ある朝、子どもが突然「学校、行きたくない」と言った。そのとき、あなたはどんな言葉をかけますか?
「なんで?」「昨日まで普通だったのに」「みんなも頑張ってるんだよ」——頭では分かっていても、パニックになってとっさに言ってしまう言葉が、子どもの心をさらに閉じさせてしまうことがあります。
私は児童思春期精神科の病棟で約8年働く中で、「あのとき親にこう言われた」という子どもたちの声を本当にたくさん聞いてきました。最初の30秒の反応が、その後の数ヶ月・数年の親子関係を決めることもある——それくらい重要な瞬間です。
本記事では、現場で見てきた知見から、「学校行きたくない」と言われた瞬間にすべきこと・してはいけないこと、休む判断、休んだ日の過ごし方、長期化した時の対応まで、現場視点で詳しく解説します。
- 「学校行きたくない」という言葉の重み
- 最初の30秒——黄金ルール
- 絶対にやってはいけない7つのNG行動
- 最初にすべき5ステップ
- 「休む判断」をどうするか
- 休んだ日の過ごし方
- 数日続いた時の対応
- 学校との連携と先生への伝え方
- 病棟で見てきた合成ケース
- 親自身のメンタルケア
- 夫婦間で意見が違う時
- 休んだ日に「家でできること」を持っておく
- 「学校行きたくない」の医学的・心理学的な背景
- 年代別の特徴と対応
- 学校現場で起きていること
- 不登校の3つの典型パターン
- 子どもの「心の回復チェックリスト」
- 不登校が長期化した時の選択肢
- よくある質問(FAQ)
- 家族・親戚への伝え方
- 再登校のタイミングとペース
- 親自身の「罪悪感」を手放す
- 不登校経験者の声から学ぶ
- 看護師視点でのまとめ
- 関連記事
- 看護師として見てきた「行きたくない」の奥にあるもの
- 「休ませる」という判断について
- やってしまいがちなNG対応
- 学校・専門機関との連携
- 看護師として、ご家族へお伝えしたいこと
- 家庭を「安心して休める場所」にする
- 「行きたくない」が教えてくれること
- 「行ける日」と「行けない日」の波を受け止める
「学校行きたくない」という言葉の重み
まず知っておいてほしいのは、「学校行きたくない」という言葉を口にすることが、子どもにとってどれほど勇気のいる行為かということです。
言葉にするまでの葛藤
子どもの頭の中では、こんな葛藤が起きています。
- 「怒られるかもしれない」
- 「がっかりさせてしまうかもしれない」
- 「信じてもらえないかもしれない」
- 「弱い子と思われるかもしれない」
- 「兄弟と比べられるかもしれない」
- 「家庭に居場所がなくなるかもしれない」
これらの不安をすべて乗り越えて、それでも伝えてくれた——その勇気を、まず認めることから始まります。
ギリギリのサイン
その言葉が出てきたということは、もうギリギリのところまで来ているサインかもしれません。多くの子どもは、限界に近づくまで「迷惑をかけたくない」と我慢します。「行きたくない」が出る頃には、すでに数週間〜数ヶ月の苦しみが蓄積されていることがほとんどです。
「ただの甘え」ではない
「甘えてるだけ」「頑張れば行ける」と思いたくなる気持ちは分かります。ですが、現場で見てきた経験から言えば、子どもが「行きたくない」と口にする時、ほぼ100%、何らかの理由・しんどさがあります。
本人がうまく言語化できないだけで、必ず背景があります。それを「ただの甘え」と切り捨てると、SOSを見逃すことになります。
最初の30秒——黄金ルール
「学校行きたくない」と言われた最初の30秒の反応が、その後の親子関係を大きく左右します。
最初の30秒は「結論を出さない」
多くの親は、最初の30秒で「行きなさい」「休んでいいよ」のどちらかの結論を出そうとします。しかし、最初の30秒は結論を出す時間ではなく、「受け止める時間」と決めておきましょう。
最初の30秒の3つの行動
1. 子どもの目を見る
立ったまま、忙しそうにしながら反応するのではなく、子どもの目線に合わせて、向き合う姿勢を作ります。
2. 深呼吸する
反射的に言葉が出そうな自分を、一度落ち着かせます。1秒の沈黙は問題ありません。
3. 「そっか、行きたくないんだね」と返す
評価もジャッジもせず、ただ受け止める。これだけで、子どもに「この人には話せる」という安心感が生まれます。
言葉のバリエーション
「そっか、行きたくないんだね」のバリエーション:
- 「そうなんだ、行きたくないんだね」
- 「うん、行きたくないって思ってるんだね」
- 「教えてくれてありがとう」
- 「話してくれて嬉しいよ」
どれも「あなたの気持ちを受け取った」というメッセージです。
「行く・行かない」は後で決める
最初の30秒で結論を出す必要はありません。「行く・行かないは、もう少し話を聞いてから決めようね」と保留にしておいてOK。
絶対にやってはいけない7つのNG行動
「学校行きたくない」と言われた時、親がやってしまいがちなNG行動を整理します。
1. 「なんで?」と原因を問い詰める
「なんで行きたくないの?」「何があったの?」気持ちはよく分かります。でも、これが一番やってはいけない言葉です。
理由が明確にある場合もありますが、子ども自身も理由が分からないことがほとんどです。「なんで」と聞かれると、子どもは「ちゃんとした理由がないと休んではいけない」と感じ、さらに追い詰められてしまいます。
2. 「みんなも頑張ってる」「あなただけじゃない」
比べることで奮起させようとする言葉ですが、しんどい状態の子どもには「私の気持ちは分かってもらえない」と伝わります。
その子の「しんどさ」は、その子だけのものです。他の人と比べることに意味はありません。「みんなが頑張ってる」と言われても、本人にとっては「自分は頑張れない」自分への評価が下がるだけです。
3. 「学校に行かないと将来どうなるの」
不安をあおる言葉は、余裕があるときには効果があっても、心が限界のときにはさらに追い詰めるだけです。将来の話は、心が回復してからで十分です。
10歳前後の子どもにとって、「将来」はリアルにイメージできません。「将来困る」と言われても、ピンとこない一方、「今、行きたくない自分」を強く責められるだけです。
4. 「じゃあ今日だけ休んで、明日は必ず行くこと」
