子どもの不安症・分離不安への関わり方|登校しぶりの背景にある「不安」を見抜く【児童精神科看護師が解説】

玄関でランドセルを背負ったまま不安そうに立つ女の子と、しゃがんで見上げる母親。分離不安のある子の朝のイメージ 保護者向け

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この記事の要点

  • 不安症は子どものこころの不調で最も多いもののひとつ
  • 朝の腹痛や頭痛として体に出ることがある
  • 「お母さんと離れたくない」は分離不安のサイン
  • 「大丈夫」と繰り返す励ましは、かえって不安を強める
  • 登校しぶりが続く場合は、背景の不安を疑ってみる

「朝になると『お腹が痛い』と言って学校を渋る」「『お母さんと離れたくない』と泣く」「学校で話せない」——こうしたお子さまの様子の背景に、『不安症』が隠れていることがあります。不安症は子どもにもみられ、生活に大きな支障を生じることがあると言われています。にもかかわらず、「性格」「わがまま」「甘え」と捉えられて、見逃されることが多い病気です。

早期に気づき、適切に対応することで、症状の固定化を防ぎ、本人の自己肯定感を守ることができます。逆に、放置や叱責の対応が続くと、不安症から二次的にうつ症状や不登校に進展することもあります。

子どもの不安症とは

不安が日常生活に大きな支障をきたすレベルになった時、医学的には「不安症」と診断されます。基本的な基準は次の通りです。

  • 不安や恐怖が強く、長期間続く(数週間〜数ヶ月以上)
  • 日常生活(学校・家庭・友人関係)に支障が出ている
  • 不安への対処として回避行動が見られる
  • 身体症状(頭痛・腹痛・吐き気など)を伴うことが多い
  • 年齢相応の発達段階を超えた強さ・頻度/本人または家族が困っている
タイプ主な特徴典型的な発症年齢
分離不安症家族から離れることへの強い不安幼児期〜小学校低学年
全般性不安症さまざまなことへの慢性的な心配小学校高学年〜思春期
社交不安症人前での緊張・回避小学校高学年〜思春期
限局性恐怖症特定の物・場所への強い恐怖幼児期〜思春期
選択性緘黙家以外では話せない幼児期〜小学校低学年
パニック症突然の強い不安発作思春期以降

これらは単独で出ることもあれば、複数併存することもあります。一人のお子さまの中で、複数の不安が時期によって入れ替わることも。タイプを限定しすぎず、本人の不安全体を把握する姿勢が大切です。

なお、子どもの発達には年齢相応の不安があります。乳幼児期は親との分離不安、幼児期は暗闇や怪物への恐怖、小学校低学年は学校への不安、思春期は対人関係や将来への不安——これらは発達段階に応じた自然な現象。「不安があること」自体は、子どもとして正常な発達です。「不安に振り回されすぎる」状態が問題なのです。

不安症の脳科学的背景

不安症は「気の持ちよう」や「性格の問題」ではなく、脳と身体に明確な変化が生じている医学的な疾患です。

  • 扁桃体の過活動——危険を察知して身体に反応を起こす「警報装置」が過剰に反応する状態。実際には危険のない場面でも、扁桃体が「危険!」と判断し、心拍数の上昇、発汗、震え、呼吸の乱れなどの身体反応を引き起こします
  • 前頭前野のブレーキの弱さ——本来は前頭前野が「これは本当の危険か?」と判断して鎮めます。発達途中の子どもでは抑制が十分に効きにくく、不安が強く出やすい傾向が。思春期以降、前頭前野が成熟するにつれてコントロールする力が育っていきます
  • セロトニン・GABAの働き——これらの働きが不足すると不安が増幅されやすくなります。SSRIが不安症の治療に用いられるのは、セロトニンの働きを整えるためです
  • 遺伝的要因と環境要因——両方が関わって発症します。「親のせい」と単純化できる病気ではなく、複数の要因が絡んでいることを理解してください

登校しぶり・身体症状との関係

子どもの不安症は、しばしば身体症状として現れます。特に朝の登校前にこれらが強くなることが多く、「仮病」ではなく、不安によって実際に身体に起きている反応です。

  • 頭痛・腹痛(特に朝)/吐き気・嘔吐/下痢・便秘
  • めまい・立ちくらみ/動悸・息苦しさ/手足のしびれ・震え
  • 食欲不振/睡眠の問題(寝つきが悪い・夜中に目覚める)/疲労感・倦怠感/頻尿

