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こんにちは。児童思春期精神科で約8年間看護師をしている星野レンです。病棟では、不登校や発達特性を抱える小学生から高校生、そしてその親御さんと毎日のように関わっています。
- はじめに|「この子の将来、どうなるんだろう」と眠れない夜のあなたへ
- 進路選択を考える前に|大切にしたい4つの土台
- 進路選択のタイムライン|学年別の動き方
- 中学校選び|小学校卒業後の選択肢を全部整理
- 高校選び|全日制以外もたくさんある
- 大学・専門学校・就労準備期
- 就労|成人後の選択肢を全部見ていく
- 学校見学のポイント|パンフでは分からないことを見抜く
- 進路変更(中退・転校・編入)という選択肢
- 引きこもりからの社会復帰|段階的アプローチ
- 経済的支援・制度|知らないと損をする全制度
- 親の準備|情報・対話・夫婦のすり合わせ
- 進路選択期のメンタル不調をケアする
- 「先輩家庭」の声から学ぶ
- 進路選択中にお子さまが荒れる・崩れる時の対応
- 受験当日・面接当日の体調管理と心のケア
- 三者面談・保護者面談で先生に伝えるべきこと
- 進路選択に役立つ無料の公的相談先・支援機関の使い分け
- よくある質問(FAQ)
- Q1.通信制高校って、本当に大学進学できるの?
- Q2.障害者雇用は給料が安いと聞くけど…
- Q3.将来この子が自立できるか不安です…
- Q4.フリースクールは出席扱いになる?
- Q5.浪人や留年はマイナスになる?
- Q6.高卒認定試験ってどんな試験?
- Q7.子どもが「働きたくない」と言います
- Q8.障害者手帳を取るべきか迷います
- Q9.「進路選択を考えるのもしんどい」と本人が言います。どうすれば?
- Q10.志望校に落ちた後、本人が立ち直れません
- Q11.祖父母や親戚から進路について口を出されて困っています
- Q12.お子さまに合った進路情報を、効率的に集めるコツはありますか?
- Q13.進路選択を本人がまったく考えてくれません。親だけが焦っています
- まとめ|複数のルートがある。合わなかったら、変えればいい
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はじめに|「この子の将来、どうなるんだろう」と眠れない夜のあなたへ
「学校に行けない我が子を見ていると、将来が不安で夜も眠れない」「中学校はどうする?高校は?就職は?考えれば考えるほど胃が痛くなる」――外来や病棟で、こうした声を本当によく耳にします。子どもが不登校になったり、発達障害の診断を受けたりした瞬間から、親御さんの頭の中は「将来どうなるのか」という不安でいっぱいになります。
でも、まず最初にお伝えしたいのは、「学校に行けない=人生終わり」では絶対にないということです。私はこの8年間で、中学校をほとんど休んだ子が通信制高校から大学に進学した姿、教室に入れなかった子がIT系の専門学校で才能を開花させた姿、引きこもりだった青年が就労支援を経て自分らしく働く姿を、何度も見てきました。今は道が見えなくても、選択肢は驚くほどたくさんあるのです。
むしろ、近年は「みんなと同じ道」を歩むほうが少数派になりつつあります。文部科学省の調査でも、不登校の小中学生は34万人を超え、通信制高校に通う生徒は29万人以上。ここ数年は毎年過去最多を更新しています。「うちの子だけが特殊」という時代は終わり、社会全体が「多様な学び方・働き方」に対応するために動き出しているのです。だから、不安に飲み込まれそうになった時こそ、冷静に「今ある選択肢」を1つずつ眺めてみてほしいのです。
この記事は、中学校選びから高校、大学・専門学校、そして就労までを「1本ですべて整理できる完全ガイド」として書きました。ブックマークして、進路の節目ごとに何度でも読み返してください。あなたとお子さんが、自分たちに合った道を見つけるための「地図」になれたら嬉しいです。
進路選択を考える前に|大切にしたい4つの土台
1.焦らない。人生は思っているよりずっと長い
進路の話になると、どうしても「同級生は…」「みんなは…」と比べてしまいがちです。でも、人生は80年以上あります。中学・高校の3年が「みんなと違うルート」だったとしても、それが人生全体に占める割合はごくわずか。むしろ「自分に合ったペースを見つけた数年間」になることもあります。
病棟で出会った高校生のAさん(仮名)は、中2から不登校になり「もう自分の人生は終わった」と言っていました。けれど通信制高校で写真と出会い、20歳でフォトグラファーとして独立。今では同じ世代の若者を撮影する仕事をしています。「あの3年間があったから今の自分がいる」と話してくれました。
もう一人、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けたBさん(仮名)は、小学校高学年から教室に入れず、中学校はほとんど別室登校。親御さんは「高校なんて無理だろう」と覚悟していたそうですが、本人がプログラミングに興味を持ち、通信制高校のITコースに進学。在学中に作ったゲームが小さなコンテストで入賞し、専門学校を経て今はゲーム会社で働いています。「合う環境に出会えた瞬間に、別人みたいに動き出す」――この子たちを見ていて、私が一番強く感じることです。
2.子の意志を尊重する
親が「ここがいい」と思っても、本人の意志がなければ続きません。逆に、親から見て不安な選択でも、本人が選んだ道なら踏ん張れる力が湧くものです。「どう思う?」「気になる学校はある?」と、何度も対話を重ねていくことが大切です。
3.「合わなかった時に戻れる」道を選ぶ
進路選びで一番大切なのは、「失敗しても戻れる」設計にすること。通信制高校から全日制への転入、専門学校から大学への編入、一般雇用から障害者雇用への切り替え――今はどの分岐点にも「やり直しのルート」があります。「ここを選んだら一生決まる」というプレッシャーを、まず親御さん自身が手放しましょう。
4.完璧な選択肢は無いと知る