条件をつけた休息は、本当の休息になりません。「明日は行かないといけない」というプレッシャーを抱えたまま過ごすことになり、回復が遅れます。
休む時は、条件をつけずに「今日は休んでいいよ」と完全に休ませることが大切です。
5. 「お父さん・お母さんが悲しむよ」と罪悪感を載せる
「ママが悲しい」「パパががっかりする」という言葉は、子どもにさらなる罪悪感を背負わせます。本人はすでに「親に申し訳ない」と感じていることが多いのに、その上に追い打ちをかけることになります。
6. 兄弟と比較する「お兄ちゃんはちゃんと行ってる」
兄弟比較は、子ども同士の関係も悪化させ、本人の自己肯定感を大きく下げます。「お兄ちゃんは違う、自分は違う」を強調するだけです。
7. 無理やり連れて行く・玄関から押し出す
身体的に登校させようとすることで、一時的に学校には行けるかもしれません。でも、それは問題の根本を解決しておらず、心への傷はより深くなっていきます。
最悪の場合、「家も安全じゃない」と感じ、引きこもりや家庭内暴力につながることもあります。物理的な強制は絶対に避けてください。
最初にすべき5ステップ
NG行動を理解したら、次は具体的な行動ステップです。
ステップ1:まず「そうか」と受け取る
余計な言葉は不要です。
「そうか、行きたくないんだね」
これだけで十分です。評価もジャッジもせず、ただ受け取る。それが子どもに「この人には話せる」という安心感を生みます。
ステップ2:「話してくれてありがとう」と伝える
勇気を出して言ってくれた一言を、まず認めてください。
- 「話してくれてよかった」
- 「教えてくれてありがとう」
- 「言うの、勇気いったよね」
この言葉は、子どもに「自分の気持ちを伝えていい」という経験を積ませます。
ステップ3:今日一日、休ませる
まず休ませてください。一日休んだくらいで癖にはなりません。むしろ、無理に行かせて限界を超えてしまうほうが、回復に何倍もの時間がかかります。
「今日は休んでいいよ」という言葉が、子どもの心に安全地帯を作ります。「行きたくない=休んでいい」が一度成立することで、本人の中の安心感が生まれます。
ステップ4:家でゆっくりさせる
休んでいる間に「じゃあ勉強しなさい」「ゲームはダメ」と言いたくなる気持ちは分かります。でもその日は、何もしなくていい日にしてください。
好きなことをして、安心して過ごせることが一番の回復につながります。「休む=楽しむ」ではなく、「休む=エネルギーを補充する」と捉えましょう。
ステップ5:学校への連絡は親がする
「自分で先生に電話しなさい」は絶対NG。欠席連絡は親が行い、子どもに余分な負担をかけないようにしてください。
連絡の際も、理由を詳しく説明する必要はありません。「体調不良でお休みします」で十分です。本人が「言わないで」と希望する詳細は、無理に伝えなくてOK。
「休む判断」をどうするか
「休ませていいの?」「これでクセになったら?」と迷う親御さんは多いです。判断のポイントを整理します。
「休ませる」が正解なケース
- 本人が「行きたくない」と言葉にした
- 体調不良(頭痛、腹痛、吐き気など)がある
- 表情が暗い、元気がない
- 食欲がない、睡眠が乱れている
- 朝起きられない
- 泣いている
- パニックになっている
これらのサインがあるときは、迷わず休ませてください。「無理して登校→悪化」のリスクが高いです。
「クセになる」は誤解
「一度休ませると癖になる」という考えは、半分正しく、半分間違いです。
正しい部分:何度も無条件に休ませ続けると、「学校に行かないのが普通」になる可能性はあります。
間違いの部分:本当にしんどい時に休ませることで、長期的には登校日数が増えることが多いのです。「我慢して行く」が積み重なると、ある日突然完全に行けなくなるパターンの方がリスクが高い。
「ゲーム・スマホばかり」を心配しすぎない
休んでいる時にゲームやスマホをすることに、過剰に心配する必要はありません。心を回復させている段階では、本人が安心できる活動をすることが優先です。
ただし、生活リズムが崩れるほどの長時間使用は徐々に調整していきましょう。
休んだ日の過ごし方
「休ませる」と決めた日、家でどう過ごすかも大切なポイントです。
基本姿勢:「いつもの日常」
特別なことをする必要はありません。普段の家での過ごし方と同じでOK。「休んだから特別扱い」ではなく、「家ではいつも通り」が、本人にとっての安心です。
声かけのポイント
- 過剰に心配しない
- 無理に話を聞き出さない
- 淡々と接する
- 必要な時だけ声をかける
- 無視せず、適度な距離感で
食事
本人の好きなものを用意してあげてください。プレッシャーをかけず、食べたいだけ食べさせます。食欲がない時は、無理に食べさせない。
勉強・宿題
休んだ日に勉強を強要しないこと。「明日は学校だから宿題やろうね」も避けます。
本人が「やる」と言えばやらせる、言わなければそのまま。
外出
「学校休んだのに外で遊ぶの?」と思うかもしれませんが、本人が「散歩したい」「買い物に行きたい」と言えば、一緒に行くのもOK。気分転換になります。
ただし、平日昼間に近所をうろつくと「学校に行ってない」と知られる気まずさもあるので、本人の希望を尊重しましょう。
家庭内での過ごし方の選択肢
- 好きな本を読む
- 絵を描く・手芸
- 料理を一緒に作る
- 映画を見る
- ゆっくりお風呂に入る
- ペットと過ごす
- 音楽を聴く
- 昼寝
数日続いた時の対応
一日休んで翌日から元気に行けることもありますが、そうでない場合も多くあります。
3〜5日続いた時
以下の対応を検討してください。
1. 担任の先生に相談
子どもが学校で何か困っていないか、先生の目線からも情報を集めます。電話・面談で。
2. スクールカウンセラーに相談
子ども本人だけでなく、保護者だけでの相談もOK。学校に置かれている専門家を活用しましょう。
3. 医療機関に相談
起立性調節障害など、体の病気が隠れている場合もあります。かかりつけの小児科に相談してみてください。
1〜2週間続いた時
「単なる一時的な疲れ」を超えている可能性があります。
- 児童精神科・小児心身症外来への受診
- 自治体の教育相談所への相談
