「学校がある朝だけ、お腹が痛いと言う」「病院で検査しても、異常は見つからない」「仮病なのか、本当に痛いのか、わからない」——子どもの原因不明の腹痛に戸惑う親御さんは少なくありません。
私は児童思春期精神科の病棟で約8年、多くの子どもたちと関わってきましたが、入院してくる子の中にも「ずっとお腹が痛かった」「頭が痛くて起きられなかった」と話す子が本当に多くいました。
本記事では、現場で見てきた子どもたちの姿から、「お腹が痛い」という訴えの裏にある心のSOS、医学的な背景、家庭での対応、受診の判断基準、治療の選択肢まで、現場視点で詳しく解説します。
- 「お腹が痛い」は本当に「仮病」なのか
- 心と体のつながり——身体化症状の医学的背景
- 子どもの腹痛——主な3つの分類
- 心因性腹痛のサインを見分ける
- 親ができる声かけと、避けたい声かけ
- 観察ポイント・症状の記録のつけ方
- 病棟で見てきた合成ケース
- 病棟で見てきた合成ケース・追加2例
- 受診の判断基準
- 医療機関の選び方と受診の流れ
- 治療の選択肢
- 学校との連携と「休む判断」
- 家庭でできる生活面の工夫
- 体調の波と「学びの継続」の両立
- 親自身のメンタルケアも忘れずに
- 腹痛が出やすい年齢・性差・タイミング
- 「学校で痛くなった時」の対応マニュアル
- 小児科医との上手な話し方
- 腹痛と一緒に出やすい他の症状
- 思春期女子特有の腹痛と注意点
- 「お腹痛い」から始まる不登校への道筋——早期介入の重要性
- 乗り越えた家族の3つの共通点
- 具体的な相談先リスト
- よくある質問(FAQ)
- 薬の知識——市販薬と処方薬の使い分け
- 家族全体でできる予防的アプローチ
- 看護師視点でのまとめ
- 看護師として現場で見てきた「お腹が痛い」の背景
- お腹が痛いと訴えるお子さまへの初期対応の具体ステップ
- 身体化の典型パターンと、保護者の方ができる観察
- 学校との連携を上手に進める方法
- 長期的に身体症状を減らしていく家庭環境の整え方
- 保護者の方ご自身のメンタルケアも大切に
- 同じ症状が続く時に意識したい「回復のサイン」
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「お腹が痛い」は本当に「仮病」なのか
大人の目から見て「学校がある日だけ痛くなる」と、どうしても仮病を疑ってしまう親御さんのお気持ちはよくわかります。しかし、子どもの「お腹が痛い」は、ほとんどの場合、本人の中では本当に痛みを感じているものです。
「痛い」は脳が作り出す感覚
痛みとは、身体の異常を脳が認識して感じる感覚です。重要なのは、痛みの感覚は「物理的なダメージがあるかどうか」だけでなく、「脳がどう解釈するか」によって決まるという点です。
強い不安・恐怖・ストレスを感じている時、脳は身体からの信号を「痛み」として強く感じ取りやすくなります。これは「気のせい」でも「演技」でもなく、れっきとした医学的な現象です。
子どもの「身体化」の特徴
大人は感情を言葉で表現することがある程度できますが、子どもは感情を言葉にする能力がまだ未発達です。そのため、心の苦しさが身体の症状として現れやすいのです。これを「身体化(しんたいか)」と呼びます。
子どもに多い身体化の症状:
- 腹痛
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 動悸
- 呼吸困難感
- 手足のしびれ
- 原因不明の発熱
これらは「ウソをついている」のではなく、心の苦しさを身体が代弁している状態と言えます。
心と体のつながり——身体化症状の医学的背景
「心と体は別物」というイメージを持つ方もいますが、実際には密接につながっています。腹痛が出るメカニズムを医学的に説明します。
自律神経のはたらき
胃腸の動きは、自律神経(交感神経・副交感神経)によってコントロールされています。リラックスしている時は副交感神経が優位で、消化活動が活発になります。一方、緊張・不安・恐怖を感じると交感神経が優位になり、胃腸の動きが乱れます。
強いストレスが続くと、この自律神経のバランスが崩れ、慢性的な腹痛・下痢・便秘などが起きやすくなるのです。
脳腸相関——脳と腸の双方向通信
近年、「脳と腸は直接つながっている」という「脳腸相関」の研究が進んでいます。腸内には脳に次ぐ多さの神経細胞があり、脳と腸は迷走神経を通じて互いに信号を送り合っています。
ストレスを感じると、脳から腸へストレスホルモン(コルチゾールなど)が放出され、腸の動きが乱れます。逆に、腸内環境が悪化すると、脳の状態にも影響を与えます。
過敏性腸症候群(IBS)
原因不明の腹痛・下痢・便秘が続く場合、過敏性腸症候群(IBS)と診断されることがあります。これは大人にも子どもにも多く見られる疾患で、ストレスが大きな引き金になることが知られています。
IBSの特徴:
- 排便後に痛みが軽くなる
- 下痢型・便秘型・混合型がある
- 休日には症状が軽くなる傾向
- ストレスで悪化する
機能性ディスペプシア
胃の領域の症状(胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛み)が続く場合、機能性ディスペプシアの可能性があります。これもストレスとの関連が深い疾患です。
子どもの腹痛——主な3つの分類
子どもの腹痛は、原因によって大きく3つに分類できます。
1. 身体疾患による腹痛
明らかな身体的な原因がある腹痛です。
- 急性腹症(虫垂炎、腸閉塞など)
- 感染性胃腸炎
- 便秘
- 食物アレルギー
- 炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)
- 尿路感染症
- 女子の場合は月経関連
これらは医療的な治療が必要なので、まず小児科での検査が重要です。
2. 機能性・心因性の腹痛
身体検査では異常が見つからないが、ストレスや心理的要因で起きる腹痛です。
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 機能性ディスペプシア
- 反復性腹痛(特定の原因なく繰り返す)
- 身体化障害
- 不安症・うつに伴う身体症状
3. 両方が混在するケース