どの選択肢にもメリットとデメリットがあります。「100点の道」を探すよりも、「今のこの子に60〜70点合っていそうな道」を選んで、走りながら調整していく方が現実的です。
進路選択のタイムライン|学年別の動き方
進路選択は、本格的な受験期だけのものではありません。各学年で意識しておくべきことがあります。早めに動き始めることで、本人と家族の選択肢が広がります。
小学校高学年:中学進学を視野に
- 中学受験・地元中学・私立中学・国立中学などの選択肢を知る
- 本人の特性に合いそうな環境を、複数の学校説明会で見る
- 不登校気味・特性が見える場合は、6年生秋までに方向性を整理
- 就学相談を活用する
中学1〜2年:高校進学の選択肢を広げる
- 全日制以外(通信制・定時制・サポート校・高卒認定)の存在を知る
- 合同進学相談会・通信制高校合同説明会への参加
- 不登校気味の場合は中2のうちから通信制を視野に
- 本人の興味・関心を観察する時間を持つ
中学3年:志望校決定と出願準備
- 夏までに複数校を見学
- 合理的配慮の申請(必要なら)は出願の2〜3か月前から
- 診断書の取得は早めに(医師の対応に時間がかかる)
- 「滑り止め」「合格安全校」を1校は確保
高校1〜2年:大学・就労準備の足場作り
- 進学・就職・専門学校・就労移行支援などの選択肢を整理
- 本人の興味・得意を活かせる方向性を一緒に探す
- 必要なら手帳取得・障害学生支援室の利用を検討
高校3年:受験・就活と並行する手続き
- 大学受験での合理的配慮申請(半年前から準備)
- 障害者雇用の枠での就活も視野に
- 就労移行支援を選ぶ場合は卒業後すぐに利用開始できるよう調整
「あとから動けば間に合う」と思いがちですが、診断書の発行や合理的配慮の申請は、思っているより時間がかかります。早めに動くだけで、選択肢の質が変わります。情報収集だけでも早めに始めて、本人の状態が変わったときにすぐ動けるよう準備しておきましょう。
節目で「振り返り」の時間を作る
各学年の春・夏・秋・冬と、季節ごとに本人と進路について話す時間を設けると、家族の認識が揃いやすくなります。「最近どう感じている?」「気になる選択肢はある?」とゆるく聞くだけ。本人が答えにくければ、無理に引き出さず、種をまく感覚で続けてください。テレビや雑誌で進路関連の話題が出た時に、「ああいう道もあるんだね」と自然に共有するのも有効です。
中学校選び|小学校卒業後の選択肢を全部整理
中学校は義務教育なので「行かなくていい」わけではありませんが、形態は選べます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
① 公立中学校(通常級)
地元の中学校。多くの子が選ぶ最も一般的な道です。集団生活が苦手な子には負担が大きいこともありますが、配慮をお願いすることは可能です。担任・スクールカウンセラー・教育相談室と連携しながら、合理的配慮を活用していきましょう。
② 公立中学校の支援級・通級
発達特性のある子に向けた、少人数の特別支援学級(支援級)と、通常級に在籍しながら週数時間だけ通う通級指導教室があります。支援級は科目によって通常級との行き来が可能な学校もあり、本人の状態に合わせて柔軟に組み合わせられます。就学相談を経て決定するため、小6の春〜夏頃から動き始めるのが理想です。
③ 私立中学校(受験)
校風や教育方針で選べるのが私立の強み。発達特性に理解のある学校、少人数制の学校、ICT教育に力を入れる学校など多様です。受験には学習時間と費用が必要ですが、「学校選び」が「環境選び」になるため、特性のある子にとって最適な居場所を見つけられる可能性があります。
④ 公立中高一貫校
適性検査で入学する中高一貫校。高校受験がないため6年間落ち着いて過ごせるのがメリット。ただし学習進度が速いため、学習面の負荷は高めです。
⑤ フリースクール(不登校特例校含む)
不登校の子のための民間施設。学校教育法上は「学校」ではないため、地元の公立中学校に在籍しながら通うのが一般的です。校長判断で出席扱いになるケースが増えています。最近は「不登校特例校(学びの多様化学校)」という公的に認定された学校も増えてきており、こちらは正式な学校として在籍が可能です。
⑥ 通信制中学・サポート校
義務教育である中学に「通信制」は原則ありませんが、不登校支援のオンラインスクールは複数あります。ネット上で授業を受け、地元中学の出席扱いを得る形が主流です。在宅学習を支えてくれるクラスジャパンのようなサービスは、出席扱い実績が豊富で、復学・進学のサポートも手厚いと現場でもよく耳にします。
> 関連記事:「クラスジャパンとは?不登校でも出席扱いになる仕組みを看護師が解説」
⑦ ホームスクール(家庭学習)
家庭を学びの場とする方法。日本では制度として確立されていませんが、不登校状態のまま家庭学習を続ける家庭は増えています。タブレット教材すららのように、無学年式で本人のペースに合わせて学べる教材は心強い味方です。すららは出席扱い実績の多い教材として、現場でもおすすめしやすい選択肢のひとつです。
> 関連記事:「すらら|無学年式タブレット教材を看護師の視点でレビュー」
⑧ 特別支援学校(中学部)
知的障害や身体障害のある子のための学校。療育手帳を持っていることが入学要件のひとつになることが多いです。少人数で個別性の高い教育を受けられます。
受験で「合理的配慮」を申請する方法
中学受験・高校受験では、診断名や特性に応じて合理的配慮を申請できます。試験時間延長、別室受験、文字の拡大、口頭での指示確認など、申請内容は学校・自治体により異なります。診断書や心理検査結果が必要なため、受験の半年前には主治医や臨床心理士に相談しておきましょう。
> 関連記事:「合理的配慮の申請方法|診断書から学校との交渉まで」
高校選び|全日制以外もたくさんある
「高校=全日制」というイメージは、もう古いです。現在は約20%の高校生が全日制以外で学んでいます。選択肢を全部見ていきましょう。
① 全日制高校(普通科・専門学科・総合学科)