- 本人の心理状態の見極め(うつ症状、不安症状)
- 学校との連携を本格化
1ヶ月以上続いた時
「不登校」として、長期戦の覚悟と対応が必要です。
- 「学校復帰」だけをゴールにしない
- 本人のペースを尊重
- フリースクール、オンライン学習なども検討
- 家族のメンタルケアも重視
段階的な復帰
休んだ後の復帰は、段階的に進めます。
- 放課後の短時間登校
- 保健室・別室登校
- 1時間目だけ登校
- 午前中だけ登校
- 徐々にフル登校
「フル登校がゴール」と決めつけず、本人のペースを尊重しましょう。
学校との連携と先生への伝え方
学校との関係づくりが、長期的な対応の成否を分けます。
担任への伝え方
シンプルかつ具体的に:
「最近、本人が学校に行きにくいと言うことがあります。家庭でゆっくり休ませることにしました。学校での様子で気になることがあれば、教えていただけますか?」
養護教諭の活用
保健室の先生は、子どもの心身の不調に詳しい専門家です。「教室に入れない時は保健室で休む」を認めてくれる学校も多いです。
スクールカウンセラーへの相談
多くの学校にスクールカウンセラーがいます。担任に「スクールカウンセラーに相談したい」と伝えれば、日程を調整してくれます。
本人の同意
学校に詳しい情報を伝える時は、本人の同意を取るのが原則。「学校に何か言われると嫌だ」と本人が拒否する場合は、その気持ちを尊重しつつ、必要最低限の情報共有にとどめます。
「学校に行く」だけがゴールではない
長期化した場合、「学校復帰だけが正解」ではないことも、学校に理解してもらえると良いです。フリースクール、通信制、ホームスクーリングなど、選択肢の幅を持つ姿勢を学校とも共有しましょう。
病棟で見てきた合成ケース
※ 守秘義務のため、複数のケースを組み合わせた合成事例です。
ケース1:小3女子・受け止めて改善した例
ある朝突然「学校行きたくない」と訴えた小3女子。母親は内心動揺したが、深呼吸して「そっか、行きたくないんだね」と受け止めた。原因を問い詰めず、一日休ませた。
翌朝、本人から「お母さん、昨日聞いてくれてありがとう。今日は行ってみる」と言って登校。後日、「クラスの仲良し2人が転校して、一人ぼっちが怖かった」と話した。母親が担任に相談し、新しい友達作りをサポートしてもらい、その後も元気に通っている。
ケース2:中1男子・否定して悪化した例
中学入学後すぐに「学校行きたくない」と言った中1男子。両親は「中学生なんだから頑張れ」「行かないと将来困るぞ」と説教。本人は黙って何も話さなくなった。
2ヶ月後、完全な不登校に。受診した児童精神科で、初日の声かけが信頼関係を大きく損なっていたことが判明。両親が方針を変え、「ごめん、お父さんとお母さんが間違っていた」と謝罪。半年かけて少しずつ信頼関係を取り戻し、フリースクールから新しい学びをスタートできた。
ケース3:小5男子・段階的復帰の例
いじめがきっかけで完全不登校になった小5男子。学校とも話し合い、「いつ復帰できるかは本人次第」を共有。家庭ではゆっくり過ごし、3ヶ月後、本人から「保健室なら行ってみたい」と提案。
保健室登校を半年続けた後、教室に戻れるように。中学進学のタイミングで完全に環境が変わったことも追い風になり、現在は安定して通学中。「あの時、無理に行かせなかったのが本当によかった」と本人が後に語っている。
親自身のメンタルケア
子どもの「学校行きたくない」を聞いた親も、深く動揺しています。親自身のメンタルケアも忘れずに。
親が抱える感情
- 「私の育て方が悪かったのか」という自責
- 「これからどうなるの」という不安
- 「他人にどう説明する?」という社会的プレッシャー
- 「仕事はどうする?」現実的な問題
- 「夫婦間で意見が違う」関係の摩擦
「親も一緒に休む」発想
子どもが休む日、親自身も「ちょっと頑張りすぎてたかも」と一緒に休む発想を持ってみてください。家事も最低限、無理に頑張らない日を作る。
誰かに話す
配偶者、信頼できる家族・友人、専門家——誰かに気持ちを話すだけで、ずいぶん楽になります。
オンラインカウンセリングの活用
「子どものことで頭がいっぱいで自分の気持ちを整理できない」という時、自宅から利用できるオンラインカウンセリング「cotree(コトリー)」のような相談先を持っておくと、心の安全基地になります。
「親の心が安定する」ことが何より大事
親が落ち着いていれば、子どもも安心します。逆に親が動揺し続けていると、子どもはさらに不安になります。親自身のセルフケアは、子どものためでもあります。
夫婦間で意見が違う時
「学校行きたくない」への対応で、夫婦間で意見が食い違うことはよくあります。
「子の前で言い争わない」が原則
夫婦の意見の違いを子どもの前でぶつけ合わないこと。子どもは「自分のせいで親が喧嘩している」と感じ、さらに追い詰められます。
夫婦だけで話し合う時間を
子どもが寝た後、別室で——夫婦だけで話し合える時間を作ってください。お互いの意見を聞き、共通の方針を作ります。
「短期的な方針」を一致させる
長期的な意見の違いは置いておいて、「今週はどうする」「今月はどうする」など、短期的な方針を一致させます。長期戦の中で、徐々に共通理解を作っていきましょう。
第三者の力を借りる
夫婦間でどうしても折り合いがつかない時は、専門家(家族療法、カウンセラー)の力を借りるのも一つです。
休んだ日に「家でできること」を持っておく
休む日が続いた時、お子さんが「自分の居場所がある」と感じられる選択肢を、親御さんが先に知っておくと安心です。
学習面の選択肢
- オンラインフリースクール(クラスジャパン):家から参加できる学びと居場所
- RISU算数:自分のペースで進められるタブレット教材
- 家庭教師のグッド:訪問・オンライン両対応
「学校の勉強」だけにこだわらない
休んでいる間、本人の興味のあることを深掘りする時間にするのもOK。読書、絵を描く、プログラミング、料理——「学び」は教科書だけではありません。
「居場所」を多面的に
家庭、フリースクール、習い事、地域の子ども食堂、図書館など、本人が「ここでなら過ごせる」と感じる場所を複数持つことが、回復への安心感になります。
「学校行きたくない」の医学的・心理学的な背景