実際には、身体的な原因と心理的な原因が両方絡んでいることが多いです。例えば、便秘気味の子がストレスで腸の動きがさらに悪化する、過敏性腸症候群があってストレスでひどくなる、などです。
「身体か心か」と二者択一で考えず、両方の視点で見ていくことが大切です。
心因性腹痛のサインを見分ける
身体検査で異常が見つからない場合、心因性の可能性を考えます。以下のサインがいくつ当てはまるかチェックしてみてください。
タイミングのサイン
- 平日の朝だけ痛い
- 登校直前に強くなる
- 休日や長期休暇には症状が軽い・無い
- 特定の授業(体育、発表など)の前に出る
- 夕方〜夜になると軽くなる
- 家を出ると治まる、または学校に着くと治まる
痛みの性質
- 場所が日によって変わる(昨日はみぞおち、今日は下腹部)
- 痛みの強さが波がある
- 気を紛らわせると軽くなる
- 好きなことに夢中になっている時は忘れている
- 「ズキズキ」「キリキリ」など曖昧な表現が多い
関連症状
- 頭痛・吐き気も同時に出る
- 朝に食欲がない
- 寝つきが悪い・夜中に目覚める
- 表情が暗い・元気がない
- 口数が減った
- イライラしやすくなった
背景の変化
- 学校で何かトラブルがあった
- クラス替えや担任が変わった
- 友達関係に変化があった
- 家族の変化があった(引越し、転校、きょうだいの誕生、両親の不和など)
- 習い事・塾の負担が増えた
これらが複数当てはまる場合、心因性の可能性が高いと考えられます。
親ができる声かけと、避けたい声かけ
子どもが「お腹が痛い」と訴えた時、親の対応一つで子どもの安心感が大きく変わります。
避けたい声かけ
「仮病でしょ?」
本人が本当に痛みを感じている時に「仮病」と決めつけられると、信頼関係が大きく損なわれます。本人は「親に信じてもらえない」と感じ、次から痛みを訴えなくなったり、より強い症状を出してSOSを発するようになることがあります。
「学校に行けば治るよ」
結果的に治ることがあっても、本人にとっては「今、痛い」が現実。痛みを軽視されると、本人は孤独感を深めます。
「甘えるな」「気の持ちようだ」
気持ちの問題と切り捨てると、本人は二重に追い詰められます。「痛いのも辛いし、わかってもらえないのも辛い」状態になります。
「また?」「いつもだね」
呆れた口調は、本人の自己肯定感を下げます。「またこの子は…」というため息は子どもに必ず伝わります。
「ちゃんと検査したのに?」
身体に異常がなくても、痛みは本物。検査結果と痛みの感じ方は別物だと理解しましょう。
受け止める声かけ
「お腹痛いんだね。ちょっと休もうか」
まず痛みを認めることが最優先。「痛いと感じているあなたを信じている」というメッセージが伝わります。
「どこが痛い? いつから?」
痛みに関心を持って具体的に聞くことで、本人も自分の状態を整理できます。
「今日は休んでいいよ」
無理に登校させると、痛みが悪化することもあります。「休んでいい」と許可されることで、緊張が和らぎます。
「いつでもお話してね」
言葉にできない気持ちがあるかもしれないことを、それとなく伝えます。すぐに話さなくても、「いつでも聞く準備がある」という姿勢が大切です。
「お父さん・お母さんもあなたの味方だよ」
シンプルな言葉ですが、子どもにとって最大の安心材料になります。
観察ポイント・症状の記録のつけ方
受診や学校への相談時に役立つよう、症状を記録しておくと良いです。
記録項目の例
- 日付・曜日
- 痛みが出た時間帯
- 痛みの強さ(10段階で評価)
- 痛む場所(みぞおち、へその周り、下腹部など)
- 痛みの性質(ズキズキ、シクシク、キリキリなど)
- 持続時間
- 関連症状(吐き気、頭痛、下痢、便秘など)
- その日の出来事
- 食事の内容
- 排便状況
- 睡眠の状況
- 本人の言葉での表現
記録するメリット
- パターンが見えてくる(特定の曜日・授業の前など)
- 医師に詳しい情報を伝えられる
- 「いつもだ」という曖昧な認識から客観的な事実に変わる
- 改善しているかどうかが分かる
- 本人も自分の状態を整理できる
記録の工夫
毎日続けるのが負担なら、症状があった日だけ記録するスタイルでもOK。アプリ(健康管理アプリなど)を使うと続けやすいことも。本人が小学校高学年以上なら、本人に記録してもらうのも自己理解につながります。
病棟で見てきた合成ケース
※ 守秘義務のため、複数のケースを組み合わせた合成事例です。
ケース1:小4女子・3ヶ月続いた朝の腹痛
毎朝、登校直前に強い腹痛を訴えるように。小児科では原因不明と言われ、両親は「仮病かも」と疑い始めていた。母親が一度仕事を休んで一日一緒に過ごしたところ、本人がポツリと「○○ちゃんに無視されてる」と話した。クラスの中で仲良しグループから外されていたことが判明。
担任に相談し、座席変更や別グループとの活動を増やしてもらった結果、2週間ほどで腹痛が消失。本人も笑顔が戻った。
ケース2:中1男子・過敏性腸症候群と診断
中学入学後から週3〜4回、朝に下痢を伴う腹痛。小児科で過敏性腸症候群(IBS)と診断。背景には「中学のレベルについていけるか」という強い不安があった。
整腸剤と漢方薬を併用しながら、児童精神科でカウンセリングを開始。「失敗してもいい」「完璧でなくていい」という認知の修正に取り組んだ結果、半年で症状が大幅に改善。
ケース3:小6女子・身体疾患が見つかったケース
「学校行きたくないからの腹痛では」と疑われていた小6女子。母親が念のため詳しい検査を希望したところ、軽度のクローン病が判明。心因性だと決めつけずに身体疾患の精査をすることの大切さを実感したケース。
適切な治療を開始したことで腹痛は改善。「あの時、検査を希望して本当に良かった」と母親が涙された。
病棟で見てきた合成ケース・追加2例
ケース4:高1男子・受験ストレスから機能性ディスペプシア
高校1年生の2学期から、食後の胃もたれ・みぞおちの痛みが続くように。本人は「大学受験のことを考えると胃が重い」と話す。胃カメラでは異常なし、機能性ディスペプシアと診断された。
家族カウンセリングで「親の期待が大きすぎたのでは」という気づきがあり、両親が「進路の幅を広げる」ことを伝えた。半年後、症状はほぼ消失。本人も「親が変わってくれて、自分も自分のペースで進められるようになった」と話している。
ケース5:小2女子・転校をきっかけにした分離不安
父親の転勤で転校した小2女子。新しい学校で1ヶ月後から朝の腹痛が始まる。小児科では「過敏性腸症候群かも」と言われたが、両親は「環境変化のストレスだろう」と考え、児童精神科を受診。
「母親と離れる不安」が大きな背景にあると判明。担任の協力で「お母さんが学校近くで待っている」という安心感を作り、徐々に分離時間を延ばしていく方針に。3ヶ月後、母親が学校で待たなくても登校できるようになった。「お母さん、ちゃんと迎えに来てくれるから大丈夫」と本人が言えるまでに。
受診の判断基準
「いつ病院に連れて行くべきか」の判断は難しいものです。以下を目安にしてください。
すぐに受診すべきサイン
- 急激な強い痛み
- 嘔吐を伴う
- 発熱(38度以上)を伴う
- 血便・タール便
- 痛みで動けない
- 右下腹部を強く痛がる(虫垂炎の疑い)
- 顔色が悪い、ぐったりしている
これらの場合は、夜間・休日でも救急対応を検討してください。
1〜2週間以内に受診
- 腹痛が週に3回以上、2週間以上続いている
- 体重が減ってきている
- 食欲がない
- 睡眠が乱れている
- 下痢・便秘が続く
- 本人が「学校に行きたくない」と訴え始めた
長期化したら専門機関へ
- 小児科で「異常なし」と言われたが症状が続く(1ヶ月以上)
- 明らかにストレスが背景にありそう
- 登校しぶり・不登校が始まった
- 家庭での対応に親が疲弊している
この段階では、児童精神科やスクールカウンセラーなど心のケアの専門機関への相談を検討してください。
医療機関の選び方と受診の流れ
第一選択:かかりつけ小児科
まずはかかりつけの小児科で身体的な原因を除外することが大切です。診察、必要に応じて血液検査、便検査、エコー検査などを行います。
身体疾患の精査が必要な場合
小児科で「より詳しい検査が必要」と判断された場合は、小児消化器科などの専門外来に紹介されます。内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)が必要なケースもあります。
心因性の可能性が高い場合
身体的な原因が見つからず、心理的な要因が疑われる場合は、児童精神科・小児心身症外来などへの紹介となります。
児童精神科の受診
児童精神科は予約が取りにくいことが多いです。小児科からの紹介状があるとスムーズに進みます。初診では:
- 症状の経過・パターンを詳しく聞き取り
- 本人と親、別々に話を聞くことも
- 必要に応じて心理検査
- 診断と治療方針の提示
治療の選択肢
1. 薬物療法
過敏性腸症候群やストレス性の胃腸症状には、整腸剤、消化管運動調整薬、漢方薬などが処方されます。重度の場合は、不安症状を和らげる薬を一時的に使うこともあります。
子どもへの薬の使用は慎重に判断され、必要最小限・最短期間が原則です。
2. カウンセリング・心理療法
認知行動療法は、心因性腹痛に有効性が示されています。「痛みに対する捉え方」「不安への対処法」を学ぶことで、症状の悪循環を断ち切ります。
遊戯療法(プレイセラピー)は、低年齢の子どもに有効です。
3. 生活指導
- 規則正しい生活リズム
- 朝食をゆっくり食べる時間の確保
- 適度な運動
- 睡眠時間の確保
- リラクセーション法(深呼吸、軽いストレッチ)
4. 環境調整
ストレス源を取り除く・軽減することも重要です。学校との連携、家庭内のストレス要因の見直し、習い事の整理など。
5. 親へのサポート
「親が安定すること」が子どもの安定につながります。親自身もカウンセリングを受ける、相談先を持つことが大切です。
学校との連携と「休む判断」
担任への伝え方
「腹痛が続いていて、心因性の可能性もあると医師に言われています。○○の時間帯に痛むことが多いようです。学校での様子を教えていただけるとありがたいです」など、具体的に伝えると協力を得やすいです。
養護教諭の活用
保健室の養護教諭は、子どもの心身の不調に詳しい専門家です。「教室に入れない時は保健室で休む」というスタイルを認めてくれる学校も多いです。
スクールカウンセラーへの相談
多くの学校にスクールカウンセラーがいます。担任や養護教諭から紹介してもらえます。学校内での子どもの様子を踏まえた相談ができる強みがあります。
「休む」の判断
「ちゃんと検査して身体的な原因がない」「本人が今日は無理だと感じている」場合は、休ませることが正解です。「無理して行かせて悪化」より「ちゃんと休んで回復」の方が、長期的には学校に通える日が増えます。
「ずる休みになるかも」と心配する必要はありません。本当に身体が辛い時は、休むのが治療の一環です。
家庭でできる生活面の工夫
食事面
- 規則正しい食事時間
- よく噛んでゆっくり食べる
- 朝食は消化の良いものから
- カフェイン・刺激物を控える
- 食物繊維・発酵食品を意識
- 水分補給をこまめに
睡眠
- 就寝・起床時間を一定に
- 就寝1時間前はスマホ・ゲームを控える
- 寝室を快適な環境に(温度・明るさ・音)
- 朝の光を浴びる
運動
- 無理のない範囲で身体を動かす
- 散歩、ストレッチから始める
- 体調が良い日に少しずつ
リラクセーション
- 深呼吸(4秒吸って7秒止めて8秒吐く)
- 軽いストレッチ
- お風呂でゆっくり温まる
- 好きな音楽・本
家族の時間
- 無理に「元気を出して」と言わない
- 一緒にゆっくり過ごす時間
- 子どもの好きなことを尊重する
- 家族の会話をリラックスした雰囲気で
体調の波と「学びの継続」の両立
腹痛が続いて学校を休む日が増えると、「勉強が遅れる」という心配が出てきます。ただ、無理に勉強を詰め込むと、それ自体がストレスになり症状が悪化することも。本人の体調に合わせた学習方法を考えましょう。
体調の良い日だけ短時間
「今日は調子いい」という日に、1日30分でも良いので学習時間を持ちましょう。「やらなければ」というプレッシャーではなく、「やれた」という達成感を大切に。
マイペースで進められる教材
RISU算数のような無学年方式のタブレット教材は、体調に合わせて好きな時間に取り組めます。「今日できなくても、来週やればいい」という気軽さが、心因性腹痛の子には向いています。
オンラインフリースクール