最もポピュラーな道。普通科の他、農業・工業・商業・看護・福祉・情報・芸術などの専門学科、複数領域を選択できる総合学科があります。「学びたいことが明確な子」は専門学科や総合学科で生き生きすることもあります。
② 定時制高校(昼間部・夜間部)
1日4時間程度の授業で4年間学ぶスタイル(最近は3年制もあり)。年齢層が幅広く、社会人や不登校経験者も多いため、独特の温かさがあります。学費が安く、不登校経験のある子に「再スタートの場」として選ばれています。
③ 通信制高校(公立・私立)とサポート校
近年最も注目されている選択肢。レポート提出・スクーリング・テストで単位を取得し、3年以上で卒業します。通学日数を週0〜5日まで自由に選べるため、体調や特性に合わせて無理なく通えます。私立通信制では美容・声優・eスポーツ・プログラミングなどのコースを併設している学校も多く、「好きを伸ばせる場」になっています。
サポート校は通信制高校と提携した民間施設。通信制の単位取得をサポートしてくれます。費用は通信制高校+サポート校で年間60〜100万円ほどかかることが多いですが、就学支援金や授業料減免で負担を軽減できます。
> 関連記事:「通信制高校という選択肢|不登校経験者が選ぶ理由を看護師が解説」
④ チャレンジスクール・エンカレッジスクール
東京都など一部自治体が設置している、不登校経験者・中退者向けの公立高校。学力試験ではなく面接や作文で入学でき、少人数・個別対応の手厚い支援を受けられます。地域限定の制度なので、お住まいの自治体の教育委員会のサイトを確認してください。
⑤ 特別支援学校(高等部)
知的障害・身体障害・発達障害のある生徒向け。職業教育に力を入れている学校が多く、卒業後の就労につながりやすいのが特徴です。療育手帳の有無や障害の程度で入学条件が決まります。
⑥ 高卒認定試験(高認)
高校に通わず、試験合格で「高校卒業と同等以上の学力」と認定される制度。年2回実施され、8〜10科目を分けて受験できます。大学・専門学校への進学資格が得られるため、「高校に通うことが難しい」「家庭学習で力をつけている」子の選択肢になります。
※高認は最終学歴が「中卒」のままになる点に注意。就職時に通信制高校卒の方が有利な場合があるため、目的に応じて選んでください。
外来で関わったCさん(仮名)の例も紹介します。中3で不登校になり、高校進学を一度諦めかけたものの、家庭学習+高認の組み合わせで18歳で大学受験。指定校推薦ではなく一般受験で地方の私立大学に合格しました。「全日制高校に行けなかったことが、結果的に自分のペースで勉強する力をつけてくれた」と本人は振り返っていました。「行けない」が「学び方の発見」につながることもあるのです。
入試での合理的配慮
高校入試(公立・私立とも)で配慮申請が可能です。申請には医師の診断書、中学校の所見書、本人と保護者の希望書が必要なケースが多く、出願前の事前相談が必須です。8〜10月頃には動き始めましょう。
通信制から大学進学のリアル
「通信制高校から大学に行けるの?」という質問は本当に多いです。結論:行けます。早稲田・慶應・MARCH・関関同立、医学部に合格している通信制出身者もいます。鍵は「自学自習の習慣」と「個別指導の活用」。
個別の家庭教師は、通信制の子の学習サポートとして相性が良いです。家庭教師グッドのようなサービスは、不登校・発達特性のある生徒を担当した経験のある先生をマッチングしてくれるため、現場でも安心して紹介できる選択肢です。
> 関連記事:「家庭教師グッド|不登校・発達障害の子向けレビュー【看護師視点】」
大学・専門学校・就労準備期
① 大学(一般入試・推薦・総合型選抜/旧AO)
近年、推薦・総合型選抜の比率が大幅に増え、大学入学者の約半数がこのルートです。「学力試験で勝負する」以外の道がしっかりあります。総合型選抜では「探究してきたこと」「興味の深さ」が問われるため、特定分野に強い興味を持つ発達特性のある子と相性が良いケースもあります。
② 専門学校(医療・IT・芸術・福祉等)
2〜4年で実践的な技能を身につける学校。看護・理学療法・作業療法などの医療系、IT・ゲーム・アニメ・声優、調理・製菓、美容、福祉、ペット、デザイン、音楽――分野は本当に広いです。「手を動かして学ぶ」ことが得意な子に向いています。
③ 大学・専門での合理的配慮
2024年から私立大学・専門学校でも合理的配慮が法的義務になりました。試験時間延長、ノートテイカー配置、別室受験、講義の録音許可、提出物の期限延長など、内容は多岐に渡ります。障害学生支援室を持つ大学が増えているので、進学前に確認しましょう。
④ ギャップイヤー(休学・浪人)
「すぐに次へ進まない」選択肢も、立派な進路です。休学制度を使って自分を整える、留学する、アルバイトで社会経験を積む――こうした「準備期間」で人生が好転する子は本当に多いです。
⑤ インターン・就労体験
大学・専門の在学中から、長期インターンやアルバイトで社会との接点を作っておくと、卒業後の移行がスムーズです。プログラミングや創作活動を伸ばすなら、LITALICOワンダーのようなIT・ものづくり教室も小中高生から体験できる選択肢として検討の価値があります。
> 関連記事:「LITALICOワンダー|発達特性のある子のIT・プログラミング教室レビュー」
就労|成人後の選択肢を全部見ていく
① 一般雇用(フルタイム正社員等)
最も一般的な働き方。発達特性や精神疾患の経験を「クローズ(伝えずに)」で働く方も多いですが、職場の理解が得られないと二次障害につながることがあります。本人の特性、職場環境、周囲のサポート量を慎重に見極めましょう。
② 障害者雇用(オープン就労)
障害者手帳を取得し、企業の障害者雇用枠で働く選択肢。合理的配慮を受けながら働けるのが最大のメリットです。企業側も法定雇用率(2.5%、2026年7月から2.7%)を満たすため積極的に採用しています。給与は一般雇用より低めの傾向はありますが、定着率や満足度が高いケースも多いです。
③ 障害者雇用枠の準備(手帳取得)
障害者雇用には障害者手帳(精神・療育・身体)のいずれかが必要です。精神障害者保健福祉手帳は、診断後6ヶ月以上経過していれば申請できます。手帳取得は本人にとって大きな決断ですが、福祉サービス、税控除、交通機関の割引など多くのメリットがあります。
④ 就労移行支援事業所
原則2年間、職業訓練と就職活動の支援を受けられる福祉サービス。ビジネスマナー、PCスキル、コミュニケーション、職場実習、企業面接同行まで一貫支援。LITALICOワークス、ウェルビー、ミラトレなどが有名です。利用料はほぼ無料(前年度世帯収入による)です。
⑤ 就労継続支援A型・B型
一般企業での就労が難しい方が、福祉的な環境で働ける場。A型は雇用契約あり(最低賃金保障)、B型は雇用契約なし(工賃制)。「いきなり一般就労はハードルが高い」という方の中継地点としても活用されています。
⑥ 在宅ワーク・フリーランス
ライティング、デザイン、プログラミング、動画編集、イラスト、データ入力――在宅でできる仕事は確実に増えています。対人コミュニケーションが苦手だが特定スキルに強い子に向いた働き方です。クラウドワークスやランサーズで小さく始め、実績を積んでいくスタイルが現実的です。
⑦ 起業・自営
「組織で働くより自分でやる方が向いている」というタイプも一定数います。ハンドメイド販売、農業、配信、コンサル、店舗経営――発達特性のある方の中には、強いこだわりや独自の視点を活かして起業する人もいます。リスクは高めですが、合った人にとっては最善の道になります。
看護師として現場で見てきて感じるのは、「働き方は1度決めたら終わり」ではないということです。一般雇用で疲弊して退職した方が就労移行支援を経て障害者雇用に切り替え、生き生きと働き続けているケース。逆に、A型事業所からスタートして実績を積み、一般雇用にステップアップしたケース。社会人になってから手帳を取得する方も、決して珍しくありません。「今の自分に合う働き方」は、年齢やライフステージで変わって当然です。一度の選択を「失敗」と思い詰めず、次の手を打ち続ける姿勢が、長く働き続けるコツだと感じます。
学校見学のポイント|パンフでは分からないことを見抜く
学校選びの成否を左右するのが、実際の見学です。パンフレットの綺麗な写真と、現場のリアルな空気は、思っているより違うことがあります。
見学で必ず確認したいこと
- 生徒の表情:明るいか、疲れているか、リラックスしているか
- 先生と生徒の関係性:話しかけやすそうか、距離があるか
- 授業中の雰囲気:質問しやすい空気か、緊張感が強いか
- 休み時間の様子:一人で過ごす子も自然にいるか
- 保健室や相談室の場所と雰囲気:安心して入れそうか
- 制服・持ち物・校則の細かさ
- 給食 or お弁当、食事の自由度
必ず質問したい項目
- 「発達特性のある生徒への合理的配慮の実績は」
- 「スクールカウンセラーの常駐頻度は」
- 「不登校になった場合のサポートは」
- 「保護者と学校の連携の仕組みは」
- 「卒業生の進路実績(割合)は」
- 「途中で進路変更した生徒へのサポートは」
歯切れの悪い回答だったり、「個別に対応します」だけで具体的な実績が出てこない学校は、慎重に判断してください。「うちは特性のある子の受け入れに慣れています」と自信をもって答える学校こそ、安心して選べます。可能なら在校生・卒業生・その保護者の生の声を聞ける機会も作りたいところです。学校公式の情報だけでは、リアルな空気は分かりません。
本人を同行させるかどうか
不登校気味の本人を学校見学に連れていくのは、慎重に判断してください。本人が拒否する場合は、最初は親だけで見学し、雰囲気を伝えるところから始める方が安全です。本人が「行ってもいいかな」と思った時に、初めて一緒に見学に行きましょう。見学が「強要」になると、その学校への印象が決定的にマイナスになり、選択肢を失います。
オンライン説明会の活用
近年は多くの学校がオンライン説明会を開催しています。外出のハードルが高い本人でも、家から参加できるのが大きなメリット。複数の学校を効率的に比較できるので、まずはオンラインで広く情報を集めてから、気になった学校だけ実地見学に切り替えるのも現実的です。
進路変更(中退・転校・編入)という選択肢
一度進路を決めた後でも、合わなかったら変えられる――これは知っておきたい安心材料です。
中学の場合
義務教育のため中退はできませんが、転校(公立間)・私立から公立への戻り・特別支援学級への移籍・通信制中学への編入など、選択肢があります。市区町村の教育委員会に相談すると、手続きを案内してくれます。
高校の場合
- 全日制から通信制への転入・編入
- 全日制から定時制への転入・編入
- 中退して高卒認定試験を目指す
- サポート校に切り替える
進路変更は「失敗」ではなく、「合わない環境からの撤退」です。本人の心身が壊れる前に、勇気を持って次の選択肢に切り替えることも、重要な親の役割です。「一度決めたから最後まで」という古い価値観に縛られず、本人の状態を最優先に判断してください。「途中でやり直した経験」は、その後の人生で本人の強さになります。
進路変更のタイミング
本人が「もう無理」と訴えてから動くのではなく、サインが見え始めた段階で次の選択肢を整理しておくのが理想です。「いざとなったら別の道がある」と分かっていることが、本人の心の支えになります。「逃げ道を用意しておく」のは甘やかしではなく、長期的な健康を守るための戦略です。
引きこもりからの社会復帰|段階的アプローチ
進路を考えるよりも前に「外に出ること自体が難しい」という状態の子もいます。焦らず、段階的に進めるのが鉄則です。
段階1:家の中で安心できる(食事・睡眠・会話が回復)
段階2:家族以外と交流できる(オンラインゲーム、SNS、フリースクール)
段階3:定期的に出かけられる(カウンセリング、習い事、ボランティア)
段階4:社会的役割を持てる(バイト、就労準備、進学)
地域若者サポートステーション(サポステ)
15〜49歳の働くことに悩みを抱える人を支援する厚生労働省の機関。就労に向けた個別相談、コミュニケーション講座、職場体験など、無料で利用できます。全国170か所以上に設置されています。