まず小児科を受診して身体的な原因を除外することが大切です。身体的な異常が見当たらない場合、不安症や心理的な要因が背景にある可能性が高くなります。「仮病」「ずる休み」と決めつけず、本人の苦しみとして受け止めてください。

登校しぶりの背景には、多くの場合、何らかの不安が隠れています。「学校で何が怖いのか」を本人と一緒に探っていくと、対人関係、学業、教師との関係、給食、運動、トイレ、登下校途中など、具体的な不安要素が見えてきます。「学校に行きたくない理由」を表面的に捉えず、その奥にある不安に注目することが、適切な支援の入口です。

朝の身体症状と登校しぶりが続く場合、起立性調節障害(OD)という身体的な疾患の可能性もあります。自律神経の調節がうまく働かず、起立時に循環動態の変化が生じる病気で、小児科や思春期外来などで診断・治療が行われます。不安症と併発することも多く、両方への対応が必要なケースもあります。

分離不安と発達段階

0歳〜3歳頃の分離不安は、発達上の正常な現象です。「お母さんと離れると泣く」は愛着の表れであり、健全な親子関係の証拠。問題になるのは、その不安が学童期以降も強く残り、日常生活に大きな支障をきたす場合です。

  • 家族から離れることへの過剰な不安・抵抗
  • 家族と離れている時に「事故に遭うのでは」「死んでしまうのでは」という心配
  • 家族と離れる場面(登校・就寝)で泣く・パニック/家族なしで寝ることへの拒否
  • 家族と離れる夢を見る/離れる予定がある時の身体症状/家から出ることへの抵抗

背景には、本人の気質、家族の養育パターン、過去のトラウマ(家族の病気・死別など)、転居や転校などの環境変化が関わります。「親が過保護だから」と単純化されがちですが、それだけが原因ではありません。

担当経験から見たエピソード

※すべて本人およびご家族が特定できない形に改変し、複数のケースを合成しています。

小2女子・分離不安症——登校時に泣き叫び、母親が見えなくなるとパニックに。お母さまは「かわいそう」と思って長時間付き添う対応を続けていましたが、それが結果として分離不安を維持・強化していると主治医から指摘されました。校門まで→教室入口まで→校門で別れる→通学路の途中で別れると段階的に分離時間を延ばす行動療法を導入。3ヶ月後には一人で通学できるように。家族の「離す勇気」が、本人の自立を支えた事例です。

中1男子・社交不安症——授業中に当てられて答えるのが極度に怖く、「失敗したら笑われる」という強い予期不安が。家族は「気のせい」「もっと自信を持って」と励ましていましたが、本人は追い詰められる一方でした。CBTで「失敗しても大丈夫」を体験的に学ぶプログラムとSSRIの少量からの薬物療法を併用し、1年かけて教室復帰。社交不安症では、家族の励ましだけで抱え込まず、専門家と治療方針を検討することが重要だことを実感した事例です。

小4女子・全般性不安症——常にさまざまな心配が頭を離れず、家族の確認(「大丈夫?」)を1日に何十回も求めていました。SPACE家族支援プログラムを導入し、家族が「保証を提供すること」が不安を強化していることを学習。「大丈夫だよ」と毎回答えるのをやめ、境界を引く対応に変えました。半年で確認頻度が大きく減り、本人が「不安はあるけど、一緒にいられる」と話せるように。

小1女子・選択性緘黙——家では普通に話せるのに、学校では一切話せないお子さま。「人見知り」と片付けられがちですが、選択性緘黙は不安症の一種です。段階的曝露療法、学校との連携、家族の支援を組み合わせて、1年半かけて学校でも少しずつ声を出せるように。「話さない」のではなく「話せない」状態です。本人を責めず、待つ姿勢が大切です。

家庭でできる関わり方の基本

  • ①不安を受け止める、否定しない——「大したことないよ」「考えすぎ」は本人を孤立させます。「不安なんだね」「怖いんだね」と、まず気持ちを受け止める。受け止めることは「肯定する」「同調する」とは違い、本人の感情を「あるものとして」認識するスタンスです
  • ②保証を出しすぎない——「大丈夫?」と聞かれて毎回「大丈夫だよ」と答えることが、不安症を維持する原因(巻き込み=accommodation)になります。共感した上で、段階的に切り替えを。主治医・心理士と相談しながら進めるのが理想です
  • ③回避を促さない——「不安があるから学校を休ませる」は短期的には楽ですが、回避が増えるほど「これは怖いことなんだ」という認識が固定化されます。専門家の指導のもと、段階的に「不安に少しずつ近づく」ことを支える姿勢を
  • ④家族の不安を子どもに見せすぎない——家族が「心配」を頻繁に口にすると、子どもも同じ不安を学習します。「子どもには見せない、けれど自分のために対処する」という二重構造を意識してください
  • ⑤生活リズムを整える——睡眠不足、不規則な食事、運動不足は不安症を悪化させます。家族で一緒に取り組むことで、本人だけが「治療されている」感覚にならず、自然に習慣化できます

親がやってしまいがちな対応(逆効果)

  • NG①「気にしすぎ」と一蹴する——「自分の気持ちを理解してもらえない」と本人は感じ、家族に話さなくなります。一人で抱え込んだ不安が、症状を強める結果に
  • NG②「克服しなさい」と強要する——一見「頑張らせている」ように見えても、対処能力が育っていない状態で強要すると、トラウマ的体験になることもあります
  • NG③「他の子と比べる」——不安症のお子さまは、ただでさえ「自分はおかしい」と感じやすい状態。他者との比較ではなく、本人の以前との比較(「先週より少し前進したね」)で評価してください
  • NG④「あなたの育て方の問題」と自責する——自責に飲み込まれた家族は、本人への対応に余裕がなくなり、結果的に支援の質が下がります
  • NG⑤「すべて代わりにやってあげる」——過剰な代行は本人の不安への対処能力を育てる機会を奪います。「一緒にやろう」「あなたができるところまでやってみよう」と、徐々に主導権を返していく姿勢を

受診のタイミングと治療

  • 不安症状が数週間以上続いている/学校・家庭・友人関係に支障が出ている
  • 身体症状(頭痛・腹痛など)が頻繁/本人が強く苦しんでいる(泣く・自分を責める)
  • 不登校・遅刻・早退が増えている/家族が対応に疲弊している
  • 「死にたい」などの希死念慮/抑うつ症状を伴う

症状が生活に影響している場合は、早めに専門家へ相談することが勧められます。相談を先延ばしにすると、困りごとが長引く場合があります。治療の選択肢は、心理教育/認知行動療法(CBT)/曝露療法/SPACE(家族支援プログラム)/薬物療法(SSRIなど)/家族療法/環境調整(学校との連携)。本人と家族と医療者で、納得のいく治療方針を作り上げていく姿勢が大切です。

CBT(認知行動療法)の進め方

CBTは、子どもの不安症に対して用いられる心理療法の一つです。「不安を感じる→回避する→不安が強まる」という悪循環を、認知(考え方)と行動の両面から変えていきます。

  • 第1段階:心理教育(不安症の仕組み・治療の流れ)
  • 第2段階:不安階層表の作成(怖い場面のランキング)
  • 第3段階:リラクセーション法・呼吸法の習得
  • 第4段階:認知の歪みへの気づきと修正
  • 第5段階:段階的曝露(低い不安から徐々に高い不安へ)
  • 第6段階:再発予防のスキル獲得

通常10〜20回程度のセッションで進められ、保険適用される医療機関もあります。家族も並行して参加する形式もあり、子どもと家族の両方が学ぶことで、家庭での実践がスムーズになります。

SPACE家族支援プログラム

SPACE(Supportive Parenting for Anxious Childhood Emotions)は、エール大学で開発された、不安症の子どもの家族に対するアプローチです。本人ではなく家族にアプローチすることで、子どもの不安症状を軽減できる、というエビデンスが報告されています。「本人が治療を拒否している」「カウンセリングに来てくれない」ケースでも、家族の関わり方を変えることで効果が出ます。

SPACEでは、家族が「保証を提供すること」「回避を許すこと」「代わりに行動すること」が、結果的に子どもの不安症を維持していると指摘し、これらの「巻き込み」を段階的に減らす方法を学びます。日本ではまだ提供施設が限られていますが、「家族療法」「家族支援」のキーワードで医療機関に相談してみてください。

学校との連携と合理的配慮

担任・養護教諭に、不安症という病気の概要、本人の症状の特徴、家庭での対応方針、医療機関との連携状況を文書で伝えます。診断書や情報提供書を添えると、学校側も組織的に動きやすくなります。

  • 当てて発表させる場面での配慮(事前に伝えるなど)
  • テスト時の別室受験の選択肢/保健室への自由なアクセス
  • 遅刻・早退・欠席の柔軟な扱い/体育や運動会での参加方法の工夫
  • 給食での配慮/修学旅行・宿泊学習での配慮/登下校時の支援

合理的配慮は、本人と家族と学校の三者で話し合って決めるもの。「特別扱い」ではなく「適切な環境調整」として捉え、建設的に対話してください。本人とご家族の同意があれば、クラスメイトへの心理教育も選択肢です。「あの子は不安症という病気があって、特定の場面で強い緊張が出ることがあるんだよ」とシンプルに伝えるだけで、クラスメイトの理解は大きく変わります。

長期的な経過と再発予防

治療や環境調整によって、症状が和らぎ生活しやすくなるお子さまもいます。完全に「不安がなくなる」のではなく、「不安があってもうまく付き合える」状態を目指すのが現実的な回復像です。早めの相談が役立つ場合がありますが、経過には個人差があります。症状が続くときは専門家へご相談ください。

不安症は再発リスクのある病気で、進学・受験・転居・人間関係の変化・家族の出来事など、ライフイベントが引き金になることがあります。回復のステージは、①気づき・受診期 ②心理教育・治療開始期 ③変化・改善期 ④管理・維持期 ⑤自立期この5段階は直線的ではなく、退行や再発を繰り返しながら進みます。「進んだと思ったらまた戻った」というのは自然な経過です。

家族のセルフケア

「子どもの不安が伝染する」「子どもの代わりに自分が不安になる」という現象も、よくあります。家族自身のセルフケアを優先することが、長期戦を乗り越える鍵です。

「私の育て方が悪かった」「過保護にしすぎた」と自責に飲み込まれることはよくあります。不安症の発症には複数の要因が絡んでおり、家族だけの責任ではありません。自責ではなく、「これから何ができるか」に焦点を当ててください。

精神保健福祉センター、保健所、子育て支援センター、家族会、オンラインコミュニティなど、つながれる場所はいくつもあります。「同じ立場の家族の話を聞くだけで楽になった」と話されるご家族は多く、孤独に抱え込まないことが、家族の燃え尽きを防ぐ最大の予防策です。睡眠、栄養、運動、趣味の時間——家族の健康を保つことが、お子さまの治療の継続を支えます。

学校以外の居場所と、併存する特性

  • 適応指導教室(教育支援センター)——自治体運営で無料、出席扱いも基本的に認められます。市区町村の教育委員会に問い合わせを
  • フリースクール——不安症のお子さまには「自由型」「少人数型」「発達特性に配慮した型」が合いやすい。週1日からでも通えるところが多いです
  • オンラインフリースクール——家から出られない、対人接触に強い不安があるお子さまに。自宅から参加できる安心感が大きく、徐々に対面に移行できる柔軟性も
  • 家庭訪問型支援——スクールソーシャルワーカー、訪問支援員、心理士などが自宅を訪問。長期引きこもりに発展する前に、こうした緩やかな支援につながることが、回復を支える鍵になります

また、ASDのお子さまは、予測できない状況や感覚刺激への不安が強く出やすく、ADHDのお子さまは、失敗経験の積み重ねから二次的に不安が育つことがあります。発達特性と不安症が併存する場合、不安への対応だけでなく、特性そのものへの環境調整を並行する包括的なアプローチが必要です。

思春期から成人期への移行では、進学・受験のプレッシャー、就職・社会参加の場面で不安が再燃することがあります。大人の不安症として続く場合も、成人の精神科・心療内科で治療を継続できます。「子どもの病気」で終わらせず、必要に応じて医療とのつながりを保ってください。

支援団体・緊急時の連絡先

  • 精神保健福祉センター:各都道府県・指定都市に設置。相談・情報提供
  • 児童相談所:18歳未満の子どもに関する相談
  • 保健所・市町村保健センター:身近な相談窓口
  • スクールカウンセラー:在籍校で無料で相談可能/スクールソーシャルワーカー:学校と家庭の橋渡し役
  • 不登校親の会:同じ立場の親の集まり

不安症の苦しみが深まり、本人が「死にたい」「もうダメ」と訴える場合は、迷わず以下に相談してください。

  • いのちの電話:0570-783-556(ナビダイヤル)/無料のフリーダイヤルは0120-783-556(毎日16〜21時、毎月10日は8時〜翌朝8時)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
  • チャイルドライン:0120-99-7777(16〜21時、18歳まで)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556
  • 緊急時:119(救急)、110(警察)

当事者と家族からの声

当事者から——「『気にしすぎ』『大丈夫だよ』と言われ続けて、自分の感じている不安を誰にも分かってもらえないのが、一番つらかった。診断がついて『不安症という病気だ』と分かった時、初めて『自分はおかしいんじゃない、病気なんだ』と思えて、ほっとした」(中2女子)。「お母さんが『答えないことにしようね』と言い始めた時、最初はパニックになった。でも答えてもらえなくても、何とか過ごせることが分かって、自分の力が育ってきた」(小6男子)。「CBTで『不安は感じてもいい、でも振り回されない』ということを学んだ。不安をなくそうとするんじゃなくて、不安と一緒にいられるようになった」(高1女子)。

家族から——「最初は『甘え』だと思って、無理矢理学校に連れて行こうとしていた。診断がついて、本人がどれだけ苦しんでいたかを知って、関わり方をすべて見直した」(中学生の母)。「夫婦で対応方針が割れていた。家族療法に夫婦で参加して、お互いの理解が深まって、子どもへの対応が揃ってきた。それが本人の安定の大きな要因だった」(小学生の父)。

よくある質問

Q1. 不安症と性格の境目はどこですか

「日常生活に支障が出ているか」が最大の分かれ目です。心配性でも学校に行けて友達と遊べているなら性格の範囲。登校できない、眠れない、身体症状が出ている、本人が強く苦しんでいる——この段階なら、性格ではなく治療の対象と考えてください。

Q2. 薬を飲ませることに抵抗があります

自然な感情です。まず心理療法から始めることも多く、薬は「必ず使うもの」ではありません。使う場合も、「効果」「副作用」「服用期間」「やめる時の方法」を納得いくまで質問してください。薬は不安を下げて心理療法に取り組みやすくする補助という位置づけです。

Q3. 不安症は遺伝しますか/親も不安が強い場合は

遺伝的要因は関与しますが、「遺伝するから防げない」わけではありません。ご家族自身に不安傾向がある場合、ご家族が自分の不安に対処する姿を見せることが、お子さまにとって最良のモデルになります。ご家族自身のカウンセリングも有効です。

Q4. 学校を休ませるべきですか

身体症状が強い日は休ませてよいですが、「休むこと」が常態化すると回避が強化されるため、専門家と相談しながらバランスを取ってください。「全日出席か全休か」ではなく、「1時間だけ」「保健室まで」といった中間の選択肢を作るのが現場の定石です。

Q5. きょうだいへの影響が心配です

家族の関心が集中することで、きょうだいが不公平感を抱えることがあります。年齢に応じた説明と、きょうだいだけの時間の確保を。「お世話役」を担わせないことも重要です。

Q6. CBTはどこで受けられますか

児童精神科、心療内科、大学の心理臨床センター、民間のカウンセリングルームなど。保険適用の有無は施設によって異なります。「子どもの不安症のCBTを実施していますか」と事前に問い合わせるのが確実です。

Q7. 受診したくないと本人が拒否します

まずご家族だけの相談から始められます。SPACEのように、家族の関わり方を変えるだけで本人の症状が軽減するアプローチもあります。「病院」という言葉を避け、「話を聞いてくれる人がいる」という伝え方も有効です。

Q8. 学校行事(運動会・修学旅行)が近づくと不安が強くなります

予測できる不安なので、事前準備が効きます。当日の流れを具体的に確認する、下見をする、「つらくなったらどこに逃げていいか」を決めておく、部分参加の選択肢を学校と相談する——「逃げ道がある」と分かるだけで、参加できることがあります。

Q9. 治療しなくても自然に治りますか

軽症なら成長とともに軽快することもありますが、放置すると症状が固定化し、成人期に持ち越すリスクが高まります。また、不安症を放置した結果、二次的にうつ症状や不登校に進展することも。「様子を見る」期間は、専門家と相談しながら決めてください。

Q10. 良い声かけを教えてください

「不安なんだね」(受け止め)、「あなたなら乗り越えられると信じてる」(保証ではなく信頼の表明)、「一緒に考えよう」(伴走)、「今日はここまでできたね」(過程の評価)。逆に避けたいのは「大丈夫だよ」の連発(保証の提供)と「気にしすぎ」(否定)です。

Q11. 習い事はさせていい?/SNSで情報収集しても大丈夫?

習い事は本人が望むなら、成功体験の場として有効です。ただし「不安を克服させるため」に無理にさせるのは逆効果。SNSでの情報収集は、不確かな情報や不安を煽る内容も多いため、公的機関や医療機関の情報を軸にしてください。

Q12. 将来、結婚・出産・仕事に影響しますか

適切な治療を受けた多くの方が、進学・就職・結婚と、自分の人生を歩んでいます。不安との付き合い方を身につけることは、むしろストレス対処の力として一生の財産になります。「不安症だから将来が限られる」ということはありません。

今夜これだけ

今夜「大丈夫?」と聞かれたら、「大丈夫だよ」と答える代わりに「不安なんだね」と受け止めてみてください。保証ではなく共感が、不安をゆるめます。

まとめ|「不安を受け止め、専門家と歩む」

第一に、早めの受診をためらわないでください。不安症は、早めに相談することで本人に合う支援を検討しやすくなります。「相談だけ」「念のため」のつもりで受診しても問題ありません。

第二に、本人の不安を受け止める姿勢を持ってください。「気にしすぎ」「大丈夫」と否定するのではなく、「不安なんだね」と気持ちを認めることが、本人にとっての最初の救いになります。受け止めることと、保証を出しすぎないことは両立できます。共感と境界の二段構えを意識してください。

第三に、家族自身を大切にしてください。家族会、カウンセリング、信頼できる人とのつながりを。家族が倒れたら、本人を支えられません。

第四に、長期的な視点を持ってください。回復は数年単位で波を伴いながら、徐々に本人が不安と付き合う術を身につけていく過程です。一時的な改善で安心しすぎず、また一時的な悪化で諦めず、長い目線でお子さまの育ちを見守ってください。

第五に、専門家とのチームを作ってください。主治医、心理士、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、家族会——複数の支援者と連携することで、対応の幅が広がります。一人で抱え込まず、地域のネットワークを頼ってください。

参考にした公的情報・一次情報

記事内の制度・相談先・健康情報は、以下を2026年8月15日に確認しています。

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著者プロフィール

星野レン(ほしの れん)
2018年4月から看護師として勤務(2か月のブランクあり)。2021年4月から児童思春期精神科病棟に携わっています。不登校・発達障害・不安症・思春期のメンタル不調を抱えたお子さまとご家族のケアに従事。臨床現場で出会った子どもたちと家族の言葉を、できるだけそのままの温度で伝えることを大切にしています。不安症のお子さまの治療と回復の過程に何度も立ち会ってきた経験から、医療と家族と学校の三者が連携することの重要性を、繰り返し実感しています。本記事が、ご家族の早期気づきと適切な行動の一助になることを、心から願っています。お子さまとご家族の歩みが、少しでも楽になるよう、現場の声をこれからも発信し続けます。同じような状況で悩んでいるご家族の方々が、本記事を読んで「我が家だけじゃない」と感じてくれたら、それが何よりの励みになります。


免責事項

本記事は児童思春期精神科での臨床経験をもとにした一看護師の視点をまとめたものです。医療的な診断・治療方針を示すものではありません。症状が長期化する・悪化する・日常生活に支障が出る場合は、必ず児童精神科・小児科・心療内科などの専門医療機関を受診してください。記事内のエピソードは、本人および関係者が特定できない形に配慮し、複数のケースを合成して紹介しています。薬物療法・心理療法の詳細は、必ず主治医・薬剤師・心理士にご相談ください。緊急時(希死念慮・自傷行為・パニックなど)は、迷わず救急医療や各種相談窓口にご連絡ください。本記事の内容は2026年時点での一般的な知見に基づいており、最新の研究や治療法については主治医や専門医療機関での確認をお願いします。

【医療に関する免責事項】

本記事は、児童思春期精神科での看護経験に基づいた一般的な情報提供を目的としています。医療行為・診断・治療の代わりとなるものではありません。お子さんの心身の状態にご不安がある場合は、必ず主治医・かかりつけ医・スクールカウンセラー・地域の相談窓口など、お子さまを直接見ることのできる専門家にご相談ください。詳細は免責事項をご確認ください。

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チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(毎日16〜21時)
児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(24時間)/虐待の心配は189
命に関わる危険があるときは、ためらわず119番へ。
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」(2026年7月確認)
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