「行きたくない」と感じる背景には、様々な要因が複雑に絡んでいます。医学・心理学の視点で整理します。
身体的な要因
- 起立性調節障害:朝起きられない、めまい、立ちくらみ
- 過敏性腸症候群:朝の腹痛、下痢
- 慢性疲労症候群:強い疲労感、集中力低下
- 睡眠障害:不眠、過眠、リズム障害
- 頭痛・偏頭痛:朝の頭痛
- 低血糖・貧血:朝の倦怠感
これらの身体疾患が背景にある場合、小児科での治療と並行して登校支援を進めます。
心理的な要因
- 適応障害:環境変化への適応困難
- うつ病・うつ状態:意欲低下、興味の喪失
- 不安症:パニック、社交不安
- 強迫症:強迫観念・行為で消耗
- 場面緘黙:学校では話せない
- PTSDの可能性:いじめ等のトラウマ
発達特性
- ADHD:集団行動の困難、注意維持の困難
- ASD:感覚過敏、対人関係の困難
- LD:学習面での挫折感
- HSC:感受性が強く疲れやすい
環境要因
- いじめ・人間関係のトラブル
- 担任との相性
- 授業についていけない
- 家庭環境(親の不和、引っ越し、きょうだいの誕生など)
- SNSでのトラブル
- 習い事・塾の過剰
「複合的な要因」が多い
実際は、これらの要因が複数組み合わさっていることがほとんどです。「これが原因」と一つに絞ろうとせず、「いろいろあるんだろうね」と全体を受け止める姿勢が大切。
年代別の特徴と対応
「学校行きたくない」への対応は、年代によって特徴的なポイントがあります。
小学校低学年(6〜8歳)
「学校がこわい」「先生がきびしい」「給食が嫌い」など具体的な理由を口にすることが多いです。分離不安が背景にあることも。
- 母親と離れることへの不安
- 環境の変化への戸惑い
- 具体的な怖さ(先生、給食、授業内容)
- 体調不良として表現される
この年代では、本人の感じている怖さを丁寧に聞き、可能な範囲で取り除いていきます。担任との情報共有が特に重要。
小学校高学年(9〜12歳)
友人関係の複雑化、自我の発達が背景に。「人間関係がしんどい」「クラスに居場所がない」と感じることが増えます。
- 友人グループの問題
- いじめの可能性
- 担任との相性
- 勉強の難易度上昇
- 異性への意識の芽生え
この年代では、本人が「親に話したくない」と感じることも増えます。聞き出すより、話せる雰囲気を作ることを優先。
中学生(12〜15歳)
不登校が最も増える年代です。思春期の不安定さ、進路のプレッシャー、複雑化する人間関係——様々な要因が重なります。
- 中学への適応困難(小中ギャップ)
- 部活・先輩後輩関係
- 学業のプレッシャー
- 受験への不安
- SNS・スマホによる人間関係の複雑化
- 思春期のホルモン変動
長期化しやすい年代です。早期介入が大切。
高校生(15〜18歳)
不登校から進路の見直しを考える時期。本人の意思を尊重しながら、現実的な選択肢を一緒に考えます。
- 学校選択のミスマッチ(入学した学校が合わない)
- 大学受験のプレッシャー
- 進路の自己決定
- うつ・不安症の発症
- 恋愛・性に関する悩み
転校、通信制への変更、高卒認定試験など、現実的な選択肢を視野に。
学校現場で起きていること
子どもが「行きたくない」と感じる学校現場では、実際に何が起きているのか。親が知っておくべき視点を整理します。
いじめの現状
いじめは表面化しにくく、本人がなかなか口にしないことが多いです。サイン:
- 持ち物が壊されている・なくなる
- 不自然な痣やケガ
- 急に内向的になる
- 友達の話をしなくなる
- SNSを見るたびに表情が暗くなる
- 登下校の時間が変わる
- 「死にたい」「消えたい」発言
いじめが疑われる時は、本人にプレッシャーをかけず、まず学校に相談を。
人間関係の複雑化
現代の小中学生は、対面の関係性に加えて、LINE・Instagram・TikTokなどのオンラインでの関係も常に持っています。24時間つながり続ける関係性が、子どもを疲弊させることも。
授業についていけない問題
「勉強がわからない」が積み重なると、「行きたくない」に直結します。特に、発達特性のある子は授業のペースについていきにくいことも。
担任との相性
担任との相性は、子どもの学校生活に大きく影響します。「怒鳴る先生が怖い」「えこひいきがある」「自分のことを見てくれない」——子どもの感じる不公平感は、大人が思う以上に大きいです。
学校行事のプレッシャー
運動会、合唱コンクール、宿泊行事、文化祭——「みんなで頑張る」イベントは、苦手な子にとって大きなストレスです。行事の前後は特に注意。
給食・トイレ問題
意外と多いのが、給食・トイレ問題。「給食が時間内に食べられない」「学校のトイレで便ができない」など、生理的な問題が背景にあることもあります。
不登校の3つの典型パターン
不登校には、いくつかの典型的なパターンがあります。お子さんがどのパターンに近いかを知ることで、対応のヒントが見えます。
パターン1:午前型(朝だけ行きたくない)
朝になると行きたくない・体調が悪いが、午後には元気になる。起立性調節障害との関連も。
対応:
- 無理に朝から行かせない
- 遅刻して午後から登校もOKに
- 身体的な原因の確認
- 段階的な早起き訓練
パターン2:断続型(行ける日と行けない日が交互)
週に2〜3日休む、または1週間行って1週間休むようなパターン。エネルギーが続かない、回復に時間がかかる状態。
対応:
- 「行ける日に行く」スタンスでOK
- 無理に毎日を目指さない
- 休む日のリズムを大切に
- 長期的な視点で見守る
パターン3:完全休止型(全く行けない)
完全に学校に行けない状態。エネルギーが完全に枯渇している段階。
対応:
- まず家庭で安心して過ごせる環境を
- 「学校復帰」を急がない
- 家庭内のリズムから整える
- フリースクール・オンライン学習の活用
- 専門医療機関での治療
パターンは固定ではない
これらのパターンは固定ではなく、時間とともに変化します。完全休止型から断続型、午前型へと回復していくこともあれば、その逆もあります。今の状態に合わせた対応を。
子どもの「心の回復チェックリスト」
休んでいる子の心がどの段階にあるかを判断するためのチェックリストです。
枯渇期(休み始めて1〜4週間)