ひきこもり地域支援センター
各都道府県・政令指定都市に設置。本人だけでなく家族の相談も受け付けてくれます。訪問支援(アウトリーチ)を行っているセンターもあります。
親の会・ピアサポート
同じ立場の親同士で集まる場は、何よりも心の支えになります。「うちだけじゃない」と知ることが、親自身の余裕を取り戻す第一歩。地域の親の会、KHJ全国ひきこもり家族会連合会など、検索してみてください。
経済的支援・制度|知らないと損をする全制度
① 特別児童扶養手当(20歳未満)
精神または身体に中度以上の障害がある20歳未満の子を養育する保護者に支給。月額約5万5千円(1級)または約3万6千円(2級)。所得制限あり。市区町村の障害福祉課で申請します。
② 障害児福祉手当
20歳未満で重度障害があり、日常生活で常時介護を必要とする子に支給。月額約1万5千円。
③ 障害年金(20歳〜)
20歳になると障害基礎年金の対象に。精神障害(うつ・統合失調症・発達障害等)でも申請可能です。1級で月額約8万2千円、2級で月額約6万6千円。診断書、病歴・就労状況等申立書が必要で、書類作成のハードルが高いため、社労士に依頼する家庭も多いです。
④ 自立支援医療(精神通院医療)
精神科通院の医療費が原則1割負担になる制度。所得に応じて月額の上限も設定されます。長期通院が必要な家庭にとって、ありがたい制度です。
⑤ 高校等就学支援金・授業料減免
世帯年収約910万円未満の家庭に、年間11万8800円〜39万6千円を支給(2026年現在の目安)。私立通信制高校でも対象です。授業料の実質負担を大幅に下げられます。
⑥ 奨学金(給付型・貸与型)
日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金は、住民税非課税世帯から年収380万円程度までの世帯で利用可能。返済不要です。貸与型(第一種=無利子、第二種=有利子)と組み合わせて使う家庭も多いです。
⑦ 大学・専門の障害学生奨学金
大学独自の奨学金、民間財団(毎日新聞、東京新聞、ベネッセこども基金、安藤スポーツ・食文化振興財団など)の障害者向け奨学金もあります。情報収集にはJASSOの「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」が参考になります。
親の準備|情報・対話・夫婦のすり合わせ
情報収集の場
学校説明会、オープンキャンパス、合同説明会、卒業生の話を聞く会、SNSでの口コミ――情報源は多様です。気になる学校は必ず見学してください。パンフレットやサイトでは分からない雰囲気、生徒の表情、先生の対応こそが、合う・合わないを判断する材料になります。
子の意志を引き出す対話
「どうしたい?」と直球で聞かれて答えられる子は多くありません。「こういう学校があるみたいだよ」「もし通うとしたら、どんな雰囲気がいいと思う?」と、選択肢を示しながら反応を見ていく方が、本人の希望を引き出しやすいです。
配偶者と方針を合わせる
夫婦で進路観が違うと、子どもは混乱します。「全日制が当たり前」「いや通信制でいい」と意見が分かれた時こそ、子を交えず、まず夫婦で何度も話し合ってください。本やドキュメンタリーを一緒に見る、説明会に2人で参加する――情報を共有することが、方針を揃える最短ルートです。
本を通じて子どもの内側を知りたい時は、児童思春期の心理を扱った本をまとめている雨音選書のような書評ブログが参考になります。看護師として現場で読んだ本の感想を、親御さん向けに噛み砕いて紹介しているので、夫婦で同じ本を読んで話し合うきっかけにも使いやすいと思います。
> 関連記事:「雨音選書|看護師が選ぶ、子どもの心を理解するためのブックリスト」
親自身のメンタルケアも忘れない
意外と見落とされがちですが、進路を考えている時期の親御さん自身が、相当に疲弊しています。眠れない、食欲が落ちる、些細なことでイライラする――これは「弱さ」ではなく、長期戦に入ったサインです。親御さんが倒れてしまうと、子どもの進路選びどころではなくなります。スクールカウンセラー、地域の保健センター、心療内科の活用は、決して大げさなことではありません。「親が安心していること」が、子どもにとっての最大の安全基地になります。
進路選択期のメンタル不調をケアする
進路選択期は、本人にとってメンタル不調が起きやすい時期です。「自分の人生をどう描くか」というテーマと向き合うこと自体がストレスとなり、特に不登校・発達特性のある子では、抑うつ・不安が増しやすいことが知られています。
進路ストレスのサイン
- 「将来が真っ暗」「もう諦めた」と発言する
- 食欲・睡眠の急変
- 頭痛・腹痛が増える
- 勉強する意欲が完全に消える
- 「死にたい」「消えたい」発言
- 自傷の痕跡
不調が見えた時の対応
不調が見えたら、進路の話題を一旦お休みしてください。「いま無理に決めなくていい」「進路は変えられる」と伝えること。本人の心身が崩れた状態で進路を決めても、後で本人にしっくり来ず、より大きな問題に発展しがちです。スクールカウンセラー、児童精神科、地域の保健センターなど、医療・心理の支援も並行して入れてください。「進路よりまず健康」――この順序を、家族で何度も確認しましょう。健康あっての進路。順序を逆にしてしまうと、回復に何倍もの時間がかかります。
「決められない」を許容する
進路選択が苦手な子もいます。「やりたいことが分からない」「決められない」状態が長く続いても、それを責めないでください。多くの大人も、自分のキャリアを若い頃から明確に描けていません。「とりあえず今の段階で選べる選択肢を選ぶ」程度の決断でも、十分です。途中で軌道修正することを前提にした選択は、本人の負担を大きく減らします。
「先輩家庭」の声から学ぶ
進路選択を経た先輩家庭の話を聞くと、視野が大きく広がります。「あの頃は不安だったけど、今振り返るとこうだった」というロールモデルが見えることで、目の前の不安が和らぎます。
聞ける場所
- 地域の親の会・不登校親の会
