せず、最後まで聴く。解決策を急いで出すより、「あなたの気持ちを受け取ったよ」という姿勢が、その場でいちばん効く支えになります。

Keep safe——安全を確保し、つなぐ

危険が高いと感じたら、子どもを一人にせず、専門機関や相談窓口へつなぎます。親一人で背負い込まないことも「安全の確保」の一部です。抱えきれない重さは、専門家と分け合ってよいのです。

この四つは、完璧にこなす必要はありません。「心配している」と伝え、話をさえぎらずに聴く。それだけでも、子どもにとっては「一人じゃない」という大きなメッセージになります。聴き方のより具体的な言葉かけは、関連記事でも詳しくお伝えしています。

相談窓口一覧(再掲)

最後に、いつでも頼れる相談先をあらためてまとめます。スマホのメモや冷蔵庫に控えておくと、いざというとき慌てずに済みます。番号を「知っている」だけで、動き出すまでの時間が短くなります。

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間・年中無休。いじめなど子どものSOS全般)
  • チャイルドライン:0120-99-7777(18歳まで対象。毎日16時〜21時、無料)
  • #いのちSOS:0120-061-338(24時間・365日)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(曜日・時間は都道府県により異なる)

これらの電話がつながりにくいときや、声を出して話すのがつらいときは、SNSやチャットで相談できる窓口もあります。厚生労働省の「まもろうよ こころ」のサイトに、電話・SNSの窓口がまとまっています。子ども本人が使えるのはもちろん、親御さんが「この状況、どう動けばいい?」と相談するのにも使えます。

危険が差し迫っていると感じたら、ためらわず119番・110番へ。命を守ることが最優先です。相談することは、決して大げさでも恥ずかしいことでもありません。

今夜これだけ

相談窓口の番号(まずは24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310)を、スマホのメモか冷蔵庫の見える場所に一つ控えておきましょう。使わずに済むのがいちばんですが、控えておくだけで、いざというときの一手が変わります。

看護師視点でのまとめ

児童思春期精神科の病棟で子どもたちと向き合ってきて、統計の数字の向こうにいるのは、いつも「普通の子」だったと感じます。特別に問題を抱えていた子だけが追い詰められるのではありません。真面目で、優しくて、周りに気を遣える子ほど、苦しさを一人で抱え込んでしまうことがあります。

この記事の数字は、脅すためのものではなく地図です。「休み明けは注意」「学校・家庭・健康など複数の背景に目を配る」「見えないサインもあるから日ごろの関係が大切」「気になったら専門家へ」——この四つを心の隅に置いておくだけで、親のまなざしは確実に変わります。

そして、どうか一人で抱え込まないでください。子どもを支えるのは親だけの仕事ではありません。学校にも、医療機関にも、相談窓口にも、力を貸してくれる人がいます。父親として、そして看護師として、私が伝えたいのはただ一つ。「知っていれば、動ける」。この記事が、そのための小さな地図になればと願っています。

気になるサインがあれば、迷わず専門機関や相談窓口へ。診断や治療の判断は必ず医師に委ねてください。あなたが「心配だ」と思ったその感覚を、どうか大切にしてください。


参考にした公的情報・一次情報

制度・相談先・健康情報は2026年8月15日に確認した以下の資料を参考にしています。自殺統計は2026年10月4日に令和7年の確定資料と自殺予防週間の発表で更新しました。制度の運用や個別の医療判断は、学校・自治体・医療機関などへご確認ください。

関連記事

【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

🌙 つらいとき、ひとりで抱えないでください
お子さん本人も、親御さんも使える相談窓口です(無料・匿名OK)。
・#いのちSOS:0120-061-338(24時間365日)
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
・24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
・チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(毎日16〜21時)
・児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
思春期うつ・メンタルケア
星野レンをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました