児童精神科の受診方法と、受診前に知っておきたいこと【精神科看護師が解説】

診察室で医師がパソコンを見ながら説明し、小さな子を膝に抱いた母親が向かい合って聞いている。児童精神科の受診場面のイメージ 学校・病院への相談の仕方

この記事の要点

  • 迷ったらまずかかりつけの小児科へ。紹介状も書いてもらえる
  • 初診は1〜3か月待ちが普通。先に予約だけ取っておく
  • 「死にたい」自傷・強い拒食があるときは待たずに直接受診
  • 親だけで相談してもよい。本人が来られなくても始められる
  • 受診はゴールではなく、長く付き合う関係の入口

子どもの様子が気になるけれど、精神科に連れて行くほどなのか分からない。そう迷ったまま数か月、あるいは数年が過ぎているご家庭は少なくありません。

児童思春期精神科の病棟で働く看護師の星野レンです。2018年4月から看護師として勤務し(2か月のブランクあり)、2021年4月から児童思春期精神科病棟で。この記事では、受診先の選び方から予約の電話、初診で起きること、その後の通院までを、現場で見てきた順番どおりに整理しました。読み終えたときに「次に何をすればいいか」が分かる形にしています。

まず小児科か、児童精神科か

迷ったら、まずかかりつけの小児科に相談してください。これは現場で何度もお伝えしてきた最初の答えです。

理由は二つあります。ひとつは、体の病気を先に確かめておけること。朝の頭痛や腹痛、食欲の低下は、心の負担から来ることもありますが、身体の病気が隠れていることもあります。もうひとつは、小児科の医師が地域の児童精神科の事情を知っていることです。どこが混んでいるか、何歳から診てもらえるか、紹介状が要るか。こうした情報は外から探すより早く手に入ります。

かかりつけの小児科がない場合は、自治体の保健センター、発達障害者支援センター、教育委員会の教育相談室も入口になります。医療機関を決める前に話を聞いてもらえる場所が地域に複数あることを知っておくと、動きやすくなります。

先に確認してください|待たずに相談する場合

次のいずれかがあるときは、順番を踏むより先に児童精神科への直接受診を検討してください。緊急性が高いと判断されれば、通常より早く初診の枠を用意してくれる医療機関もあります。傷が深い、出血が止まらない、意識がもうろうとしているなど命の危険を感じるときは、迷わず119番です。

  • 「死にたい」「消えたい」と口にする
  • 自傷行為がある
  • 強い拒食・過食、急激な体重の減少がある
  • 登校の時間になると過呼吸を起こす
  • 夜間の不眠が続いている
  • 幻覚・幻聴を訴える

すぐに話を聞いてもらえる窓口です。

  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
  • いのちの電話(フリーダイヤル):0120-783-556(毎日16〜21時、毎月10日は8時〜翌朝8時・無料)/ナビダイヤル:0570-783-556(10〜22時)
  • チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(16〜21時・無料)
  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの公的窓口につながります)

受診先の選び方をもう少し詳しく知りたい方は、児童精神科と小児科の判断基準をまとめた記事もあわせてご覧ください。

児童精神科で診るのは、どんな相談か

「精神科」と聞くと重い病気を思い浮かべる方もいますが、外来で実際に多いのは、もっと身近な相談です。

  • 発達の特性に関するもの(ADHD・ASD・LD、発達の遅れの評価)
  • 情緒に関するもの(うつ状態、不安症、分離不安、強迫症)
  • 行動に関するもの(かんしゃく、暴言・暴力、盗り・嘘)
  • 思春期に特有のもの(自傷、摂食障害、不登校、昼夜逆転)
  • 体に出る不調(朝の頭痛・腹痛、起立性調節障害の疑い)

診断名をつけるためだけの場所ではありません。「いま何が起きているのか」を専門家と一緒に見る場所だと考えてください。診断がつかないまま、経過を見ていくケースもたくさんあります。

受診をためらう気持ちについて

受診を決めるまでに時間がかかるのは、判断が甘いからではありません。よく聞く四つのためらいについて、現場の視点からお答えします。

「精神科に連れて行くのはかわいそう」

実際に来てみた子どもの多くは、拍子抜けするほど普通の外来だったと言います。話を聞いてもらえる場所ができることのほうが、本人にとっては安心につながることが多いものです。