- 発達障害者支援センター主催の家族交流会
- 通信制高校の保護者交流会
- SNSの当事者家族コミュニティ
- NPO法人主催の進路相談会
合成ケース:通信制から大学進学までの軌跡
※以下は、複数のケースを合成した架空のエピソードです。
中2から不登校になった女の子。家族で何度も話し合い、中3で通信制中学に編入。週1日の登校と自宅学習で、徐々に外出への抵抗が減りました。高校は通信制を選び、サポート校との併用で同年代の友達ができ、心理学への興味が芽生える。AO入試で4年制大学に進学し、卒業後は心理職を目指して大学院へ。当初「不登校は人生終わり」と思っていたお母さんは、いま「あの時間がなかったらこの子は心理学に出会えていなかった」と話します。
「学校に行けない=失敗」ではなく、「別の道で自分を見つける時間だった」と捉えられる家族が、長い目で見て幸せに着地しています。当時は親も本人も「失われた時間」のように感じていたものが、振り返ると「必要だった時間」だったと気づく――これは現場で本当によく見る光景です。学校教育の枠の中で全てが完結する必要はなく、本人に合う環境で学び・育つ時間を保証することの方が、長期的な幸せにつながります。
進路選択中にお子さまが荒れる・崩れる時の対応
進路選択の時期は、お子さまにとって大きな心理的負荷がかかる時期です。「どこにも行きたくない」「ぜんぶ無理」「どうせ落ちる」といった発言が増えたり、これまで安定していたお子さまが急に不眠・過食・暴言・自傷的行動を見せたりすることは、児童精神科の外来でもよく見られる光景です。これは「進路選択をサボりたい」のではなく、決定のプレッシャーに耐えきれず、本人なりのSOSを出している状態です。一時的に進路の話を完全にストップし、生活リズムと心理的安全を立て直すことを優先してください。
具体的な対応としては、(1) 「進路の話は週末の30分だけ」など、話題を扱う時間を限定する、(2) 親が一人で抱え込まず、担任・スクールカウンセラー・主治医に状況を共有する、(3) お子さまの「決められない自分」を否定しない言葉をかける、の3点が現場で有効でした。とくに(3)は重要で、「あなたが決められないのは、それだけ真剣に考えている証拠」「決められなくても、決めなくていい時期があってもいい」というメッセージが、お子さまの心を緩めます。決断を急かす言葉は、この時期は逆効果になります。
もしも自傷行為・希死念慮・著しい食事拒否などの危険なサインが出た場合は、進路選択を一時中断してでも、医療機関への相談を最優先してください。「進路選択の遅れ」よりも「命の安全」が圧倒的に大切です。1年休学しても、回復してから動き出せばリカバリーは十分可能です。臨床現場では、進路選択を急かしたばかりに本人が深い抑うつに陥り、結果として2〜3年動けなくなったケースを多く見てきました。「立ち止まる勇気」も、進路選択の中の重要な選択肢の一つです。
親御さま側のメンタルケアも同じくらい大切です。「うちの子だけが取り残されている」「同級生はみんな前に進んでいる」という焦りは、ご自身の判断力を確実に鈍らせます。SNSや同級生家庭の話から一時的に距離を置き、地域の親の会や同じ経験をした保護者の体験談に触れることをおすすめします。親が落ち着いていれば、お子さまも安心して停滞期間を過ごせます。「親の余裕は、子の最大の進路支援」というのが、現場で何度も実感したことです。
受験当日・面接当日の体調管理と心のケア
長い準備期間を経て迎える受験・面接当日は、本人にとって最も緊張する瞬間です。発達特性のあるお子さまや、不登校経験のあるお子さまの場合、当日の予期不安・パニック・腹痛・嘔吐などの身体症状で力が出せないことが少なくありません。1週間前から当日にかけての過ごし方を、本人と一緒に計画しておくことが重要です。「とにかく頑張れ」「今までの努力を信じて」という抽象的な励ましよりも、具体的な行動プランがお子さまを支えます。
当日までの1週間でやっておきたいのは、(1) 試験会場までの動線を実際に確認する(駅・トイレ・受験会場の位置)、(2) 当日の服装・持ち物・朝食・出発時間を紙に書いて貼っておく、(3) 「もし当日体調が悪かったらどうするか」のプランB(追試・受験延期・別日程)を予め話し合う、の3点です。とくに(3)は、当日不調になった時の「最悪のシナリオ」を想像できるようにしておくことで、かえって不安が軽減される効果があります。逃げ道があると、本番に集中できるのは大人と同じです。
当日朝の声かけは、結果を期待する言葉ではなく、「途中で帰ってきても大丈夫」「お弁当用意したから」「行ってらっしゃい」など、いつも通りの言葉が一番です。緊張しているお子さまにとって、「あなたなら大丈夫」というプレッシャーすら重荷になることがあります。普段通りの朝の空気が、何よりの安心材料になります。試験後は、結果が出る前に「お疲れさま、今日はゆっくり休もう」とだけ言って、出来栄えを聞き出そうとしないことも大事です。本人が話したくなった時に、話せる空気を作っておけば十分です。
結果発表後の対応も、事前に夫婦で打ち合わせておくことをおすすめします。合格の場合の喜び方、不合格の場合の言葉の選び方、その後のリカバリープランをセットで準備しておくと、感情に流されずに対応できます。とくに不合格時の最初の言葉が、その後の親子関係に大きく影響することを現場では何度も見てきました。「よく頑張ったね、次があるから大丈夫」と、結果ではなくプロセスを認める一言が、お子さまの自己肯定感を守ります。結果はあくまで通過点であり、本人の価値を決めるものではないことを、家族全体で共有しておいてください。
三者面談・保護者面談で先生に伝えるべきこと
中学・高校での三者面談や保護者面談は、お子さまの進路に大きな影響を与える重要な場です。短い時間で先生に的確に状況を伝えるには、事前準備が不可欠です。先生は何十人もの生徒を担当しているため、家庭での詳細な状況までは把握しきれていません。「うちの子の特性・困りごと・希望進路の3点を、最初の5分でまとめて伝える」という姿勢が、面談の質を高めます。事前に紙1枚にまとめて持参するのも、現場でよく聞く工夫です。
伝えるべき内容としては、(1) お子さまの強み・苦手・配慮が必要な事項、(2) 通院・服薬の有無と主治医からの意見(あれば診断書のコピー)、(3) 家庭で検討している進路の方向性(複数選択肢)、(4) 学校に協力してほしいこと(合理的配慮の申請・調査書の書き方など)、の4点を整理しておくと、面談がスムーズに進みます。とくに(4)は、家庭から具体的に依頼しないと学校側も動きづらいため、遠慮せずに伝えることが重要です。学校はお子さまの味方になりたい立場ですので、率直な共有が支援に直結します。
面談中に注意したいのは、お子さま本人の前で「うちの子はこれが苦手で…」とネガティブな話をしすぎないことです。本人の自己評価が下がり、面談後の関係性にも影響します。本当に伝えにくい内容は、別途、保護者だけの個別相談を申し込むほうが安全です。「先生、別の機会に少しお話できる時間はありますか?」と一言伝えるだけで、面談後の補足相談の枠が確保できることが多いです。先生も、保護者からの相談を歓迎していることがほとんどです。
面談で出てきた進路の選択肢は、その場で結論を出さず、必ず一度持ち帰って家族で再検討してください。「先生が勧めるから」「内申点的にここしかないと言われたから」という理由だけで進路を決めると、入学後にミスマッチが起きやすくなります。先生のアドバイスは重要な参考意見ですが、最終決定権はお子さまとご家族にあります。複数の選択肢を出してもらい、家庭で熟考してから次の面談で返答する、というプロセスを尊重してください。
進路選択に役立つ無料の公的相談先・支援機関の使い分け
進路選択にあたっては、学校以外にも利用できる公的な相談先が多数あります。地域・年齢・特性に応じて使い分けることで、より広い視野で選択肢を検討できます。代表的なのは(1) 教育センター・教育相談室(自治体運営、就学相談・転校相談)、(2) 発達障害者支援センター(特性に応じた進路相談)、(3) 児童相談所(不登校・引きこもりの相談)、(4) ハローワーク学生コーナー(高校生以上の就労相談)、(5) 地域若者サポートステーション(15〜49歳の就労準備)、(6) 障害者就業・生活支援センター(手帳取得済の就労相談)の6つです。
これらの相談先は、いずれも無料で利用でき、原則として守秘義務があります。「学校に知られたくない相談」も、安心して持ち込むことができます。利用にあたっては、事前予約が必要なところがほとんどなので、各機関のウェブサイトや電話で確認してください。初回相談は30〜60分程度で、お子さまの状況・困りごと・希望する支援内容を聞き取ってもらえます。継続相談が可能なところも多く、進路選択期の伴走者として活用できます。
とくに発達障害の診断がある/可能性があるお子さまの場合は、発達障害者支援センターへの早めの相談を強くおすすめします。中学・高校・大学・就労と、ライフステージごとの支援機関へのつなぎ役を担ってくれることが多く、家族にとって心強い存在になります。手帳取得の判断や、合理的配慮の申請方法など、保護者が単独では判断しにくい論点について、専門的なアドバイスがもらえます。「相談したからといって何かを強制される」ことはなく、保護者の判断材料を増やすための場とお考えください。
民間の進路相談・キャリアカウンセリングサービスも、選択肢の一つとして検討する価値があります。フリースクール協議会・不登校新聞・登校拒否を考える会など、当事者団体の運営する相談窓口は、実体験に基づくアドバイスが得られる強みがあります。費用は機関によって異なるため、事前に確認してください。臨床現場でも、医療・教育・福祉の各機関と、民間の当事者団体を組み合わせて活用している家庭が、進路選択をしなやかに乗り越えている印象があります。一つの機関にこだわらず、複数の支援を並行させる姿勢が大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1.通信制高校って、本当に大学進学できるの?
できます。文部科学省のデータでも、通信制高校の大学進学率は約2割で、学校によっては5割を超える進学校的な通信制も存在します。鍵は本人の自学自習+家庭教師や塾の活用です。AO入試・総合型選抜のように、学力テスト以外の評価項目が増えてきており、通信制高校生も大学受験で十分戦える時代になっています。
Q2.障害者雇用は給料が安いと聞くけど…
確かに一般雇用よりは平均給与が低い傾向があります(厚生労働省調査では精神障害者の平均月収は約12万5千円)。ただし、合理的配慮を受けながら長く働けることで、累計収入では一般雇用と変わらないケースもあります。短期で離職を繰り返すより、定着率を優先する選択肢として有効です。「障害者雇用=終身そのまま」ではなく、実績を積んでから一般雇用にステップアップする道もあります。
Q3.将来この子が自立できるか不安です…
「自立」の定義を広げてみてください。完全に1人で生活費を稼ぐことだけが自立ではありません。グループホーム、福祉サービスの利用、家族と程よい距離で暮らす――多様な「自立のかたち」があります。今は不安でも、社会の支援制度は年々手厚くなっています。「子が将来困ったときに頼れる窓口」を、親が元気なうちに把握しておくと、家族全体の安心につながります。
Q4.フリースクールは出席扱いになる?
校長判断で出席扱いになるケースが増えています。文部科学省も2019年に通知を出し、自宅・民間施設での学習を出席扱いにすることを推奨しています。担任・校長と早めに相談を。出席扱いになれば、内申点・進学にも有利に働くため、申請のハードルは下がってきました。
Q5.浪人や留年はマイナスになる?
1〜2年の遅れは、20代以降の人生にほとんど影響しません。むしろ、自分のペースで学び直した経験が、本人の自己理解と強さにつながります。「同級生より遅れる」のではなく、「自分のペースで進む」と捉え直してください。社会人になってから、年齢が違う仲間と協働する経験は普通のことです。
Q6.高卒認定試験ってどんな試験?
