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「うちの子、自分に自信がないみたい」
「失敗を怖がって、何にも挑戦しようとしない」
「どうしたら自己肯定感を育てられるのだろう」
子育て本や教育情報で「自己肯定感」という言葉を目にする機会が増えました。SNSの育児アカウントを開けば、「自己肯定感を育てる声かけ10選」「自己肯定感が低い子の特徴」「自己肯定感を高める魔法の言葉」——情報は溢れています。でも、いざ目の前のお子さまに向き合うと、「結局どう関わればいいのか分からない」と感じる親御さまが多いのが現実です。本にあったとおりの声かけをしているのに、なぜか子どもの表情は晴れない。「ほめてばかりだと逆効果」と聞いて困ってしまう。「自己肯定感って結局何?」と振り出しに戻ってしまう——そんな迷いを抱えている方は、決して少数派ではありません。
私は児童思春期精神科の病棟で5年以上、自分の価値を見失いかけた子どもたちと数多く関わってきました。入院当初は「自分なんてどうでもいい」「いなくなったほうがいい」と話していたお子さんが、退院する頃には「これから少しだけ自分のことが好きになれそう」と笑顔を見せてくれる——そんな回復の道のりを、何度も伴走してきました。その経験から強く感じているのは、自己肯定感は「たくさんほめる」ことでは育たないということです。今日は、現場で大切にしてきた声かけの工夫を3つお伝えします。さらに、自己肯定感を「削らない」ための関わり、学齢別の声かけ、思春期の壁、親自身のセルフケアまで、できるだけ具体的にまとめました。
- 自己肯定感は「ほめる量」ではない
- 現場で大切にしてきた3つの声かけ
- 日常の中でできる、小さな工夫
- 気をつけたいNG声かけ
- 学齢別の声かけのポイント
- 精神科看護師視点としての補足
- 家庭で意識したい3つのこと
- 思春期の自己肯定感の壁
- HSC・繊細な子の自己肯定感
- 自己肯定感のセルフチェック
- 親自身の自己肯定感を育てる5つの実践
- きょうだい間の自己肯定感
- 学校で削られる自己肯定感のフォロー
- 病棟で見てきた回復エピソード
- よくある質問(FAQ)
- 自己肯定感を育てる絵本・ツール
- 看護師視点でのまとめ
- 自己肯定感は「目に見えない貯金」
- おわりに|「見ていてくれる人がいる」が、心の土台になる
- 声かけと並行して整えたい「環境」
- 看護師として現場で見てきた、自己肯定感の「育ち方」
- 「結果」ではなく「過程」を見る姿勢
- 否定的な感情を否定しない関わり
- 声かけで気をつけたい「比較」と「期待」
- 保護者の方ご自身の自己肯定感も大切に
- 日常の中で続けやすい「3秒の声かけ」
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自己肯定感は「ほめる量」ではない
「子どもをたくさん褒めましょう」とよく言われます。確かに褒めることは大切ですが、「すごいね」「えらいね」を連呼することが自己肯定感を育てるわけではないのです。むしろ、評価の言葉だけを浴び続けた子どもは、「評価されない自分には価値がない」という不安を抱えやすくなることが、現場ではよく観察されます。
病棟で出会った子どもたちの中には、テストで100点を取ることでしか自分の価値を感じられない子や、親に褒められなければ動けない子もいました。つまり、「結果を褒められる関わり」だけを繰り返すと、子どもは「できる自分には価値がある、できない自分には価値がない」という危うい考え方を持ってしまうのです。これは「条件付き自己肯定感」と呼ばれる状態で、思春期以降にメンタル不調を引き起こす一因とされます。
本当の自己肯定感は、「ありのままの自分でいい」と感じられる土台。この土台をつくるには、声かけの質を少し変える必要があります。「育てる」というより、「壊さない」「削らない」という発想に近いものです。地面に大きな木が育つには、肥料を撒き続けることより、根を傷つけないことのほうが大切——自己肯定感もそれに似ています。根の部分を守る関わりが、長い時間をかけて、お子さまの心の土台になっていきます。
自己肯定感の3つの層
自己肯定感は、心理学的に大きく3つの層に分けて考えることができます。
第1層:自己受容——「自分は自分でいい」「ありのままの自分を許せる」という土台。これがなければ、上の層は育ちません。一番深くて、一番大切な層です。
第2層:自己肯定——「自分にも良いところがある」「自分は役に立てる」という感覚。第1層の上に積み上がっていきます。
第3層:自己効力感——「自分はやればできる」「努力したら結果が出せる」という感覚。一番表面に出やすい層で、世間では「自己肯定感」と混同されがちな部分です。
「ほめる」だけのアプローチは、主に第3層(自己効力感)にしか働きかけません。土台となる第1層(自己受容)を育てるには、別のアプローチが必要です。それが、これからお伝えする「3つの声かけ」のテーマです。
現場で大切にしてきた3つの声かけ
① 結果ではなく、プロセスを言葉にする
「100点すごい!」と結果を褒めるのではなく、そこに至るまでの過程を具体的に言葉にします。これは「プロセスフォーカス」と呼ばれる関わり方で、心理学者キャロル・ドゥエックの研究でも、その効果が示されています。
- × 「テストで100点すごいね」
- ○ 「毎日コツコツ勉強してたの、見てたよ」
- × 「絵が上手だね」
- ○ 「ここの色の塗り方、じっくり考えて選んだんだね」
- × 「縄跳び30回もできてすごい」
- ○ 「最初は5回だったのに、ここまで続けてきたんだね」
プロセスを認められた子どもは、「結果が出なくても、自分の頑張りには意味がある」と感じられるようになります。次に失敗したときも、立ち直りが早くなるのです。これは、長期的に見ても大きな違いを生みます。「結果がすべて」と思っている子は、失敗するたびに自分を否定します。「プロセスに意味がある」と知っている子は、失敗しても「次にどう工夫するか」を考えられます。