「診断がレッテルになる」

診断は本人を分類するための札ではなく、支援を組み立てるための説明です。学校に配慮を求めるときの根拠にもなり、「あなたのせいではない」と伝える材料にもなります。原因が分からないまま責められ続ける時間のほうが、子どもの自己評価を削っていきます。

「周囲に知られたくない」

医療機関には守秘義務があり、受診したことが学校へ自動的に伝わることはありません。学校と情報を共有するかどうかは、ご家庭が決められます。共有したほうが支援が進む場面もありますので、その判断は医師と相談しながら決めていけます。

「自分の育て方が悪かったのでは」

受診に至る子どもの背景は、生まれ持った特性、体の状態、学校や家庭の環境が複雑に重なっています。育て方の一点で決まるものではありません。むしろ受診に踏み出せたことのほうが、はるかに大きな行動です。

現場の実感をひとつ添えます。「もっと早く来ていれば」と振り返るご家族は多くいますが、「早く来すぎた」と言うご家族にはほとんど出会いません。迷っている段階で相談に来ても、それは早すぎることにはなりません。

受診先の探し方

探し方には順番があります。上から試すのが、いちばん確実です。

  • かかりつけの小児科に紹介を依頼する(もっともスムーズ)
  • 自治体のホームページや医師会のリストで地域の医療機関を調べる
  • 学校のスクールカウンセラーや養護教諭に、地域の情報を聞く
  • 自治体の保健センター・発達障害者支援センターに相談する

候補が出たら、次の四点を確認してください。対応している年齢(医療機関によって上限・下限が違います)、初診の空き状況通える距離(月に何度も通う前提で考えます)、そして第一候補が取れなかったときの代替です。

通院は数か月から数年続くことがあります。評判のよさより、続けて通える距離かどうかを優先してよいと思います。

紹介状は必要か

大きな病院の児童精神科では、紹介状(診療情報提供書)を求められることが多くあります。個人のクリニックでは不要なことも多いですが、扱いは施設ごとに違うため、予約の電話で確認するのが確実です。

紹介状は、かかりつけの小児科で書いてもらえます。あると初診の待ち時間が短くなる施設もありますし、これまでの経過が医師に正確に伝わるという利点もあります。

予約の電話で聞かれること

最初の電話が、いちばん重く感じられる場面かもしれません。受話器を持ったまま何を言えばいいか分からず、切ってしまったという話も何度も聞きました。

聞かれることは、たいてい決まっています。

  • 子どもの年齢・学年
  • 困っていることの内容(簡潔に)
  • いつからその状態か
  • これまでの受診歴
  • 紹介状の有無
  • 希望する日時(候補を三つほど)

難しい説明は求められません。「中学一年の子どものことで相談したいのですが」から始めれば、あとは向こうが順番に聞いてくれます。メモを見ながら答えて構いません。電話を受ける方も、こうした相談を日々受けているプロです。

電話の台本をもっと具体的に用意しておきたい方は、予約電話で聞かれることをまとめた記事をそのまま下書きとして使ってください。

予約は1〜3か月待ちが普通

児童精神科は全国的に医師が足りず、初診まで1〜3か月待ちになることは珍しくありません。都市部の人気のある医院や大学病院系では、半年以上の待機も見られます。

ここで大切なのは、「まだそこまでではないかも」と思っている段階で予約だけ取ってしまうことです。予約はキャンセルできますが、順番は買い戻せません。待っているあいだに状態が落ち着けば、それは良い知らせとして受け取ればよいのです。

待機中に状態が急に悪くなった場合は、その医療機関に「キャンセル待ちで早く診てもらえないか」と相談してください。救急医療機関を頼るという選択肢もあります。

初診までの待ち時間にできること

待ち時間は、準備の期間として使えます。何もせずに不安なまま過ごすより、次の五つを進めておくと初診が変わります。

① 困りごとの記録をつける

起きた時刻、学校へ行けたかどうか、体の症状が出た時間帯。この三つを一行ずつ書くだけで十分です。「いつからですか」と聞かれたとき、記憶だけで答えるのは想像以上に難しいものです。二週間分の記録があるだけで、医師の見立ての土台がしっかりします。