- 表情が暗い、無表情
- 言葉数が極端に少ない
- 寝てばかりいる
- 食事が進まない
- 家族との会話を避ける
- 「学校」の話題を嫌がる
この時期は、何もせず休ませることが最優先。「回復のためのエネルギー充電期間」と捉えましょう。
充電期(4週間〜2〜3ヶ月)
- 少しずつ表情が戻る
- 家族と会話できる
- 好きなことに少し興味を示す
- 食事が取れる
- 睡眠リズムが整い始める
- 家事の手伝いができる
この時期は、家庭での活動を少しずつ広げます。外出は本人のペースで。
準備期(2〜6ヶ月)
- 外に出ることができる
- 友達と会いたい・遊びたいと思う
- 勉強への興味が戻る
- 将来や進路を意識し始める
- 「学校」の話題が出ても落ち着いている
- 新しいチャレンジを考える
この時期は、フリースクール、習い事、学習支援など、新しい場を提案するチャンス。
再構築期(6ヶ月〜)
- 新しい居場所に通える
- 自分のペースで学習できる
- 友人関係が再構築される
- 将来への希望が持てる
- 自己肯定感が回復する
注意:直線的ではない
これらの段階を一直線に進むわけではなく、行ったり来たりしながら少しずつ前進します。「3ヶ月で充電期に入った」と思ったら、ある日突然枯渇期に戻ることも。焦らないことが大切。
不登校が長期化した時の選択肢
「学校復帰」だけがゴールではありません。長期化した時の選択肢を整理します。
フリースクール
不登校の子どもたちが通う民間の施設。学校とは違うペースで、自分らしく過ごせる場所です。種類も様々:
- 体験活動中心型
- 学習支援型
- 居場所提供型
- オンライン型
自宅から通える範囲のフリースクールを探してみましょう。
オンラインフリースクール
「クラスジャパン小中学園」のようなオンラインフリースクールは、自宅から参加できる学びと居場所を提供しています。外出が難しい子にも向いています。
通信制中学・通信制高校
正式な教育機関として認められている通信制学校。中学・高校のどちらにもあり、卒業資格が取得できます。
教育支援センター(適応指導教室)
自治体が運営する公的な居場所・学習支援施設。在籍校との連携もあります。
ホームスクーリング
家庭で学習を進めるスタイル。タブレット教材(RISU算数など)を活用すれば、自分のペースで進められます。
家庭教師
「家庭教師のグッド」のような、不登校・発達特性のある子に対応した家庭教師サービスもあります。マンツーマンで本人のペースに合わせた学習が可能。
復帰の道は一つではない
「もとの学校に戻る」だけが正解ではありません。本人にとってベストな道を一緒に探していく姿勢が、長期戦を乗り切る鍵です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 今日休ませて明日からは?
A. 明日の朝に「今日はどうする?」とフラットに聞く形がおすすめ。「行く」と言えば送り出し、「行きたくない」と言えばまた休む。一日単位の判断を続ける期間を持ってください。
Q2. 学校に連絡するの?
A. 本人の体調不良として連絡しておくのが現実的。「気分が悪いそうで休みます」で十分です。本人が「言わないで」と希望する詳細は、無理に伝えなくてOK。
Q3. 何日続いたら相談?
A. 3日連続で休む、または1週間に2〜3日休む状態が2週間続いたら、スクールカウンセラーや小児科への相談を検討してください。「不登校確定」になる前の段階での相談が、その後の対応を楽にします。
Q4. 体の症状もある
A. 頭痛・腹痛・吐き気が続いているなら、まず小児科で身体疾患の除外を。「気持ちの問題」と決めつけず、体の検査をしておくと安心です。
Q5. 配偶者と意見が違う
A. 「子の前で意見をぶつけ合わない」のが原則。一旦受け止めて、夜に大人だけで話し合う形にしてください。「両親で意見が違うと子どもが不安定になる」のは、現場でもよく見るパターンです。
Q6. 兄弟への影響が心配です
A. 兄弟も無意識のうちに影響を受けます。「○○は今ちょっとしんどい時期だから、家族で支えよう」と簡潔に伝え、兄弟だけの時間も意識的に作ってあげてください。
Q7. 祖父母に「甘やかしすぎ」と言われる
A. 祖父母世代は不登校への理解が薄いことが多いです。詳しく説明する必要はありません。「医師の見立てに基づいて対応している」と一言伝えて、距離を取るのも一つ。
Q8. 「行きたくない」と毎日言う
A. 毎日言うようになっているなら、すでに不登校の段階に入っている可能性が高いです。早めに専門機関に相談しましょう。
Q9. 学校に行かせるべきか迷う
A. 本人の様子を見て判断。表情、食欲、睡眠、言葉——これらが明らかに崩れていたら休ませる。元気そうに見えるが「気が乗らない」程度なら、選択肢を与えて本人に決めてもらう。
Q10. 親が仕事を休めない
A. 親が出勤する場合、子どもが一人で家にいる時間ができます。「無理せず過ごしてね」「何かあったら電話して」と伝えてから出勤。可能なら、祖父母やシッターサービスの活用も検討。
Q11. 「行きたくない」の理由を知りたい
A. 本人が話したくなった時に話すのを待つ姿勢で。「いつでも聞くからね」と伝えておけば、本人がタイミングを選んで話してくれます。詰問は逆効果。
Q12. もし不登校が長引いたら
A. 「不登校=人生の失敗」ではありません。本人にとってのベストな道を、一緒に探していく姿勢が大切。フリースクール、通信制、ホームスクーリングなど、選択肢は広いです。
家族・親戚への伝え方
子どもが学校を休んでいることを家族・親戚にどう伝えるか、悩む親御さんは多いです。
同居家族(祖父母など)への伝え方
同居している家族には、状況を共有する必要があります。ただ、「不登校」というラベルにとらわれず、具体的な状況を伝えるのがコツ。
「最近、学校でしんどいことがあるみたいで、しばらく家でゆっくり過ごすことにしました。声をかけすぎず、いつも通り接してもらえると助かります」
別居の親戚への伝え方
頻繁に会わない親戚には、必ずしも詳しく伝える必要はありません。聞かれた時に簡潔に:
「ちょっと体調を崩していて、しばらく家で過ごしています」
詳しく聞かれて気になる場合は「医師の指示で家でゆっくりしています」と専門家を盾にすると話が広がりにくいです。