年2回実施される、高校卒業と同等の学力を認定する試験です。合格すれば大学受験・専門学校・各種資格試験の受験資格が得られます。8科目(科目免除あり)。独学・通信講座・サポート校など、勉強方法は本人に合わせて選べます。高校に通えない子の進路選択肢として、年々利用者が増えています。「学歴」より「学ぶ意欲」を見る企業も増えており、高卒認定からの大学進学・就職は、決して珍しいルートではありません。
Q7.子どもが「働きたくない」と言います
「働きたくない」発言は、必ずしも「一生働かない」ではありません。「今は働ける状態じゃない」「働く意味を見出せない」と読み替えて、本人と対話を続けてください。就労移行支援、地域若者サポートステーション、ボランティアなど、「働く」の前段階の選択肢も多数あります。本人のペースで「働く」と関わり始めるための階段はたくさんあります。
Q8.障害者手帳を取るべきか迷います
手帳を取得すると、各種優遇制度(税控除、医療費助成、公共交通機関の割引、合理的配慮の申請、障害者雇用枠での就活など)が使えます。「障害者として烙印を押される」ものではなく、「使える制度を使うためのカード」と捉えてください。取得は本人・家族の意思で決められ、就職・進学で本人同意なく開示されることはありません。途中で必要なくなれば返納もできます。「取ったら一生のもの」ではなく、「必要な時期に使うツール」です。
Q9.「進路選択を考えるのもしんどい」と本人が言います。どうすれば?
無理に話を続けないことが第一です。進路の話は週末の30分など、扱う時間を限定し、それ以外は普段通りの生活に戻してください。本人が話したくなったタイミングで応じれば十分です。スクールカウンセラー・主治医など第三者が間に入ると、本人も話しやすくなることがあります。
Q10.志望校に落ちた後、本人が立ち直れません
2〜3週間は無理に次の話を進めないでください。「悲しい」「悔しい」という感情を、十分に表現させてあげる期間が必要です。落ち着いた頃に、二次募集・転編入・浪人・通信制など複数の選択肢を一緒に確認していきましょう。1校落ちただけで人生は決まりません。
Q11.祖父母や親戚から進路について口を出されて困っています
祖父母世代と現代の進路事情は大きく異なります。「進路の最終決定権は本人と私たち夫婦にあります」と、丁寧に線引きを伝えてください。情報提供として聞く分には問題ありませんが、決定に介入させない姿勢が重要です。お子さまが祖父母の言葉で混乱しないよう、家庭の方針を毅然と示してあげてください。
Q12.お子さまに合った進路情報を、効率的に集めるコツはありますか?
まず、自治体・都道府県教育委員会が発行する「進路情報冊子」を入手するのが基本です。地元の通信制・サポート校・専門学校の一覧が手に入ります。次に、当事者向けの団体(フリースクール協議会・不登校新聞など)のウェブサイトで体験談を読み込んでください。同じような困りごとを持つご家庭の声は、パンフレットでは見えない実情を教えてくれます。SNSは情報の偏りが大きいので、参考程度に留めるのが安全です。複数の情報源を組み合わせ、最終的にはお子さま本人の見学・体験で確かめる、というプロセスを意識してみてください。情報収集は親が先行して数を集めてから、お子さまには絞り込んだものだけを提示するほうが、本人の選択疲れを防げます。
Q13.進路選択を本人がまったく考えてくれません。親だけが焦っています
本人が動かないのは「無関心」ではなく「情報過多で固まっている」可能性があります。選択肢を3つに絞った状態で提示し、「この中ならどれが少しマシか」と聞く方法が有効でした。決定そのものを求めるのではなく、傾向を引き出す問いに変えてみてください。それでも反応がない場合は、心が動かないほど消耗している可能性もあります。一度進路の話を1〜2か月完全に止め、生活の立て直しを優先するという選択も有効です。臨床現場では、進路の話を一度完全に止めたご家庭が、数か月後に本人から「実はこの学校が気になっていた」と話し始めた、という経験を何度もしてきました。沈黙の期間は無駄ではなく、本人の中で選択肢が熟成される時間でもあります。親御さまが先に動かず、本人の言葉を待つ姿勢を持つだけで、状況が大きく変わることがあります。焦らない親のいる家庭ほど、長期的には良い選択にたどり着くという印象が、長年の現場感覚として残っています。本人の主体性が立ち上がるタイミングを、信じて待つ勇気をどうかお持ちくださいませ。
まとめ|複数のルートがある。合わなかったら、変えればいい
進路選びでお伝えしたいことは、たった2つです。
1.道は1本ではない。中学・高校・大学・就労、それぞれの段階で複数のルートがある。
2.合わなかったら、変えればいい。今はどの分岐点にも「やり直しのルート」がある。
3.本人のペースを尊重すること。これが結果的に最短距離です。
あなたとお子さんが、自分たちのペースで、自分たちに合った道を見つけられますように。この記事が「迷った時に戻ってこられる地図」になれば嬉しいです。
進路選択は、一回限りのテストではなく、人生を通じて何度も繰り返される選択です。中学から高校への進路選びがうまくいかなくても、高校から大学・就労への次の選択でやり直せます。20代・30代になってからキャリアチェンジする大人もたくさんいます。「今この瞬間の選択がすべて」ではなく、「人生のなかの一つの分岐点」と捉えると、本人も親も少し楽になります。
そして、進路選択で何より大事なのは、「本人が自分で選んだ」という実感です。親が誘導した道よりも、本人が選んだ道のほうが、その後の困難を乗り越える力になります。親の役割は「正解を示す」ことではなく、「選択肢を広げて見せる」こと。最後の決断は、本人に委ねてあげてください。
長く伴走するなかで、親自身も疲れます。ぜひ、自分のメンタルケアも忘れずに。スクールカウンセラー・地域の親の会・必要なら親自身のカウンセリングなど、複数の支えを持ちながら、お子さんと一緒に歩いていきましょう。「親が安心していること」が、子の最大の支えです。あなたとお子さんの長い旅を、現場の一看護師として心から応援しています。
緊急時の連絡先
お子さんやご自身に「死にたい」「消えたい」という気持ちが強くなった時は、ためらわずに連絡してください。
・よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
・いのちの電話:0570-783-556(10:00〜22:00)
・チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777
・厚生労働省 まもろうよこころ:https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
緊急時は迷わず119番、または最寄りの救急外来へ。
※本記事は児童思春期精神科看護師としての臨床経験と一般的な情報をもとに執筆しています。個別の進路・医療判断については、必ず主治医・スクールカウンセラー・進路指導の先生・各種公的相談窓口にご相談ください。
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