② 生育の経過をまとめる

初診では、子どものこれまでの育ちについても聞かれます。母子健康手帳を見ながら、思い出せる範囲で書き出しておくと安心です。

  • 出産時の様子(早産・難産など)
  • 言葉を話し始めた時期、歩き始めた時期
  • 困りごとが始まった時期と、思い当たるきっかけ
  • 学校での様子(担任から聞いておくと確実)
  • 睡眠と食欲の状態
  • 家族構成、家族の精神科の既往(言いにくければ医師に直接でも)
  • これまでの相談歴(小児科、スクールカウンセラーなど)
  • いま飲んでいる薬・サプリメント

③ 本人への伝え方を決める

年齢によって言い方を変えます。幼児から小学校低学年なら「お話ししに行こう」「優しい先生がいるよ」で十分です。小学校高学年なら「体と気持ちの調子を見てもらいに行こう」。中学生以上には、隠さず正直に伝えたほうが関係を損ねません。「専門家に話を聞いてもらいに行く」という言い方が、抵抗を生みにくいと感じています。

「病院」「精神科」という言葉に強く反応する子には、その語を使わずに説明して構いません。ただし、当日になって初めて知らされると裏切られたと感じますので、行く場所は事前に伝えてください。

④ 拒否されたときの備えをしておく

本人が行かないと言った場合、無理に連れて行かなくて構いません。保護者だけで相談に行くことができます。親だけの相談から始めて、数か月後に本人が来られるようになるケースはよくあります。

⑤ 待っているあいだに使える窓口を確保する

学校のスクールカウンセラーは比較的早く会えます。自治体の教育相談室や子ども家庭支援センターも利用できます。医療機関の初診を待つあいだ、別の窓口で話を聞いてもらうことは何の妨げにもなりません。

初診で起きること

初診の流れは、おおむね次のように進みます。

  • 問診:困りごとの経緯、家庭と学校の状況、本人の様子をゆっくり聞かれる
  • 本人との対話:年齢に応じて、医師が本人とも直接話す時間が取られる
  • 検査の相談:心理検査や血液検査が必要なら、別日に予約される
  • 方針の提示:「経過を見る」「カウンセリングを併用する」「薬を検討する」など、選択肢が示される
  • 次回の予約:継続的なフォローが必要かどうかが判断される

初診で子どもが一言も話さないことは、まったく珍しくありません。知らない大人に自分の一番つらいところを説明しろと言われて、すぐ話せる子はそういません。親御さんは決まって「いつもは話すんですけど」と謝られますが、その必要はありません。表情、姿勢、親との距離。診察室では言葉以外のものも見ています。

持ち物については、初診の準備をまとめた記事が役に立つはずです。保険証と診察券のほか、母子健康手帳、通知表、学校からの連絡帳があると話が早く進みます。

初診の日、子どもへのフォロー

その日の体験が前向きなものであれば、本人が「また来てもいい」と思えます。逆に責められたと感じると、次から拒否が強くなります。

意識したいのは三つです。まず、診察の内容を家に帰ってから追及しないこと。「先生に何を言われたの」と問い詰めると、話す場所が家からも失われます。次に、行けたこと自体をねぎらうこと。「よく行ったね」の一言で足ります。そして、その日の予定を詰めないこと。初診は本人も大人も想像以上に疲れます。

診察後、親御さんが手応えのなさに落ち込むこともあります。思ったより短時間で終わった、うまく説明できなかった、子どもが黙っていた。それでも、いちばん重い仕事はすでに終わっています。異変に気づき、迷い、電話をかけ、予約を待ち、本人を説得して、その日ここまで連れてきた。この流れこそが、家庭にしかできない部分です。

心理検査について

初診以降、必要に応じて心理検査が行われます。代表的なものを挙げます。

  • WISC(ウィスク):知能検査の代表格。認知の得意・不得意の偏りを見る
  • 新版K式発達検査:幼児期の発達の程度と質を評価する
  • AQ(自閉症スペクトラム指数):ASDの傾向を評価する
  • Conners 3:ADHDの症状を評価する
  • P-Fスタディ:欲求不満の場面での反応の傾向を見る
  • バウムテスト・SCT:描画や文章完成から内面を見る
  • BDI(ベック抑うつ尺度):年長児や思春期の抑うつを評価する