プロセスフォーカスの声かけは、最初は不自然に感じるかもしれません。「すごい」「えらい」のほうが、ずっと言葉にしやすいからです。でも、3週間意識して使ってみると、自然と口から出るようになります。「最初の3週間は意識的に、その後は習慣的に」——これが、声かけの質を変えるコツです。
② 「頑張ったね」より「見てたよ」
「頑張ったね」もいい言葉ですが、病棟では「ずっと見ていたよ」という言葉をより大切にしていました。これには、現場での明確な理由があります。
「頑張った」は評価の言葉で、時に子どもに「もっと頑張らなきゃ」というプレッシャーを与えることがあります。一方「見てたよ」は、評価ではなく、存在を受け止める言葉です。「あなたが何をしているかを、私はずっと知っているよ」というメッセージを含んでいます。これは、評価ではなく、関心の表明です。
- 「最後まで諦めなかったの、見てたよ」
- 「ここで悩んでたね。ちゃんと見てたよ」
- 「うまくいかなくて悔しかったよね。全部見てたよ」
- 「今日、〇〇に親切にしてあげてたよね、見てたよ」
- 「途中で何度もやり直してたの、知ってるよ」
「見てもらえている」という感覚こそ、子どもの心を支える一番の栄養です。これは、ヒトという生き物の根本的なニーズでもあります。乳児が泣くのは、お腹が空いただけでなく、「自分の存在を見てほしい」「気づいてほしい」というサインです。思春期になっても、見た目は反抗的でも、心の奥では「見てほしい」を持ち続けています。
看護師の世界では、これを「関心存在の表明」と呼ぶことがあります。患者さんに対して、「私はあなたのことを気にかけています」と言葉と態度で示すこと。これは、医療的なケア以前の、人としての関わりの基本です。家庭でも、同じことが言えます。
③ 失敗を否定せず、受け止める
自己肯定感の土台をつくる上で、失敗した時の声かけが一番大切と言ってもいいかもしれません。成功時の声かけより、失敗時の声かけのほうが、心の土台に深く影響します。
子どもが何かに失敗したとき、つい「だから言ったでしょ」「次は頑張ろう」と先回りしてしまいがちです。でも、まず必要なのは励ましではなく、「悔しかったね」「悲しかったね」と気持ちを受け止めること。失敗の事実に対する評価より、失敗で湧き上がった感情に寄り添うことが優先です。
失敗しても「大丈夫、それでもあなたは大切」と伝わる関わりを積み重ねた子どもは、失敗を恐れずに挑戦できる子に育っていきます。これは「セーフティネットの感覚」とも言えます。「失敗しても自分は大丈夫」という安心が、新しいことへの挑戦を支えるのです。
具体的な失敗時の声かけ例:「悔しいよね、よく分かるよ」「次は次で、今は今ね」「失敗したから何か壊れるわけじゃないよ」「やってみたこと自体、勇気あったね」。——どれも「失敗してもあなたの価値は変わらない」というメッセージを含んでいます。
日常の中でできる、小さな工夫
- 朝と夜の挨拶を丁寧に:「おはよう」「おやすみ」だけでも、「あなたを大切に思っているよ」のメッセージに
- 「ありがとう」を積極的に伝える:お手伝いの大小に関わらず、感謝を言葉にする
- 子どもの話を遮らずに最後まで聞く:話を聞いてもらえる経験が、自分の存在の価値を実感させる
- 兄弟や他の子と比べない:比較の言葉は、子どもの自己肯定感を一番深く削る
- 失敗を共有する:「お母さんも今日失敗したよ」と話すと、子どもは「失敗してもいいんだ」と学ぶ
- 「好き」を共有する:「私はこれが好き、あなたは何が好き?」という会話が、自己理解を深める
これらは、特別な時間を作る必要のない、日々の流れの中に組み込める工夫です。「自己肯定感を育てる時間」を取ろうと意気込まなくて大丈夫です。毎日の何気ない会話の中に、こうした工夫を少しずつ織り込んでいけば十分です。
気をつけたいNG声かけ
無意識に使いがちで、でも自己肯定感を傷つけやすい言葉があります。完璧に避けることは不可能ですが、知っているだけで使う頻度が減ります。
- 「どうしてそんなこともできないの」
- 「〇〇ちゃんはできるのに」
- 「泣くなんて恥ずかしい」
- 「あなたのために言ってるの」
- 「もういい、自分でやって」
- 「もっとちゃんとしなさい」
- 「お母さん(お父さん)が悲しい」(子どもが親の感情をコントロールする責任を持つように感じる)
完璧に避けるのは難しいですが、「使ってしまったな」と気づいた時に「言い過ぎちゃった、ごめんね」と伝えるだけで、子どもは救われます。親の完璧さより、気づき直す姿こそが、子どもに大切なメッセージを届けてくれるのです。「親も完璧じゃない、でも気づいたら直そうとする」——この姿が、子どもにとってのモデルになります。
学齢別の声かけのポイント
幼児期(0〜5歳):「ある」を言葉にする
この時期の自己肯定感の土台は、「存在を認められる体験」から作られます。「お腹空いたんだね」「眠いね」「悲しかったね」と、感情や状態を言葉にしてあげるだけで、子どもは「自分のここにある気持ちを、誰かが分かってくれる」という安心感を得ます。
「すごい」「えらい」より、「気づいてもらえた」体験を積み重ねる時期です。お絵かきを見せてくれたら、「赤い色をたくさん使ったね」と気づきを返す。積み木を高く積んだら、「上まで届いたね」と事実を返す——これだけで十分です。
小学校低学年(6〜8歳):失敗体験のフォロー
学校生活が始まり、初めて「比較」と「評価」にさらされる時期です。算数のテストで友達より低い点数を取った、運動会で一番になれなかった、友達関係でトラブルがあった——失敗体験が積み重なる時期です。