「甘やかしすぎ」と言われたら
「甘やかしすぎ」「叱らないとダメ」と言われた時は、相手を説得しようとせず、軽く受け流すのが現実的。
「ご心配ありがとうございます。医師にも相談しながら対応しています」
これ以上の議論は避けて、距離を取りましょう。理解されないことに消耗する必要はありません。
子ども本人の前で話さない
子どものことを、子ども本人がいる前で家族・親戚と話すのは避けます。本人が「自分のことを話されている」と感じると、信頼関係を損ねます。
再登校のタイミングとペース
休んでいた子が「行ってみようかな」と言い始めた時、親が知っておきたいポイントです。
本人が言い出すまで待つ
親から「そろそろどう?」と聞きたい気持ちは分かりますが、本人の主体性を尊重するのが基本。本人が「行ってみようかな」と言うのを待ちます。
「行く」と言っても無理させない
本人が「行く」と言っても、当日朝に「やっぱり行けない」となることはよくあります。それも尊重して、「無理しないでいいよ」と。
段階的なステップ
いきなり「フル登校」を目指さず、段階的に:
- 放課後の短時間訪問
- 保健室・別室への短時間登校
- 1時間目だけ登校
- 午前中だけ登校
- 給食まで登校
- 午後の途中まで
- フル登校
各ステップで「これで安定したら次へ」のペースで進めます。
後退してもパニックにならない
「3時間目まで行けるようになった」と思ったら、次の日また行けなくなる——これは普通のことです。「一直線には進まない」と心得て、後退してもパニックにならないこと。
学期の節目を活用
新学期、長期休暇明けなどの「節目」は、再開のきっかけになりやすいタイミング。ただし、強制はしないこと。
親自身の「罪悪感」を手放す
「自分の育て方が悪かったのかも」「もっと早く気づいてあげれば」——多くの親御さんが抱える罪悪感を、どう手放すかは大きな課題です。
「罪悪感」は子どもにも伝わる
親が罪悪感を抱えていると、それは子どもにも伝わります。子どもは「自分のせいで親が辛そうにしている」と感じ、さらに自分を責めることに。
「育て方だけ」が原因ではない
不登校の原因は、家庭環境だけではありません。学校、社会、本人の気質、発達特性——多くの要因が絡んでいます。「自分のせい」と一人で背負わないでください。
「今からできること」に目を向ける
過去を悔やむより、今からできることに目を向けましょう。「今、子どもに何ができるか」「今、自分のメンタルを整えるには」——前向きな問いに変えることで、エネルギーが湧きます。
「完璧な親」を目指さない
「完璧な親」はいません。誰もが手探りで、失敗しながら、子どもと一緒に成長していくのです。「不完全な自分」を許すことから始めましょう。
専門家と話す
罪悪感が消えない時は、専門家のカウンセリングを受けるのも有効。「自分の感情を整理する場」を持つことで、少しずつ手放せます。
不登校経験者の声から学ぶ
不登校を経験した人たちが、後に振り返って語ることには共通点があります。
「あの時、休めてよかった」
「あの時、無理に行かせなかった親に感謝している」「休んだことで本当の自分を見つめ直せた」と語る人が多いです。
「親が信じてくれた」のが大きかった
「親が責めずに見守ってくれた」「『あなたのままで大丈夫』と言ってくれた」——親の姿勢が、回復の支えになったと振り返る声が多数。
「学校じゃなくてもよかった」
「もとの学校に戻らなかったけど、別の道で幸せに生きている」という人もたくさんいます。学校復帰だけが「成功」ではないのです。
長期視点を持つ
不登校の数ヶ月〜数年は、長い人生の一部です。その時期は辛くても、後から振り返れば「あの時間があったからこそ今がある」と感じられることが多いのです。
看護師視点でのまとめ
「学校行きたくない」と言われた最初の30秒は、「結論を出さず、ただ受け止める」ことに集中してください。「そっか、行きたくないんだね」、この一言が、その後の親子関係の信頼を作ります。
大事なポイントを整理すると:
- 最初の30秒は結論を出さず、受け止めるだけ
- 「なんで?」「みんな頑張ってる」は絶対NG
- 条件付きの休息ではなく、完全に休ませる
- 「クセになる」を過剰に心配しない
- 休んだ日は普段通り、責めない、勉強強要しない
- 3〜5日続いたら専門機関への相談を
- 学校との連携を早めに
- 親自身のメンタルケアも忘れずに
- 夫婦間で方針を一致させる
- 「学校復帰」だけがゴールではない
「行く・行かない」「明日から」「理由は何か」、これらすべて、最初の30秒に決めなくていいことです。一日単位で、本人のペースで、ゆっくり考える時間を持ってください。それが、長期的に本人の心を守る関わり方になります。
子どもを学校に行かせることより、子どもの心を守ること——それが今、あなたにできる一番大切なことです。一人で抱え込まず、専門家や相談先を活用しながら、共に進んでいきましょう。応援しています。
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看護師として見てきた「行きたくない」の奥にあるもの
児童思春期精神科の現場で、「学校に行きたくない」と訴えるお子さまを、数多く見てきました。看護師として強くお伝えしたいのは、「『行きたくない』は、わがままや甘えではなく、お子さまなりの限界のサインであることが多い」ということです。多くのお子さまは、本当はみんなと同じように学校に通いたいと思っています。それでも「行きたくない」と口にするのは、それだけ心や体が限界に近づいているからです。
「行きたくない」の奥には、様々な理由が隠れています。友人関係の悩み、勉強でのつまずき、先生との関係、集団生活での疲れ、感覚的な過敏さ、漠然とした不安――こうした要因が、一つ、あるいは複数重なって、「行きたくない」という言葉になって現れます。そして、お子さま自身も、その理由をはっきり説明できないことが多いのです。「なんとなく行きたくない」という言葉の奥に、お子さま自身も整理できていない苦しみがあります。
看護師として現場で実感してきたのは、「行きたくない」と言い始めた段階での対応が、その後の経過を大きく左右する、ということです。この段階で、お子さまの気持ちを受け止め、無理をさせない対応ができると、本格的な不登校に至らずに済むこともあります。逆に、「行きたくない」を軽く見て、無理に登校させ続けると、お子さまの心の状態が悪化し、長期的な不登校に繋がることがあります。
だからこそ、「行きたくない」というサインを、お子さまからの大切なメッセージとして受け止めることが大切です。「なぜ行きたくないのか」を問い詰めるのではなく、「行きたくないと感じるほど、何か辛いことがあるんだね」と、お子さまの気持ちに寄り添う姿勢が、お子さまの心を支えます。
「休ませる」という判断について
「学校を休ませてもいいのか」――これは、多くの保護者の方が最も悩まれる判断です。看護師として現場でお伝えしているのは、「お子さまの心と体の状態を最優先に、休ませる判断をしてよい」ということです。
「一度休ませたら、そのまま行かなくなるのでは」という不安を、多くの保護者の方が持たれます。けれど、現場で見てきた経験から言えるのは、「無理に行かせ続けることのほうが、長期的な不登校のリスクを高める」ということです。心や体が限界に達している時に無理を重ねると、心の状態が大きく崩れ、回復に時間がかかってしまいます。早めに休んで心を回復させるほうが、結果として早く立ち直れることが多いのです。
休ませる判断の目安として、こうした状態が見られたら、休養を優先することをおすすめします。朝、体調不良(頭痛、腹痛、吐き気など)を訴える、強い不安や涙が見られる、夜眠れていない、食欲が落ちている、表情が極端に暗い――こうしたサインは、お子さまの心と体が休養を必要としているサインです。「気のせい」「仮病」と決めつけず、お子さまの状態を尊重する姿勢が大切です。
そして、休ませる時は、「休んでいいよ」と、お子さまが罪悪感を持たずに休めるように伝えることが大切です。「休んだら勉強が遅れる」「みんなに迷惑がかかる」というプレッシャーを与えず、「今日はゆっくり休もう」と、安心して休める雰囲気を作ることが、お子さまの心の回復を支えます。休養は、怠けではなく、回復のための大切な時間です。
やってしまいがちなNG対応
「学校に行きたくない」と言われた時、保護者の方が良かれと思ってする対応の中に、かえってお子さまを追い詰めてしまうものがあります。看護師として現場で見てきた、避けたいNG対応をお伝えします。
一つ目は、「理由を問い詰める」ことです。「どうして行きたくないの」「何があったの」「ちゃんと理由を言いなさい」と問い詰めると、お子さまは追い詰められてしまいます。お子さま自身が理由を整理できていないことも多く、問い詰められることで、かえって心を閉ざしてしまいます。理由を聞くよりも、まず気持ちを受け止める姿勢が大切です。
二つ目は、「無理に行かせようとする」ことです。「行けば何とかなる」「みんな行ってるよ」「行かないとダメな子になる」と、無理に登校させようとすると、お子さまの心の状態が悪化することがあります。一時的に登校できても、根本的な苦しみが解決されないまま無理を重ねると、いずれ大きく崩れてしまいます。
三つ目は、「励ましすぎる」ことです。「がんばれ」「あなたならできる」という励ましは、善意から出るものですが、すでに限界まで頑張っているお子さまにとっては、「もっと頑張れ」というプレッシャーになります。「頑張れ」ではなく、「もう十分頑張っているね」「無理しなくていいよ」という、お子さまの頑張りを認める言葉のほうが、心に届きます。
四つ目は、「他の子と比較する」ことです。「お友達は普通に行っているのに」「お兄ちゃんはこんなこと言わなかった」という比較は、お子さまの自己肯定感を深く傷つけます。すでに「自分はみんなと違う」と感じて苦しんでいるお子さまにとって、比較は追い打ちになります。お子さま自身の状態を、他者と比べずに受け止める姿勢が大切です。
これらのNG対応は、いずれも保護者の方の「お子さまを思う気持ち」から生まれるものです。だからこそ、避けるのが難しいこともあります。完璧な対応を目指すのではなく、「気づいたら、関わり方を少しずつ変えていく」という姿勢で十分です。保護者の方ご自身を責めず、お子さまと一緒に、より良い関わり方を探していっていただきたいと思います。
学校・専門機関との連携
「行きたくない」が続く時、家庭だけで抱え込まず、学校や専門機関と連携することが大切です。看護師として現場でお伝えしているのは、「早めに、複数の相談先を持っておく」ことです。
まず、学校との連携です。担任の先生に、お子さまの状態を伝え、配慮をお願いすることができます。「無理に登校を促さないでほしい」「登校した時は温かく迎えてほしい」「学習面で配慮してほしい」など、具体的なお願いを伝えることで、学校での対応が整います。担任の先生だけでなく、養護教諭やスクールカウンセラーも、心強い相談相手になります。
そして、お子さまの状態が心配な時は、児童精神科や思春期外来などの専門機関に相談することも大切です。「行きたくない」の背景に、心の不調が隠れていることもあります。専門機関では、お子さまの状態を専門的に評価し、必要なサポートを受けることができます。「医療機関に行くほどではないかも」と迷う段階でも、地域の教育センターや保健所の相談窓口など、気軽に相談できる場があります。
看護師として、現場で多くのご家族と接してきて、早めに相談先と繋がったご家族のお子さまほど、回復がスムーズに進む、と感じてきました。「様子を見すぎて対応が遅れる」ことを防ぐためにも、早めに相談する姿勢を持っていただきたいと思います。相談することは、保護者の方の力不足ではなく、お子さまを多面的に支えるための賢明な選択です。
看護師として、ご家族へお伝えしたいこと
本記事を最後までお読みくださって、ありがとうございました。お子さまの「学校に行きたくない」に悩み、本記事に辿り着かれた保護者の方の、お子さまへの愛情を感じています。
「学校に行きたくない」という言葉は、保護者の方にとって、不安と戸惑いを呼ぶ言葉だと思います。けれど、その言葉は、お子さまが保護者の方を信頼して、SOSを出してくれている証でもあります。その信頼に応えて、お子さまの気持ちを受け止め、無理をさせず、必要なサポートに繋いでいくことが、お子さまの心を支えます。
そして、保護者の方ご自身も、お子さまの「行きたくない」に向き合う日々の中で、大きな不安や焦りを抱えておられることと思います。「自分の対応が悪いのでは」と自分を責めず、ご自身のケアも大切にしてください。保護者の方が穏やかでいられることが、お子さまにとっての最大の安心感に繋がります。
看護師として、現場から、ご家族の毎日を心から応援しています。「行きたくない」は、お子さまが自分の心と向き合っている過程でもあります。焦らず、お子さまのペースを尊重しながら、一緒にゆっくり進んでいってください。
家庭を「安心して休める場所」にする
「学校に行きたくない」というお子さまにとって、家庭が安心して過ごせる場所であることは、何よりも大切です。看護師として現場でお伝えしているのは、「家庭が、お子さまにとっての安全基地になること」が、回復の土台になる、ということです。
家庭を安心できる場所にするために、まず大切なのは、家庭の中で「学校の話題ばかりにしない」ことです。お子さまが家にいる間も「学校どうするの」「明日は行けそう?」と問い続けると、お子さまは家庭でも気が休まりません。学校のこと以外の、何気ない日常の会話、好きなことの話、楽しい時間を大切にすることで、お子さまは家庭でリラックスできるようになります。
そして、お子さまが家でゆっくり過ごせる時間を保障することも大切です。「学校を休んでいるんだから勉強しなさい」「家にいるなら手伝いをしなさい」と、休養中のお子さまに次々と要求を出すと、お子さまの心は休まりません。まずは心身を回復させることを最優先に、お子さまが自分のペースで過ごせる環境を整える姿勢が大切です。
看護師として、現場で多くのお子さまを見てきて、家庭が安心できる場所であったお子さまほど、心の回復が早く、再び外の世界に向かう力を取り戻していく、と感じてきました。家庭という安全基地があるからこそ、お子さまは安心して休み、そして少しずつ前に進む力を蓄えていけるのです。
「行きたくない」が教えてくれること
「学校に行きたくない」という言葉は、保護者の方にとって不安を呼ぶものですが、看護師として現場で実感してきたのは、「この言葉が、お子さまと向き合い直すきっかけになることもある」ということです。
これまで気づかなかったお子さまの苦しみ、お子さまが抱えていた我慢、家庭での関わり方の課題――「行きたくない」という言葉をきっかけに、こうしたことに気づき、家族としての関わり方を見直していくご家庭を、現場で多く見てきました。お子さまのSOSは、家族がより深く繋がり直すための、大切な機会にもなります。
そして、「行きたくない」と感じる経験を通して、お子さま自身も大切なことを学んでいきます。自分の心と体の限界を知ること、無理をしすぎないこと、助けを求めていいこと――こうした学びは、長い人生において、自分を守る力になります。今は遠回りに見えても、お子さまは、この経験を通して、自分らしい生き方を見つけていきます。
看護師として、現場から、ご家族の毎日を心から応援しています。「学校に行きたくない」という言葉に込められたお子さまの気持ちを受け止め、焦らず、お子さまのペースを尊重しながら、一緒に歩んでいってください。お子さまの未来には、必ず道があります。あなたの愛情は、確かにお子さまに届いています。本日も、お疲れさまでした。
「行ける日」と「行けない日」の波を受け止める
「学校に行きたくない」というお子さまの状態は、一直線に良くなったり悪くなったりするものではありません。看護師として現場でお伝えしているのは、「行ける日と行けない日の波を、そのまま受け止める」ことの大切さです。
ある日は登校できても、次の日は行けない。少し元気になったと思ったら、また落ち込む――こうした波は、回復の過程でよく見られるものです。保護者の方は、「せっかく行けたのに、また行けなくなった」と落胆してしまいがちですが、波があるのは自然なことです。行けた日を喜びすぎず、行けない日を責めすぎず、長い目で見守る姿勢が大切です。
大切なのは、行けた日には「行けたね」とさりげなく認め、行けない日には「今日は休もう」と受け止める、という一貫した姿勢です。保護者の方の対応が、お子さまの状態によって大きく変わると、お子さまは不安になります。行けても行けなくても、お子さまの存在そのものを変わらず大切にする――その姿勢が、お子さまの安心感を支えます。
看護師として、現場で多くのお子さまの回復を見届けてきて、波を繰り返しながらも、お子さまは少しずつ自分のペースを取り戻していく、と実感しています。今は波の中にいるように感じられても、長い目で見れば、お子さまは確かに前に進んでいます。焦らず、その歩みを信じて見守っていただきたいと思います。
そして、お子さまが少しずつ前を向き始めた時には、その小さな一歩を、どうかたくさん認めてあげてください。「今日は外に出られたね」「朝、起きられたね」――こうした小さな変化を見つけて言葉にすることが、お子さまの「やってみよう」という気持ちを育てます。大きな前進を求めず、小さな歩みを一緒に喜ぶ姿勢が、お子さまの回復を支えます。
看護師として、現場から、ご家族の歩みを心から応援しています。「行きたくない」と向き合う日々は決して楽ではありませんが、あなたが寄り添い続けることが、お子さまにとっての何よりの支えです。一歩ずつ、ご家族のペースで、進んでいきましょう。
お子さまの心が、また少しずつ外の世界に向かっていける日を信じて、温かく見守っていきましょう。あなたの愛情が、その日を必ず引き寄せます。
本日も、お子さまと向き合うあなたの頑張りに、心からの敬意を込めて。看護師として、現場からエールをお送りいたします。
あなたとお子さまの毎日に、温かい光が訪れますように。
焦らず、ゆっくり。お子さまのペースを、何より大切に。
あなたは、お子さまにとって、かけがえのない存在です。その想いを、これからも大切に。
一緒に、ゆっくり進んでいきましょうね。応援しています。
お子さまの笑顔が、また戻ってきますように。心から。
本日も、本当にお疲れさまでした。
あなたの優しさが、お子さまの心を温めています。
どうか、ご自身も大切になさってくださいね。


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