検査は点数で優劣をつけるものではなく、関わり方の手がかりを得るためのものです。WISCについては発達検査(WISC)の記事で流れとメリットを詳しく扱っています。

薬について知っておきたいこと

薬を提案されて不安になる方は多くいます。子どもに精神科の薬を飲ませて大丈夫なのか、依存しないか、副作用はどうか。どれも当然の疑問です。

児童精神科で使われる代表的な薬には、ADHDの治療薬、SSRIなどの抗うつ薬(中学生以降が対象になることが多い)、必要時に飲む抗不安薬、小児に使われる睡眠のための薬、強い興奮がある場合に少量から使う抗精神病薬などがあります。

押さえておきたいのは、薬は困りごとを消すためではなく、環境を整える力を取り戻すために使うという点です。眠れるようになる、朝起きられるようになる、教室に座っていられるようになる。そこから先の学びや関係づくりは、環境の調整と本人の力で進みます。

迷いがあるときは、その場で断る前に「どういう効果を期待して出すのか」「いつまで続けるのか」「合わなかったらどうするのか」を聞いてください。納得できないまま飲み始めるより、質問したほうが結果につながります。判断は必ず主治医とご相談ください。

通院のペース

初診の後の通院ペースは、状態と方針によって変わります。おおむね次の三つの型があります。

  • 経過を見る型:2〜4週に1回
  • 薬を使う型:1〜2週に1回から始まり、安定すれば月1回程度
  • カウンセリングを併用する型:診察は月1回、カウンセリングは隔週など

通院が負担になってきたときは、正直に相談してください。間隔を延ばす、オンラインでの診察に切り替える、学校のある日を避けるなど、調整できることがあります。無理に通い続けて途切れるより、続けられる形に変えるほうがよい結果になります。

続けるかどうかの判断

初診を終えたら、この医療機関で続けるかどうかを家族で振り返る時間を持ってください。見るのは三点です。

ひとつは、本人の感触。「あの先生ならまた話してもいい」と思えたかどうかが、いちばん大きな要素です。二つ目は、説明の分かりやすさ。専門用語のまま押し切られる感じがしたなら、それは相性の問題として受け取ってよいと思います。三つ目は、通える現実味。距離と時間帯が生活に合わないと、数か月で途切れます。

方針に納得できないときは、別の医師の意見を聞くという選択肢もあります。セカンドオピニオンは失礼な行為ではなく、患者側の権利です。切り出し方に迷うときは、相談先の選び方の記事も参考にしてください。

変化を感じるまでの目安

「いつ頃から変わるのか」は、よく聞かれる質問です。状態や治療内容によって大きく違いますが、現場で見てきたおおまかな流れをお伝えします。

  • 1〜2週間:受診したこと自体の安心感で、家の空気が少し緩む
  • 1か月:医師との関係ができ、本人が話せる場所として認識される
  • 3か月:方針が安定し、家庭での関わり方の調整が進む
  • 6か月:本人の状態に見える変化が出てくることがある
  • 1年:通院のペースが定まり、本人なりの付き合い方が見えてくる

これは目安であり、この通りに進まないことも普通にあります。行きつ戻りつしながら、少しずつ形が見えてくるのが実際のところです。

期待しすぎない、諦めすぎない

受診に臨む心構えとして、両極に振れないことをお伝えしています。

期待しすぎると、「専門家に任せれば解決する」という前提ができてしまいます。実際には、医療が担えるのは全体の一部で、家庭と学校の環境がそのまま残っていれば変化は限られます。逆に諦めすぎると、「行っても無駄だった」と一、二回で通院をやめてしまい、本来効いたはずの手立てにたどり着けません。