この時期の声かけは、「失敗を肯定する」のがポイントです。「失敗してもいい」「悔しいよね」「次があるよ」——成功体験よりも、失敗時のフォローが、自己肯定感の土台を作ります。「失敗しても親は変わらず自分を見ていてくれる」と感じられる子は、その後の挑戦に強くなります。
小学校高学年(9〜12歳):意見を尊重する
自我が育ち始め、自分の意見を持ちたい時期です。親に賛同するだけでなく、「自分の考え」を持って表明したい欲求が出てきます。ここで親が「子どもの意見」を一蹴すると、自己肯定感が大きく削られます。
「そう思ったんだね」「あなたはそういう考え方なんだね」——たとえ親と意見が違っても、まず受け止める。その上で、必要なら親の考えを伝える。「意見を持つこと自体を尊重する」姿勢が、この時期の自己肯定感を支えます。
中学生・高校生(13歳〜):距離を取って待つ
思春期に入ると、自己肯定感は「親の声かけ」だけで育つフェーズを卒業します。友達、先生、SNS、自分自身——複数の鏡を通して、自分を見つめ始める時期です。この時期は、親が「育てる」より「邪魔しない」スタンスが大切になります。
具体的には、本人の選択を尊重する、過剰な評価をしない、失敗しても見守る、本人が話したい時に話せる空気を保つ——どれも「待つ」姿勢です。思春期の自己肯定感は、本人が自分で育てていく時期。親は、その伴走者でいるくらいの距離感が、ちょうど良い関わりです。
精神科看護師視点としての補足
自己肯定感は「育てる」ものというより、「壊さない」「回復させる」という観点で見るのが、現場での実感に近いです。生まれつきの土台はそれぞれ違いますが、日々の関わりで「自分は大丈夫」という感覚が削られる体験を重ねると、誰でも揺らぎます。「育てる」を意識する前に、まずは「削らない」関わりから始めるのが近道です。
病棟で見てきた「自己肯定感が回復した子」のパターン
※以下のエピソードは、個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化したものです。
入院当初「自分なんてどうでもいい」と言っていたお子さんが、退院に向けて回復するパターンには共通点がありました。「特別な言葉」ではなく、「いつも通りの態度で接してくれる人」がそばにいたという、ただそれだけです。「すごいね」より「おはよう」「ご飯食べた?」「眠れた?」の積み重ねの方が、自己肯定感の土台を作っているように見えました。
あるお子さまは、入院前から「ほめてもらう体験」は十分にあったのに、自己肯定感が低い状態でした。話を聞いていくと、「ほめられても、本当の自分は見てもらえていない気がする」と話されました。表面的なほめより、深い関心の表明が、自己肯定感の回復には必要だったのです。
別のお子さまは、「私はダメな子」「何もできない」と繰り返していました。看護師は否定もせず、評価もせず、ただ「今日もここにいるね」「お話ししてくれてありがとう」を繰り返しました。3ヶ月後、その子は「私はダメじゃないかもしれない」と少しずつ口にするようになりました。「ダメじゃない」と否定するより、「ここにいることを認められる」体験のほうが、心の奥に届くのだと、改めて教えてもらいました。
自己肯定感を「削らない」ための関わり方
- 比較しない:兄弟・友達・自分の小さい頃と比べない
- 感情を否定しない:「そんなことで」「気にしすぎ」と言わない
- 結果より過程を見る:「できた」だけでなく「やってみた」を認める
- 無条件の存在を伝える:「あなたがいてくれてうれしい」を、評価と切り離して伝える
- 失敗を恥じない態度を示す:親自身が失敗をオープンに話す
- 選択肢を渡す:「どっちにする?」を増やし、自分で決める体験を増やす
家庭で意識したい3つのこと
①「ほめる」より「気づく」
「すごい」「えらい」のような評価のシャワーは、慣れると逆に効かなくなったり、評価がないと不安になったりします。「あ、ご飯食べたんだね」「あれ、髪伸びたね」のように、ただ気づくだけの声かけが、長期的には効きます。
「気づき」は、評価より深いメッセージを含んでいます。「私はあなたを見ている、関心を持っている」という、関係性そのものを示す言葉です。評価は「あなたの行動・成果」に注目しますが、気づきは「あなたという存在」に注目します。後者のほうが、自己肯定感の土台に染み込んでいきます。
②「正しい」より「一緒にいる」
子どもの考えが間違っていると感じても、まずは「そう思ったんだね」と受け止めた上で、必要なら自分の考えを伝える、という順番が大切です。先に否定すると、その後の言葉は届きにくくなります。
「正しさ」を伝えるより、「一緒に考える」姿勢のほうが、子どもの自己肯定感を育てます。「お母さんはこう思うけど、あなたはどう?」という対話の姿勢が、「自分の考えを持っていい」というメッセージを伝えます。これは、長期的な人間関係スキルの基礎にもなります。
③親自身の自己肯定感も大事
親御さん自身が「自分はダメだ」と感じている時期、子どもにかける言葉も自然と削るような形になりがちです。親が自分を労う時間を取ることが、巡り巡って子どもの自己肯定感に繋がります。
「自分は親として失格」「育て方が悪かった」と自分を責め続けている親御さまには、まず自分自身への「削らない」関わりを始めることをおすすめします。子どもにかける優しい言葉を、まず自分自身にかけてあげてください。「今日もよくやった」「失敗してもいい」「あなたの存在は価値がある」——自分への声かけが、子どもへの声かけの質を変えていきます。
思春期の自己肯定感の壁
思春期は、自己肯定感がもっとも揺らぐ時期です。小学生まではある程度安定していた自己肯定感が、中学生になった途端、ガラガラと崩れることがあります。これは、思春期特有の心の発達と環境の変化が重なるためです。
思春期に自己肯定感が揺らぐ理由は3つあります。第一に、自分を客観視する能力が発達すること。これまで「ありのまま」だった自分を、外から評価する目を持つようになります。「自分は人と比べてどうか」「自分の見た目は」「自分の能力は」——比較の目が、自分自身に向かいます。第二に、友人関係の比重が増えること。家族からの承認だけでは満たされなくなり、友達からの評価が自己肯定感に大きく影響するようになります。第三に、SNSという新しい比較の場が登場すること。24時間、他人の「キラキラした投稿」が目に入る環境は、思春期の自己肯定感を削る大きな要因です。
この時期の親の関わりは、「言葉での介入」より「安心できる場所であり続けること」が大切です。学校でも、友達関係でも、SNSでも傷ついて帰ってくる思春期の子にとって、「家には自分を受け止めてくれる人がいる」という事実が、何よりの支えになります。具体的な声かけ以前に、「いつも通りの家庭」「いつも通りの親」がそこにあることが、思春期の自己肯定感の最後の砦です。
HSC・繊細な子の自己肯定感
HSC(ひといちばい敏感な子)の特性を持つお子さまは、自己肯定感が揺らぎやすい傾向があります。「人の感情を敏感に察知する」「叱られたことを長く引きずる」「自分への評価に敏感」——これらの特性が、自己肯定感を削りやすい構造を作ります。
HSCのお子さまへの自己肯定感サポートは、「強い言葉を避ける」「ゆっくりした関わり」「肯定の量より質」がポイントです。大声で「すごい!」と褒められるより、静かに「見てたよ」と伝えられるほうが、HSCのお子さまの心には深く届きます。また、HSCの「敏感さ」自体を「優しさ」「観察力」「共感力」と肯定的に語り直すことで、特性に対する自己受容も育っていきます。
自己肯定感のセルフチェック
お子さまの自己肯定感が今どんな状態か、簡単にチェックできる項目を挙げます。あくまで目安ですが、家庭での関わりを振り返る参考にしてください。
自己肯定感が比較的高いサイン
- 「自分は〇〇が好き」「私は〇〇が得意」を言葉にできる
- 失敗しても、しばらくしたら気持ちを切り替えられる
- 友達と意見が違っても、自分の意見を持っていられる
- 「これは嫌」「これはやりたくない」と意思表示ができる
- 新しいことに、ある程度興味を示せる
- 親に対しても、自分の気持ちを伝えられる
自己肯定感が削られているサイン
- 「どうせ自分なんて」「私はダメ」が口癖になっている
- 失敗を異常に恐れ、新しいことに挑戦しない
- 友達の意見に合わせるばかりで、自分の意見を言わない
- 褒められても、素直に受け止められない(「いやいや」「そんなことない」)
- 誰かと比べて、自分を低く位置づける癖がある
- 親の機嫌を伺うような態度を取る
- 「自分なんていないほうがいい」のような言葉が出る
後者のサインが目立つ場合は、家庭内の関わり方を見直すのと同時に、専門家(スクールカウンセラー・児童精神科)への相談を検討してください。一人で抱え込まず、外の力を借りることも、お子さまへの大切なサポートです。
親自身の自己肯定感を育てる5つの実践
お子さまの自己肯定感を育てる前に、ご自身の自己肯定感も育てていく必要があります。「自分は親として失格」「育て方が間違っている」と感じている親御さまほど、お子さまへの声かけが厳しくなりがちです。親が自分を労うことが、結果としてお子さまの心の土台を強くします。
実践①:1日3つ、自分を労う
寝る前に、その日の自分を労う言葉を3つ思い浮かべる。「朝起きてご飯を作った」「子どもの話を聞いた」「夕飯の片付けをした」——どんな小さなことでも構いません。「やれて当然」と思っていることほど、実は労う対象です。
実践②:「自分のいいところ」を10個書き出す
紙に「自分のいいところ」を10個書き出してみてください。最初は5個も浮かばないかもしれません。それは、自己肯定感が削られているサインです。「優しい」「真面目」「努力家」「子どもへの愛情がある」——10個書き出せるまで、何度も挑戦してみてください。
実践③:他人と比べる癖を手放す
「他の家のお母さんはちゃんとしている」「他の家の子は学校に行けている」——比較の言葉が頭の中で繰り返されている時、自己肯定感は確実に削られています。比較する対象を、他人ではなく「過去の自分」に変えてみてください。「1年前より、家事と育児を両立できるようになった」「半年前より、子どもの話を聞けるようになった」——過去の自分との比較なら、成長や努力が見えてきます。
実践④:「親じゃない自分」の時間を持つ
趣味の時間、友人と会う時間、一人で過ごす時間——「親じゃない自分」を保つ時間が、自己肯定感の維持に欠かせません。「親であること」が自分のすべてになると、子どもの状態に自己肯定感が直結してしまい、不安定になります。複数の自分(親・パートナー・友人・一人の人間)を持ち続けることが、心の安定につながります。
実践⑤:プロの助けを借りる
自分の自己肯定感を育てるのが難しいと感じたら、カウンセリングや心療内科の活用も視野に入れてください。自分の話を聞いてもらえる場が一つあるだけで、心の余裕は大きく変わります。「自分のためにプロに頼る」ことは、贅沢ではなく、長期的に家族を支えるための投資です。
きょうだい間の自己肯定感
きょうだいがいる家庭では、上の子と下の子で自己肯定感の育ち方が違うことがあります。それぞれに特有の課題があるので、見ておきましょう。
上の子(長子)
上の子は「初めての子」として、親の期待を一身に受けがちです。「お姉ちゃん(お兄ちゃん)なんだから」と言われ続けることで、「役割を果たさないと愛されない」という条件付き自己肯定感を持ちやすくなります。下の子が生まれたタイミングで、急に「赤ちゃん返り」をするのも、愛情の確認行動です。
上の子への声かけは、「『お姉ちゃん』『お兄ちゃん』以前に、あなた自身が大切」を意識的に伝えることがポイント。「お姉ちゃんありがとう」より「〇〇ちゃん(名前で呼ぶ)ありがとう」、「お兄ちゃんなんだから」より「あなたが助けてくれて嬉しい」のような声かけが、上の子の自己肯定感を支えます。
下の子(末子)
下の子は「上の子と比較される」のが日常です。「お姉ちゃんはこんなにできたのに」「お兄ちゃんはもう自分でやってたよ」——比較の言葉が、自己肯定感を削っていきます。また、「下の子はいつまでも幼い扱い」を受け続けることで、「自分は子どもっぽい」「成長していない」という自己イメージを持つこともあります。
下の子への声かけは、「比較しない」「下の子なりのペースを認める」がポイント。「あなたはあなたのペースで成長していくよ」「上の子と違うあなたが、私は好きだよ」のような声かけが、下の子の自己肯定感を育てます。
真ん中の子
3人以上きょうだいがいる家庭の真ん中の子は、「上の子の責任は背負わなくていいけど、下の子のように甘えられない」という独特の立場にいます。親の関心が分散しやすく、「自分は注目されていない」と感じやすい傾向があります。
真ん中の子には、意識的に「一対一の時間」を作るのがおすすめです。「あなただけと過ごす時間」が定期的にあると、「自分も大切にされている」という感覚が育ちます。
学校で削られる自己肯定感のフォロー
学校は、子どもの自己肯定感を削りやすい場所でもあります。テストの順位、運動会の結果、友達との比較、先生からの叱責——日々の小さなダメージが積み重なります。家庭でのフォローが、これらのダメージを軽減します。
具体的な家庭でのフォロー方法:
- 学校の評価軸と家庭の評価軸を分ける:学校は成績や運動能力で評価する。家庭は「あなたの存在自体」を評価する。違う物差しがあることを子どもに伝える
- 学校での失敗を、家庭で再評価しない:「テストできなかった」と聞いたら、「悔しかったね」だけで十分。家でも責めない
- 先生からの否定的なコメントは、家庭で中和する:「先生はそう言ったけど、私はあなたの〇〇が好きだよ」と別の視点を提供する
- 友達関係のトラブルは、解決より受容:解決策を急ぐより、まず気持ちを受け止める
病棟で見てきた回復エピソード
※以下のエピソードは、個人が特定できないよう複数のケースを合成し、状況を抽象化したものです。
あるお子さまは、入院当初「私は何の価値もない、いないほうがいい」と話していました。担当看護師は、特別な言葉をかけることはしませんでした。ただ、毎日同じ時間に「おはよう」「ご飯食べた?」「眠れた?」と声をかけ続けただけです。3ヶ月後、そのお子さまは「ここに来るまで、誰も私を見てくれている気がしなかった」と話してくれました。「すごい」「えらい」より、「気にかけてくれている」が、自己肯定感を回復させる第一歩なのだと、改めて教えてもらいました。
別のお子さまは、テストの点数で自分の価値を判断する傾向が強い子でした。「100点取れたら自分は大丈夫、80点になったらダメな子」——その思考パターンを変えるには、家族全員の関わりの変化が必要でした。ご家族と相談して、「点数の話を減らす」「テスト結果より過程の話をする」「点数に関わらず変わらず接する」を3ヶ月間継続。半年後、そのお子さまは「点数がどうでも、自分は自分でいい気がしてきた」と話してくれました。家族全体の関わりが変わると、子どもの自己肯定感も確実に変わっていきます。
ASD・ADHD・LDなどの発達特性のあるお子さまは、定型発達のお子さまと比べて、自己肯定感が低くなりやすい傾向があります。「みんなと同じようにできない」「すぐ怒られる」「忘れ物が多くて先生に注意される」——日々の小さな失敗体験が積み重なり、「自分はダメな子」という認識が固定化していきます。
発達特性のあるお子さまへの自己肯定感サポートで大切なのは、「特性を否定しない」「特性を活かす視点を持つ」こと。ADHDの衝動性は「行動力」、ASDのこだわりは「集中力」「探究心」、LDの読み書きの困難さは「他の才能を発見するきっかけ」——どんな特性も、見方を変えれば強みになります。
「他の子と違うことを、否定的に語らない」だけで、お子さまの自己肯定感は大きく変わります。「みんなと同じになろう」より「あなたはあなたで大丈夫」を、繰り返し伝えてあげてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 何歳から意識すればいい?
生まれてすぐから、です。乳児期の「呼びかけに反応してもらえる」体験から、自己肯定感の土台は作られ始めます。そして、思春期以降も「遅すぎる」ということはありません。何歳からでも、関わり方を変えれば、子どもの心は反応します。
Q2. 兄弟で差が出てしまう
同じ親でも兄弟で関わり方が違うのは自然なこと。「平等」を目指すより、「それぞれに合った関わり」を意識する方が、結果的に両方の自己肯定感を支えやすくなります。「Aちゃんにはこの言葉、Bちゃんにはあの言葉」と、子ども一人ひとりに合わせた声かけを工夫してみてください。
Q3. 「ありがとう」って言いすぎ?
言いすぎることはありません。ただし、形だけにならないよう、「具体的に何に対する感謝か」を一言添えると、より伝わります。「ありがとう、洗濯物畳んでくれて助かった」「ありがとう、今日話を聞いてくれて」——具体的なほうが、子どもの心に残ります。
Q4. すでに自己肯定感が低い子は?
「削らない」関わりを地道に続けるのが基本です。本人が「楽になった」と感じる変化は数ヶ月〜数年単位。短期で結果を求めず、ゆっくり関わっていく姿勢が大事です。明らかな抑うつが見られる場合は、心療内科や児童精神科への相談を検討してください。「もう手遅れ」と感じる必要はまったくありません。何歳からでも、関わり方を変えれば、お子さまは変わっていきます。
Q5. 親がイライラしてしまう
イライラ自体は親も人間なので当然です。重要なのは「イライラを子どもにぶつけ続けない仕組み」を作ること。一時的に距離を取る、配偶者と交代する、外部サービスを使うなど、自分を守る選択肢を持っておきましょう。
Q6. 学校で先生から否定的な言葉をかけられる場合は?
家庭でフォローすることが大切です。「学校の先生はそう言ったけど、お母さんはあなたのこういうところが好きだよ」と、別の視点を提供する。それでも改善しない場合は、担任以外(学年主任、副校長、スクールカウンセラー)への相談を検討してください。
Q7. 子どもが「どうせ自分なんて」と言う
「そんなことないよ」と否定するより、「そう感じてるんだね」と受け止めるのが先です。否定すると「自分の気持ちを分かってもらえない」と感じます。受け止めた後で、「私はそうは思わないけど、そう感じてるんだね」と、自分の気持ちも併せて伝える。これが、自己肯定感を育てる対話の基本です。
自己肯定感を育てる絵本・ツール
声かけだけでなく、絵本や日常のツールを活用することで、お子さまの自己肯定感を育てる材料を増やすことができます。特におすすめのアプローチを紹介します。
絵本の読み聞かせ
絵本は、自己肯定感の語彙を増やす最高の教材です。「あなたはあなたでいい」「みんな違ってみんないい」「失敗してもいい」——こうしたメッセージを、絵本を通して何度も浴びることで、お子さまの心の中に確実に染み込んでいきます。読み聞かせの時間そのものも、「親が私のために時間を割いてくれている」という体験になります。膝の上に座って絵本を読んでもらった記憶は、大人になっても残るあたたかい記憶です。日中に時間が取れなくても、寝る前の5分だけでも構いません。短くても、続けることに意味があります。
自己肯定感のテーマを扱う名作絵本は数多くあります。書店や図書館で「自己肯定感」「ありのまま」「いいんだよ」のキーワードで探してみてください。お子さまの心に響く一冊が、きっと見つかります。
「いいところ日記」
寝る前に、その日の「自分のいいところ」と「家族のいいところ」を1つずつ言葉にする習慣を作る方法。お子さまが自分自身の良さを言葉にする練習にもなりますし、家族間でも互いを認め合う文化が育ちます。
最初は「思い浮かばない」と言うかもしれません。それは「いいところを見つける目」がまだ育っていないだけ。「今日笑顔だった」「ご飯を残さず食べた」「ありがとうを言えた」——小さなことから始めれば大丈夫です。
「お母さんの好きなところ」を聞く
お子さまに「お母さん(お父さん)の好きなところはどこ?」と聞いてみる方法。お子さまが親を語ることは、お子さま自身の価値観を整理する作業でもあります。「お母さんが優しいところ」「お父さんが面白いところ」——その答えの中に、お子さまの「大切にしたいこと」が見えてきます。
逆に「お母さんはあなたのこんなところが好き」と伝え返すことで、お子さまの自己肯定感に直接働きかけることができます。家族で「好きなところを言い合う時間」を月に1回でも作ると、家庭の空気が温かくなります。
看護師視点でのまとめ
自己肯定感は、「ほめて伸ばす」というシンプルな話ではなく、「削らない関わりを地道に積み上げる」という、地味で長期的な営みです。即効性はなくても、3ヶ月、半年、1年と続けると、子どもの表情・言葉・態度が少しずつ柔らかくなっていく。それを現場で何度も見てきました。
「特別な言葉を見つけよう」と力まなくて大丈夫です。「おはよう」「おやすみ」「ご飯食べた?」の積み重ねが、いつの間にか自己肯定感の土台を作ってくれます。今日からでも、明日からでも、いつからでも始められる関わり方です。「もう手遅れ」と感じる年齢はありません。お子さまが何歳になっていても、関わり方を変えれば、必ず心は反応します。それを現場で何度も確認してきました。
自己肯定感は「目に見えない貯金」
自己肯定感を「目に見えない貯金」とイメージしてみてください。毎日の関わりが、その貯金口座にコインを入れたり、引き出したりしています。「見てたよ」の一言は、貯金口座にコインを1枚入れる行為。「どうしてできないの」の一言は、貯金口座から10枚引き出す行為。一度の引き出しを取り戻すには、何度も繰り返し預け入れが必要です。
この貯金は、思春期や大人になってから、人生の困難に直面した時に支えになります。仕事で失敗した、恋愛で傷ついた、人間関係で苦しんだ——そんな時、「自分は大丈夫」と思える土台があるかどうかが、その後の回復の早さを決めます。幼少期に貯めた自己肯定感の貯金は、一生使える資産になります。
だからこそ、今日の小さな声かけが、お子さまの30年後、50年後の人生を支えます。気が遠くなる話に聞こえるかもしれません。でも、毎日の積み重ねこそが、最大の資産形成です。「すごい結果」を求める必要はなく、「今日も普通に過ごせた」を肯定する関わりが、最高の貯金になります。
おわりに|「見ていてくれる人がいる」が、心の土台になる
自己肯定感は、一日で育つものではありません。毎日の小さな声かけの積み重ねが、少しずつ、子どもの心の土台をつくっていきます。長い時間が必要ですが、その分、揺らぎにくい土台が育ちます。
現場で出会った子どもたちを見てきて感じるのは、「誰か一人でも、ちゃんと自分を見ていてくれる大人がいる」ことが、その子の人生を支える大きな力になるということです。その一人は、きっと親御さんです。
そして、「親が完璧でなければならない」というプレッシャーは、どうか手放してください。「気づいたら直す」「失敗したら謝る」「分からなければ一緒に考える」——そんな等身大の親の姿が、子どもの自己肯定感を一番育てます。今日、この記事を読んでくださったあなたが、明日の朝、お子さまに「おはよう」と声をかけられますように。その一言が、お子さまの心の土台になっています。
自己肯定感の育成は、即効性のあるものではありません。「今日声かけを変えたから、明日子どもが変わる」というものではないのです。3ヶ月、半年、1年と続けて、ようやくお子さまの表情に変化が現れます。気の長い話に聞こえるかもしれませんが、これは「子育てそのもの」と同じスパンです。子どもが大人になるまで、十数年かけて関わるのが子育てです。自己肯定感の育成も、その長いスパンの中の、毎日の小さな関わりの積み重ねです。
もし、この記事を読んで「自分は今まで間違った関わり方をしていた」と感じたとしても、自分を責めないでください。気づいた時から、変えていけば大丈夫です。お子さまは、親の変化に必ず気づきます。「最近、お母さん(お父さん)変わったな」と感じることが、お子さまにとっての安心感につながります。完璧な親より、変わろうとする親のほうが、子どもの心を強くするのです。