不登校の子向けのオンラインフリースクールは、体調に合わせて好きな時間に参加できます。学習だけでなく、同じ境遇の子との交流も得られます。
「勉強の遅れ」より「心と体の回復」を優先
長い人生から見れば、半年〜1年の勉強の遅れは取り戻せます。心と体の回復を優先することで、結果的に学習にも戻れます。
親自身のメンタルケアも忘れずに
子どもの腹痛に向き合い続けるのは、心身ともに疲れることです。親自身のメンタルケアも大切にしてください。
「親の責任」と抱え込まない
「私の育て方が悪かったのかも」「気づくのが遅かった」と自分を責めていませんか。子どもの心因性腹痛は、家庭環境だけが原因ではありません。学校、社会、本人の気質——多くの要因が絡んでいます。
誰かに話す
家族、友人、専門家——誰かに気持ちを話すだけで、ずいぶん楽になります。一人で抱え込まないでください。
オンラインカウンセリングの活用
子どものことで頭がいっぱいの親御さんには、自宅から利用できるオンラインカウンセリング「cotree(コトリー)」のようなサービスもおすすめです。専門家に話すことで、自分の感情を整理できます。
休息の確保
「子どものために」と頑張り続けると、親が先に倒れてしまいます。週に1回でいいので、自分のための時間を作ってください。
腹痛が出やすい年齢・性差・タイミング
子どもの心因性腹痛には、年齢や性別による特徴的な傾向があります。お子さんの年齢に応じた理解が、対応のヒントになります。
幼児期(3〜6歳)
言葉での表現が未熟なため、「お腹痛い」「ぽんぽん痛い」と曖昧な訴え方をします。実際にはお腹だけでなく、漠然とした不快感を表現していることが多いです。
- 保育園・幼稚園への登園しぶり
- 母親と離れる場面で強くなる
- 夜驚症や夜尿症と併発することも
この時期は分離不安が背景にあることが多く、無理に引き離さず、安心できる環境作りが大切です。
小学校低学年(6〜9歳)
環境の変化(入学、進級、転校)に敏感に反応します。「学校が怖い」「給食が嫌」など具体的な原因が見えやすい一方、本人が言語化できないこともあります。
- 登校直前の腹痛が典型的
- 担任との相性、クラスの雰囲気が大きく影響
- 給食、体育、音楽など特定の場面への不安
小学校高学年(10〜12歳)
友人関係が複雑化し、女子では「グループ問題」が頻繁に。男子も「いじめ」「仲間外れ」など社会的ストレスが増えます。
- 人間関係のストレスが腹痛の最大要因に
- 過敏性腸症候群(IBS)の発症が増える年代
- 思春期前のホルモン変化も影響
中学生(12〜15歳)
思春期真っ只中。学業のプレッシャー、進路、友人関係、家族関係——複合的なストレスが重なります。
- 朝の腹痛・頭痛・吐き気のコンボが多い
- 起立性調節障害との合併も
- 女子は月経との関連も注意
- 長期化しやすく、不登校に発展しやすい
高校生(15〜18歳)
進路選択、受験ストレス、対人関係の深刻化。「もう少し頑張れば」と無理を重ねがちな時期です。
- 受験ストレスでの胃痛・腹痛が増加
- うつや不安症との合併も
- 本人が「親に話すこと自体がストレス」になることも
性差について
女子の方が心因性腹痛の頻度が高いと言われています。背景には:
- 感受性の傾向
- 人間関係の複雑さ(特に思春期)
- 月経関連の痛みとの混在
- 感情表現の方向性の違い
男子は腹痛として現れにくく、頭痛、イライラ、不眠、引きこもりなど別の形で出ることが多いです。
「学校で痛くなった時」の対応マニュアル
家庭での対応はできても、「学校で痛くなった時」の対応に悩む親御さんは多いです。事前にルールを決めておくと、本人も親も学校も対応しやすくなります。
本人にどう動いてもらうか
「痛くなったら○○する」を本人と事前に決めておきます。
- まず担任に「お腹が痛い」と伝える
- 保健室で休む
- 休んでも改善しなければ、親に連絡してもらう
- 早退の判断は本人と養護教諭で
学校との事前の取り決め
担任・養護教諭に「腹痛が出やすい子」であることを伝え、対応方針を共有しておきます。
- 「保健室での休憩を認めてほしい」
- 「給食を少なめに、無理に食べさせないでほしい」
- 「体育・行事の見学を柔軟に認めてほしい」
- 「早退の判断は親に連絡してから」
親が学校に行く時の心構え
「迎えに行く」のは構いませんが、行く時の表情・態度が大切です。
- イライラした顔で行かない
- 「またか」と言わない
- 無言でなく、「お疲れ様」と声をかける
- 帰りの車中で詰問しない
- 帰宅後、まずゆっくり休ませる
「早退=さぼり」と思わない
早退は「治療の一環」と捉えましょう。無理に最後まで居させると、翌日以降の登校が難しくなることがあります。
小児科医との上手な話し方
小児科を受診する際、限られた診察時間で必要な情報を伝えるコツがあります。
事前に整理しておくこと
- いつから症状が出ているか
- どんな時に出るか(時間帯、状況)
- 痛みの強さ・場所・性質
- 関連症状(嘔吐、下痢、便秘、発熱、頭痛など)
- 食事・睡眠・排便の状況
- 学校・家庭での変化
- これまで試したこと
- これから聞きたいこと
箇条書きにしてメモを持参すると、診察がスムーズになります。
「気のせいでしょう」と言われた時
小児科医によっては「気のせい」「成長すれば治る」と言われることがあります。納得できない場合は:
- 「症状で本人が学校に行けず困っている」と伝える
- 「もう少し詳しい検査をお願いできますか?」と聞く
- 必要なら「他の医療機関を紹介してほしい」と頼む
- セカンドオピニオンを求める
「子どもの代弁者」として、親が必要な情報を引き出すことが大切です。
本人を医師の前で話させる
親がすべて代弁してしまうと、本人の本当の状態が見えづらくなります。本人が話せる年齢なら、本人の言葉で症状を伝えてもらうことも大切です。診察前に「お医者さんに、どこがどう痛いか自分で言ってみてね」と促しておきましょう。
記録の活用
家庭でつけた症状記録を持参すると、医師の判断材料が増えます。「先週はこんな感じでした」と具体的に伝えられます。
腹痛と一緒に出やすい他の症状
心因性腹痛は、単独で出るより、他の症状と一緒に出ることが多いです。同時に注意しておきたい症状を整理します。
頭痛
緊張型頭痛、片頭痛として現れることが多いです。ストレスや睡眠不足、姿勢の悪さも引き金になります。「お腹も頭も痛い」と訴える子は要注意。
めまい・立ちくらみ
起立性調節障害が背景にあることがあります。朝起きられない、午前中ボーっとする、急に立つとフラフラする——これらは別記事「起立性調節障害(OD)と不登校の関係」で詳しく解説しています。
吐き気・嘔吐
朝食を食べると吐いてしまう、特定の状況で吐き気が出るのは、心因性の可能性も。摂食障害との関連も注意。
不眠・過眠
寝つきが悪い、夜中に目が覚める、逆に何時間も寝てしまう。睡眠の乱れは心の不調のサインです。
食欲低下
「食べたくない」「食べると気持ち悪い」が続く場合、心理的要因や摂食障害の可能性を考えます。
動悸・呼吸困難感
不安発作や過呼吸の前兆として現れることも。本人が「胸がドキドキする」「息ができない」と訴えたら注意。
イライラ・落ち込み
感情の波が大きくなる、いつもより怒りっぽい、逆にぼんやりして無気力。心の状態のバロメーターです。
「複合症状」は心の不調のサイン
身体症状が複数同時に出ている時は、心の不調が背景にある可能性が高いです。早めに児童精神科や小児心身症外来への相談を検討してください。
思春期女子特有の腹痛と注意点
思春期の女子の腹痛には、月経関連の問題も絡んできます。区別が難しいこともあるので、注意が必要です。
月経痛(生理痛)
初経から1〜2年は周期が安定せず、痛みも強く出やすいです。「気合いで我慢」ではなく、適切な対応が大切。
- 市販の鎮痛薬は早めに服用すると効果的
- 痛みが強く日常生活に支障があれば婦人科受診
- 低用量ピルの選択肢もある
月経前症候群(PMS)
月経の数日前から腹痛、頭痛、イライラ、気分の落ち込みなどが出ることがあります。月経が始まると軽くなるのが特徴。
子宮内膜症の可能性
強い月経痛、月経時以外の腹痛、性器出血——これらは子宮内膜症の可能性もあります。婦人科での精査が必要です。
心因性腹痛と月経痛の区別
記録をつけて、月経周期との関連を見ます。月経時にしか痛まないなら月経関連、それ以外の時期にも痛むなら心因性も含めて考えます。
母娘で話す機会を
「お母さんも昔こうだったよ」と経験を共有することは、娘さんにとって大きな安心になります。婦人科受診も「特別なこと」ではなく「自然なこと」として伝えましょう。
「お腹痛い」から始まる不登校への道筋——早期介入の重要性
心因性腹痛をきっかけに、不登校に発展するケースは少なくありません。早期介入が、長期化を防ぐ鍵です。
典型的な経過
- 登校前の腹痛が時々出る
- 腹痛で時々遅刻・早退
- 腹痛で休む日が増える
- 「学校に行きたくない」と訴え始める
- 登校できない日が連続する
- 完全な不登校に
この経過は数週間〜数ヶ月で進むことが多いです。途中で介入すれば、流れを止められる可能性が高まります。
早期介入のポイント
段階1〜2の時:
- 受診で身体的な原因を除外
- 家庭で「休んでいい」と許可を出す
- 学校との情報共有を開始
段階3〜4の時:
- スクールカウンセラーへの相談
- 児童精神科への受診検討
- 本人の話を丁寧に聞く時間を持つ
- 環境調整(負担の軽減)
段階5〜6の時:
- 専門医療機関での治療開始
- 家庭の対応方針を明確化
- 必要に応じてフリースクール・オンライン学習も検討
- 長期戦への心構え
「行かせ続ける」ことのリスク
「無理にでも行かせたら、いつかは慣れる」と考える親御さんもいますが、心因性腹痛の場合、無理な登校は症状を悪化させることが多いです。
「短期間休む→回復→徐々に復帰」の方が、長期的には登校日数が増えるケースが多いと、現場では感じます。
復帰のスタイル
休んだ後の復帰は、段階的に進めます。
- まず家庭で生活リズムを整える
- 放課後の短時間登校から
- 保健室登校・別室登校
- 1時間目だけ登校
- 午前中だけ登校
- 徐々にフル登校
「フル登校がゴール」と決めつけず、本人のペースを尊重しましょう。
乗り越えた家族の3つの共通点
病棟で多くの家族を見てきた中で、「腹痛を乗り越えていった家族」には共通点がありました。
共通点1:「治す」より「付き合う」スタンス
「早く治してあげなきゃ」と焦るより、「この症状とどう付き合っていくか」と長期的な視点で取り組んだ家族の方が、結果的に早く改善することが多いです。焦りはプレッシャーになり、子どもの症状を悪化させやすいからです。
共通点2:「家族全体」で取り組んだ
「腹痛の本人」だけの問題ではなく、「家族全体の課題」として捉えた家族は、根本的な改善につながりやすいです。父母、きょうだい、祖父母も含めて、家庭の雰囲気・関わり方を見直すアプローチが効果的。
共通点3:専門家を「使った」
家庭だけで抱え込まず、医師、カウンセラー、養護教諭、スクールカウンセラー、必要に応じて児童相談所も含めて、「使えるリソースは使った」家族は、回復が早い傾向に。「専門家に頼るのは弱さではない」「使える資源を使うのは賢さ」という認識が大切です。
具体的な相談先リスト
「どこに相談すればいいかわからない」という方のために、具体的な相談先を整理します。
身体面の相談
- かかりつけ小児科
- 小児消化器専門外来(大学病院など)
- 地域の総合病院の小児科
心の面の相談
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- オンラインカウンセリング(cotreeなど)
- 親同士のピアサポート(KHJ家族会など)
状況に応じて、複数の窓口を併用するのが現実的です。「ここはだめだった」と思ったら、別の窓口を試してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 仮病かどうか見分けるには?
A. 「見分けようとしない」のが大事です。仮病だとしても、それは「本当は休みたい」というサインで、本人にとっては切実なもの。「仮病だから」と切り捨てると、信頼関係を損ねます。「休みたい気持ちがあるんだね」と受け止める方が、長期的には効きます。
Q2. 受診のタイミングは?
A. 2週間以上腹痛が続く、月に何度も学校を休む、夜にも腹痛がある、これらに該当したら受診してください。小児科から始めて、心の負担が背景にありそうなら児童精神科への紹介も視野に入れます。
Q3. 学校を休ませていいですか?
A. 体調が悪い時に休ませるのは、正当な判断です。「無理して行かせて悪化」より、「ちゃんと休んで回復」の方が、長期的には学校に通える日が増えます。
Q4. 「明日は行きなさい」と言うべき?
A. 「明日は行ける?」と聞く形が、本人の自主性を尊重します。「行きなさい」と言うと、本人にとってのプレッシャーが上がり、また腹痛が出やすくなります。
Q5. 周りに「甘やかし」と言われる
A. 周りの理解を得るのは難しいことです。「医師の見立てに基づいて休ませている」と伝える、それでも理解されないなら距離を置く、という選択肢も。「全員に理解してもらう」必要はありません。
Q6. 兄弟との対応の差をつけてもいい?
A. 体調が悪い子と元気な子では、対応が変わるのが当然です。「兄ちゃんはちゃんと学校行ってる」など比較しないこと。兄弟にも「○○は今、お腹の調子が良くないんだ」と簡潔に説明しましょう。
Q7. ストレスの原因がわからない
A. 本人もわからないことが多いです。「これが原因」と特定しなくても、対応はできます。受け止める姿勢、ストレス源の探索、生活面の調整を並行して進めましょう。
Q8. 薬は使うべき?
A. 医師の判断によります。子どもへの薬の使用は慎重に判断され、必要最小限・最短期間が原則です。生活指導や心理面のケアと並行して使うのが基本です。
Q9. 学校に病名を伝えるべき?
A. 病名そのものより「腹痛が続いている、心因性の可能性もある」程度で伝えれば十分です。詳しい病名は、必要に応じて主治医と相談しながら伝えるかどうか決めましょう。
Q10. 「給食が嫌い」と言って腹痛が出ます
A. 食事への不安が腹痛のトリガーになっている可能性があります。担任に「給食を少なめに」「無理に食べさせない」など配慮を依頼しましょう。
Q11. 復学した後、また腹痛が出るのが心配です
A. 「また出るかも」というプレッシャーが新たな腹痛を呼ぶこともあります。「出てもまた休めばいい」というスタンスでいることが、結果的に再発予防になります。
Q12. 過敏性腸症候群は一生治らないですか?
A. 治療や生活改善で症状を大幅にコントロールできます。「完治」を目指すより「上手に付き合う」スタンスが現実的です。多くの場合、成長と共に症状が落ち着いていきます。
Q13. きょうだいに「ずるい」と言われます
A. 「○○はお腹の調子が良くないから、特別に休んでいるんだ」とシンプルに説明しましょう。きょうだいにも「あなたが体調を崩したら同じように休んでいい」と伝えると、不公平感が和らぎます。きょうだい自身がストレスを抱えていないかも、時々目を向けてみてください。
Q14. 親が子どもの腹痛にイライラしてしまう
A. それは自然な感情です。毎日のように腹痛を訴えられたら、誰でも疲れます。「イライラしてしまう自分」を責めず、まず親自身が休息をとる時間を作りましょう。一人で抱えず、配偶者・家族・専門家に「助けて」と言える環境作りが大切です。
薬の知識——市販薬と処方薬の使い分け
子どもの腹痛に薬を使う際、知っておきたいポイントを整理します。
市販薬の活用
軽い腹痛なら、市販の整腸剤や鎮痛薬で対応できることもあります。ただし、子ども用に処方されたもの・小児用と明記されたものを選びましょう。
- 整腸剤:ビオフェルミン、新ビオフェルミンなど
- 鎮痛薬:小児用バファリン(カロナール成分)
- 胃薬:子どもには大人用は使わない
市販薬を使う際の注意:
- 3日以上続けて使うなら受診
- 用量を必ず守る
- 添加物アレルギーに注意
- 説明書をよく読む
処方される主な薬
医療機関では症状に応じて以下のような薬が処方されます。
- 整腸剤:ミヤBM、ラックビーなど
- 消化管運動調整薬:ガスモチンなど
- セレキノン:過敏性腸症候群の治療薬
- 漢方薬:小建中湯、桂枝加芍薬湯、半夏瀉心湯など
- 抗不安薬:重度の場合、短期間のみ
漢方薬の活用
子どもの心因性腹痛には漢方薬が有効なケースが多いです。副作用が比較的少なく、長期的に使いやすいのが特徴。
- 小建中湯(しょうけんちゅうとう):虚弱体質の子の腹痛に
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):腹部緊張による痛みに
- 抑肝散(よくかんさん):イライラ・興奮を伴う時
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):胃の不調と緊張の混在
漢方薬は子どもの体質や症状に合わせて選びます。医師・薬剤師に相談を。
薬に頼りすぎない
薬は症状を和らげる手段ですが、根本原因への対応も並行して行うことが大切です。「薬で痛みを抑える」だけでは、ストレスの根本は変わりません。
家族全体でできる予防的アプローチ
「腹痛が出てから対応」だけでなく、日頃から家族全体でできる予防的アプローチもあります。
家庭の雰囲気作り
- 食卓で楽しい会話を心がける
- 「失敗してもいい」雰囲気
- 子どもの話を最後まで聞く
- 否定的な言葉を減らす
- 家族で笑える時間を持つ
「弱音を吐ける」家を目指す
「強くなれ」「我慢しろ」が当たり前の家では、子どもは弱音を吐けず、症状として表現するしかなくなります。「疲れた」「嫌だ」「行きたくない」を言える家であることが、子どもの心身の健康を守ります。
親自身が「弱音を吐く姿」を見せる
親が「お母さん今日疲れた」「お父さん仕事大変だった」と弱音を吐く姿を見せることで、子どもも「弱音を吐いていいんだ」と学びます。完璧な親でいる必要はありません。
定期的な「家族の時間」
週に1度、家族みんなで何かをする時間を持ちましょう。一緒に料理、散歩、ゲーム、映画——内容は何でもOK。「家族と一緒にいる時間が心地よい」記憶が、子どもの安心感の土台になります。
夫婦間の良好な関係
子どもは親同士の関係を敏感に感じ取ります。夫婦間の緊張は、子どもの腹痛の引き金になることも。完璧な仲の良さは必要ありませんが、「お互いを尊重する姿」を見せることが大切です。
看護師視点でのまとめ
子どもの「お腹が痛い」は、「言葉では表現できない不調を、体で訴えているサイン」のことが多いです。「仮病かどうか」より「何がこの子を辛くしているか」を一緒に考えるスタンスが、長期的にお子さんの心と体を守ります。
大事なポイントを整理すると:
- 「お腹が痛い」は脳が作り出す本物の痛み
- 子どもは感情を「身体化」しやすい
- まず小児科で身体疾患を除外する
- 心因性が疑われたら児童精神科やスクールカウンセラーへ
- 痛みを否定せず、まず受け止める
- 「休んでいい」と許可する
- 症状を記録してパターンを把握する
- 学校と連携して環境を調整
- 勉強の遅れより心と体の回復を優先
- 親自身のメンタルケアも忘れずに
無理に学校に送り出すのではなく、一度立ち止まって「何か辛いことがあるのかな」と寄り添ってみてください。原因がわからなくても、「あなたの痛みを信じているよ」というメッセージが、子どもにとって何よりの安心になります。
そして、何より大切なのは——あなたが「子どものために」ここまで読んでくれたこと。その想いがある限り、家族は必ず良い方向に向かっていきます。一人で抱え込まず、使えるサポートを使いながら、少しずつ進んでいきましょう。応援しています。
看護師として現場で見てきた「お腹が痛い」の背景
児童思春期精神科の現場で、「学校に行く前にお腹が痛くなる」というお子さまを多く担当してきました。仮病でも怠けでもなく、本物の痛みとして体に現れているこの症状は、お子さまの心が「もうこれ以上は無理」と教えてくれているサインです。看護師として強くお伝えしたいのは、痛みの強さや頻度だけでなく、その背景にある「心の声」に耳を傾ける姿勢が、長期的にお子さまを守る大切な視点だ、ということです。
たとえば、ある小学生のお子さまは、毎週月曜日の朝に必ずお腹が痛くなる、という状況が続いていました。複数の小児科を回っても身体的な異常は見つからず、ご家族は途方に暮れていました。児童精神科を受診し、ゆっくりお話を聞く中で、月曜日の一時間目に決まってあった発表の時間が、お子さまにとって大きな負担になっていたことが分かりました。学校と連携して発表の形を変えることで、お子さまのお腹の痛みは徐々に減っていきました。
このように、お腹の痛みの「裏側」に何があるかを丁寧に探ることが、根本的な改善に繋がります。看護師として現場で感じてきたのは、お腹の痛みの背景には、お子さまが自分でも気づいていない緊張や不安が隠れていることが多い、ということです。お子さま自身が「これが理由でお腹が痛い」と説明できないことも珍しくありません。だからこそ、保護者の方が一緒に背景を探ってくれる存在になることが、大切な意味を持ちます。
もう一つお伝えしたいのは、お腹の痛みは「特定の場面」と結びついていることが多い、ということです。学校の特定の授業、特定の友人との関係、給食の時間、休み時間――こうした具体的な場面を、お子さまの日常から丁寧に拾っていくことで、原因の特定がしやすくなります。お子さまにとって「いつ痛くなったか」「どんな時に痛みが強かったか」を一緒に振り返る習慣が、原因探しの大切な手がかりになります。
お腹が痛いと訴えるお子さまへの初期対応の具体ステップ
お子さまが「お腹が痛い」と訴えた時、保護者の方がどう対応するかが、その後の症状の経過に大きく影響します。看護師として現場でお伝えしている、初期対応のステップを具体的にご紹介します。これは特別な技術ではなく、誰でも今日から実践できる対応です。
ステップ1として、まず痛みを「信じる」ことから始めます。「またお腹が痛いの」「気のせいじゃないの」と疑う言葉は、お子さまの心を深く傷つけます。たとえ身体的な原因が見つからなくても、お子さまが感じている痛みは本物です。「痛いんだね、辛いね」とまず受け止める姿勢が、お子さまにとっての安心感の出発点になります。
ステップ2として、痛みの状態を具体的に確認します。「いつから痛いか」「どこが痛いか」「どんな痛みか(鈍い・刺すような・締め付ける)」「どんな時に強くなるか」――こうした情報を、お子さまに圧をかけず、ゆっくり聞いていきます。一度に全部聞こうとせず、お子さまが話しやすいタイミングで、少しずつ把握していく姿勢が大切です。
ステップ3として、安心して過ごせる環境を作ります。お子さまが横になれる場所、温かい飲み物、ゆったりとした時間――こうした環境が、お腹の痛みを和らげることがあります。痛みが強い時は、無理に動かさず、お子さまのペースで過ごせるようにしてください。「学校に行かないと」「みんなに迷惑がかかる」というプレッシャーは、痛みを悪化させることがあります。
ステップ4として、必要に応じて医療機関を受診します。まずは小児科で身体的な原因を除外します。器質的な疾患(潰瘍、便秘、感染症など)がないかを確認した上で、心因性が疑われる場合は、児童精神科や心療内科への紹介を相談してみてください。多くの小児科の先生方が、心因性の腹痛に理解を持っておられます。
身体化の典型パターンと、保護者の方ができる観察
児童思春期精神科で「身体化」という言葉を使うことがあります。心の中で処理しきれない感情やストレスが、体の症状として現れる現象です。お子さまは大人より身体化しやすい傾向があり、特にお腹、頭、胸、足など、いろいろな部位に症状が出やすいです。看護師として現場で見てきた、典型的な身体化のパターンをご紹介します。
一つ目のパターンは、「特定の曜日・時間に集中する」タイプです。学校がある日の朝、特定の授業の前、テストの日――こうした「ストレス要因が予測できる時間帯」に症状が現れます。このタイプは、ストレス要因が特定しやすく、対応もしやすい傾向があります。週末には症状が出ない、長期休みには出ないという特徴も、よく見られます。
二つ目のパターンは、「特定の人間関係に伴う」タイプです。特定の友人と過ごす日、特定の先生の授業、特定の家族との関わりがある時など、人間関係のストレスが症状として現れます。このタイプは、お子さま自身が原因を言いにくいことも多く、保護者の方が日常の中で観察しながら、人間関係の何が負担になっているかを探っていく必要があります。
三つ目のパターンは、「全般的な不安が高まっている」タイプです。特定の場面に限らず、慢性的に不安や緊張が高い状態で、症状が断続的に続きます。このタイプは、お子さまの全体的な心の状態を整える必要があり、専門的なサポートが特に有効です。
四つ目のパターンは、「環境変化に反応する」タイプです。新学期の始まり、クラス替え、転校、家族の変化(引っ越し、両親の不調、家族構成の変化など)の時期に、症状が出やすくなります。このタイプは、環境変化の予期不安が和らぐと共に、症状も和らいでいく傾向があります。
学校との連携を上手に進める方法
お腹の痛みが長く続く場合、学校との連携が大切な選択肢になります。看護師として現場でお伝えしているのは、「学校に伝える時の準備」が、その後の連携の質を大きく左右する、ということです。学校に伝える時に意識したいポイントを、いくつかご紹介します。
一つ目は、「事実と背景を分けて伝える」ことです。「お腹が痛いと言って学校に行きたがらない」という事実と、「医療機関で身体的な原因はないと言われた」「心因性の可能性が高いと言われている」という背景を、整理して伝えると、学校側も対応しやすくなります。事前にメモを作って、伝える内容を整理しておくと、感情的にならず冷静に話せます。
二つ目は、「お願いしたいことを具体的に伝える」ことです。「気にかけてあげてほしい」という抽象的なお願いより、「保健室に行きたい時には、無理に教室に戻さないでほしい」「発表の場面では、お子さまのペースを尊重してほしい」など、具体的な配慮をお願いするほうが、学校側も実行しやすくなります。
三つ目は、「相談しやすい先生を見つける」ことです。担任の先生だけでなく、養護教諭、スクールカウンセラー、特別支援教育コーディネーターなど、お子さまの状況を共有できる先生を複数持つことで、対応の幅が広がります。学校全体でお子さまを支える体制が整うと、お子さまの安心感も大きくなります。
四つ目は、「定期的な情報共有を続ける」ことです。一度伝えて終わりではなく、お子さまの状況の変化を、定期的に学校と共有していきます。改善した点、新たに困っている点を、こまめに共有することで、学校側も柔軟に対応を調整できます。看護師として、こうした「継続的なコミュニケーション」を続けているご家族のお子さまの状況が、長期的に改善していくケースを、現場で何度も見てきました。
長期的に身体症状を減らしていく家庭環境の整え方
お腹の痛みを根本的に減らしていくためには、急性期の対応だけでなく、長期的な家庭環境の整え方も大切な要素になります。看護師として現場でお伝えしているのは、「家庭が、お子さまにとって心からくつろげる場所であること」が、長期的な改善の土台だ、ということです。
一つ目は、「家庭の中の予測可能性を高める」ことです。発達特性の有無に関わらず、「次に何が起きるか分からない」状態は、お子さまの不安を高めます。食事の時間、お風呂の時間、寝る時間など、基本的な生活リズムが安定していること、家族のスケジュール変更を事前に伝えること――こうした予測可能性が、お子さまの安心感を支えます。
二つ目は、「家庭の中の批判的な言葉を減らす」ことです。お子さまの言動を頻繁に評価したり、批判したりする家庭環境は、お子さまの中の緊張を高めます。完璧でなくても、頑張りや過程を認める言葉を増やし、批判的な言葉を意識的に減らす姿勢が、家庭の空気を整えていきます。
三つ目は、「お子さまの気持ちを言葉にする時間を持つ」ことです。「今日はどうだった?」「最近何か気になることある?」と、お子さまの気持ちを聞く時間を、日常の中に意識的に作ります。お子さま自身が言葉で気持ちを表現できる力が育つと、身体症状として現れる必要が減っていきます。
四つ目は、「家庭の中に『何もしない時間』を作る」ことです。常に何かを頑張る、達成する、改善するという雰囲気は、お子さまの心に疲労を蓄積させます。家族で、ただゆっくり過ごす時間――テレビをつけずに会話する時間、家族でぼーっとする時間、何の予定もない週末の午後――こうした時間が、お子さまの心の回復を支えます。
看護師として、現場でお会いするお子さまの中で、家庭環境を丁寧に整えていったご家族のお子さまほど、長期的にお腹の痛みが軽くなっていくケースを、何度も見てきました。家庭の空気は、お子さまの体にも、心にも、確実に影響しています。今日からの小さな工夫が、お子さまの未来を支える大切な土台になります。
保護者の方ご自身のメンタルケアも大切に
お子さまのお腹の痛みに毎日向き合うことは、保護者の方にとっても大きな負担です。「学校に行かせるべきか」「休ませるべきか」と毎朝迷う日々、医療機関を回っても原因が分からない不安、周囲からの「甘やかしているのでは」というプレッシャー――こうした要素が、保護者の方の心を疲弊させていきます。
看護師として現場でお伝えしているのは、保護者の方ご自身のメンタルケアも、お子さまの回復にとって大切な要素だ、ということです。保護者の方が落ち着いている時、お子さまも落ち着きやすくなります。保護者の方が緊張している時、お子さまの症状も悪化しやすくなります。「自分のためのケア」は、結果として「お子さまのためのケア」にも繋がります。
具体的には、保護者の方ご自身が話を聞いてもらえる場を持つこと、ご自身が休息できる時間を意識的に作ること、地域の親同士の集まりやオンラインのサポートグループに参加することなどが、心の負担を軽くする方法になります。「自分一人で抱え込まない」という姿勢が、長期的に家庭を支える力になります。
本記事を最後までお読みくださって、ありがとうございました。お子さまのお腹の痛みと向き合うご家族を、看護師として、現場から心からお応援しています。一歩一歩、ゆっくり進んでいきましょう。
同じ症状が続く時に意識したい「回復のサイン」
お腹の痛みが長く続いている時、ご家族は「いつ良くなるのか」という見えない不安を抱えやすくなります。看護師として現場でお伝えしているのは、回復は一直線ではなく、波のように行ったり来たりしながら進んでいく、ということです。今日が辛くても、来週には少し良くなる、また悪くなる、そんな波を繰り返しながら、長期的にはお子さまの回復力が育っていきます。
具体的な回復のサインとしては、こうしたものがあります。痛みの頻度が少しずつ減っている、痛みの強さが軽くなっている、痛みがあっても短時間で和らぐ、痛みがあっても何かを楽しむ気持ちが残っている、お子さま自身が「お腹痛い」と言いやすくなっている――こうした変化を、保護者の方が気づいて言葉にしていくと、お子さま自身も「自分は良くなっている」という実感を持ちやすくなります。
波があっても、長い目で見ると確実に整っていく――この視点を、ご家族で共有していただければと思います。
ご家族の毎日の努力に、看護師として、心から敬意を表しています。お子さまの心と体の声を聴き続けるその姿勢が、何よりの宝物になります。
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