ちょうどよい位置は、「困りごとを一緒に整理してくれる相手が増えた」という受け取り方です。医療は解決者ではなく、家庭と学校に並ぶ三本目の柱として働きます。

入院という選択肢

外来では対応が難しい場合に、入院が選択肢になることがあります。児童思春期精神科の入院は、集中的にケアを行う場として機能します。

検討されるのは、強い希死念慮や自殺企図がある場合、自傷が激しくなっている場合、拒食や過食で身体的な危険がある場合、家庭内の暴力で家族の安全が脅かされている場合、生活リズムが完全に崩れて外来治療が続けられない場合などです。

期間は状態によりますが、数週間から数か月が一般的です。院内で学習の時間を確保する病棟もあり、生活リズムを整えることが治療の柱になります。退院後も外来でのフォローが続きます。

「入院」と聞くと、閉ざされた場所を思い浮かべて不安になる方が多くいらっしゃいます。実際の児童思春期精神科の病棟がどんな場所で、子どもたちがそこでどんな一年を過ごすのかを、季節を追って書いたものがあります。「児童思春期精神科の病棟という場所|現役看護師がそっと見せる、4月から3月までの12ヶ月」です。入院を勧められて迷っている方に、まず雰囲気を知っていただくために書きました。

児童精神科を上手に使うコツ

限られた診察時間を活かすために、現場で見てきたコツをお伝えします。

  • 診察前に、聞きたいことを箇条書きでメモしておく
  • 分からない言葉はその場で聞く。「専門用語が分かりません」と言って構わない
  • 診察後、車の中などですぐに指示をメモする
  • 看護師や受付にも気軽に聞く。医師以外から得られる情報も多い
  • 学校や教育委員会との情報共有を、こちらから頼んでよい
  • 方針に納得できないときは、別の医師の意見を聞く

医療機関は受け身で診てもらう場所ではなく、必要な情報を引き出す場所として使えます。遠慮せずに希望を伝える姿勢が、結果としてよい方向に働きます。

受診と並行して使える支援

医療だけで支えるものではありません。複数の支援を組み合わせるほうが、家族全体の負担が軽くなります。

  • スクールカウンセラー:学校内の相談窓口。保護者だけでも使える
  • スクールソーシャルワーカー:制度や機関につなぐ役割
  • 教育支援センター(適応指導教室):自治体が運営する居場所
  • 放課後等デイサービス:発達特性のある子の放課後の支援
  • フリースクール:学校以外の学びと居場所
  • 家庭学習の支援:家庭教師やオンライン教材

家庭での関わり方を見直したい場合は声かけ・関わり方の完全ガイド、学校以外の居場所を探す場合はフリースクールの選び方が入口になります。

きょうだいへの配慮

受診が始まると、家庭の関心と時間がその子に集まります。きょうだいの側は、それを敏感に感じ取ります。

よく見られるのは、「自分は迷惑をかけてはいけない」と早く自立しようとする姿です。手がかからないので安心してしまいますが、我慢が積み上がっていることがあります。短い時間でよいので、その子だけと過ごす時間を意識的に作ってください。詳しくはきょうだい児への関わりの記事にまとめています。

親自身のケアも同時に

受診が始まると、送迎、医師との情報共有、家庭での関わりの調整といった負担が新しく増えます。「子どもがよくなるまで自分のことは後回し」と考えがちですが、それは長い目で見ると逆に働きます。

  • 送迎は分担する。すべてを一人で抱えない
  • 診察日は他の予定を入れない
  • 診察の後に振り返る時間を取り、メモを残す
  • 眠れない・食欲がないときは、保護者自身がかかりつけ医に相談する
  • 同じ立場の親と話せる場(親の会など)を持つ

保護者の疲れは、眠気より先に判断のしにくさとして出ます。献立が決まらない、連絡するかどうか決めきれない。そうした変化に気づいたら休息が必要な段階です。親の疲れSOSチェックリストも使ってみてください。

現場から|受診をきっかけに変わった家族

※個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化しています。

中学一年の男の子が、半年以上学校へ行けずにいました。家では母親と何度もぶつかり、部屋にこもる時間が増えていました。受診したとき、本人は診察室でほとんど話しませんでした。