声かけと並行して整えたい「環境」
声かけは入り口、その子が自分のペースで「できた」を積める環境があると、自己肯定感は土台から育ちます。
声かけと環境、両輪で育てる視点が大切です。お子さまが「自分のペースで成長できる場」を一つでも持っておくと、家庭外でも自己肯定感を支える土台ができていきます。学校だけが「成長の場」ではない時代です。お子さまにとっての「居場所」「自分のペースで力を発揮できる場」を、家庭の外にも複数用意してあげることが、自己肯定感の多面的なサポートにつながります。塾、習い事、フリースクール、オンライン学習、地域コミュニティ——選択肢は、思っているよりずっと豊富にあります。
看護師として現場で見てきた、自己肯定感の「育ち方」
児童思春期精神科の現場で、自己肯定感の低さに悩むお子さまを多く担当してきました。「私なんて」「どうせ無理」「みんなより劣っている」――そうした言葉を口にするお子さまの背景には、必ずと言っていいほど、長年積み重なった「自分は受け入れられていない」という体験があります。声かけ一つで自己肯定感が育つわけではなく、日々の小さな関わりの積み重ねが、お子さまの内側に「自分はここにいていい」という感覚を作っていきます。
看護師として印象に残っているのは、ある中学生のお子さまの変化です。入院当初、ご自身のことを「価値のない人間」と表現されていましたが、病棟での生活の中で、看護師やスタッフが日々の小さな出来事に「気づいて言葉にする」関わりを続けるうちに、少しずつ表情が変わっていきました。「今日のシーツのたたみ方、丁寧でしたね」「昨日より、朝の挨拶の声がはっきりしていましたね」――こうした、行動の細部に注目した言葉が、お子さまの「見られている」「気づかれている」という感覚を育てます。
家庭でも同じことが言えます。大きな成果や結果に注目するよりも、「お子さまの日常の中の小さな変化や努力」に気づいて言葉にする。これが、自己肯定感の土台を作る最も基本的な関わりです。看護師として何度も実感したのは、お子さまは「褒められたかどうか」よりも、「気づかれたかどうか」を、心の奥で見ている、ということです。
「結果」ではなく「過程」を見る姿勢
自己肯定感を育てる声かけで、最も大切な視点の一つが「過程に注目する」ことです。テストで100点を取った、運動会で1位になった、コンクールで賞を取った――こうした「結果」に注目する声かけは、もちろん大切ですが、結果はいつも出るとは限りません。結果が出なかった時、「自分には価値がない」と感じてしまうお子さまも少なくありません。
一方、「過程」に注目した声かけは、結果の有無に関わらず、お子さまの努力や姿勢そのものを認めることになります。「毎日少しずつ続けていたね」「最後まで諦めなかったね」「自分なりに工夫していたね」――こうした言葉は、お子さまの内側に「自分は努力できる存在だ」という感覚を育てます。この感覚は、結果が出ない時にも、お子さまを支える力になります。
看護師として、現場で見てきた中で印象的だったのは、過程を認められて育ったお子さまが、思春期の困難な時期に「もう少しがんばってみよう」と自分を立て直せる力を持っていた、ということです。結果だけで評価されてきたお子さまは、結果が出ない場面で立ち止まってしまう傾向があります。日々の関わりの中で、結果だけでなく過程にも目を向ける姿勢が、長期的なお子さまの心の強さに繋がります。
過程を認める声かけは、特別な技術ではありません。お子さまの日常を、少し丁寧に見るだけで、自然と言葉が出てきます。「宿題、最初の30分は集中していたね」「片付け、半分まで自分でできたね」――完璧でなくても、過程の中の「できた部分」に注目するだけで、お子さまの受け取り方は大きく変わります。
否定的な感情を否定しない関わり
自己肯定感を育てる関わりの中で、見落とされがちなのが「お子さまの否定的な感情を否定しない」姿勢です。「悲しい」「悔しい」「腹が立った」「やりたくない」――こうした感情をお子さまが表現した時、つい「そんなこと言わないで」「もっと前向きに考えよう」と言ってしまいたくなりますが、その瞬間にお子さまの内側で「自分の感情は受け入れられない」というメッセージが形成されてしまいます。
看護師として現場でお伝えしているのは、お子さまが感情を出してくれた時こそ、まずはその感情を「そのまま」受け止める、ということです。「悲しかったんだね」「悔しかったんだね」「腹が立つよね」――感情を言葉にして返すだけで、お子さまは「自分の感じ方は受け入れられた」と感じます。この体験の積み重ねが、お子さまの自己肯定感の深い土台を作ります。
感情を受け止めることと、行動を許すことは別のことです。たとえば、お子さまが「弟が嫌い」と言った時、その感情を「そう感じることもあるよね」と受け止めることはできますが、弟に手を出すなどの行動はもちろん止める必要があります。「感情はOK、行動は別途考える」という姿勢が、お子さまの感情表現を支えながら、社会的なルールも伝えていく関わりになります。
現場で多くのお子さまと接してきて、自己肯定感の低いお子さまの共通点として、「自分の感情を出すことを諦めてしまっている」という傾向があります。否定的な感情を出すと否定されてきた経験から、感情そのものを表に出さなくなる。そして、内側に閉じ込められた感情が、不安や抑うつ、身体症状として現れてくる――こうした流れを、現場で何度も見てきました。早い段階から「感情を受け止める関わり」を意識することが、お子さまの心の健康を守る大切な姿勢です。
声かけで気をつけたい「比較」と「期待」
自己肯定感を育てる声かけと反対の方向に働く言葉として、特に注意したいのが「比較」と「過度な期待」です。「お兄ちゃんはこんなことはしなかった」「同じクラスの子はもっとできているよ」「もっと頑張れるはず」――こうした言葉は、保護者の方の善意から出ていることが多いのですが、お子さまの内側では「自分はそのままではダメだ」というメッセージとして受け取られます。
看護師として現場で感じてきたのは、比較されて育ったお子さまの多くが、「他人の評価」を自分の価値基準にしてしまう傾向がある、ということです。自分の感じ方や好きなことよりも、「他人にどう見られるか」を優先するようになり、自分の内側の感覚から離れていく。これは、思春期以降の自己理解の困難に繋がることがあります。比較を完全に避けることは難しくても、意識的に「お子さま自身の過去」と比較する姿勢を持つことで、お子さまの自己肯定感は守られます。
過度な期待についても、注意が必要です。「もっとできるはず」「次はもっと頑張ろう」――こうした言葉が連続すると、お子さまは「今の自分では足りない」と感じ続けることになります。期待をかけることと、現在のお子さまを認めることは、両立できます。「今の頑張りも素晴らしいし、次の挑戦も応援している」――このバランスを意識した声かけが、お子さまの「今」と「未来」を共に支えます。
看護師として強調したいのは、保護者の方ご自身が、お子さまの「現在の姿」をそのまま受け止めることの大切さです。お子さまは、保護者の方の「受容のまなざし」を感じ取りながら、自分を受け入れる力を育てていきます。「もっと成長してほしい」と願う気持ちと並んで、「今のあなたで十分」というメッセージを、日常の中で繰り返し伝えていただければと思います。
保護者の方ご自身の自己肯定感も大切に
お子さまの自己肯定感を育てる関わりを続けるためには、保護者の方ご自身の自己肯定感も、大切に育てる必要があります。自分を責め続けながら、お子さまに「あなたは大丈夫」と伝え続けることは、長期的にはとても難しいことです。保護者の方が「自分も悪くない」「自分も頑張っている」と感じられる時間を持つことが、お子さまへの関わりの質を支えます。
看護師として、現場で保護者の方とお話しする時、よくお伝えしているのは「育児に正解はない」ということです。お子さま一人ひとりが違うように、ご家族一人ひとりも違います。本やネットで見た「理想の関わり」と、目の前のご自身の関わりが違っていても、それは「失敗」ではありません。それぞれのご家庭の中で、お子さまとご家族にとっての「ちょうどよい関わり」が、少しずつ形になっていけば、それで十分です。
そして、保護者の方が疲れている時には、無理せず周囲のサポートを使ってください。配偶者、祖父母、友人、スクールカウンセラー、児童相談所、子育て支援センター――保護者の方が頼れる場所は、地域に様々あります。「一人で全部背負わない」という姿勢が、お子さまにとっての「家庭の安心感」を保ち、お子さまの自己肯定感を育てる長期的な力になります。
本記事でお伝えした声かけや関わりの考え方が、保護者の方とお子さまの日常に、少しでもお役に立てば幸いです。看護師として、現場から心からのエールをお送りしています。
日常の中で続けやすい「3秒の声かけ」
忙しい毎日の中で、長い声かけを意識的に続けることは難しいものです。看護師として現場でお伝えしているのは、「3秒で言える短い声かけ」を、日常の中に散りばめる方が、長期的にはお子さまの自己肯定感を支える、ということです。「おはよう、ぐっすり寝られた?」「お疲れさま、よくがんばってきたね」「気づいてくれてありがとう」――こうした短い言葉の積み重ねが、お子さまの内側で「自分は気にかけてもらえている」という感覚を作っていきます。
大切なのは「特別な瞬間」だけでなく、「日常の何気ない瞬間」に言葉をかけることです。何かを達成した時だけ褒められるのではなく、ただ家にいる、ただ食卓に座っている、ただ家族と過ごしているという当たり前の瞬間に、保護者の方から温かい言葉が向けられる。この体験が、お子さまの「存在そのものへの肯定」を育てます。看護師として、家庭で「日常の声かけ」が豊富だったお子さまほど、思春期の困難な時期にも家族への信頼を失わずに過ごしている、と感じる場面が多くあります。
もう一つお伝えしたいのは、保護者の方が「忙しくて声かけができない」と感じる時こそ、ご自身を責めないでほしい、ということです。声かけは「量」よりも「質」、そして「継続性」が大切です。一日の中で、一回でも、お子さまと目を合わせて温かい言葉をかけられたら、それで十分です。完璧を目指さず、できる範囲で続けていく姿勢が、長い育児の旅の中で、最も持続可能な関わり方になります。
お子さまの自己肯定感を育てる旅は、一日や一週間で完成するものではありません。何年もかけて、日常の関わりの積み重ねの中で、少しずつ形になっていきます。今日からの小さな一歩が、お子さまの未来を支える土台になっていきます。看護師として、保護者の方の毎日の努力に、心から敬意を表しています。
声かけの質を高める一つの工夫として、お子さまの「気持ちの動きそのもの」に注目するという方法があります。たとえば、お子さまが何かを諦めそうになっている時、「がんばろう」と励ますのではなく、「諦めたくないって気持ちと、もう疲れたって気持ち、両方あるんだね」と、内側で揺れている感情を言葉にして返す。お子さまの内側で起きている葛藤を、保護者の方が言葉にしてくれることで、お子さま自身が「自分の気持ちが理解された」と感じます。この体験の積み重ねが、お子さまの「自分の感情を信じる力」を育てます。看護師として、現場でこの「感情の代弁」を続けてきたご家族のお子さまほど、自分の気持ちを言葉にする力が育っている、と感じる場面が多くあります。
もう一つ、現場でよくお伝えしているのは、保護者の方ご自身の感情を「お子さまの前で適切に表現する」ことも、お子さまの自己肯定感を支える、ということです。「お母さん、今日は疲れちゃったよ」「お父さん、ちょっと悲しいことがあったんだ」――こうした言葉は、お子さまに「感情を持つことは普通のこと」「大人も感情を持っていい」というメッセージを伝えます。保護者の方が感情を完璧にコントロールする姿よりも、感情と共に生きている姿のほうが、お子さまにとっては学びになります。ただし、感情をぶつけるのとは違い、「言葉で表現する」ことが大切です。この姿勢が、お子さまの感情教育にも繋がっていきます。
もし、日々の関わりの中で「うまくいかない」「自分の声かけがお子さまに届いていない気がする」と感じる時があれば、無理をせず、一度立ち止まって深呼吸してみてください。お子さまの自己肯定感を育てる関わりは、長距離の旅です。完璧でない日があっても、明日の小さな一歩が、いつかお子さまの中に確かな実感として根付いていきます。看護師として、その旅の途中にいる保護者の方々を、心から応援しています。


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