変わったのは三回目からです。医師ではなく私に向かって「教室のざわざわが無理だった」と言いました。理由が言葉になったことで、家庭の対応が変わりました。母親が「行かないこと」を責めるのをやめ、別室登校を学校に相談し、耳栓の使用を認めてもらいました。このように、登校できない背景に音や光の過敏さが隠れていることは、決して珍しくありません(「感覚過敏がある子への家庭の工夫」)。

その子はその後、週に二日ほど別室に通うようになりました。全部が解決したわけではありません。ただ、家の中で責め合う時間が減ったこと、本人に「言えば伝わる」経験ができたこと。この二つが、受診で得られたいちばん大きなものだったと思います。

診察室では、こちらが教えているつもりで、子どもや家族から教わることのほうが多くあります。患者さんやご家族からかけられて、看護観が変わった言葉を「現場で出会った5つの言葉|患者家族から看護師が教わった瞬間」に書きました。受診する側から見た景色を知る手がかりにもなると思います。

よくある質問

Q1. 初診はどれくらい待ちますか

1〜3か月が一般的で、都市部では半年待ちもあります。「まだ大丈夫」と思っても先に予約を取り、待つあいだは小児科やスクールカウンセラーに相談しておくのが現実的です。

Q2. 費用はどれくらいかかりますか

保険診療の範囲であれば、自治体の子ども医療費助成が使えることが多く、負担は小さく収まります。心理検査やカウンセリングは自費になる場合があります。金額と助成の条件は自治体と医療機関で異なりますので、予約時に確認してください。

Q3. 受診したことが学校に伝わりますか

医療機関から自動的に伝わることはありません。共有するかどうかはご家庭が決められます。配慮を求めるために伝えたほうがよい場面もありますので、判断は医師と相談してください。

Q4. 本人が頑なに拒否します

保護者だけで相談に行けます。「心の問題だと思われるのが嫌」という理由が最も多いため、「体の調子を調べに行こう」という伝え方だと応じることもあります。親だけの相談から始めて、後から本人が来られるようになるケースは珍しくありません。

Q5. 薬を出されたら断れますか

断ることも、いったん持ち帰って考えることもできます。断る前に、期待する効果・続ける期間・合わなかったときの対応を聞いてください。納得したうえで始めるほうが、続けやすくなります。

Q6. 診断名がついたら、子どもにどう伝えますか

伝えるかどうか、どう伝えるかは医師と相談して決めてください。伝える場合は「あなたが悪いのではなく、こういう特徴があるから、この方法が合う」という説明の形にすると受け取りやすくなります。

Q7. 通院をやめたいときはどうしますか

黙って行かなくなるより、一度受診して「しばらく間隔を空けたい」と伝えてください。中断の記録が残っていれば、再開するときの入口になります。

今夜これだけ

今夜は予約の電話をかけなくて大丈夫です。通える範囲の児童精神科を二か所だけ調べて、電話番号をメモしておいてください。明日の日中、かけるだけの状態にしておくと動き出しやすくなります。

看護師視点でのまとめ

児童精神科の受診は、子どもを病気扱いすることではありません。いま何が起きているかを、専門家と一緒に見るための手続きです。決めるまでがいちばん重く、行ってみると「思ったより軽い場所だった」と感じる方のほうが多い、というのが現場の実感です。

要点を並べておきます。

  • 迷ったらまず小児科へ。必要なら紹介状を書いてもらえる
  • 予約は早めに。1〜3か月待ちを前提に動く
  • 待つあいだに、起床時刻と登校の記録を一行ずつ残しておく
  • 本人が来られなくても、親だけで相談を始められる
  • 「死にたい」自傷・強い拒食があるときは、順番を踏まずに直接受診
  • 受診はゴールではなく、家庭・学校・医療で支える形の入口

迷った時間の長さを、後悔の材料にしないでください。良い日があれば様子を見たくなるのは自然なことです。それでも受診にたどり着いたという事実のほうが、はるかに重いものです。診断や治療の判断は必ず医師にご相談ください。

参考にした公的情報・一次情報

この記事の制度・医療情報は、以下の公的情報・一次情報を2026年8月15日に確認しています。制度の運用や個別の医療判断は、学校・自治体・医療機関などへご確認ください。

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【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間)
チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(毎日16〜21時)
児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
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